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<インタビュー>次の一歩を踏み出す人へ Hinanoが贈るメッセージソング「ヴァージニア」
“4オクターブを操る16歳の歌姫”として注目を集めているHinanoから、ニューシングル『ヴァージニア』が届けられた。
表題曲「ヴァージニア」(TVアニメ『うちの師匠はしっぽがない』エンディング主題歌)はカラフルで開放的なメロディとともに、<夢にしたくない夢を始めるんだ>という歌詞を真っ直ぐに響かせる楽曲。力強さ、楽しさ、ポジティブな意志を込めたボーカルからは、シンガーとしての高いポテンシャルが伝わってくる。
梶浦由記プロデュースによる音楽映画『DEEMO サクラノオト~あなたの奏でた音が、今も響く~』主題歌「nocturne」で2022 年2月にメジャーデビューを果たしたHinano。デビュー以降の活動と「ヴァージニア」の制作について、彼女自身の言葉で語ってもらった。(Interview & Text:森朋之 / Photo:Shintaro Oki(fort))
「ヴァージニア」は“塗り絵”みたいな曲
――今年2月に「nocturne」でメジャーデビュー。半年以上が経ちましたが、制作、ライブ、レッスンと忙しい日々を送っていますね。
Hinano:はい! 8月に「Something To Lose」をデジタルリリースさせてもらって、その後は「ヴァージニア」の制作や撮影、MVを撮ったり。やっとイベントライブも7回くらい出演させていただきました。お客さんと一つになって楽しめるのは素晴らしいことだし、とにかくライブが大好きで。始まる前は「緊張する!緊張する!」って言ってるんですけど、口に出すと緊張が解けるんですよ(笑)。ステージを踏むたびに課題が見つかるというか、もっと上手くなりたいなって思いますね。
――どんなところを向上させたいと思っていますか?
Hinano:ステージングだったり、表現力だったり。ライブは全身で魅せるものなので、やらなくちゃいけないことはたくさんありますね。特にMCはもがんばらなきゃと思っています(笑)。最初はある程度、話すことを決めていたんですけど、だんだん短くなっていってしまって。お客さんとの距離感を大事にしたいので、もうちょっと上手くなりたいです。友達とはいくらでもしゃべれるんですけど、ステージで話すのは本当に難しいですね。
――HinanoさんのSNSを見てると、ボーカルレッスンやダンスレッスンもがんばっていて。
Hinano:歌のレッスンはほぼ毎日やってますね。ダンスはそんなに頻繁にやってではないですけど、やるときは4~5時間くらいガッツリ踊ってます。
――集中力ありそうですよね。
Hinano:どうでしょうね? 歌やダンスはがんばれますけど、その他はそうでもないので(笑)。
――では、シングル『ヴァージニア』について聞かせてください。9月30日に先行配信される表題曲は、TVアニメ『うちの師匠はしっぽがない』エンディング主題歌。Hinanoさんはどんな印象を持っていますか?
Hinano:デモ音源の仮歌を歌っていた方が、すごくきれいな声で、素敵だったんですよ。それを参考にさせてもらいながらも「大サビは裏声(ファルセット)ではなく、地声で壮大に歌おう」とか、抑揚の付け方など、もっと私っぽさを出したくて。
――自分らしい表現を追求した、と。
Hinano:そうですね。たとえば<もっと無茶で思わせぶりな>のところは、ちょっと子どもっぽい感じで歌ったり。まずはじっくり歌詞を読んで、単語の意味を読み解きながら、どういうふうに歌うかを決めていきました。何て言うか、“塗り絵”みたいな曲だなと思ったんですよね。塗り絵って、(色を塗る前は)線だけじゃないですか。“Aメロはこの色、Bメロはこの色、大サビはこの色”みたいな感じで色を重ねて、最後の<始めるんだ>で絵が完成するイメージですね。
――なるほど。確かにHinanoさんの歌声、色彩が豊富ですからね。
Hinano:ありがとうございます! 作詞の岩里祐穂さんとも曲に関してコミュニケーションを取らせていただいたんですよ。この歌詞は、基本的に『うちの師匠はしっぽがない』の主人公のまめだの目線で描かれていて、夢に向かって切磋琢磨する彼女の背中を押すような歌詞にもなっているんですけど、私もこの曲の詞を読み込んだ時、同じように感じていたので、「そうですよね!」って(笑)。まめだは、ちょっと私っぽいなと思うところがあるんです。興味があること気になることにどんどん手を出すタイプだし、「これは違ったかも」と思っても、どう改善すればいいかを考えて、もう1回挑戦して。
――歌詞のなかで“まめだ”とHinanoさん自身が重なっているというか。
Hinano:そうですね。私もこれまでに何回も諦めそうになったけど、<人生、そんなこともあるよ>と思ってがんばってきたので。よく「自己肯定力が高い」って言われるんですけど(笑)、上手くいかなくて落ち込んだとしても、1日寝たら「まあいいか。もう1回やってみよう」というタイプなんですよ。「ヴァージニア」もそうで、悩んでる人を励ますというより、“そういうこともあるよ。大丈夫”って肯定している歌だなって。……そう思うと、確かにこの曲は私に合ってますね(笑)。友達に対しても、「こうしたらいいんじゃない?」って言っちゃうことがあって。
