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<インタビュー>BLOOM VASE、新しいスタートを切る初アルバム『POP UP』を語る

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Interview & Text: 高木"JET"晋一郎 / Photo: Shintaro Oki(fort)

 JiROMAN、RURU、oveによる3人組ユニット:BLOOM VASE。2019年の結成以来、サブスクリプションなどのネットを中心にコンスタントなリリースを続け、2020年にリリースした「CHILDAYS」がTikTokを中心として話題となり、Spotifyの2020年国内バイラルチャートでは4位にランクイン。そして2021年2月にはBillboard JAPAN・TikTok『NEXT FIRE』マンスリーピックアップアーティストに選出され、同年3月には『ミュージックステーション』への出演を果たすなど、一躍、ミュージックシーンの寵児として大きな注目を集めることになった。その彼らが初のフルアルバム『POP UP』をリリース。これまでのBLOOM VASEの流れを汲む、キャッチーなメロディとラップ、そして明快なメッセージ性は、更に多くのリスナーから注目を集めることになるだろう。新たな花を開かせる彼らに、現在の心境を訊いた。

「もっと自分の言葉に責任を持たないとな」

――3人揃ってのテキストでのロングインタビューは初めてですか?

JiROMAN:そうですね。BLOOM VASEとして3人でのインタビューは初めてかもしれないです。


――その意味でもBLOOM VASEの概観がつかめるようなお話を伺えればと思います。結成は2019年ですね。

JiROMANそうです。全員出身は滋賀で、いまも3人とも滋賀に住んでます。


――例えば大阪に出る、東京に出るという意識はありますか?

OVE:滋賀を出る気はないですね。

JiROMAN:どこにいても音楽はできるし、みたいな。そんなに都会に対する憧れもないんで。過ごしやすいし、普通に地元にいたい。

RURU:友達も滋賀に多いし。


――滋賀にいることが制作に影響してる部分はありますか?

OVE:ありのままでいれる......っていう事なのかな。ありのままの自分たちを表現しやすい、楽曲として制作しやすいのが、滋賀ではあると思います。



――なるほど。2019年のデビュー作は「R.P.G」のリリース以降、「CHILDAYS」のブレイクや、『ミュージックステーション』への出演など、様々な変化があったと思いますが、3人にとってはデビューから現在までの時間は、どんな期間でしたか?

JiROMAN:とりあえず目の前のことにずっと追われてた時間な気がしますね。


――ブレイクの実感というよりは……。

JiROMAN:いつのまにか時間が経って、今になってるというか。だからそんなに(ブレイクの)実感はないですね。

OVE:早かったですね、とにかく。 絶対にこうなるっていうのは分かっていたし、自信もあったんですが、そこまでの時間はすごく早かったなって。

RURU:最近やっと気持ちに整理が着いたっていう感じですね。そこで「また色々やってこう」ってモチベーションが上がってきたというか。


――気持ちが整理されたのは?

RURU:今回のアルバムができたからですね。曲で気持ちを昇華していったって感じです。



――デビューからいままでの時間を振り返るような話はメンバーの中でしますか?

OVE:改まってみたいなのはないですね。

JiROMAN:ふいにそういう話しが出る時はありますけど。でも改めて振り返るというよりは、「あれ、もう2年前なんや」って、日常会話の中にふっと出てくる感じです。


――YouTubeのアクセス数などの数値ではなく、ライブやイベントなどで「目に見えるリスナー」も増えてきていると思いますが、そこでご自分たち自身たちのアーティストイメージや、制作に関する思いなどは変わりましたか?

JiROMAN:やっぱり、ライブなどで実際にお客さんの顔を見ると、ファンが増えているってことを実感しますし、今回のアルバムもそうやってライブに来てくれる人、僕らの音楽を聞いてくれる人たちのことを考えて作った部分はありますね。 そして、さらに上に行きたいなって思わされてもいて。

RURU:僕は正直、あんまりそういう意識はないです。自分のことと、自分の仲間のことしか考えてないんで。

OVE:お客さんが増えるのは、シンプルにめちゃめちゃ嬉しいなっていう感情はもちろんあるんですけれど、そこで自分のアーティストとしてのイメージは変わったりはないですね 。ただ、現場でのお客さんプラス、SNSでのメッセージの数も増えてきたし、「リリックを自分に置き換えて聞いてます」みたいなメッセージをもらうと、もっと自分の言葉に責任を持たないとなっていうのは、以前よりも感じるようになりました。



――ブレイクしたことでプレッシャーは感じていますか?

