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<インタビュー>秦 基博 ~15にまつわる話 Vol.3「15周年のその先へ」~
東京・大阪のビルボードライブ15周年を記念してスタートした連載企画「15にまつわる話」。今回ご登場いただくのは、昨年、デビュー15周年を迎えた秦 基博。「鱗(うろこ)」「ひまわりの約束」などの名曲を生み出し、今や音楽シーンを代表するアーテイストとなった彼に、15周年を迎えた心境、ライブに対する意識の変化、そして、この先の音楽的なビジョンなどについて語っていただきました。
――秦さんは昨年、デビュー15周年を迎えました。“15年”という数字について、どう感じていますか?
秦:重い数字だなと思います。5年目、10年目は“気付いたら、ここまで来てた”という感じだったんですが、その後の5年はまた一味違っていましたね。すごく濃密だったし、良かったこと、悪かったことを含めて、生半可じゃなかったなと。経験のなかで“こうすれば、こうなる”とわかることも増えてきましたが、それだけだとダメだと思うんですよ。同じことを繰り返していたら、たぶん衰退する一方だと思うので。
――常に新しいトライが必要?
秦:そうですね。自分にとってのチャレンジだったり、楽しいと感じること、胸が躍ることをやっていくのが大事なのかなと。リスナーのみなさんから求められていることもあると思いますけど、それだけを射抜こうとするのも難しくて。もちろん、これまでに積み重ねてきたものあるし、歩んできた道もあるので、それを全部突放すということではなくて。自分にとって新鮮なことや音楽的にやりたいことへ向かっていきたいっていう、シンプルなことなんですけどね。それをみなさんに喜んでもらえたらいちばんいいんだろうなと。
――昨年はアニバーサリーイヤーを彩るライブが行われました。まず11月には、初日が弾き語り、2日目がバンドセットによる横浜アリーナ&大阪城ホール2days公演【Hata Motohiro 15th Anniversary LIVE】。そして12月には15人編成のストリングスとピアノをフィーチャーした武道館【Philharmonic Night】を開催。ライブのスタイルもさらに広がっています。
秦:15周年の節目を総括するうえで、これまでのライブ形式を思い返したり、「新たにチャレンジできることはないかな?」ということも考えたんですよね。いろいろな形のライブをやってみたい気持ちもあるし、単純に同じことをやっていると自分も飽きちゃうし(笑)。去年の武道館ではエルヴィス・コステロの「She」をカバーしたんですが、この曲のようにライブの編成が呼び込む曲もあるし、アレンジを変えることで、楽曲の違った表情を見せることもできるのかなと。
――なるほど。今年5月27日には、ビルボードライブ横浜で【Office Augusta 30th MUSIC BATON Vol.7 秦 基博】を開催。ビルボードライブでの公演は初めてですよね…?
秦:ビルボードライブ大阪で、MTVアンプラグドの収録をしたことがあるんですけど、純粋なビルボードライブ公演は初めてですね。今回はトオミ ヨウさん(秦 基博、aiko、石崎ひゅーいなどの楽曲を手がけるプロデューサー)のピアノと自分の歌だったんですけど、これまでのキャリアのなかでもやってことがない編成なんですよ。トオミさんにご負担はかけてしまいましたが、自分にとっても新鮮でしたね。お客さんとの距離も近いし、音の響きも気持ちよかったです。このあたり(横浜・みなとみらい)は高校生の頃からよく遊びに来てたんですよ。音楽を始めた頃によく出ていたライブハウス(横浜・中華街の「F.A.D横浜」)もあるので。
――そして今年4月には、新曲「Trick me」をリリース。ループ感のあるトラックとエレキギターを軸にしたアレンジが新鮮でした。
秦:“リズムパターンを決めて、4つのコードパターンをずっと繰り返す”というアイデアから作った。自分のデモをもとにアレンジをトオミさんと一緒にブラッシュアップしていきました。エレキギターを使ったのも久しぶりですね。前回のアルバム(『コペルニクス』)はまったくエレキギターを入れてなかったので。
――今の秦さんの音楽的モードが出ている曲なのかも。<どうせ騙すのなら もっと上手にね>など、微妙で危うい関係を描いた歌詞については?
秦:あやふやな感情を表現しようと思ったんですが、ただ陰鬱に書くのではなく、どういう言葉を選べばグルーヴが生まれるか、聴感上どうポップに聴こえるかを意識していて。それは自分にとってもチャレンジでしたね。
――さらに「映画ざんねんないきもの事典」の主題歌「サイダー」も担当。Sexy Zoneのシングル「夏のハイドレンジア」など、楽曲提供も続いています。
秦:吉岡聖恵さん(いきものがかり)に提供させてもらった曲(「まっさら」)もそうですけど、自分以外の方のために作らせてもらえるのもすごくやりがいがありますね。Sexy Zoneの楽曲も彼らをイメージしたからこそ生まれた曲だし、普段とは違うこともやれるので。自分のことは一切考えてないんですけど、「秦 基博っぽい」と言ってもらえることもあって。面白いなって思います。
――やはり“秦 基博らしさ”と“新しい挑戦”のバランスが大事なんでしょうね。
秦:そうですね。ただ、“らしさ”に関しては、自分で決めることではないと思ってるんですよ。楽曲もライブもそうですけど、自分のなかで新しさを発見できるかどうかが大事だと。新曲の制作も続けているので、そのなかで次のアルバムが見えてきたらいいなと思ってます。
リリース情報
「サイダー」
- 2022.07.06 DIGITAL RELEASE
関連リンク
秦 基博 Official Web Site
Billboard Live オフィシャルサイト
Interview:森朋之
Photo:清水ケンシロウ
Hata Motohiro 15th Anniversary LIVE “Philharmonic Night”
2022/06/29 RELEASE
UMXA-10062 ¥ 6,820(税込)
Disc01
- 01.Overture (Theme of Philharmonic Night)
- 02.アイ
- 03.月に向かって打て
- 04.スミレ
- 05.Honey Trap
- 06.Q&A
- 07.在る
- 08.She
- 09.恋の奴隷
- 10.Dear Mr.Tomorrow
- 11.トレモロ降る夜
- 12.Fast Life
- 13.グッバイ・アイザック
- 14.キミ、メグル、ボク
- 15.泣き笑いのエピソード
- 16.鱗(うろこ)
- 17.言ノ葉
- 18.聖なる夜の贈り物
- 19.ひまわりの約束
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