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<インタビュー>打首獄門同好会、大澤敦史のミステリー愛が詰まった「死亡フラグを立てないで」とサンバ・ミクスチャー・ロックな「地味な生活」

インタビューバナー

Interview&Text:田中大
Photo:Yuma Totsuka

 今年の夏も各地の音楽フェスを盛り上げている打首獄門同好会。2週連続でリリースされたデジタル・シングルも、幅広い層に唯一無二の存在感を示すことになるだろう。8月20日に配信された「死亡フラグを立てないで」は、“この人物は死亡することになるであろう”というフィクション作品内での予見性を示す“死亡フラグ”をテーマとしている。YouTube公式チャンネルの『10獄放送局』は、MV撮影と連動した非常に面白い動画となっているので、これもぜひチェックしていただきたい。

 そして、8月27日に配信された「地味な生活」は、サンバとラウド・ロックを大胆にミックス。コロナ禍の日々の中で抱く心情を描写しつつ、独創的なサウンドを鳴り響かせている様は、彼らが追求し続けている“生活密着型ラウドロック”を存分に体感させてくれる。この2曲について、大澤敦史(Gt/Vo)に語ってもらった。

「無事に帰れたら俺、結婚するんだ…!!」

――打首獄門同好会史上、曲の中で犠牲者が出たのは「死亡フラグを立てないで」が初めてでしょうか?

大澤:犠牲者、出たことあるかなあ?

――「きのこたけのこ戦争」は血なまぐさい争いを描いていましたが。

大澤:まあ、あの曲で飛び散るのはチョコレートだけですけど。でも、一番バイオレンスなのは、やっぱり「きのこたけのこ戦争」なんですかね? あれは戦争を描いていますから。

――「死亡フラグを立てないで」は死亡フラグについて描いていますが、このテーマに焦点を当てて曲を作ることになった経緯を教えてください。

大澤:ウチのバンドがやってるインターネット番組の『10獄放送局』とMVを連動させようという話が最初の段階であったんです。それで“ドラマ仕立てのMV”という発想に繋がったんだと思います。もともとミステリーが好きなので、ストーリーものならミステリーかな、と。

――『10獄放送局』とMVがここまで密に連動するのは初めてですよね。

大澤:そうですね。初期に既存曲のMVを作る企画をやったことはあるんですけど。

――「上野ZOO」ですよね?

大澤:はい。でも、今回は新曲です。曲が未公開の状態からMVを作っていく企画なので。

――「上野ZOO」は曲がリリースされてからしばらく経ってからのMV制作でしたから、上野動物園からいなくなってしまった動物もいましたよね?

大澤:そうでしたね。あの撮影は「もういないんだ……」と途方に暮れるところまでがワンセットでした。




打首獄門同好会「死亡フラグを立てないで」


――調べてみたらあの企画、2014年ですよ。早いものです。

大澤:もうそんな経つんですね。あれは結成10周年企画のひとつだったんです。そのインターネット番組がここまで続くとは。

――『10獄放送局』のクオリティの高さにはいつも驚かされます。本業ではないことに膨大な時間とエネルギーを注ぎ続けているじゃないですか。

大澤:途中から悪ノリになったというか(笑)。あれがどこまでバンドのプロモーションとして活きているのかわからないんですけど。どこかの段階で「面白くしなければいけないんだ!」という何かを背負い始めてしまったのかも。

――アシュラシンドロームの青木亞一人さんの登場を毎回楽しみにしています。

大澤:そもそも打首獄門同好会のメンバーではない人がメインになってしまうこと自体、何かがおかしい(笑)。ただただあの人が面白いからぜひ出て欲しいという、よくわからないことになっているんです。亞一人くんは最近、北海道に住んでいるので、わざわざ呼ばなきゃいけなくて大変なんですよ。

――“ストーリーもの→ミステリー”という流れでMVと曲の内容が決まっていったわけですが、“死亡フラグについて描く”という切り口に至った経緯は覚えています?

大澤:その辺のいきさつがもはや思い出せなくて(笑)。「死亡フラグをいじろう」みたいなところは、曲を作り始めた最初の段階であったんじゃないかなあ?