OVE:ないっちゃないですね。好きなことをやってるだけなんで。そんなにプレッシャーみたいなことを感じたりはないかな。


――では、BLOOM VASEの制作の進め方について教えてください。

JiROMAN:フックは僕が作るんですが、トラックを聴いてぱっと閃いたら、僕がまずサビを作ってそこから進んでいくこともあるし、3人でテーマを決めてから作り始める時もあるし…ケースバイケースですね。


――フックはメロディとリリック、どちらが先に浮かびますか?

JiROMAN:どちらが先というよりは、一緒に浮かぶことが多いですね。

――もともと楽器を習っていたりのような、メロディメイクする上で音楽的な素養はあったんですか?


JiROMAN:いや、何もやってないです。ほんまにリコーダーもできないぐらい(笑)。

OVE:BLOOM VASEは誰も楽器はできないですね。


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「ジャンルを飛び越えてみんな知ってる曲を作れれば」

――では、影響を受けたアーティストは?

OVE:最初にこのジャンルを聴き始めたキッカケは、KID FRESINOさんの曲をYouTubeで聴いてからですね。言葉の感じが凄く面白くて。そこからKANDY TOWNのKEIJUさんの曲を聴いて、自分でも始めてみようって。言葉から情景が浮かぶようなリリックを書くラッパーに影響を受けていますね。

RURU:僕はKOHHさんやBAD HOPさん。単純にカッコ良かったですね。

JiROMAN:僕はSALUさんですね。ポップスも普通に好きなんで、SALUさんのヒップホップにポップスの要素が入ったり、ヴォーカル的な魅力を感じる部分に影響を受けました。


――全員好みはかなりバラバラですね。

JiROMAN:全員共通して影響を受けてるアーティストっていうのはいないのかもしれないし、BLOOM VASEが成り立ってるのは、そういうことなんやと思いますね。


――なるほど。これまでにも「BLOOM TIME」「BLOOM iSLAND」「BLOOM SQUAD」と3作のEPをリリースされてきましたが、今回の『POP UP』は初のアルバムとなります。今回の制作に入ったのはいつごろですか?

JiROMAN:本格的に入ったのは今年の年明けぐらいですかね。その前からちょこちょこ何曲かは作っていて、アルバムに向けて本格的に動きだしたのがそのぐらいの時期で。


――「アルバム」という単位での制作に入った理由は?

JiROMAN:いままでアルバムという形で出したことがなかったので「ファースト・アルバムを出したいな」という単純な感じですね。もちろんファーストなので気合は入っていましたが、そこに深い理由はないですね。


――今作に「POP UP」というタイトルをつけた理由は?

OVE:「タイトルどうしようか」っていう話になった時に、「『POP UP』はどう?」って急に思いついたんですよね。それにみんなも「ええやん」って乗ってくれたんで、それでいこうと。意味としては「ここからまたいくよ!」みたいな感じもあるんですが……まあ後付ですね(笑)。


――「お披露目」や「突然現れた」という意味合いがポップアップという言葉にはあるので、そういうことかなと思ったんですが。

JiROMAN:それもあります(笑)。リリース期間も空いてるし、まとまった作品にもなったので、「ここでもう1回お披露目」というか「新しいスタートを切ろう」みたいなイメージも実際ありますね。そして僕らは普通にポップな音楽をやってるんで、「ポップに上がっていこう」みたいな意識もあって。


――「ポップである」と自己規定するのはすごく興味深いですね。

JiROMAN:BLOOM VASEとして3人で作る曲は、キャッチーでポップな感じがいいかなと思っていて。

OVE:めちゃかっこつけてる訳ではなくて、いつもの僕らをそのまま歌にすると、ポップな感じになっていくんですよね。 そして、それが僕ららしい作品になっていくんだと思う。


――OVEさんはsyunさんとユニット:sloppy dimとしても活動さて、RURUさんもJiROMANさんも別ユニットとして動かれることもあるそうですが、そういった活動ともまた違う?

