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<インタビュー>18年目の加藤ミリヤが語る“今、表現したいこと”――最新曲「オトナ白書」に刻んだ原点と現在地
Interview:永堀アツオ
Photo:Yuma Totsuka
9月8日にデビュー18周年を迎えた加藤ミリヤ。特に直近3年間は時間の進みが早かったという彼女が、その期間に自分自身について、音楽について深く考えたという彼女が、今年は怒涛のリリース・ラッシュで“加藤ミリヤの今“を表現した。
周囲の悩める人たちのために書いたという「LIE LIE LIE」を皮切りに、本領発揮ともいえる切ないラブ・バラード「Goodbye Darling」「Cry Me A River」、一転して甘酸っぱい二人の関係性を描いたR&Bソング「BE MY BABY」、彼女自身が大いに刺激を受けたという音楽プロデューサー、KMとの再タッグで“新しい加藤ミリヤ像“を提示した「KILL MY LOVE」、アウトドア・ブランドのコロンビアのアウトドア・コレクション『ESCAPE with Columbia』との企画の一環で生まれた、人それぞれの“癒しの場”を肯定する「WILD&FREE」、そして、友人であり作家であるLiLyの著書とコラボし、デビュー18年目を迎えた“今の加藤ミリヤ”が原点を振り返り、同時に現在地と向き合った最新曲「オトナ白書」――。
30代を生きる大人として、一人の女性として、自分自身を正直に表現するアーティストとして、彼女はこの数か月、どんなことを思い、それをいかにして音楽へと昇華させたのか、じっくり話を訊いた。
やりたいことが分かった
――今年9月8日にデビュー18周年の記念日を迎えた心境から聞かせてください。
加藤:「20周年が見えたな」という感じはあります。昨年はそういうことをあまり思わなかったんですけど、今は20周年を良い形で迎えられるように向かっている、という感覚がありますね。
――どんな18年間でしたか?
加藤:15周年からの3年間がけっこう早かったんですよね。そこで自分自身がプライベートで母になったという変化があって。自分の生活が変わったし、自分の音楽性についてすごく考えた期間だったんですね。でも今は、自分が向かうべきところ、表現する音楽がやっと見えたなって感じです。
――生活の変化が音楽にどんな影響をもたらしましたか?
加藤:最初は「自分は何がしたいんだろう」って分からなくなったんですよ。それまではずっと加藤ミリヤとして、自分のためだけに生活していて。それが自分の中で音楽になって、自分の音楽性が生まれたんですけど、母になったことで新たな自分の人格ができた。「私は誰なんだろう」って自分的に分からなくなったんですよね。
――それはどういうことですか? 具体的に聞いてもいいですか。
加藤:加藤ミリヤが表現するものは、不特定多数の人に向けてではなくて、小さなところに向けていたと思うんです。ある意味、コアなものとか、マイノリティーに属するものとか。自分はそういう人間だと思って過ごしてきたし、メジャー・アーティストとはいっても自分はマスにはなれないとずっと思っていて。なりたいと思ってもなれないし、本当になりたいと思ってるのかも自分でもわからない、みたいな存在だったんですね。でも、新しい自分の人格ができちゃうと、どこかでブレーキをかけたりしちゃうことがあって。母であるからこういう表現はどうなんだろう、とか。でも、本来の加藤ミリヤはそうじゃない。言いたいことは言うし、常に何かに疑問を持って、時に怒って、時に叫ぶのが自分の音楽性だったのに、ちょっと後ろから手を引っ張られちゃうみたいなところがあったんですよ、たぶん。
――それは分かりますね。今は、母である自分とアーティストである自分を分けて考えられるようになった?
加藤:そうですね。切り離してる。でも、わりと最近になってようやくという感じだと思います。自分が母になる前からずっと継続してることって、変えることができないし、別に恥ずかしいことでもなくて。自分がやってきたこと、やっていることをもっと誇りに思わないといけないという思いと、あとはやっぱり、自分がやりたいことが分かった。それが「オトナ白書」で、これが今、一番が自分やりたい感じなんですけど。
――そのやっと見えた“向かうべきところ”、“表現する音楽”というのは?