――“ミステリーあるある”が満載されていますね。<見知らぬ同士が集ったペンション><突然起こった殺人事件><吹雪により陸の孤島に>という舞台設定は、『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』などでもよく出てきます。

大澤:最近のミステリー作家は、携帯電話の普及によってこういう設定を作るのが難しくなって大変らしいですよ。

――この前コナンを観ていたら、携帯電話の基地局が爆破されていました。

大澤:犯人も大規模なことをしなくてはいけなくなっているんですね(笑)。「死亡フラグを立てないで」に関しては、吹雪によって一晩だけ陸の孤島になる小規模な事件にしています。





――“こういうことを言った人は死ぬことになる”という死亡フラグは、ミステリー以外の作品でもありますよね?

大澤:そうですよね。『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部だったかな? 終盤で主要人物のひとりが唐突に死亡フラグを立てるんですよ。そういうのが僕の中に鮮明に残っています。

――例えば刑事ドラマで「今度結婚するんです」「孫が生まれるんですよ」とか唐突に言う刑事は必ず殉職する印象です。

大澤:おそらくこういうのは物語作りの原点にあるものなんでしょうね。

――この曲の歌詞に盛り込まれている<私は部屋に戻らせてもらうわ><私がここで食い止めるから あんたら先に行きな><ここから無事に帰れたら俺 彼女に結婚を申し込むんだ>は、3大死亡フラグと言っても過言ではないでしょう。

大澤:これを言って死ななかったら逆に新しい(笑)。でも、<私がここで食い止めるから>に関しては、けっこう2種類のパターンがあるんです。『龍が如く』だとこういうのは大丈夫なんですよ。あの作品の場合は主人公を一人で戦わせたいので、そういうシナリオになっているんだと思います。

――<ここから無事に帰れたら俺 彼女に結婚を申し込むんだ>の部分は、亞一人さんの声ですか?

大澤:そうです。あす香、junkoさんもMVの映像と連動しているので、「あなたの死亡フラグのところを言ってくれませんか?」ってレコーディングの際に東京まで来てもらいました(笑)。

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閃きを実現するパワー

――(笑)。MV撮影と連動させた『10獄放送局』の企画は、ものすごく緻密に考えられていましたね。アイディアはスムーズに膨らみましたか?

大澤:面白さと苦労が半々でしたね。こういう企画をやると言ったはいいんですけど、思った通りになるのかはやってみないとわからなかったですし。雪山で撮影したんですけど、撮影予定日が近づいたときに「天気は大丈夫か?」とすごくドキドキしました。気温が上がって雪が融けたら、予定が大幅に変わってしまいますから。

――今回の『10獄放送局』の動画も非常に面白いです。

大澤:ありがとうございます。ライブ以外のいろんな経験や身に付いた技術が活かされているんだと思います。スタッフも個性が強いのが集まっていますし。

――劇団“打首獄門同好会”という感じがあります。

大澤:劇団?(笑)。主要な存在はわりとメンバー以外ですけど。

――亞一人さんというスーパー・スターがいて、LD&Kの社員の千田さん、風乃海さんもいい仕事をしていますからね。

大澤:別のバンドの人、会社員、会社員、脇を固めるのは打首獄門同好会の3人(笑)。

――(笑)。「死亡フラグを立てないで」は、振り付けで盛り上がれることも『10獄放送局』を通じてお客さんにばっちり伝わっていると思います。

大澤:曲を全部聴いていただく前にあそこだけ公開しましたからね。

――今後のライブでお客さんが一斉に踊る風景を想像するとなかなかシュールです。こういうのは、お客さんが声を出せない今の状況下で非常に有効ですよね?

大澤:そうなんです。今はコール&レスポンスを含む曲がやりづらくなってしまったので。ウチは奇しくもコロナ直前に作ったスクワットをする曲が現在、ものすごい主力になっています。

――「筋肉マイフレンド」ですね?

大澤:はい。全然コロナに合わせて作った曲ではなかったんですけど。お客さんがスクワットをしている映像を公開すると「すごい景色だ」という反響があります。

――会長が身体を鍛え始めたなかから生まれた曲でしたっけ?

