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<コラム>K-POP第4世代の筆頭? 次世代のガールクラッシュ? 日本デビュー控えるIVEの魅力とは
Text:筧 真帆
1位総なめ、IVEの大躍進
デビューと同時に“完成型グループ”と呼ばれ、今や“MZ世代のワナビー”と呼ばれるIVEが今、K-POPの旬をけん引している。
メンバーは、元IZ*ONEでリーダーを務めるユジン(19)と、同じくIZ*ONE で特に人気の高かったウォニョン(18)をはじめ、ガウル(20)、日本人のレイ(18)、リズ(17)、イソ(15)の6人。グループ名のIVEとは“I HAVE”の意で、自分たちが持っているものを堂々と見せるというコンセプトを持つ。そう、彼女たちはこの“堂々”がキーワードとなる。
IZ*ONE の解散以降、メンバーが最初に始動するグループとして、デビュー前から大きな注目を浴びるなか、2021年12月に「ELEVEN」でデビューすると、瞬く間に大ブレイク。エキゾチックなメロディに乗せ、妖艶で優雅なパフォーマンスを魅せる6人。MVを初めて観たとき、全員のルックスの高さも去ることながら、やはり経験者二人が在籍するだけあって、ダンスから表情まで終始堂々としたパフォーマンスにくぎ付けになったことを覚えている。アルバムの初動が15万枚と2021年デビュー組で最多記録を出し、13の音楽番組で1位を総なめにするという快挙を成し遂げ、ITZY、aespaに続く第4世代を代表する1組に台頭した。
IVE 'ELEVEN -Japanese ver.-'Music Video
しかし、IVEのすごさは、このスタート・ダッシュだけではなかった。現在まで「ELEVEN」(21年12月)、「LOVE DIVE」(22年4月)、「After LIKE」(22年8月)と三つのシングルをリリースしているが、どの曲も国内外においてロングヒットを果たしており、いわば“全曲が代表曲”となっている。
まず、韓国の主要音楽プラットフォームと各動画SNSを総合集計しているサークルチャート(旧ガオンチャート)を見ると、今年上半期を総合するGlobal K-pop Chartで、3位に「LOVE DIVE」、4位に「ELEVEN」がランクイン。1位と2位はBTSの「Dynamite」(20年8月)と「Butter」(21年5月)のため、最新曲としては、IVEの2曲が今年上半期を代表する曲だったということになる。
いっぽう日本では、ビルボードジャパンのHot 100で10月5日の最新チャートを見ると、23位に「After LIKE」(最高13位)、71位に「ELEVEN」(最高16位)、79位に「LOVE DIVE」(最高8位)と、なんと3曲ともチャートイン。100曲中15曲がK-POPで、うちBTSとTWICEが3曲ずつ、BLACKPINKが2曲ランクインしているが、IVEは日本デビュー前にも関わらず、このチャートは快挙と言えよう。
そして海外では、ビルボードのGlobal 200に、「ELEVEN」は最高68位で10週連続、「LOVE DIVE」は最高15位で26週連続、「After LIKE」は最高20位で5週連続チャートイン。特に「LOVE DIVE」の26週連続チャートイン(現在進行中)は、今年リリースされたK-POPで最長の記録となっており、国内外で驚くべき結果を出し続けているのだ。
IVE流のガールクラッシュ
では、IVEはなぜそのような結果を出せるグループなのか。筆頭に挙げられるのは、圧倒的な楽曲の良さだろう。ここまでの3曲を筆者が独自に例えるなら、“妖艶”、“神秘”、“甘酸っぱさ”という違った表情を見せ、固定カラーに捉われない変化を見せ続けていることがひとつ。加えて、楽曲にも歌にも細かなアレンジが施されているが、どの曲もAメロ~Bメロ~サビ~大サビという基本の起承転結で構成されており、聴きやすいことも大きい。そのうえで、どの曲にも特徴的なポイントが置かれている。
デビュー曲「ELEVEN」では、静かなテンポのA・Bメロからゴージャスなサビへのブリッジで、1・3番はレイ、2番でイソが<知らなかった/私の心がこんなにも/色鮮やかだなんて>(日本語ver.<こっから先はカラフルな暗示>)とテンポを落としてエッジボイスで歌うところが、とても個性的で耳を捉える。ファンたちの前で披露する際は、このパートが大合唱となるほどだ。
「LOVE DIVE」は海外クリエイター陣による楽曲で、シンプルで大胆なリズムに、リバーヴを深くかけたメンバーのコーラスがリフレインされ、神秘感を放つスタイリッシュな楽曲。後半には、吐息のような声で<息をとめてLOVE DIVE>と繰り返す大サビへのブリッジがエッジとなり、LOVEへDIVEしてゆく(飛び込んでゆく)世界観が、幻想的なサウンドで描かれている。
「After LIKE」は一転、ポップハウスのダンサブルな曲で、1978年に大ヒットしたグローリア・ゲイナーの「恋のサバイバル」(原題「I Will Survive」)を間奏にサンプリング。全体的に、70~80年代ディスコ・サウンドをEDMアレンジしていることから、どこか懐かしさを感じる甘酸っぱさを醸し出し、大人層にも支持される結果に。また、同曲の歌詞は、<Lの次にO/そして私はyeah><LOの次にI/そしてVE>という言葉遊びが面白く、Z世代が恋を楽しむ感覚を体現しているかのようだ。これまでクールな表情でパフォーマンスすることが多かったメンバーたちも、同曲では満面の笑顔を見せ、IVEとしての振り幅の広さを示す楽曲になった。
IVE 'LOVE DIVE' MV
IVE 'After LIKE' MV
そうした楽曲の振り幅とは逆にIVEが一貫しているのは、体の曲線を活かすエレガントな振付けが多いことだ。腰から上半身が曲線を描くようなダンスや、手の動きも腕から指先までが優しい曲線を描く仕草が多い。それゆえ表題曲で最もキュートな「After LIKE」でも、IVEらしい気品が溢れている。ちなみに身長173センチのウォニョンを筆頭に、平均169センチという6人の長身なスタイルもダンス映えする特徴と言えよう。
また、どの歌詞も、自己愛にあふれた少女たちが、真っすぐ恋に向かう内容を歌っている。「ELEVEN」では、恋に落ちた少女の心が幻想的な色に染まっていく過程を歌い、「LOVE DIVE」では、“愛する勇気があれば恐れずに飛び込んできて”と相手を自身に向かわせ、「After LOVE」では、“ただ好きっていうのじゃないの、What’s After LIKE?”と自分の気持ちを正直にアピール。どの歌の主人公も芯の強さは持ちつつも、恋に悩む姿はとても愛らしい。強めのサウンドや言葉でアピールするガールクラッシュではなく、内面から“堂々”とした姿を示すのが、IVE流のガールクラッシュなのだろう。
こうしたダンスの見せ方、歌の主人公の一貫した姿と、バラエティに富んだ楽曲の振り幅、そして絶対的なルックスの高さ、これらの相乗効果が、現在のIVE人気の秘訣と言えそうだ。
2022年の9月末までにデビューしたK-POPのガールズ・グループは16組にのぼる。特に今年はとんでもなく話題の顔ぶれが揃うなか、IVEは新人賞の有力候補と言われているが、果たして結果はいかに。今月19日には「ELEVEN」の日本語バージョンで日本デビューも迎える。さらに羽を広げてゆく彼女たちの、次の展開が待ち遠しくてならない。
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