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Ms.OOJA 『WOMAN -Love Song Covers-』 インタビュー
配信合計100万DL突破の「Be...」のスマッシュヒットで話題を呼んだMs.OOJAが、自身初のカバーアルバム『WOMAN -Love Song Covers-』をリリース。それに伴い、収録曲の原曲がリリースされた年代別ごとに様々な話を訊いた。
普段あまり語ることのない学生時代の話や、他の女性シンガーへの憧れと羨ましさ。さらに、カバーアルバムを出す理由について。
<1998~99年> あの頃にCoccoの「Raining」があって良かった
--Coccoさんの「Raining」が発売された1998年、Ms.OOJAさんは高校1~2年生ですけど、当時どのような想いでこの曲を聴いていましたか?
Ms.OOJA:歌声とメロディは美しいのに歌詞は過激で、最初に聴いたときは衝撃的でしたね。だけど、そういうアンバランスな部分というか不安定さが、当時の私の心境にマッチしていた。気持ちを代弁してくれるような曲で、あの頃にこの歌があって本当に良かったと思います。Coccoさんの危うさも魅力的でしたね。
「Raining」は収録曲の中で一番最初に決まって、一番最初にレコーディングした曲でもあります。“翼の折れた天使達へ捧げる、世界一泣けるカバーアルバム”というコンセプトを考えたとき、一番最初に頭に浮かべた曲かもしれない。だから裏軸になっている曲です。
--ちなみに、Ms.OOJAさんはどのような学生でした?
Ms.OOJA:中学生の頃からカラオケばかり行っていました。焦らなくていいと思いながらも焦ってしまったり、楽しいのにふとした瞬間に空虚感に襲われたり、10代特有の悩みが常にあって、それを打ち消すためにほぼ毎日カラオケに行っていたのかもしれない。
--“ほぼ毎日”は凄いですね。
Ms.OOJA:田舎だからカラオケくらいしかやることがなくて(笑)。初めて人前で歌をうたった場所もカラオケでしたね。それまで私には何の取り柄もないと思っていたけど、そこで初めて人から「歌うまいね」と言われて、“これだ!”と気づかせてくれた。
“私は大人なんだ”と肩肘張っていた
--収録曲を見ると、大人っぽい楽曲も多いですよね。
Ms.OOJA:“早く大人になりたい”という想いが強かったので、当時は少し背伸びをしながら歌っていた記憶があります。早く自分でお金を稼げるようになりたかったし、一日中学校にいるくらいなら働いた方がいいんじゃないかなって思っていた。
--大人びた学生ですね。
Ms.OOJA:歌手になりたかったから、学校で勉強する理由が分からなかったのかもしれない。卒業することに対しても、自分は永遠に17歳だと思っていたから怖くなかったんですよね。で、気が付いたらあっという間に30歳ですよ(笑)。本当にあの頃は、“私は大人なんだ”と肩肘張っていた記憶がありますね。少し年上の人と遊んで、自分が対等に扱ってもらえることに対して喜びを感じていたり。本当は何も分かっていないくせに、子ども扱いされることが嫌でした。
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Interviewer:武川春奈|Photo:佐藤恵
“病んでいる”アルバムを作りたかった
--また、1998年は錚々たるアーティストがデビューした年でもあります。(MISIA、DOUBLE、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、鈴木あみ、aiko など)
Ms.OOJA:うわぁ、凄い年ですね! 特に女性ボーカリストが活躍していたイメージがあります。今回カバーさせて頂いたアーティスト以外にも、浜崎あゆみさんやEvery Little Thingさん、globeさんなどよく聴いていましたよ。TKサウンドも好きだし、挙げたらきりがないくらい色々な方の曲を聴いていました。
--カラオケでもジャンル問わず何でも歌っていました?
Ms.OOJA:あまり知らないような曲でも、とりあえず歌っていましたね。人が歌っている曲を覚えて歌ったりもしていました。
--『WOMAN -Love Song Covers-』にもカラーの異なる曲が揃っていますけど、女性ボーカリストの楽曲のみを収録した理由は?
Ms.OOJA:よく“病む”とか言いますけど、まさに“病んでいる”アルバムを作りたかったんです。特に女性は落ち込んでいるとき、追い討ちをかけるように悲しい映画を観たり、音楽を聴いたりするじゃないですか? 悲しみに浸って号泣することで気持ちを切り替える人が多いからだと思うんですけど、そういうときに聴きたいと思ってもらえるアルバムにしたかった。だから、女性が書いた詞で、女性が歌っている曲を集めました。そうでないと、心に刺さらないと思ったので。
<2000~03年> 「雪の華」は歌うことを避けていた曲
--収録曲の中には、2000年にリリースされた曲が多いですが、それは何故でしょう?
Ms.OOJA:無意識に選んでいたので、自然と私の心の中にある曲なのだと思います。その頃に聴いていた曲が、特に大切な曲になっているのかなぁ。
--今歌うことで改めて気付けたことなどありましたか?
Ms.OOJA:全体を通して女性の強さや儚さを表現した曲が多いし、全曲“愛”というものが共通点としてありますけど、当時はほとんどそれを理解せずに歌っていた気がしますね。今になって気付くことができたのは、私自身たくさんの人に支えられて、愛を感じることができているからだと思います。
--歌う上で苦労した曲は?
Ms.OOJA:単純に歌として難しいと感じたのは「月光」です。鬼束ちひろさんはサラっと歌っているように見えるけど、かなり声量が必要な曲で、魂を絞り出すように歌わないといけない。それから、「雪の華」も難しかったですね。この曲、大好きなんですけど、裏声を出すことが出来なくなった時期から歌うことを避けていたんです。
--それはいつ頃ですか?