大澤:はい。「糖質制限ダイエットやってみた」をその前に作ったんですけど、糖質制限ダイエットは筋トレと関連してるから、そこから繋がっていったんです。あと、2018年に武道館でライブをやったときに体力の限界を知り、2019年に自転車で北海道を横断する企画を立てて、「これはいよいよ鍛えなくてはいけない」とジムに入会したんですよね。その順番で「筋肉マイフレンド」に至ったというわけです。




打首獄門同好会「筋肉マイフレンド」


――人生が如実に曲に反映されていますね。

大澤:はい。人生がバレます。「この時期にこれを食べていたから太ってダイエットを始めたんだな」「虫歯の曲の前はけっこう甘いものに関する歌が出てるな」とか。

――「死亡フラグを立てないで」も人生がバレる曲でしょうか?

大澤:これは単に趣味です(笑)。“ミステリーが好き”というだけなので。こういうのをなんとか歌に反映したいと思ったら反映できなくて、MVを作るに至ったということです。歌詞だけでは無理だと思ったので。

――アイディアをMVや動画番組とかにも反映できるのは現代のミュージシャンならではなんでしょうね。

大澤:そうですね。今は良くも悪くもいろんな幅が広がったというか。好奇心旺盛なミュージシャンにとっては好ましい時代なんだと思います。

――打首獄門同好会は実はYouTuberの先駆者と言ってもいいくらいですよね?

大澤:そうですね。『10獄放送局』のディレクターの千田さんは「俺が最初のYouTuberなんじゃないか?」と言い始めてます(笑)。まあ、無駄にクオリティにこだわってきた自負はあります。「なんでサブコンテンツに無駄に俺たちはピリピリしているのだ?」ってなるくらい、ちゃんと作ってきましたから。

――そこに巻き込まれ続けてきたのが亞一人さん?

大澤:はい。あの人が一番楽しんでる感があるんですよね。「次回の撮影はまだか?」っていう問い合わせが来たりしますから。無茶ばかりしてもらってきたんですけど、恨み言を言うでもなく、一番楽しんでるんですよ。




――会長は「こういうことをやりたい!」ってひらめくと、それを実現していくパワーがものすごいですよね。

大澤:何か思いつくと、とりあえず「できるかな?」って手を出してみます。やってみるとできることって意外とあるものでして。

――コロナ禍になって最初の緊急事態宣言のときも、『VRライブハウス』の動画配信をものすごいスピードで実現しましたよね?

大澤:そうでしたね。

――映像を配信するのにVimeoがベストだと判断したのも早かったですし。

大澤:はい。そこまではよかったんですけど、配信してしばらく経って、VimeoがiPhoneのジャイロに非対応になってしまい……。今でも映像は観ることができるんですけど、身体の向きを変えるのと連動して映像の視点が変わらなくなってしまいました(笑)。

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いたずらで生まれた“サンバ・ミクスチャー・ロック”

――(笑)。『10獄放送局』はすでに50本以上配信されていますが、いろんな名場面がありましたね。初期にjunkoさんが作る激辛グリーンカレーをみんなで食べて悶絶する回があったじゃないですか。今回のMV撮影期間の料理当番になったjunkoさんが色の様子もおかしいあの必殺メニューをまた作ったのを観て、非常に懐かしい気持ちになりました。

大澤:リバイバルです(笑)。あの人のグリーンカレーは安定の激辛ですけど、それをみんなが待ってる感じがあるんですよね。

――初日の料理当番は亞一人さんでしたが、あの大失態は予想を上回っていました。

大澤:あの人はそういうところでも期待を裏切らないんです。目を疑うような、「君、正気か?」みたいなことをちゃんとやってくれるので。失敗のベクトルが予想できなかったので、存分にMV撮影の時間に支障をきたしてくれました(笑)。

――(笑)。『10獄放送局』は、打首獄門同好会の様々な曲が生まれた経緯を実はけっこう記録してきた番組でもあるんですよね。例えば「日本の米は世界一」も、あの番組がきっかけで生まれたじゃないですか。

大澤:そうなんです。「日本の米は世界一」の発端が映像になってますからね。だから何気にバンドの役に立ってる面もなくもない(笑)。原付の旅で立ち寄ったお店の米が美味しくて、「これ歌にするわ」って生まれた曲が代表曲になるとは、あのときは思わなかったなあ。

――「生活密着型ラウドロックってこういうことなんだ」というのが、ああいう映像を通してよくわかります。

大澤:ほんと、“魚沼で米を食べて美味しかった”みたいなことが大事なんですよ。




打首獄門同好会「日本の米は世界一」


――「地味な生活」もそういう曲ですよね?

