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<インタビュー>広瀬香美×松元宏康、15年ぶりの指揮に挑む デビュー30周年記念シンフォニックコンサート
今年でデビュー30周年をを迎えた広瀬香美。 TikTokにおいて「ロマンスの神様」ダンスが話題を呼び、「TikTok2022上半期トレンド大賞」を受賞。幅広い年代層から人気を集めている広瀬がこの冬、【Alpen Group presents billboard classics Kohmi 30th 「ロマンスの神様」Symphonic Concert】を全国4都市で開催する。広瀬はコンサートの1部で、歌やピアノ、そして自ら15年ぶりに指揮台に立つことを選択。指揮を担当する松元宏康氏からの指導も取り付け、レッスン終了後に行われた二人の対談では指揮や音楽談義に花が咲いた。 (Text:坂口さゆり/ Photo:石阪大輔)
感謝の気持を伝えるコンサートに
広瀬香美:本日はご指導ありがとうございました。松元先生に考え方から教えていただいてよく理解できました。ポイントとなる冒頭と、拍子やテンポが変わるようなところは、リハーサルの時にしっかりとオーケストラの皆さんへお伝えさせていただきます。あとは、楽しく踊ってやってみようと思いました。
松元宏康:広瀬さんの踊りはただの踊りではないですよ(笑)。「こう演奏して」と言っているのと一緒ですから。それにしても、今回なぜ指揮をすることにしたんですか。
広瀬:デビュー30周年の今年は、歌を歌わせてくださり、私の音楽に親しんで育ててくださった皆さんに、感謝の気持ちを伝えたくて。それを音楽でどう表現できるか考えた時に歌だけでなく、もう1度指揮をやってファンの皆さんを驚かせたいと思ったんです。
実は15年前に行ったオーケストラ公演で指揮をしたことがありました。一生懸命体を使ったので、最後は息が続かなくなってしまい、もう2度とやらないとトラウマになっていたんです。そんなこともあって、今回オーケストラ公演が決まった時は、指揮は大好きな松元先生にぜひお願いしたいと思いました。スタッフに「松元先生じゃなかったら、私はできませんから」と言ったんです(笑)。
松元:それはうれしいですね。今回広瀬さんが指揮をされるというお話は、オファーいただいた後で伺ったんです。3年前にご一緒した仙台フィルハーモニー管弦楽団の「七十七スターライトシンフォニー」の時のトークで、広瀬さんがした十数年前のオーケストラ公演の指揮の話を覚えていたので、「今回、挑戦されるんだ」と。その後に、今日のようなレクチャーをしてほしい、というお話も伺ったんですよ。
広瀬:仙台のコンサートで松元先生とご一緒したことで一気にオーケストラ公演への意識が変わったんです。仙台フィルの皆さんもとても親切で、「後輩なのでがんばります」と言ってくれた団員さんもいて。非常に良いコンサートとなったので、またやれたらいいなと思っていました。ところが、コロナになり、なかなかオーケストラとのコンサートが難しくなってしまった。今年はその夢が叶ってとてもうれしく思っています。
松元:指揮者にとって曲の解釈が重要なんですが、広瀬さんの場合はご自身で作られた曲をご自身が振るわけですから問題ありません。モーツァルトやベートーベンが自分の曲を指揮するのと一緒です。それに、広瀬さんは国立音楽大学の作曲学科でオーケストレーションを勉強されていたわけですし、最初から心配していませんでした。
広瀬:でも、それこそ大学でいろいろと学ぶ中で、指揮は本当に大変という思いしかないですし、授業で楽曲を作りますよね。そうすると、自分で楽器のメンバーを集めて自分で指揮をするんですが、私の拙い楽曲をメンバーに弾いてもらうのも一苦労でした。「鳴らないなぁ」とか「どうやったらこういう和音になるの?」とか言われて……。その辺を克服できずに卒業したという苦い思い出があります。指揮の授業ももちろんありましたが、当時は先生が怖い(笑)。楽曲は赤ペンでめちゃんこ真っ赤にされました。それ以来クラシックは怖い!って思っていました。ただ、その反動でこんな楽しいポップスの世界に導かれたので、今は感謝しています(笑)。
松元:指揮に関してはあまりうれしくない経験が重なっていただけだと思うので、不安な気持ちを楽しい方へ変えていただければ問題ないですよ。
広瀬:今回譜面を見たら、曲のアレンジが素晴らしいんです。私だとどうしてもオーケストラの皆さんが大忙し、みたいな譜面を書いてしまうんですが、鳴りが良いというのはこういうことなんだな、とすごく勉強になりました。抜くところを抜けるというか、オーケストラのみなさんにとって優しいというか、わかりやすいだろうなって思います。
指揮も、学生の時にレッスンを受けてもわからなかったからこそ、今日、松元先生に教えていただいて軽やかさと言うのでしょうか。無駄なことをしない。だけど、大事なところだけは息遣いから体から持っていくというところは、「なるほどなあ」と理解しました。できないからこそ、できる方の指揮を見ると、差がわかります。