加藤:分かりやすく言うと、“自分にしかできないことをする”ということですね。大きなことや普遍性のあるものを素敵に歌う歌手の人は他にもいっぱいいて。でも、私はその役割ではやっぱりないというか。そのほうが広く売れるんだとは思うけど、私はそもそも最初からやってなかった、みたいな。でも、あるときから……『Ring』という4枚目のアルバムを出したのが20歳ぐらいなんですけど、そのときから自分が急にメジャー・アーティストになった感がすごくあって。
――初の武道館ワンマンがあった年ですね。その前の年にサンプリング・ベスト『DESTINY』もチャートで首位を獲得する大ヒットを記録しています。
加藤:当時、自分はメジャー・アーティストなんだという感覚があったんだけど、もはや今はそういう時代じゃなくなっていて。そこで何でもよくなったっていうか。どこのレコード会社なのかとか、昔みたいに聴く側はもはや誰も意識してないし、メジャーもインディーズも本当に一緒に聴かれる環境だから、自分を変に細かくカテゴライズするのはいらないなと思ってから、すごく変わってきたんです。そもそも自分がやってきたことって、例えば日本のヒップホップをサンプリングして曲を作ってきたりとか、ブラック・ミュージックに憧れて音楽の世界に入ったりとか。だから、本当の自分の姿を取り戻そうとしてるなって感じはありますね。
理想のミリヤ像
――今、一番やりたかったという「オトナ白書」に向かう過程で6曲が配信リリースされました。
加藤:この3年で音楽の聴き方も、完全にサブスクにシフトしたと思っていて。その環境にやっと納得できたタイミングでもあったんですね。そこでスタッフから「毎月デジタル・リリースしよう」という提案をもらって。やりたいと思ったんですよ。私も大変かもしれないけど、絶対にスタッフのほうがいろんな準備でもっと大変だから、それでもやろうと言ってくれたのがありがたいなと思って。デジタル・リリースのいいところって、いろんなことをトライできることで、なので本当に毎月、何も決めてなかったんです。その瞬間に自分がやってみたいこととか、やってみたいプロデューサーとか、やってみたい曲を前の月に書いて、数週間後に出すみたいな。
――あははは。本当にフレッシュなままリリースしてたんですね。
加藤:そうです。そのときに私の中から出てきたのが、たまたまこれだった、みたいなのをずっと繰り返してやらせてもらってきて。やっぱり大きかったのはKMさんとの出会いかな。KMさん、すごく面白かったですね。最初に「DEVIL KISS」(11thアルバム『WHO LOVES ME』のリード・トラック)をやって。まだまだ一緒にやりたいことあるなと思って、「KILL MY LOVE」を7月ぐらいにやろうということだけは決めてました。
――リリース・ラッシュの流れを1曲ずつ振り返ってもいいですか? 第1弾「LIE LIE LIE」はセックスレスのカップルの物語になってました。
加藤:そうです。まず最初に「このミリヤの感じ、懐かしい」みたいなテンションにしたいというのがあって。自分はまだ書いたことがなくて、世の中にもそういう歌ってあまりない。でも、私の周りにはそれに悩んでる人たちがすごくいっぱいいて。たまたま周りには「つらい」と言ってる人が多かったので、そういうみんなのために書いてみようという感じでした。本当にピンポイントで書いてますね。
加藤ミリヤ 『LIE LIE LIE』- Lyric Video-
――最初におっしゃってた小さいもの、コアに向けて書くという姿勢ですよね。その後に失恋ソング「Goodbye Darling」「Cry Me A River」を2曲同時にリリースしました。
加藤:「Goodbye Darling」は、LOVE PSYCHEDELICOさんの「ラストスマイル」みたいな曲を作りたいと思って、ぶっちゃけ歌詞は最初、本当に何も決めていなくて。あと、YOSHII ROBINSONさんの「Call me」も私、大好きなんですよ。基本はトラックって感じのものが好きなんですけど、ああいうアコースティック・ギターとかロック寄りのサウンドも好きなので、ただサウンドだけで作っていました。思ったより早く曲ができたので、スタッフから「時間が余ったからもう1曲作って、セットにして一緒に出すのはどうだ」って提案があって「やってみよう」って。
――(笑)。それにしては「Cry Me A River」は名バラードになってますよ。
加藤:いい曲ですよね。でも、ああいうのは私的にはもう朝飯前って感じなんです。けっこう簡単にできる感じ。SUNNY BOYのスタジオに行って、いろいろ聴いて、単純にアデルみたいな曲を作ろうって。ピアノのラインを決めて、フリー・スタイルで歌って録って。全部で5時間ぐらいでできました。歌詞は「せっかくだから繋げてリンクさせよう」ってアイディアが出て、それに合わせて書いた感じです。
――どんな心情といえばいいですか?