Ms.OOJA:20代半ばくらいかなぁ。クラブでお酒を飲みながら歌っていたからなのか、ファルセットが出なくなったんです。当時は悩みながらも裏声を使わずに歌う方法を探していましたけど、それを今になって克服できた気がして嬉しかったです。
--ちなみに、2000年はシングルミリオンセラー作品が多く出た年でもありますけど、Ms.OOJAさんから見て当時の音楽業界はどのように映っていました?
Ms.OOJA:憧れていたし、自分には手の届かない遠い場所だと感じていました。それくらい華やかな世界。それに、当時は個性的なアーティストも多かったですよね? とても良い時代だったと思います。
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Interviewer:武川春奈|Photo:佐藤恵
<2004~12年> 他のシンガーの活躍を見て焦ることもあった
--2004年以降、Ms.OOJAさんはシンガーとして名古屋のクラブシーンで活動していくわけですけど、当時のインディーズシーンはどのような雰囲気だったのでしょう?
Ms.OOJA:名古屋に出てきたのは、もう少し後ですけど、当時のインディーズシーンは勢いがあったと思います。みんなイケイケで、“インディーズで活動することが格好いい”みたいなところもあった。私も“このシーンでのし上がってやるぞ!”って意気込んでいましたね。
クラブシーンで活動するようになってからは洋楽ばかり聴いていて、J-POPを聴く機会も減っていたんですけど、m-flo loves YOSHIKAの「let go」は大好きでした。クラブシーンで歌っていた私からすると、HIP HOPやR&Bを上手に消化して日本語の曲として歌っている点が凄いなぁって。当時はシンガーとしてYOSHIKAさんのパートを中心に聴いていましたけど、今改めて歌ってみるとVERBALさんのラップパートも秀逸で、何度聴いても飽きない。
--そういう意味では、AIさんも憧れだったのでは?
Ms.OOJA:デビュー当時からずーっと背中を追いかけています。AIちゃんがクラブツアーで名古屋の桑名に来てくれたとき、オープニングアクトとして歌わせてもらったりもして。近いようで遠い存在なんですよね。そんな憧れの人の曲をカバーすることが出来て、感慨深かったです。歌っているときにジーンときましたね。
--また、今回JUJUさんの「この夜を止めてよ」もカバーしています。
Ms.OOJA:NYでデビューしてブレイクされるまでの経緯や、R&Bを歌っているところ、カバーをされている点など、JUJUさんとは近いものがあると恐れ多くも勝手に思っていて。そんなJUJUさんの「この夜を止めてよ」を歌わせて頂けて嬉しかったです。この曲は本当に、悔しいくらい素敵な曲ですから。
--自分と共通点を持つシンガーに対して、羨ましさや悔しさもあります?
Ms.OOJA:そういうシンガーの方の活躍を、羨ましいなと思いながら見ていた時期もあるし、焦ることもありました。だけど今は“越えてやる!”というくらいの想いでいます。悔しさもありますけど、憧れの方が強いですね。
批判的な声があってこそのカバー
▲Ms.OOJA / Be... (Stardust Version) (13人泣きビデオ)
--では、今このタイミングでカバーアルバムを出そうと思った理由を教えてください。
Ms.OOJA:誰もが知っている名曲を歌うことで、Ms.OOJAの声を改めて聴いてもらいたかった。こういう曲を聴いてきた青春時代があるからこそ、「Be...」のような曲が生まれたということを知ってもらいたかったんです。
--ただ、カバーアルバムに対して批判的な意見は少なくないですよね。
Ms.OOJA:批判的な声があってこそのカバーだと思います。反対に賛辞だけだと気持ち悪い。原曲と比較されることもあるだろうし、私のカバーを聴いてアレルギー反応を起す人も必ずいるだろうし。それは名曲であればあるほど当たり前のことだと思うんです。でも、アレルギー反応を起すくらい聴いて頂けるのなら、それ以上の喜びはないです。否定的な意見も全て自分の糧になっていくと思うので、受け止める覚悟は出来ています。そうじゃなければ、カバーアルバムを出すことなんて出来ないですし。
--今回「Be... (Stardust Version)」も収録されていますけど、「Be...」を歌い直してみて新たな発見もありましたか?
Ms.OOJA:最初にレコーディングした頃と今の「Be...」は形が全く違います。体に馴染む感じというか、私の中でさらに深いものになっている。もっともっと大切な曲になっていますね。
--「Be...」を発売してから約8か月、今はどのような心境で音楽活動を行っていますか?
Ms.OOJA:ワンマンライブツアーを開催させて頂けていることも、こうしてカバーアルバムを出すことも、ここまで過酷なスケジュールで毎日が進んでいくことも、全て初めてのことなんです。“初めて”は人生で一度きりしかないじゃないですか? 初めてだからこそ発見できることや生まれるものがあると思っていて。その中で自分がどう成長していけるのかが楽しみなんですよね。私にとって絶対にマイナスにはならないと思うので、一生懸命、真正面から今の状況と向き合っています。
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Interviewer:武川春奈|Photo:佐藤恵
WOMAN -Love Song Covers-
2012/11/07 RELEASE
UMCK-1433 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.ギブス
- 02.First Love
- 03.let go
- 04.月光
- 05.やさしいキスをして
- 06.Raining
- 07.雪の華
- 08.be alive
- 09.tears
- 10.この夜を止めてよ
- 11.Story
- 12.会いたい
- 13.Be... (Stardust Version) (Bonus Track)
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