松元:指揮を勉強される方、プロのミュージシャンの方は音楽をわかっていらっしゃるので、それをどう表現するかというところに対して、悩まれることが多いだけなんです。これは、実は普段やってることと一緒ですよねということがわかってしまえば、もう全然問題ないと思います。自分のことで言うと、初めてのオーケストラとのリハーサルでは最初の10分ぐらいが大切です。そこでお互いが信頼関係を結ぶというと大袈裟ですが、一緒にやっていけるかな、楽しい音を作れるかなと思えるか。良い関係を築くために準備は必要で、それをしないと構えてしまったり緊張してしまったり。だからと言って、場当たりで行けるだろうというわけにもいかない。僕はその辺の心のバランスというか、心理的アリバイみたいなものを作ります。
ただ、その点においても、広瀬さんはこれだけステージをたくさんこなす、日本を代表するミュージシャン。素のままいくためにどうすればいいかということだけを少しお考えになってステージに立てば、絶対うまくいくと思いますよ。
広瀬:はい、もう先生のおっしゃる通りにいたします(笑)。
公演情報
【Alpen Group presents billboard classics Kohmi 30th 「ロマンスの神様」Symphonic Concert】
2022年12月8日(木)
東京・Bunkamura オーチャードホール
OPEN 17:30 START 18:30
2022年12月15日(木)
福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
OPEN 17:30 START 18:30
2022年12月20日(火)
兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 17:30 START 18:30
2023年1月12日(木)
愛知・愛知県芸術劇場大ホール
OPEN 17:30 START 18:30
出演:広瀬香美
指揮:広瀬香美、松元宏康
管弦楽:
【東京】パシフィックフィルハーモニア東京
【札幌】ビルボードクラシックスオーケストラ with SORA
【福岡・西宮】大阪交響楽団
【名古屋】ビルボードクラシックスオーケストラ
編曲監修:山下康介
チケット:SS席 30,000円(特別グッズ付き)
S席 20,000円(特別グッズ付き)
一般 10,000円
学生席 5,000円
公演に関するお問合せ
【東京】ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
【福岡】BEA 092-712-4221 (月・水・金12:00~17:00)
【西宮】サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12:00~15:00)
【名古屋】サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(全日 12:00~18:00)
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「音楽って楽しい」
松本:僕は逆に教わりたいのですが、素の自分でいくのはなかなかできない。やはり場数が必要ですか。
広瀬:いやいやいや。素は難しいです。30年でいろんな失敗を繰り返して、素でいくしかないなと思うようになりました。ただ今回のコンサートは2部制です。1部は「チャレンジャー・香美」を見ていただく。指揮をさせていただきながら本当に感謝の気持ちをお客様に伝え、ピアノも弾かせていただきます。そして、後半は、松元先生の指揮で、私は普段の私に戻れる。前半戦で頑張ってビシッと決めなくても、後半で帳尻を合わせれば、「盛り上がった楽しいコンサートだったな」っていただけるかと(笑)。
松元:音楽って楽しいですよね。
広瀬:楽しいですよ。コロナでも音楽の仕事で良かったと思いました。どうしても楽しいことをやらなきゃいけないと思いましたし、暗い時代だからこそ、私は音楽に救われたなという思いがあります。先生にとって指揮者の方の楽しみはどんなところにあるのですか。
松元:やはりいろんな方、いろんな地域の方とご一緒できること。演奏者やお客さまも含めて多くの人と知り合えます。曲も毎回違いますし、多くの方に携われることに尽きるのではないですか。
広瀬:指揮者の方って、対たくさんの人ではないですか。だから、すごい。たくさんの人のリーダーとなるお仕事って素晴らしいと思います。