大澤:はい。まあ、この2年くらい地味な生活をしてきましたから、こういう曲は作りやすいです。

――コロナ禍でけっこういろいろな曲が生まれましたよね? 「新型コロナウイルスが憎い」「牛乳推奨月間」「足の筋肉の衰えヤバイ」「ニンニクは正義」「明日の計画」は、全部コロナ禍に関連したことから生まれた曲ですから。

大澤:“生活密着型ラウドロック”という名の通り、やはりそのときの生活がすごく反映されるんです。コロナ禍がなかったら、そのときを反映した別の曲が生まれてたんでしょうけど。

――何かと生活の範囲が狭まっているコロナ禍でも面白い切り口を見つけ続けているのがすごいです。

大澤:そこはバンドとしてのスタンスが助けてくれてます。“日々、思ったことをそのまま歌にすればいい”っていう、ハードルが低いスタート地点で活動してますから。

――「牛乳推奨月間」は、学校給食が休止になって大量の牛乳が廃棄されかねない状況から生まれた曲でしたけど、最初にTwitterで発表したときの尺は1分くらいでしたっけ?

大澤:はい。まあ、最終的に完成したものも2分くらいなんですけど(笑)。そのときだけの時事ネタのつもりだったのが、意外と広がっていきました。農林水産省はMVを作りたいとおっしゃるし、TEAM NACSの森崎さんとも繋がりましたし。1日で1分用に作った曲がまさかこんなことになるとは。でも、他のいろいろな曲もそうなんです。「まさかそんなことになるとは!」ということばかりなので。

――「牛乳推奨月間」が広がったのも、多くの人にとって身近なテーマを見事に曲にしたからなんだと思います。

大澤:歌にすると発言も少し和らぐじゃないですか。文章で「今、こういう事情で牛乳が余ってるからみんなで飲みましょう」ということだけ言うと固い感じになっちゃうのに、歌にするととっつきやすくなるんですよね。そういうところも音楽の武器なんだなと「牛乳推奨月間」で実感しました。




打首獄門同好会「牛乳推奨月間」~農林水産省がMV作ってみた~


――「地味な生活」もそういう曲ですね。

大澤:正直なところ「みんな、地味な生活の中だけど元気出そう」という崇高な気持ちではなく、サンバのリズムに合わせて<地味 地味>って叫んでることを想像するとおかしくてしょうがなくなったのが発端です。「このサウンド、地味じゃねえ」というのが面白くなってしまい(笑)。「地味って言ってるけど、派手じゃん、君?」っていういたずらです。でっかい乗り物に乗って踊ってる、リオのカーニバルの派手な衣装のお姉さんみたいな感じの曲ですから。

――<地味 ヘンドリックスではない 地味 ペイジの方でもない>と二人の偉大なギタリストが巻き込まれてしまっていますが、これに関しては?

大澤:それもいたずらです。<地味 ヘンドリックス>と言いたかっただけ(笑)。この曲、自分の中でサンバ・ミクスチャー・ロックと呼んでます。そもそもサンバのあのリズムが好きで、「サンバをやるなら今だな!」と。

――ブラジルの楽器を使ってレコーディングしたんですよね?

大澤:はい。同じ事務所に日食なつこさんがいまして、「パーカッションが評判いいですよね」というお話をしていたら、「専攻はサンバなんです」と。「サンバやってんだ?……ウチ、今サンバをやろうとしてて、紹介してくれませんか?」と言ったら、すぐにお話が進みました。木川保奈美さんという方なんですけど、ご本人に連絡したら「やるやる!」と。レコーディングも面白かったですよ。「これは何という楽器なんですか? そんなふうに叩くんですか? すごいですね!」という感じでしたから。

――「地味な生活 -SAMBA MAX EDITION」は、木川さんの演奏を最大限に活かしたバージョンということですね?

大澤:はい。サビになると途端に音数が増えます。ミックスのときに困った困った。趣味としてはサンバ楽器を前面に出したいんですけど、それによって全ての楽器が消えてしまうので、涙を飲んで下げました。

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ジャズをやろうがブルースをやろうが打首獄門同好会

――ユニークなミクスチャーという点だと、『極主夫道』のエンディング・テーマだった「極・夫婦街道」は演歌をミックスしていましたよね?