加藤:理想のミリヤ像はやっぱり強い自分というのがあって。だから「もう私は迷ってない、本当は苦しいけど行くんだ」みたいな女性像が生まれて。で、最後に「私のためにだけ泣け」と言う、みたいな(笑)。「あなたは今頃、私のことを思って泣いているでしょう、ははは」みたいな強さを持てたらいいな、という自分の理想像ですね。
加藤ミリヤ『Goodbye Darling』-Lyric Video-
加藤ミリヤ『Cry Me A River』-Lyric Video-
――同じ月にもう1曲、R&Bのデュエット・ソング「BE MY BABY」をリリースしてます。
加藤:これは逆に時間がかかりましたね。誰かをフィーチャリングしたいなと思って。Yo-Seaくんの声がすごいなと思って聴いていたので、それを叶えてもらった感じですね。たまたまYo-SeaくんもMatt Cabと一緒に曲を作ったりしていたので、初めての私たちだし、お互いに一緒に曲を作ったことがあるプロデューサーとやろうって、マットとMATZとYo-Seaくんと私の4人でスタジオに入って。何もないところから作っていったので、果てしなすぎてあまり覚えてない(笑)。サビのメロディから全部、みんなで一緒に考えたんですよ。やっぱり自分の意見ばかり尊重してもらっても面白くないので、そのへんのさじ加減もそうだし、久々に人と一緒に曲を作ったこともあって時間がかかったけど、Yo-Seaの声は素晴らしかったですね。
――アッパー・ソングになってますが、どんなストーリーをイメージしてましたか?
加藤:友達なんだけど、恋人になりたい。でも、なんか言えない、みたいな。今の自分ではありえない甘酸っぱい感じにしよう、みたいな狙いがありましたね。Yo-Seaくんはすごく壮大な愛とか、美しいクリーンな愛を歌うというテーマを持ってる人なので、そこまでドロドロしたことじゃなくて、シンプルに「友達の二人がこれからどうなる?」みたいなイメージでした。
加藤ミリヤ feat. Yo-Sea『BE MY BABY』-Lyric Video-
振り幅がありすぎる
――その後がKMさんとの「KILL MY LOVE」でした。
加藤:KMさんはヒップホップの人で、私はJ-POPという意識がすごくあって。「DEVIL KISS」はそのあいだを取りつつ、ちょっとJ-POP 寄りにしたんですけど、次にやるときはもっとKMさんのアイディアをいっぱいもらって作ってみたいなと思っていたんですね。だから今回は、サビのフックのトップラインとかを提案してもらって。「え? これ、ミリヤなんだ!?」って感じの曲にしたかったんですよ。
――最初のファルセットのウィスパー・ヴォイスだけ聴くと、ミリヤさんとは一瞬分からないですよね。ヴォーカル・チョップも入ってますし。
加藤:最初は「どうなんだろう?」と私は思ってたんですけど、これが逆にいいみたいなことになって。とはいえ、やっぱりミリヤっぽさが必要だなということで、自分の歌詞を毒っ気として入れたって感じです。
――どんな恋愛感情ですか?
加藤:重いんだけどチャラい、みたいなやつにしたかったんですよ。
――あははは。
加藤:ただチャラい曲はもうあるから。でも、何か独特の重々しさがあるな、みたいな。でも、サウンドはなんか分からないけど踊れる、みたいな。いろんなミスマッチがあっていいなと思っていて。最初にKMさんのほうから<永遠なんてわからないけどね>というフレーズがきたんですよね。だから、「わからないけどね、へっ」みたいな女の子として書いてみようと思って。人気者で、ちょっとたまに悪いこともするよ、みたいな女の子像。誰かに翻弄されるのってしんどいことで、それが恋愛の醍醐味ではあるけど、嫌なときもある。誰にも影響されたくない、みたいな。だから、「愛かも?」と思う前にキルしてくれっていう。それで終わるというか、愛にならないようにしてねっていう歌ですね。
――それは防御なのかな。
加藤:そうなのかも。なんか傷つきたくないし、たまに恋愛って疲れるから。というのを軽快に踊るサマー・ソングですね。
――ダンス・ビデオも公開されてます。
加藤:踊れる曲になっていったらいいなと思って作ってます。ダンス経験者じゃないとちょっと難しいんですけど、1回覚えると癖になる感じになってるので、ちょっと踊り続けて、まずはファンのみんなに覚えてもらえたらいいなと思います。
加藤ミリヤ『KILL MY LOVE』OFFICIAL DANCE VIDEO
――続く「WILD&FREE」は?
