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<ミニインタビュー>“フードデリバリー界の皇帝” JINGU、コロナ禍で掴んだ称号と再奮起のきっかけ
~ フードデリバリー界の皇帝、CDデビュー ~
繊細な歌声と豊かな音楽センスを持つシンガーソングライター、JINGU。コロナ禍により音楽活動がままならず失意に陥る中、再び奮起するきっかけとなったのが、副業として始めたフードデリバリーでの成功体験だという。そんなJINGUのプロファイル、そして逆境を糧にその探究心で掴んだサクセスストーリーを紐解く。
浜田省吾との出会いで音楽を志す
――まずはプロフィール的なところからお聞かせください。生まれも育ちも横浜とのことですが、どんな場所で幼少期を過ごされたんですか?
JINGU:家の周りは緑豊かなのですが、坂だらけで歩くにも自転車を漕ぐにもしんどいなーとずっと思いながら育ちました(笑) 横浜駅まで自転車でも電車でもすぐに行ける場所だったので、小学生の頃から遊ぶ場所は決まって横浜周辺でしたね。――そんななか浜田省吾さんの音楽と出会い、音楽に興味を持たれたそうですね。きっかけは何だったんですか?
JINGU:父親が浜田省吾さんのファンで、ドライブのときに流してくれた『青空の扉』というアルバムに惹かれたのが始まりでした。力強くワイルドなロックから、男の恋や人生を描いた繊細なバラードとか…子供ながらに“この人みたいにカッコよくなりたい!”と思ったんです。――当時、浜田省吾さんを聴いていた同世代って周りにいらっしゃいました?
JINGU:悲しいことにあまりいませんでしたね。ただ、ハマショーファンという共通点で仲良くなった数少ない同世代の友達とは3ピースバンドを組みましたし、他にも20歳以上年上の方とハマショーの話題で盛り上がったりとか、浜田さんのファンで良かったと思うシーンは結構ありました。――その後、ご自身でも音楽を志すようになったわけですが、音楽活動を始めたのはいくつ位の時ですか?
JINGU:本格的に始めたのは大学生の時ですかね。当時はギター教室やボイトレに通いながら、弾き語りをしたりしていました。――音楽の専門学校にも通われて作詞作曲やDTMを正式に学ばれたそうですね。
JINGU:そうですね。それまでは漠然と上手く歌いたいと思っていたんですが、それが専門学校に通ったことで楽曲全体の完成度というクリエイター視点で見ることが出来るようになったのは非常に大きかったです。コードやコーラスはぶつかって(=不協和音になって)いないかとか、曲のコンセプトや最も伝えたいことは何かとか、トラックごとのバランスは取れているかとか…。ソロプレイヤーだけでなくシンガーを目指している方も音楽学校で学んでおいて損はないと思います。――その後、飲食業界に就職されたそうですが、音楽活動も同時に続けられていたんですよね?
JINGU:はい、週5で勤務しながら休みの日に音楽活動や制作をする生活をしていて、知り合いのエンジニアさんにお願いしてオリジナル楽曲をレコーディングし、それをネット配信するという活動をしていました。――2019年にデビューされ、これから活発的に動くぞという時に、同年暮れから新型コロナウイルスの感染拡大という惨事に見舞われました。当時はライブ活動もされていたんですか?
JINGU:まだ学生でしたので、学校主催の合同ライブに何回か出演したくらいでしたね。コロナ禍が始まってからは、ライブが出来ないのはもちろんですが、スタジオやカラオケも利用できなくなったり、MVの制作を依頼しようとしていた映像会社が長期休暇になったりとか…音に関係する場所や機会がほとんど封印されてしまい大変でした。――勤められていた飲食業界は特に甚大な影響を受けました。音楽活動はおろか、普段の生活も大変な状況だったんじゃないですか?
JINGU:自分が勤めていた店舗は大手ファーストフード店ということもあって、テイクアウトのみでもかなりのお客さんが来店されるお店だったんですが、それでも自分や他のスタッフもシフトを削られてしまい…。人手が足りない中で、営業のみならず1日の清算や在庫管理、掃除や発注とかまでやらなければならず、ヒーヒー言いながら毎日やっていましたね。- フードデリバリーの経験を音楽活動のアイデンティティに
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フードデリバリーの経験を音楽活動のアイデンティティに
――そこで副業としてフードデリバリーを始められるわけですが、効率的な配達ルートなどを徹底的に研究され、自転車で1日50件配達されたとか。
JINGU:基本的にフードデリバリーではバイクを使うのが一番有利なのですが、それでも1日20~30件ぐらいが普通で、自転車で30件以上運ぶ人はほとんどいませんでした。そこで、町名・番地やお店ごとの調理スピードを研究して、今では1日50件、1時間にだいたい4~6件ぐらい配送できるようになったんです。――その結果、“フードデリバリー界の皇帝”と呼ばれるようになったそうですね。JINGUさんの繊細な歌声とは真逆の愛称ですが(笑)
JINGU:知り合いの配送員と話すとき、今日は何件配送したかの話題になることが多いんですが、“50件”と答えると大体ドン引きされて「エンペラー」とか「バケモノ」とか「バグってる」とか言われます(笑) それが自分の中でウケて、アイデンティティとして音楽活動にも取り込んで行こうと思ったんです。――探求心があってこそ、その道を極めるに至ったわけですが、もともと何か研究したり突き詰めたい性格だったんですか?
