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<ライブレポート>グラスパー、ドリカム、Vaundyらが競演した日本初上陸のフェス【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2022】



コラム

DAY 1

  イギリス発のジャズ・フェスティバル【LOVE SUPREMEJAZZ FESTIVAL】が2年連続の延期を経て、ついに日本初上陸を果たした。会場は自然豊かな埼玉・秩父ミューズパーク。国内外の魅力的なラインアップによる競演、とりわけ海外アーティストのオンステージは、ロックダウンによって日々の活力を奪われた音楽リスナーたちや業界関係者の悲願であり、ラブシュプをはじめ各地で音楽フェス復活の狼煙が上がったこのときの週末は、本当に忘れがたい2日間の記憶として今でも残っている。 いくつかのアクトを抜粋しながら振り返ってみよう。


 うれしいことに事前の予報を裏切り、ほとんど雨は降ることなく、むしろ肌をちくりと刺すような日差しが降り注いだ初日の昼過ぎ頃、メインの〈THEATRE STAGE〉に登場したのは、新世代R&Bの旗手=SIRUP。冒頭から「Pool」「Synapse」と定番ナンバーでムードを作りつつ、MCでは「渋滞でぎりぎりセーフだったぜ」とお茶目エピソードも。グッドヴァイブな音楽にセルフラブやウェルビーイングのメッセージを乗せる彼のスタンスはステージ上でも不変で、誰に対しても手を大きく広げ、一人ひとりをハグで受け入れるような、穏やかで優しさに満ちた佇まい。「暑いのにマスクしてくれてありがとう。踊る準備はできてる?」と尋ねれば、オーディエンスもクラップで参加した「Overnight」、〝もっともっと踊ろう〟と言わんばかりの「Superpower」へ。〈遠慮はいらない 配慮があればいい〉と歌う「Your Love」は、フェスならではの説得力も宿す。最後は車のCMでもお馴染みのキラー・チューン「Do Well」で、勢いよくゴールテープを駆け抜ける気持ちのいいフィニッシュとなった。


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SIRUP @THEATRE STAGE | Photo by 中河原理英


 日が暮れてきた頃の〈GREENSTAGE〉に登場した、ブラジル音楽界のポップ・マエストロ、セルジオ・メンデス。久しぶりの海外アーティストの出演ということもあってか、見晴らしのいい芝生エリアは大勢のオーディエンスで溢れ返り、ご機嫌なレゲエ風ナンバー「Indiado」でショーが始まると、会場の空気はエキゾチックに一変。「みなさんこんにちは。日本にまた来れて嬉しいです」と日本語で挨拶したり、「Última Batucada」のラストのフレーズを日本語詞にアレンジしたりと、親日家らしいサービスでも沸かせる。「SABOR DO RIO」では、2019年のリミックスで客演したSKY-HIが登場。ステージ上ではグラシーナ・レポラスとジェシカ・テイラーのダブルシンガーとセルジオのあいだを行ったり来たりしながら、鋭くも伸び伸びとしたラップでパフォーマンスに華を添える。さらにはクライマックスの「Mas Que Nada」でもSKY-HIが飛び入り参加するなど、スペシャルな祝祭感と極上のブラジリアン・ポップス・サウンドで、肌寒い秩父の夕暮れ時を熱く盛り上げた。


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SERGIO MENDES @GREEN STAGE | Photo by 岸田哲平


18時の〈THEATRE STAGE〉では、初日のヘッドライナーであるDREAMS COME TRUEが登場。この日はジャズフェスだからこそ 実現した特別編成で、日本を代表するピアニストの上原ひろみとの13年ぶりとなる共演に加え、ドラマーにクリス・コールマン、ギタリストに古川昌義、サックスに馬場智章という錚々たるメンバーがオンステージ。セットは吉田美和のソロアルバムを中心に組まれていて(吉田いわく20年以上ぶりに披露する曲もあったとか)、会場を囲む大自然の雄大さにも劣らないスケールを感じさせる歌声と情熱的な演奏の音を介した交感も、ショーの希少性に拍車をかける。最後は上原によって編曲されたドリカムの「サンキュ」。ここでしか聴くことのできない特別なアレンジでオーディエンスを魅了し、記念碑的なステージを締めくくった。


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DREAMS COME TRUE @THEATRE STAGE | Photo by 中河原理英


DAY 2

2日目の〈THEATRE STAGE〉では、現役大学生のマルチアーティスト、Vaundyが登場。冒頭からすでに総立ち状態のオーディエンスは、不穏なイントロから始まった1曲目「不可幸力」で、早くも手拍子を交えつつ体を揺らして踊り出し、楽曲の世界観に引き込まれていく。「踊ろうぜ!」と言い放ち、スタンドマイクに手を掛けたVaundyは、ダンサブルなベースのリフレインが先導する「踊り子」を披露。その後もステージ狭しとアグレッシブに動き回りながら、惜しみなくキラーチューンを畳みかける。ラストは「怪獣の花唄」で会場が一体となったまま終了。近年多くの楽曲をヒットチャートに送り込み、紛うことなきJ-POPアイコンのひとりとなった彼の、その圧倒的なポピュラリティとオリジナリティが如何なく発揮されたステージだった。


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Vaundy @THEATRE STAGE | Photo by 岸田哲平

 そのVaundyに続いて〈THEATRESTAGE〉に登場したのは、こちらも国内若手音楽シーンの注目株として各所から熱視線を集めるNulbarich。ゆるい佇まいで「楽しんでいきましょう」と投げかけると、オープナーの「Spread Butter OnMy Bread」が心地いい横揺れのグルーヴを醸し出す。ジャズやロック、ファンクやヒップホップまで、あらゆる音楽を飲み込むハイブリッドなサウンドを志向するNulbarichだが、この日は「踊れる曲のみでお届けします」との宣言通り、とにかくオーディエンスを揺らし続けるセットリストを展開。そんななかでも「Super Sonic」では上物楽器隊のソロパートでもばっちり魅せたり、80年代のディスコにタイムスリップさせるような「LUCK」で縦ノリも挟んだりと、様々なアプローチでオーディエンスを高揚させる。「改めまして、新しい時代の幕開けということで」と「NEW ERA」のアクチュアルなプレイを挟み、最後は「STEP IT」。有言実行。最後までステップを踏む足を止めることはなかった。


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Nulbarich @THEATRE STAGE | Photo by 岸田哲平

 2日間の大トリを飾ったのは、コンテンポラリージャズを牽引する巨匠=ロバート・グラスパー。まずはDJジャヒ・サンダンスのプレイで会場を温めてから、Radioheadの「Packt Like Sardines In a Crushd Tin Box」、Nirvana の「Smells Like Teen Spirit」と名曲カヴァーのパフォーマンスで会場の心をグッと掴む。2日前に開催した単独公演からの前評判通り、ジャスティン・タイソン(Dr)とデイヴィッド・ギンヤード(Ba)の神々しさすら感じさせるグルーヴメイクでオーディエンスを圧倒する一方、グラスパー本人の積極的な歌唱も印象的で、そのゆるいヴォーカルとソリッドな演奏のバランスは絶妙。この2日間、各ステージを彩ったアーティストたちも含めて、現代の音楽シーンに絶大な影響を与えてきたロバート・グラスパーは、その貫禄に相応しい圧倒的な演奏を見せつける形で【LOVE SU PREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2022】を締めくくった。


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ROBERT GLASPER @THEATRE STAGE | Photo by 岸田哲平

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