大澤:そうでしたね。ジャンルを混ぜこぜにするのが好きなんです。“打首獄門同好会のありがたいところ”と他人事のように言ってしまいますけど、音楽的にちょっとくらい変なことをしても、「歌詞がこれだったら打首獄門同好会」とみなさんに認定していただけるんですよ。これは音楽家にとってとても過ごしやすいことで。

――サウンド面で枠に縛られにくいんですね?

大澤:はい。つまり、ジャズをやろうがブルースをやろうが打首獄門同好会にできるんです。こういう点に関してジレンマを感じているミュージシャンは多いと思うんですけど、ウチは「やり過ぎです」と突っ込まれたことがないんですよ。「地味な生活」も思いっきり遊べたので、この曲のMVの再生数がブラジルで伸びたら面白いなと思ってます。前の曲だと「なつのうた」はボサノヴァの要素が入ってるので、ブラジルのボサノヴァ・メタル・バンドからリプライが来たんです。だから「地味な生活」も意外と伝わるんじゃないかなと。

――過去には「布団の中から出たくない」が唐突に中国でバズって、他の国でも聴かれるようになったことがありましたよね?

大澤:はい。あれは全くの予想外でした。

――「死亡フラグを立てないで」も面白がってもらえると思います。

大澤:期待したいですね。死亡フラグって伝わるんじゃないかなあ?「日本人もそう思ってたんだ?」ってなってくれるかも。だって、『プレデター』とかでもそういうシーンがあったもん。「食い止めるから先に行け!」と言って、やっぱりやられてました。

――Netflixで各国に配信された『極主夫道』のオープニング、エンディングを担当した際も、海外からの反応があったんじゃないですか?

大澤:あまり直接的な実感はなかったですね。でも、Twitterで日本のアニメファンらしい人のツイートが絡んでくることがたまにあるんです。「あといくつかアニメの案件をゲットできたら、海外のアニメ系の仕事に呼ばれたりするかも?」と思ってます。




アニメ『極主夫道』主題歌・打首獄門同好会「シュフノミチ」


――「死亡フラグを立てないで」で、日本を代表するミステリー作品のコナンの主題歌を狙っていきましょう!

大澤:これが主題歌になったら番組を作りにくくなりますよ(笑)。

――こうやって冗談で話していたはずのことを実現してしまうのが打首獄門同好会なんですよ。初めてZepp Tokyoでワンマン・ライブをやった直後に「次は武道館?」って笑いながら話してたのに、2年後くらいには実現してしまったじゃないですか。

大澤:そうでしたよね。

――この前のコナンの映画の主題歌はBUMP OF CHICKENでしたから、打首獄門同好会にオファーが来る可能性もないとは言えないはずです。

大澤:大丈夫ですか? 新一が「蘭!」って叫んでる後ろでウチの曲が流れて(笑)。

――(笑)。ミステリーのツボを押さえた曲を作れることを「死亡フラグを立てないで」で十分に示せたことは確かだと思います。

大澤:なるほど。今後ミステリー案件があるかもしれないですね。実はちょっと前にTwitterで、とある著名なミステリー作家さんが打首獄門同好会のことをご存知であることが判明したんです。リプライはしなかったんですけど、「読んでます!」ってなったことがありました。

――このインタビューを読んだミステリー作家、関係者のみなさんにぜひ検討していただきたいですね。

大澤:ご連絡をお待ちしております!(笑)。

――昨年リリースした『こんなバンド名だけどいいんですか』は全曲がタイアップでしたし、作品に合った曲を作ることにも長けているのは証明済みなんですから。

大澤:少しずつ実績を重ねていって、いろんな方面の曲を作りたいですね。殺人事件が起こるミステリー作品の主題歌が打首獄門同好会って、字面的には説得力がすごいですよね? 「あっ、誰か死ぬんだな」ってわかりますから。物騒この上ないけど(笑)。

――(笑)。またこうやって冗談のように話していますが、「カンガルーはどこに行ったのか」が『しまじろうのわお!』のうたのコーナーで流れて子供たちに大喜びされたのも、数年前だったら「そんなことあるわけないじゃないですかあ」という感じだったと思います。

大澤:そうでしょうねえ。

――だから「死亡フラグを立てないで」が、思いもよらない未来に繋がることだってあり得るかも……と言っておきます。

大澤:これをきっかけに青木亞一人に役者デビューしてもらいたいですね(笑)。「お前、いい演技するから、ちょっと出てくれない?」って北海道で引っ張りだこになって欲しいです。

――亞一人さんがTEAM NACSのみなさんのように北海道から全国区のスターになったら胸熱ですよ。

大澤:北海道タレントが全国に出る土台はTEAM NACSが作ってくださったので、「亞一人くん、続け!」と。

――亞一人さんが手の届かないスーパースターになったらどうしますか?

