サカナクションもっと知られるべく「どんどん外に挑戦」

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サカナクション

　今や日本を代表するロックバンドのひとつへと到達した感のあるサカナクション。6月19日台風4号上陸直前の東京はZepp Tokyoにて【SAKANAQUARIUM2012“ZEPP ALIVE”】最終公演を開催した。

総合芸術としてのチーム・サカナクション

　開演前からパーカッションと観客によるクラップが高揚感を掻き立てる会場。白幕にDJと化したメンバー5人が横一列に浮かび上がる、今や恒例となりつつある光景からライブはスタートし、楽曲は『Klee』『アルクアラウンド』『セントレイ』と序盤から百戦錬磨のキラーチューンばかりが連発されていく。ここに来てさらにグルーヴィーになった演奏、サカナクションへの愛情を深めたファンのエネルギーも手伝って、会場は一瞬にして興奮の坩堝へと。

　また、機材以外の灯りは全て消した暗闇の中で『壁』を披露したり、リアルタイムでビジュアルを変動させていくオイルアートと『ネプトゥーヌス』で一体となったり、昨年、2万人を集客した幕張メッセ公演同様、総合芸術としてのチーム・サカナクションの面白さを体現。さらに、この日が最終回だったドラマ「37歳で医者になった僕～研修医純情物語～」主題歌『僕と花』を披露したのだが、その後の『アイデンティティ』や『ルーキー』に至るまで音を途切れさせることなく、ライブひとつで大組曲を創造しているような印象も与えた。

　オリジナルより格段に熱量を増した『エンドレス』で本編を終了した彼ら。アンコールの幕開けも見事で、前述した天候の中で『Ame(B)』をお届けすれば、誰もが雨の中で大はしゃぎする子供のように踊り始める。そこへ『ライトダンス』を畳み掛けると「でも明日が見えなくて！」の大合唱というシュールな光景が生まれ、さらには「新曲聴きたい？」という問い掛けから今夏リリースのニューシングル『夜の踊り子』をも披露。

今回の“ZEPP ALIVE”でちょっと見えた

　その反応に満足をしたのか、嬉しそうな表情を浮かべた山口一郎（vo,g）はこの日初のMCを。感極まっている江島啓一（dr）を「泣きそうになってんの？　うわぁ～、泣～け、泣～け、泣～け」と茶化しつつも、「今回の“ZEPP ALIVE”でちょっと見えたんですよ。バンドを使ってもっと面白いこと出来るんじゃないかなって。（例えば）真っ暗になるとさ、音に集中するでしょ。で、いきなりバッて（灯りが）ついたら違うミュージシャンになっていたりとかさ。わかんないけど、それすら楽しめることも出来るかもしれないじゃん。なんかヒントがあったんだよね、今回」と語った。

　また、前述のドラマ主題歌について触れ「こうやってたくさんの人に来てもらえるようになって、たくさんの人に知ってもらえるようになるとさ、いろんなことが出来るようになるんだなって実感したし、ワガママも聞いてもらえるしさ。だからどんどん外に挑戦していこうと、サカナクションは思います。テレビ歌番組はちょっと遠慮しておきたいけど、でもどんどん外には発信していってさ、ここに音楽にさほど興味がない健全な若者が入り込んできてさ（笑）、みんなのエネルギーで包んでやったら、多分その人は音楽好きになると思うんだよね」と語り、最後に『ナイトフィッシングイズグッド』を。

　「音楽を好きな人を増やそうと必死になっています」と、チーム・サカナクションについて言及した彼らだが、その想いは明確に感じ取れる形で表現されていた。人も、音も、光も、あらゆる存在が一丸となって感動的なアートとエンターテインメントを創造。それは結果として同公演を想定外のダブルアンコールへと突入させ、温かい『三日月サンセット』の奏でを生む。さらには「写真を撮ってもいいですよ」と、記念撮影＆Twitterへの写真アップを許可する大サービスもあり、会場は最後の最後まで高揚感に溢れていた。

　カメラマン：石阪大輔（Hatos）