JINGU:昔から負けず嫌いで、自分がやると決めたものはとことん突き詰める性格でしたね。それこそゲームで勝つまでやめないみたいな。周りからめんどくさいと思われることもありましたが(笑)、そういった性格が結果に結びついたんじゃないかと思います。――そんな性格が奏功し、突き詰めたデリバリーの仕事中に今回のCDデビューに繋がる“逆走フードデリバリー”というワードが降りてきたと。
JINGU:そうですね。“君を迎えに行くよ”的なラブソングに、フードデリバリーの要素を入れたら面白そうだなと思ったのが始まりだったんですけど、そこに“困難に立ち向かう”という意味で「逆走」を付け足し、メッセージ性とパワーワード感をプラスしたんです。――配達先のお客さんに一目ぼれした、という歌詞ですが…ズバリ実話ですか?
JINGU:それは内緒です(笑) 実際、お届け先の人にアプローチした配送員がいるっていう話もたまに聞いたりしますけどね。――このアイディアを思いついたことが、再び音楽活動に力を入れるきっかけになったんですか?
JINGU:そうですね。それと、スタジオや映像会社も次々と再開し始めて、ようやく思うような活動ができるようになったのも大きいですね!――「逆走フードデリバリー」はルーツである浜田省吾さんの音楽にも通じるロックチューンですが、そのことは意識されましたか?
JINGU:爽やかでテンションが上がる曲を作りたいとは思っていましたが、制作段階では浜田さんを意識することはなかったんです。結果的に奇しくも同じ方向性になったのは、それだけ自分の中で浜田さんの影響が大きい証左かと思いますね。「逆走フードデリバリー」は自分が今まで取り組んできたこと全てを注いだ楽曲なので、是非多くの方に聴いて頂き、願わくばJINGUという存在を世の中に残したいと思ってます。――これまでリリースしてきたMVは全てご自身でプロデュースされていますが、「逆走フードデリバリー」のMVも同様ですか?
JINGU:そうですね、「逆走フードデリバリー」とシングルに収録されているカップリング曲も全て、撮影監督と一緒に作っています。――「逆走フードデリバリー」のMVではフードデリバリーの方々の交流や、自然のなかを自転車で疾走するご自身の姿が映し出されています。具体的にどんなことを表現されているのでしょうか?
JINGU:配送員の日常を、少しコミカルに表現しようかなと。知らない人との交流や、晴れた日の自然を背に疾る気持ちよさを、映像で表現できればと思いながら制作しました。▲「逆走フードデリバリー」ミュージックビデオ
――そんなフードデリバリーの経験が音楽制作に影響を及ぼした点はありますか?
JINGU:信号の切り替わるタイミングを覚えたり、効率的なルートを研究したりと、配送員をやったことで一つのことを探究することの面白さを再認識しましたし、音楽においてもより細部まで制作に拘るようになったと思います。具体的には、使用するコードをオーソドックスなものだけではなく変化球なものに変えてみたり、歌詞においても暗喩や韻踏みに時間をかけたりとか…。経験や研究は嘘をつかない、ということを改めて確認できた気がします。シングル収録4曲で春夏秋冬の世界観とその変化を表現
――本シングル『逆走フードデリバリー』がJINGUさんのCDデビュー作となるわけですが、ご自身は音楽をCDで聴かれますか?
JINGU:最近はストリーミングやダウンロードで聴くことが多いですが、特に気に入ったアーティストや楽曲はCDで購入することもありますね。もちろん浜田さんのCDは一通りコンプリートしていますし、最近ではOfficial髭男dismの『Editorial』を購入しました。CDを聴くときは歌詞カードを見ながら、曲順に込められた意味合いや、変化の付け方を意識して聴くようにしています。――CDに収録される4曲は、それぞれタイプが異なり非常にバラエティに富んでいます。これまでは1曲ずつの配信リリースだったわけですが、本作を制作するにあたり意識されたことはありますか?
JINGU:4曲という少ない曲数の中でも、ストーリーを表現したいと考えて作っています。夏っぽく爽やかな「逆走フードデリバリー」、秋の夜空の下ドライブしながら聴きたいシティポップの「Star River」、冬の透明で少し寂しい情景を歌う「ユメマボロシ」、春の別れとその先へ向かう強さを描いた「花霞」と、春夏秋冬が表す世界観とその変化を、楽しんで頂ければなと思っています。――今回のCDデビューはある意味、逆境を乗り越え夢を掴み取ったサクセスストーリーでもあります。壁に直面している同世代の方々に対し、ご自身の経験から出来るアドバイスはありますか?
JINGU:現代の音楽業界では、歌や楽器が上手い、作詞作曲が出来る、だけではなかなか注目されにくくなっている中で、自分だけの強みやアイデンティティというものを見つけて、世の中に発信して行くということがゴールに繋がると思っています。努力や経験は自身を裏切りませんし、自分に自信を持って、頑張ってください!――長かったコロナ禍もようやく出口に向かい始めています。最後に今後の展望や具体的な活動予定を教えてください。
JINGU:TVやラジオ等メディアの出演などを経て、7/27(水)にいよいよCDがリリースされます! ライブやイベント等にも参加して行く予定です。よりメジャーな存在になれるよう尽力して参りますので、皆様ご声援のほど何卒よろしくお願い致します! そして、フードデリバリーを利用する方や配達する方、是非口ずさんでくれたら嬉しいですね(笑)関連商品