大澤:いやあ、ムカつきますねえ。嬉しいけどたぶん腹立つだろうなあ。執事付きの高級車で移動したりとか……想像するだけでムカつきますねえ(笑)。




――(笑)。冗談みたいなことばかり話してしまいましたが、面白がりながらやり続けてきたことを未来へと着々と繋げているのが、打首獄門同好会の軌跡なんですよね。

大澤:そうおっしゃっていただけるとありがたいです。幸いなことに本人の予想よりもいい感じで転がっていったことがいくつもあるので。

――アイディアを実行する素早さはインディーズの利点を活かせていますよね?

大澤:そうですね。「思いついた! やりたい!」ってなったら会社の二人からの承認が取れればOKなので。承認を出すほうも半ば諦めてる感じがあります(笑)。「これはもう止められないやつだ」って。「3日後に無観客ライブをしたいです」というのもLINEレベルのやり取りだったんですよ。

――2020年2月26日のお昼ぐらいに新型コロナウイルスの状況を踏まえた政府からの自粛要請が出て、2月29日に予定されていたZepp Tokyoでのライブの中止が発表されましたが、その数時間後に「無観客ワンマンライブを配信します」ってなりましたよね?

大澤:はい。そうなることを予想してはいたんですけど、「やっぱりそうなった」ってなって、「こういうことを考えてるんですけど、いいですか? いいですよね? ありがとうございます!」と。

――3日間で準備を進めて、構成台本を書いて、出演者を集めて、配信ライブを大成功させた様は本当に素晴らしかったです。

大澤:あれは今思えば上手く行きましたね。唯一悔やまれるのは、終わった後の集合写真の顔がひどいことになってる点ですけど。「疲れ切ってるな、この人」って(笑)。

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“生活密着型ラウドロック”の普遍性

――今後の活動に関してはツアーですが、【新型コロナウイルスが憎いツアー】は2020、2021と続いて今回は2022。約3年にわたる結果となったんですね?

大澤:はい。続けたくなかったんですけど(笑)。

――そうでしょうね(笑)。“新型コロナウイルスが憎い”という気持ちが、これだけの期間続いているということでもありますから。

大澤:そうなんです。2020年に手探りで始まったツアーのファイナルが飛んで、「続きを2021年にやるぞ!」と発表して、2021年後半に「今度こそ!」と思ってたら、ウチのドラムが少し休養することになり、半年ちょっと水面下であれやこれや考えて今に至る……という感じなんですよね。

――様々な出来事が起こるなかで、そのときのベストのやり方を考えて突き進む力がものすごいバンドだと、この2年ちょっとのなかで改めて感じています。

大澤:ありがとうございます。“なんとか”という感じですね。





――あす香さんがお医者さんの診断で激しい運動を控えることになった期間は、歌唱のみでライブに参加していましたね。様々なバンドのドラマーがサポートで参加していましたが、画期的なスタイルでした。

大澤:あれは業界内での評判が良かったです。メンバーがステージからいなくなるのって、どのバンドにとっても嫌ですからね。それを回避したことをすごく評価してもらってます。

――打首獄門同好会は、窮地に陥っても工夫してプラスに転じる底力があるバンドですよ。

大澤:どんなことになってもやるつもりでいます。でも、今向き合ってる件に関しては、そろそろ解決したいところですね。「そろそろファイナルやろうぜ」って(笑)。

――(笑)。“生活密着型ラウドロック”が普遍性のあるテーマであることも、この2年ちょっとのなかで強く感じました。

大澤:まあ、図らずもといったところですが、いろいろあった結果として自分でもそれは感じています。

――“何が起こってもできるだけ生活を楽しみたい”というのは、人間の普遍的な願いなんだなと。

大澤:おそらく数年後に振り返ってみたら、この時期の曲は特徴的だと感じるんだと思います。「死亡フラグを立てないで」と「地味な生活」もそうなんですけど、メロディが明るい。もともとはマイナーキーが多いバンドなのに、自然とメジャーキーが増えました。だからねえ、どこかで反動が来ますよ。

――マイナーキーを連発するようになるかも?