松元:人の時間やそれまでのスキルなどを一旦預かるわけですからね。でも、僕は自分がこうやりたいというより、やりたいベクトルを探したい。それが先ほど言ったリハーサルの最初の10分のような気がします。自分の解釈はもちろん持っていきますが、それはオケの皆さんの演奏に足すために準備しておく。どこのオーケストラに行っても同じ結果になるのは、僕はあまり面白くないと思っているんです。オーケストラ音楽だけがなぜかライブって呼ばれないことも不思議だなと思っていて。オーケストラ音楽でも僕は演奏途中でもっと拍手していいと思う。時代が変わりつつあるので、そういうことがもっとできたらなと、自分の中では思っています。
広瀬さんがコンサートで楽しいって思うのはどんな時ですか。
広瀬:例えば、「ロマンスの神様」のイントロが流れた時のお客さまの反応です。会場の皆さんが「あっ、ロマンスの神様だ!」って、一気にパッと笑顔に変わるんです。空気が変わるんですよ。そんな時は、もう「私がみんなを楽しくしてる!」って思います(笑)。それはステージに立っていて、たまらない瞬間で、ありがたいなと思います。私は自分のことを歌手とはあまり思っておらず、音楽家と思っているので、イントロが鳴り始めた瞬間のことをやっぱり考えるんです。でも、それでよくAメロの最初を間違います(笑)。「ワーッ、うれしい」って思って歌に入らない(爆笑)。2番から歌い始めちゃったり……。歌手に徹してないところはあるんですけど。
松元:ご自身も楽しんでいらっしゃるからですね。
広瀬:そうですね。やはり私の音楽でお客さまが楽しんでくださったらうれしいです。特に今の時代は生の音楽を聴いてもらうことが本当に少なくなってしまいました。なかなか生歌に触れられない時期ですので、コンサートに来てくださったみなさんには、生の音楽を存分に浴びていただきたい。「やっぱり生っていいよね」とか、「あの曲を生で聴けた!」といった気持ちを持ち帰っていただきたいんです。そして、私はそのお客さまたちの笑顔や感動とか、そういった瞬間を目に焼き付けたいと思います。
松元:楽しいものって、みんなが共有したいという気持ちになりますよね。僕も初めて広瀬さんの曲を若い時に聴かせていただいた時にすごくハッピーになったし、他の作品をオーケストラで指揮をさせていただいた時もすごく楽しかったし。広瀬さんが指揮台に立たれて、リハーサルからご一緒するだけで楽しい。
クラシック音楽=オーケストラ音楽ではないんですよね。クラシックはクラシックというジャンルがあります。今回はオーケストラ作品の中に広瀬さんの楽曲がある。ベートーベンの音楽は聴き方があるかもしれないけど、広瀬さんの音楽を、オーケストラを通して聴くということは普段聴くのと変わりません。僕も微力ながらできることをできたらなと思います。広瀬さんはいつも通りの、素敵なライブの笑顔で走っていただければ、きっと素敵なコンサートになると思います。
広瀬:ありがとうございます。私は毎年オーケストラのコンサートをやらないので、ファンの皆さんはどうやって聴いたらいいんだろうって、きっと緊張して来られると思うんです。そういう思いを覆したい。大喝采のコンサートにしたいなと思っています。
公演情報
【Alpen Group presents billboard classics Kohmi 30th 「ロマンスの神様」Symphonic Concert】
2022年12月8日(木)
東京・Bunkamura オーチャードホール
OPEN 17:30 START 18:30
2022年12月15日(木)
福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
OPEN 17:30 START 18:30
2022年12月20日(火)
兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 17:30 START 18:30
2023年1月12日(木)
愛知・愛知県芸術劇場大ホール
OPEN 17:30 START 18:30
出演:広瀬香美
指揮:広瀬香美、松元宏康
管弦楽:
【東京】パシフィックフィルハーモニア東京
【札幌】ビルボードクラシックスオーケストラ with SORA
【福岡・西宮】大阪交響楽団
【名古屋】ビルボードクラシックスオーケストラ
編曲監修:山下康介
チケット:SS席 30,000円(特別グッズ付き)
S席 20,000円(特別グッズ付き)
一般 10,000円
学生席 5,000円
公演に関するお問合せ
【東京】ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
【福岡】BEA 092-712-4221 (月・水・金12:00~17:00)
【西宮】サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12:00~15:00)
【名古屋】サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(全日 12:00~18:00)
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