JiROMAN:そうですね。別のユニットでもそうだし、BLOOM VASEの作品でも3人ではなくて、2人で組み合わせを変えたりすると、またちょっとカラーが変わってくるんですよね。



▲「Minority」MV / sloppy dim

――その組み合わせの妙によって、内容性も変わっていくと。

JiROMAN:そこまで明確に話し合ってるわけではないですけど、それはあると思いますね。

RURU:だから、そういう曲にはポップでは無いものもあると思うし。

OVE:ジャンルにもこだわってないんで、それぐらいの広さがあってもいいと思うんですよね。


――今回のトラックメイカー陣について教えてください。

JiROMAN:そもそも(音楽シーンの中で)知り合いが少ないんですよね(笑)。だからトラックメイカーは近しい人だったり、これまでに仕事をさせてもらった人にお願いすることが多いですね。Matt Cabさんとの制作も、MATT CAB & BLOOM VASEでの「SCRAMBLE」で一緒に制作させて頂いた流れで、前回のような遊び心のあるトラックが欲しかったんで、改めてお声がけして。



▲「SCRAMBLE」MV / Matt Cab & BLOOM VASE

――知り合いは多くないんですか?

OVE:はい。


――即答ですね(笑)。

RURU:知り合いを増やしたいとか、増やしたくないとか思ったことはないよな?

JiROMAN:自分たちから他のアーティストにアプローチすることもほとんどないし。 僕はそんなに友達を増やしたいとも思うタイプでもないんで。

RURU:僕もそこまで友達を増やしたいと思わないんで。

OVE:3人ともコミュニケーションが苦手なんで(笑)。それに、この3人の仲が良すぎるっていうのもありますね。この3人で成り立っちゃうし、3人でいるのが一番楽だし、仲間って感じなんで、とにかく沢山知り合いを増やしていこうって気にもならなくて。


――他にもZOT on the WAVE、dubby bunny、TeddyLoid、DJ B=BALLのような名うてのプロデューサーが参加していますが、プロデューサー陣からアドバイスやディレクションのようなものはありましたか?

JiROMAN:マットさんと「SCRAMBLE」を作った時は、一緒にスタジオに入らせてもらったんで、いろいろなお話を頂いたんですが、今回はいま名前が挙がったプロデューサー陣とは一緒にスタジオに入れなかったんですよね。だからそういうお話はできなくて。

RURU:でも、自分たちのラップをブラッシュアップしてくれてはりますね。


――このアルバムに収録された“Fly around”は、次のステップに対する意思のような部分を感じる曲で、非常に印象的でした。

JiROMAN:ヒットを飛ばしたことで、色んな所にライブするようになったときに作った曲なので、そういうマインドが反映されてるのかもしれないですね。


OVE:でも、もう1年ぐらい前に作った曲なんであんまり覚えてないんですよね(笑)。


――それぐらい体感速度が速いと言うか。今回のアルバムを「MASQUERADE」で閉じた理由は?

JiROMAN:アルバムの最後やから、ちゃんとメッセージのある、かつポップな内容にしたかったんですよね。しんみりしたものでは終わらせたくなかったし、それがBLOOMらしいと思って。

OVE:最初から「サーカスっぽい曲調」っていうのはオーダーだったんですよね。テーマとして「ピエロ」を置いた感じのリリックを僕は書きたくて。


――そう思われたのは?


OVE:SNSも含めて、みんなが人に合わせすぎて自分が無くなってる、仮面を着けてるみたいなことを書きたかったんですよね。そのイメージに対して、みんながそれぞれの観点で書いてくれて、作品として完成して。やっぱりSNSに支配されてしまうのはもったいないし、自分も持ったほうがいいんじゃないかなってことを言いたかったんですよね。



▲「MASQUERADE(Prod DJ B=BALL)」MV / BLOOM VASE

――最後に、これからのBLOOM VASEはどう動くのでしょうか?

JiROMAN:とりあえず『ONE PIECE』の曲がやりたいですね。できれば主題歌を(笑)。


RURU:みんな『ONE PIECE」大好きなんで(笑)。

JiROMAN:あと、これまではあんまり目標みたいな話はしてこなかったけど、いろんなサポートも増えてきたり、状況も変わって来ているので、以前よりかは計画的に動かないといけないなと思ってますね。

OVE:視野が広がったことで、やりたいことも増えてきて。

JiROMAN:僕はとりあえずもっとすごいヒットを出したいですね。シーンで一つ飛び抜けたいし、ジャンルを飛び越えてみんな知ってる曲を作れればと思いますね。それがいまの目標です。

RURU:最近調子上がってるんでいっぱい曲作りたいですね。

OVE:BLOOM VASEとしても、sloppy dimとしても、その二組によるチーム「DOOM STUIDO」としても、みんなでいい曲をもっと作っていきたいですね。そして楽しく活動していければなって。


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