――16歳、悩み多き時期ですからね。
Hinano:私の周りにはこういう世界を目指している友達がいっぱいいて。ダンサーの子がオーディションに落ちて泣いてたり、いろんなことがあるんですよ。そういうときも励ますというより、「次はこうしてみたら?」みたいな言葉をかけることが多くて。この2年くらいはコロナの影響で、やりたいことが思うようにできなくて……。青春っぽいこともぜんぜんできてないんですよ。中学の卒業旅行も中止になったし、高校の行事もあまりできていないので。悔しいことも多かったけど、がんばろう!っていう感じです(笑)。「ヴァージニア」は、不安なときや新しいことをはじめるときにもピッタリだと思います。私もレコーディングや撮影の前の日とか、ドキドキしてるときに聴いています。
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努力を続けていればどうにかなる
――MVのナチュラルな表情も印象的でした。
Hinano:今回はあまり考えすぎないようにしようと思って。「nocturne」のMV撮影のときは、監督と話ながら、目線の動き、手の動きを決めていったんです。今回はもっと自然というか、普段の自分のままでいいのかなと思ったし、ノープランでしたね(笑)。撮影もめっちゃ楽しくて。朝7時からメイクをはじめていただいて、午前中から公園、ビルの屋上、海の順番で撮って。ギュッと詰まったスケジュールでしたけど、ずっと笑ってました。移動中は寝ちゃいましたけど(笑)。
――可愛い犬も登場しますけど、あれは……?
Hinano:ウチの子たちです! ディレクターの方も犬が好きで、「MVにも出演してもらう?」という話になって。結局、映ってるのは4,5秒なんですけどね(笑)。仲良く散歩するシーンの予定だったんですけど、ほかの犬の匂いが気になったらしくて、なかなか一緒に歩いてくれなくて。懐いてないわけじゃありません(笑)。
――リリース後の反応も楽しみですね。
Hinano:本当に楽しみです。アニメの放送もドキドキですね。自分の声がテレビから流れるって、どんな感じだろう?って。
――TVアニメの主題歌は今回が初めてですからね。ちなみにHinanoさん、普段アニメは観るんですか?
Hinano:自粛期間中に『鬼滅の刃』にハマりました。YouTubeの考察動画なんかも見まくって、寝られなくなってました(笑)。
――シングルのカップリング曲「Hopeful Land」は、美しさと力強さを併せ持ったミディアムバラード。こちらもいい曲ですね!
Hinano:いい曲ですよね! 私もすごく好きです。ただ、レコーディングはかなり悩みました。「ヴァージニア」と違ってわりと同じトーンで曲が進むんですけど、ずっと同じ感じのボーカルになるのはイヤだなって。いろいろ考えた結果、「目の前にいる人に話かけるようにゆったり歌えば、自然といい感じになるのかな」と思って。あとは2コーラス目からビートが入るので、しっかりリズムを刻むことを意識しました。
――「Hopeful Land」という曲名もそうですが、こちらも「ヴァージニア」と同じく、前向きなメッセージが込められていて。
Hinano:歌っているときに思い描いていたのは、新社会人の女性なんですよ。「面白いことをやりたい」と思ってるんだけど、周りからは「普通でいなさい」みたいなことを言われ続けて、だんだん落ち込んできて。電車に乗っているときに、「私、何のためにやってるんだろう?」って思ったり……。自分の殻を破るというか、本当の自分を見失いそうなときにこの曲を聴いてもらって、ありのままの自分でいてほしいなって。
――夢に向かってがんばっていても、「本当は何がやりたかったんだろう?」と思うこともありますからね。
Hinano:私の場合は“音楽に関わる仕事がしたい”ということから始まっていて。ずっとがんばってきたんですけど、コロナの自粛期間中は不安になることもあったし、なかなか先が見えなくて。でも、やりたいことがはっきりしていて、努力を続けていれば――思い描いていたのとは違う形かもしれないけど――どうにかなると思ってるんですよね。
――本当にポジティブだし、気持ちが強いですよね、Hinanoさん。ミュージカルやライブに足を運んだり、どん欲に吸収も続けていて。
Hinano:映画やドラマもそうですけど、純粋に観てるだけで楽しいし(笑)、いろいろ勉強になりますからね。特にミュージカルは本当に大好きです。なるべく舞台から近い席を取って、出演者のみなさんの表情もしっかり観るようにしていて。メインの方々の目線や表現もそうですけど、アンサンブルのみなさんの表情もすごく参考になるんですよ。いつかミュージカルにも挑戦してみたいです。
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