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<インタビュー>中村雅俊×大塚修司、昨年に続いて開催するシンフォニックライブを語り合う。「どんどんアイデアが湧いて来て困っちゃった」
1974年のデビュー以来、演技に、歌に、精力的に走り続けてきた中村雅俊が、昨年に引き続き、全国4都市でシンフォニックライブを開催する。「billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2022 ~HARVEST~」と銘打ったコンサートはどんなものになるのか。中村と、中村のコンサートをサポートし続ける音楽プロデューサー・大塚修司が昨年開催されたシンフォニックライブを振り返りつつ、今回のコンサートへの思いを語り合った。(Text:坂口 さゆり Photo:板場 俊)
今までのコンサートとは違うパフォーマンスができた
中村雅俊:今年もシンフォニックライブを開催できるなんて本当に楽しみです。去年のコンサートが終わった時は、「やった!」という喜びがとにかく強かった。何しろ初めてのフルオーケストラとの共演で、いつもの自分のバンドで行うパフォーマンスとは違って、やってみないとわからないぞという気持ちもあったから。不安や緊張があっただけに、終わった後の喜びは多分、俺が一番強かったと思います(笑)。
大塚修司:本当に最高でしたね。僕はそれまでの仕事でオーケストラとかかわったことはありましたが、シンフォニックライブのように、アレンジからずっとかかわって作り上げたのは初めてでした。僕はストリングス(弦楽器)がすごく好きで、弦のアレンジもするのですが、それだけに、いろんな楽器を用いるオーケストラではダイナミクスな音楽の中でどうやって音を作っているのだろうと、アレンジャーとしてものすごく興味がありました。とにかく驚きの連続で、それを知ることができただけでもすごく楽しかったですね。終わった時は「来年もやりたいよねー」って雅俊さんと二人で言い合いましたものね。現実になるという話を聞いた時はもう、めちゃめちゃ嬉しかったです。
中村:本当にね。考えてみれば、俺たちが出会ったのは1970年代後半で二人ともまだ20代。修とはそこから毎年コンサートをするようになり、1500回以上一緒にやってきましたけど、昨年の「シンフォニックライブ」は、今までのコンサートとはちょっと違うパフォーマンスができたという感覚がありました。修が言うように、終わってすぐに「またやりたいよね」って言い合うくらい、いい経験をさせてもらいました。それだけに、今年の開催が決まった時は、「こうしたい、ああしたい」と、どんどんアイデアが湧いてきて、修にずっと話続けていたよね。
大塚:膨らみすぎちゃって困っちゃった(笑)。僕も開催が決まったと聞いて、すぐに「オープニングは閃きました。雅俊さんの作った曲だからといって忖度したわけではないですよ(笑)。
コンサートは簡単に作ってはいけないのではないか
中村:修は本当に有能な“通訳”ですよ。フルオーケストラ側にも曲をアレンジする、編曲監修の山下康介さんという方がいるんですが、俺と山下さんの話は、知らない外国語で話をしているのと同じ。“通訳”がいないとまったく話が伝わらないんです。修はメジャーリーグで言えば、大谷翔平選手の通訳さんのよう。俺にとってみればそれ以上に優秀かも(笑)。山下さんと俺との間に入り、「雅俊はこう思っていてこういうことをしたい」と意図を的確に伝えてくれるので、本当に助かっています。
大塚:山下さんとは昨年お会いしたのが初めてで。最初は知らない方ですし、僕はクラシック音楽を挫折してミュージシャンになってしまったこともあって、クラシックはハードルが高いという思いがあったんですよ。最初はこちらの思いをどうやって伝えようかと悩みましたね。
中村:クラシックの演奏家の方々に対しては、やっぱり先入観があるよね(笑)。
大塚:そうそう。ところが、それが全くの杞憂でした。すごく話せるし、こちらの意図を的確に汲んでくださったので感謝しています。
中村:俺が大学生の時に女の子にモテようとして作ったコミックソングもきちんとアレンジしてくれたもんね。オケの中にはきっと、「なんだよ、こんな歌は演奏できないよ」と思った人もいたと思いますが(笑)。
大塚:雅俊さんが「これやってくれるかな?」と言った曲ですね。僕がアレンジして「これこんな感じでどうでしょうか」と渡したら、「全然問題ないんじゃないですか」って言ってくださった。実際できてきた曲は楽しかったですよね?