加藤:これはアウトドア・ブランドのコロンビアさんの企画があって生まれた曲ですね。私も外に出るのが好きなので、焚き火しながらチルできて、今のあなたを認めるって曲にしたいなって。
――日常からの逃避行がテーマですよね。
加藤:そうですね。みんなが逃げられる場所があったらいいなっていう。やっぱり都会って疲れるし、頑張りすぎてる人も多いからね。別にどこかに行くとかじゃなくても、自分にとって「逃げられる場所ってどこかな?」というのを考えるきっかけになったらいいなって。例えば誰かのライブに行くでもいいし、推しの活動をするでもいいし、サウナに行くでもいい。「趣味ないんだよね~」という人もいるけど、それぞれ皆さんが自分を癒す場所を持っていたらいいなという思いを込めてますね。
――これは一人ですよね。
加藤:そうですね。最初はソロ・キャンプをイメージして書いていて。今はコロナ禍だから一人の時間ってあると思うんですけど、やっぱりその時間って大事だと思うし。そのときにみんなは何を考えてるんだろうと思いながら書いてました。
加藤ミリヤ『WILD&FREE』
――クラブでみんなで踊ってる曲からのソロキャンプというギャップもすごいですよね。
加藤:ふふふ、そうですね。いろいろ振り幅がありすぎて、自分でもびっくりするんですけど、どれも自分だなという感じがあって。不思議です、自分が。
JKってある意味、日本の独特な文化
――(笑)そして、今、一番やりたかったという「オトナ白書」。作家のLiLyさんの著書『オトナ白書』とのコラボレーション・ソングになってます。
加藤:今年に入ってからかな。LiLyと「何か一緒にしたいね」って話していて。たまたま彼女から雑誌のエッセイをまとめたものを9月に出すことを聞いたんです。私も毎月リリースすることが決まっていたタイミングで、「平成ギャルが40歳になって、という話ですわ」と言われたときに、もう自分が制服を着て、ルーズソックスを履いてる絵が見えちゃって。9月は周年の記念日があるし、その付近でいろいろやりたいから、「テーマ曲みたいな感じで書くのどう?」と話したら「いいね」って。タイトルが『オトナ白書』だということを聞いて、びびっときたんです。すぐスタッフのみんなに話して進めていきましたね。
加藤ミリヤ『オトナ白書』
――ミリヤさんにとってLiLyさんはどんな存在ですか?
加藤:Lilyはすごい40歳って感じ。生きるパワーがある人。私も彼女も、女性のために表現してきたというところが似ていて。見てるものも共感するものも限りなく近くて。でも、いろんな経験をしてるし、ぶっ飛んでるし、型にはまらない面白い人であって。あとは、彼女自身がフリースタイル・ダンジョンで審査員をやったりとか、ヒップホップやR&Bが好きという共通項もある。最初、彼女がライターをやっていて、インタビューされたのが出会いだったので、好きな音楽も共通するものがあるんです。ヒップホップを聴いてるギャルって独特だったので、その感じが共有できる人でもありますね。
――平成ギャル、『オトナ白書』から受けたインスピレーションって何ですか? LiLyさんのほうが少し年上ですよね。
加藤:そうですね。だから、微妙に時代が違うんですけど、自分自身が高校生のときにデビューして、今もずっとギャルと呼ばれる子たちは生息していて。なんか同じ匂いを感じたりとか、当時のギャルだった子たちってやっぱり加藤ミリヤの曲を聴いてくれていて。
――JKやギャルのカリスマと呼ばれてましたし、当時のギャルは本当に100%くらいの確率で聴いてましたよね。
加藤:あははは。自分が大人になって、思ってた以上にそのことを思い知らされて。やっぱりどこに行っても、同世代だったら「めちゃくちゃ聴いてました」と言われて。過去形だったりするんですけど、「今でも若い子たちにとってのギャルのアイコンはミリヤちゃんなんだよ」と言ってもらったことがあったんです。それでなんか、勝手に使命感を感じちゃって。JKってある意味、日本の独特な文化というか。それをちゃんと姿としても、歌としても表現していきたいと思ったんです。「ディアロンリーガール」という曲を書いたけど、何かその先が節目節目にいつも欲しくて。
――続編として「リップスティック」という曲がありましたが、その続きという感覚ですか?