大澤:はい。2~3年後あたりに急にゴリッゴリになるかも(笑)。

――(笑)。リスナーと同じ時代に生きているわけですから、リスナーの生活や気持ちとリンクする部分も大きいバンドですね。

大澤:そうですね。こういうご時世ですし、みなさんと共通項は多いんだと思います。

――「新型コロナウイルスが憎い」なんて「ほんとその通り! すこぶる憎い!」って思いました。まさにコロナ禍の時期の歌ですよね。

大澤:まあ、この一件が片付いたら歌わないでしょうねえ(笑)。4~5時間で作ったんですよ。無観客配信ライブの3日間の準備期間の内、最後の1日で作りました。「ライブのオープニング用に作ろう」って作った曲を、まさか2年以上にわたって歌うことになるとは。

――「地味な生活」も、聴くたびにコロナ禍のことを思い出す曲になりそうです。

大澤:この曲のMVは、映像監督が寿司くん、つまりヤバTのこやまくんなんです。知り合った頃から「いつかウチのビデオも撮ってよ」という話をしていて、ようやく実現しました。

――どのあたりが見どころのMVになりそうですか?

大澤:とにかくゲストが強力過ぎるMVです。まだ仕上がりを観てないんですけど、たぶんメンバーは画で負けてます(笑)。きっと完全に食われてますよ。

――ゲストはどなたなんですか?

大澤:この曲に参加してくださった木川保奈美さんのバンドLA SEÑASのメンバーの方々と、プロのサンバ・ダンサーのみなさんです。ゲストでお呼びした3人のダンサーさんの内の一人が男性で、まあキャラが濃い方でして(笑)。毎年リオのカーニバルにも出演していて、その世界で有名なダンサーさんなんです。だからMVもご期待ください。ブラジルのみなさんにも「日本人どうなってんだ!?」となっていただきたいです。




打首獄門同好会「地味な生活 -SAMBA MAX EDITION-」


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打首獄門同好会「獄至十五」

2019/09/25

[CD]

¥2,860(税込)

そろそろ中堅
打首獄門同好会「そろそろ中堅」

2019/03/06

[CD]

¥2,200(税込)

そろそろ中堅
打首獄門同好会「そろそろ中堅」

2019/03/06

[CD]

¥2,200(税込)

冬盤
打首獄門同好会「冬盤」

2018/01/24

[CD]

¥1,320(税込)

冬盤
打首獄門同好会「冬盤」

2018/01/24

[CD]

¥1,320(税込)

秋盤
打首獄門同好会「秋盤」

2017/10/11

[CD]

¥1,320(税込)

秋盤
打首獄門同好会「秋盤」

2017/10/11

[CD]

¥1,320(税込)

夏盤
打首獄門同好会「夏盤」

2017/07/12

[CD]

¥1,320(税込)

夏盤
打首獄門同好会「夏盤」

2017/07/12

[CD]

¥1,320(税込)

やんごとなき世界
打首獄門同好会「やんごとなき世界」

2017/01/25

[CD]

¥2,200(税込)

やんごとなき世界
打首獄門同好会「やんごとなき世界」

2017/01/25

[CD]

¥2,200(税込)

島国DNA
打首獄門同好会「島国DNA」

2016/08/24

[CD]

¥550(税込)

島国DNA
打首獄門同好会「島国DNA」

2016/08/24

[CD]

¥550(税込)

まだまだ新米
打首獄門同好会「まだまだ新米」

2015/11/18

[CD]

¥1,980(税込)

10獄 ~TENGOKU~
打首獄門同好会「10獄 ~TENGOKU~」

2014/08/20

[CD]

¥2,750(税込)

10獄 ~TENGOKU~
打首獄門同好会「10獄 ~TENGOKU~」

2014/08/20

[CD]

¥2,750(税込)

一生同好会します
打首獄門同好会「一生同好会します」

2013/10/15

[CD]

¥1,980(税込)

庶民派爆弾さん
打首獄門同好会「庶民派爆弾さん」

2009/05/20

[CD]

¥1,572(税込)