中村:そう、めっちゃ楽しかった。でも、やっぱりみなさんが楽しんで演奏したのかはわからないけど(笑)。
大塚:いや、いいと思いますよ。僕はこのクラシックコンサートを経験して、すごくアップテンポな曲もロックのような曲も、オーケストラでこんなふうにアレンジできるんだという新しい発見がありました。だから今回もまた、新しいアップテンポな曲を入れることにしたんです。
中村:今回俺には、音楽的にオーケストラのみなさんにぶつかってもいいな、という気持ちがあります。ぶつかるという意味はもちろん対立するということではないですよ。「俺はこうしたい」「お客さんをこういうふうに喜ばせることはできないか」といった、俺たちの意図をきっちり伝えた上で、オーケストラ側からの意見も聞いたり話し合ったりしたいという気持ちがある。コンサートってやっぱり簡単に作ってはいけなのではないか、とすごく思うんです。
公演情報
【billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2022 ~HARVEST~】
2022年11月10日(木)
愛知県・愛知県芸術劇場 大ホール
OPEN 16:30 START 17:30
2022年11月17日(木)
東京・東京文化会館 大ホール
OPEN 16:30 START 17:30
2022年11月26日(土)
兵庫・兵庫県立芸術文化センタ KOBELCO大ホール
OPEN 16:00 START 17:00
2022年12月13日(火)
福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
OPEN 16:30 START 17:30
出演:中村雅俊
指揮:円光寺雅彦
サポートミュージシャン:大塚修司
管弦楽
(名古屋)セントラル愛知交響楽団
(東京)東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
(西宮・福岡)大阪交響楽団
<チケット一般発売>
10月8日(土)10:00~
チケット:9,800円(全席指定・税込)
※特製プログラム付き
※枚数制限:お1人様各公演1申込のみ最大4枚まで
※未就学児入場不可
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今年のシンフォニックライブのキーワードは「感動」
大塚:雅俊さんの普段のコンサートは、すごいバカを言ったり冗談ばかり飛ばしたりして、とても楽しいんですよね。でも、僕はピアノを弾いていると、どこかで必ず「お!」って心が弾むときがある。コンサートってそれがいいんですよ。雅俊さんは必ずどこかでミュージシャンたちを唸らせてくれる。それが雅俊さんのコンサートの魅力だと思います。お客様にもそういう気持ちを感じてもらいたいですね。
中村:俺にとって、今年のシンフォニックライブのキーワードは「感動」。単に「ああ良かった、お腹いっぱいになっちゃった」というよりは、一つひとつの曲がそれなりのミッションを持っているような、そこに感動のカケラもあるような、そういう思いを曲として提供できたらと思っています。すでにすごくいい感じに仕上がってきていますからね。修のアレンジした曲の中で、歌っていたら涙が流れてしまったものがありました。修のアレンジは本当に歌いやすい。歌手にとってこれは本当に大事。歌うときに余計なことに気を遣ったり心配したりすることは絶対によくない。何も考えずに表現することだけに集中したいので、歌いながら体がロックするようなアレンジだと歌いづらいし、思うように表現できないんです。
大塚:雅俊さんがどんな歌が気持ち良くて好きかということは、だいたいわかっていますからね(笑)。アレンジをする時は、キーやメロディーなど全てにおいて、まず雅俊さんが「いかに歌いやすいか」を考えています。
中村:それはよくわかります。実際、カラオケができてくると、歌の入り、終着の仕方、全体の流れ、雰囲気は本当に俺の好きなようにしてくれている。まるで「ここをこう揉むと気持ちいいでしょう?」って、全身すべてをわかっているマッサージ師のよう(笑)。雅俊ファーストという感じで作ってくれますよね。