加藤:そうですね。私も34歳だし、自分がまさかこの年齢でこういう格好するとはまったく想像してなかったんですけど、なんかするべきなような気がして。その姿で歌うことがめちゃくちゃエモかった。みんなが昔を思い出すし、今まさにその渦中の人たちにも分かってもらえるだろうって。姿を含めて、イメージできました。
加藤ミリヤ 『ディアロンリーガール』
加藤ミリヤ 『リップスティック』
――30代の大人として<I'm a GAL>で<I'm a QUEEN>と歌ってる。
加藤:はい、大人の意識ですね。やっぱり確実に失ったなと思ってるものもいっぱいあるし、あのフレッシュさにはもう戻れない。でも、まだ戦える自分が分かる、みたいな。だってね、18年やらせてもらってる私が、最近デビューしましたって人たちと一緒にいるわけで。よく考えたら、それってけっこうすごいことかもと思って。それを面白いと思ったほうがいいし、まだネタあるなって自分で思えたから(笑)。今もまだ自分に興味を持てているので、そっちに進むべきかなって。ヒップホップの精神論で、自分をすごく大きく見せたり、自分自分のことを誇らしく表現するという意味で、<I'm a GAL>とか<I'm a QUEEN>って分かりやすいフレーズがポロッと生まれたりして。今、そっちのモードですね。
――資料にある、ギャルのためのギャルにしかわからないことっていうのは?
加藤:男とか女とか言ってる時点でもう時代錯誤なんですけど、やっぱり確実に女性っていろんなフェーズがあって、そのあいだにめちゃくちゃ変化するんですよ。これを手に入れた、これを失ったみたいなことを繰り返して、結果±0なんですけど、10代とか20代前半とか、あのピッチピチのときって100%無敵だったんですよ。そこが鮮やかで、めちゃくちゃいい思い出として、みんな残っていて。そこにふと戻ったときに、ちょっと自分のことが愛しくなるんですよね。だから、大人が昔を振り返ったときに「ああ、こうだったな、自分」みたいな。で、「今はこうでOK」みたいに自分を認められることに繋がる気がして、こういう表現をしています。
――あの頃の記憶を蘇らせつつ、今の視点で書いてますよね。
加藤:一番は振り返っていて、2番で今を歌ってる。大人はやっぱりクールだし、私は大人でいることはJKでいることより全然好きだから。でも、<私はいつもブルー>というのは「大人だったらこの感じ分かるでしょ」ということですね。たまに「老いが嫌だ、時が止まればいい」みたいに思うときがあるよねっていう。そういうことを綴ってますね。
――過去も現在も肯定するような曲が完成して、この先というのは?
加藤:この先は今、何も考えてないんですけど、最後に「オトナ白書」というところに自分が行き着くということは、今年が始まったばかりの頃はまったく想像してなかったんですね。でも、半年経って、9月になって、「これだったんだ」って。だから音楽って面白いし、自分たちの人生って面白いなと思って。やっていればたどり着く。だから、まずはやることが大事。それで自然と前に進んでいるということが分かったので、この自分の姿があって続いていくんだなって感じですね。まだ何も曲のことは考えてないですけど、ツアーをやりたいのでアルバムは作ったりしたいな。今は1曲単位で聴かれるし、1曲1曲が主流になっちゃうんですけど、やっぱりアルバムの流れとかで表現するのがもともと好きだったので、そうやって自分の世界を作ることはやっぱりやりたいことですね。
――そして、12月にビルボードライブでの3年ぶりのライブが決まってます。
加藤:めっちゃ楽しみです。コロナになるまでは毎年12月の恒例イベントだったので、それがなくなって、ファンの子たちも12月が来ると「今年はやっぱりないんだね」とか「やっぱりまだできないよね」みたいな話になっていて。でも、「もう行こう!」みたいな。今は一緒にこの環境で生きていくって感じだから、今年はビルボードライブ公演をやらせてもらうことになりました。しっとりゆったり楽しんでもらえたらいいなと思いますね。
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