大塚:でも、雅俊さんが好きなことだけではなく冒険もするんですよ。気づかせないように冒険する、というのが僕にとっては心地いいんです(笑)。僕にとって雅俊さんは、ミュージシャンというより表現者。細かいことを言うミュージシャンはいっぱいいますけど、雅俊さんの言い回しは感覚ですからね。“雅俊語”みたいものがあって、「なんとかかんとかここはもうちょっとバーってなんないかな」とか言うんですよ(笑)。初めはそれがわからなかった。何がバーなんだろうなって思うんですが、それが、そういうことかってわかってくると楽しくなる。
中村:自分の中でイメージを音楽に具体化することは難しいんだよ。だから、「こういう流れでこうだから、ここで1つキャッチーな感じで……」みたいなことを言ってしまう(笑)。修はそれをずいぶん納得して理解してくれて、すごく助かっています。修が作るメロディーは、アレンジも含めてとにかく自分勝手ではない。「どうだ!すごいアレンジだろう」という曲でも、歌いづらいとか、聴く人に届きにくい歌ってあるじゃないですか。修はそういう自分勝手なアレンジをしない。俺が歌いやすく、俺の良さをきちんと理解してくれている。それ以上に、お客さんにどういうふうに届けるか。それをきちんとわかって作ってくれるので、すごくありがたい。あと俺の中途半端な、完成品ではないメロディーもきちんと整えてくれるしね(笑)。
大塚:僕が表現者として雅俊さんの好きなところは声なんです。存在感がある。雅俊さんの楽曲は必ず僕が仮歌を入れて音源を渡していますが、本人の歌になって聴くと、「やっぱこうだよな」って納得しますね。役者さんということはあるかもしれないですけど、やっぱり感情が伝わるんです。
みんなの心を動かすシンフォニックライブにしたい
中村:今回、修が作った曲で売野雅勇さんが作詞をしてくれたすごくいい歌があるんだよね。これをフルオーケストラで歌ったらどんな感じなんだろうと、ちょっと考えただけでもワクワクします。
大塚:今年も去年以上に良い音が作れたらいいなあ。指揮者の円光寺雅彦さんも編曲監修の山下さんも2回目なので、僕たちのことをより理解してくれています。昨年は、雲の上の人だと思っていたマエストロとも意外と話せたので、今年はもっとコミュニケーションがとれたら、さらに楽しいコンサートになると思います。終わった時に、「また来年もやりたい」と言っていたいですね(笑)。
中村:俺はね、みんなの心を動かしたいんです。フルオーケストラの方々も観客の人たちも感動させたいんですけど、実は、もっとびっくりさせたいという気持ちもあります。中村はこうだよね、というみなさんの予想をいい意味で裏切りたい。そんな俺のパフォーマンスがオーケストラの方々を「やってやろうじゃないか」という気持ちにさせ、そんなオーケストラと一緒にコラボすることで、お客さんに感動を与えることに繋がればいい。とにかくみなさんの心を動かしたい。歌はもちろんですが、俺のキャラクターも駆使して、俺だけ、修だけではなく、みなさんに「この仕事に取り組んで良かったな」と思っていただけるライブにしたいと思っています。
公演情報
【billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2022 ~HARVEST~】
2022年11月10日(木)
愛知県・愛知県芸術劇場 大ホール
OPEN 16:30 START 17:30
2022年11月17日(木)
東京・東京文化会館 大ホール
OPEN 16:30 START 17:30
2022年11月26日(土)
兵庫・兵庫県立芸術文化センタ KOBELCO大ホール
OPEN 16:00 START 17:00
2022年12月13日(火)
福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
OPEN 16:30 START 17:30
出演:中村雅俊
指揮:円光寺雅彦
サポートミュージシャン:大塚修司
管弦楽
(名古屋)セントラル愛知交響楽団
(東京)東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
(西宮・福岡)大阪交響楽団
<チケット一般発売>
10月8日(土)10:00~
チケット:9,800円(全席指定・税込)
※特製プログラム付き
※枚数制限:お1人様各公演1申込のみ最大4枚まで
※未就学児入場不可
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