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<インタビュー>yonawo『Prescribing The...』真骨頂のベッドタイムサウンドを鳴らすコンセプトEPについて語る



インタビュー

 昨年、2ndアルバム『遙かいま』をリリースし、バンドとしての表現の幅を広げてみせた福岡出身の4人組、yonawo。彼らによる初のコンセプトEP『Prescribing The...』が3月18日にデジタル・リリースされた。

 “ベッドタイムサウンド”をテーマに掲げた本作は、「夜が似合う」と以前から言われていたyonawoの持ち味を存分に活かした楽曲が並ぶ。「苺」や「ココナッツ」など、活動初期にライブで披露していたレパートリーもコンセプトに合わせてリアレンジされており、yonawoの“今”を垣間見ることのできる内容だ。今年1月より東京に移住し、共同生活をしながら制作に没頭しているという彼らに、『Prescribing The...』について改めて深掘りした。

コンセプトEP 誕生の経緯

――初のコンセプトEP『Prescribing The...』をリリースしてから1か月が経ちました。手応えはいかがですか?(※インタビューは4月に実施)

荒谷翔大(Vo):初めてコンセプトを掲げて作った作品なので、どんな感じになるか正直不安もあったんですけど、やってみたら意外とまとまったので安心しています。

斉藤雄哉(Gt):昔から聴いてくれているファンの人からも「これを待っていた!」的な反応が多かったので、やってよかったと思っていますね。

――そもそも今回、“ベッドタイムサウンド”テーマにしたコンセプトEPを作ろうと思ったのはどんなきっかけだったのですか?

荒谷:2ndアルバム『遙かいま』を録り終えて「次はどうしようか」という話をしていたときに、雄哉から「曲数は少なめのコンセプトEPとか作りたいよね」みたいなアイデアが出て。思えば僕らのファンからも「yonawoの曲はテンポがゆっくりでリラックスするものが多い」「眠る前によく聴いている」みたいなことを言ってもらっていて、それに応える形の音源を作ってみてもいいのかなと。




――なるほど。制作するうえで心がけたことは?

荒谷:今話したように、ミドル・テンポの曲にしようという共通認識はありました。ただ、そこは今までともそんなに変わらないところで(笑)。

斉藤:個人的なことで言えば、ギターはあまり歪ませないことを意識しましたね。

田中慧(Ba):夜は昼間に比べてぼんやりしたイメージがあったので、ベースの音色もあんまりパキっとし過ぎないよう、少しぼやかして曲に馴染ませるなどしました。

――冒頭を飾る「苺」は、初期のyonawoの名曲です。この曲を取り上げようと思った理由は?

荒谷:「苺」は高校生の頃に作った曲で、GarageBandでアレンジを構築して、『desk』(2020年)というデモ音源集に収録しました。すごく気に入っていて、ずっとバンドでリアレンジしたいと思っていたので、今回こういう形でそれが実現できたのはよかったなと思っています。最初はリード曲というイメージで作っていなかったのですが、結果的にEPを引っ張るような曲に仕上がりましたね。




――リアレンジする際に心がけたことは?

荒谷:『desk』に入っているバージョンは僕だけで完結していたので、今回のアレンジは雄哉と慧とのもっちゃん(野元)の3人に託しました。

斉藤:まずは打ち込みリズムから作っていったんですけど、やっぱり既存のアレンジとは違うものにしたくて。まったく違うパターンを打ち込んでみたら意外とハマったので、そこから積み上げていった感じです。

野元喬文(Dr):僕は今回、生ドラムは叩いていなくて打ち込みリズムを担当したんですけど、難しいリズム・パターンにはなるべくしないように、音数を減らしたり増やしたりしながらバランスを整えました。音色は、Logic Proに入っている既存の音色をハットやキックなど分けて、一つひとつメンバーと話し合いながら決めていきました。

荒谷:ある程度いい感じになった段階で初めて聴かせてもらったんですけど、それが本当に新鮮で。オリジナルの空気もありつつダンスっぽいグルーヴも感じられるので、まったく新しい曲として聴くことができましたね。

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当時は「常に気持ちがフワフワしていた」

――2曲目の「Prescribing」は、荒谷さんの歌とアコギを主軸にした静かな楽曲です。

荒谷:EPのタイトルが決まって、コンセプトEPだし、インタールード的な短いタイトル曲が欲しいなと思って書いた曲です。

――続く「ココナツ」も「苺」同様、以前からあった曲だとお聞きしました。

荒谷:そうです。yonawoとしてライブをやり始めた当初から、この曲は演奏していました。

斉藤:僕がリフを持ってきて、そこに荒ちゃんがメロディを乗せる感じで作ったのを覚えています。当時はまだ19歳でした。

荒谷:そのときはもうちょっとノリのいい爽やかな曲だったんですけど、もうちょっとおぼろげで浮遊感のある感じにしたかったので、テンポも少し落としてアレンジし直しています。

――以前からあった曲とのことですが、例えば<あっちこっちのジャッジに右往左往/自分のジャッジに目が回り/空回り狂ってる奴ら/私だって狂ってる奴さ>という部分など、最近の世の中に対する荒谷さんの思いを吐露しているようにも聞こえるのがなんだか不思議ですね。

荒谷:そうですね。当時はまだ19歳で、音楽でやっていけるのかどうか、やっていきたいけど大丈夫なのかなという漠然とした不安があって、常に気持ちがフワフワしていたんですよね。その心境を歌っているのに今も響くのは、僕もなんだか不思議な気持ちがします。





――しかも荒谷さんの“死生観”が色濃く反映されている気がします。

荒谷:“生と死”や“日常と非日常”のような、相反する要素が1曲の中で同時に存在していたら面白いかなと考えていたときに作った曲だからですかね。

――なるほど。思えば今作のテーマである“夜”も、夢と現実の狭間にあるというか。そのどこか曖昧な感じがyonawoのサウンドと相性の良い理由の一つかもしれないですね。ちなみに「苺」も「ココナツ」も、歌詞の中には出てこない言葉ですよね。どこから持ってきたのですか?

荒谷:当時は曲ができてもタイトルがなかなか決められなくて。当時、苺もココナツもヨーグルトと一緒によく食べていたので……。

――あははは!

荒谷:一応、響きとかは考えていますけど、曲との関連性はまったくないんです。すみません(笑)。

――「空色素肌」は、<危うい体温で優雅に朦朧/私の坩堝に投げ出す 体>というラインなど、yonawoのエロティシズムを感じます。

荒谷:たしかに、エロいっすねこれ(笑)。でも、エロティシズムだって“生と死”に直結するから、そこを表現したくなるのかもしれない。例えばタイトルの“空”は“宇宙”、“素肌”は“生まれたての生命”を意味していて、生命の始まりを歌っている曲なんです。

――サウンドのコンセプトを象徴した今作のアートワークも印象的です。これは斉藤さんが撮影したそうですね。

斉藤:はい。高校生くらいから写真を撮るのが好きで、これはピンホールカメラという、おもちゃみたいなカメラを使って、僕の部屋で野元を撮影した写真です。露光時間が長いうえに、思いっきり拡大しているのでこういう画質になっているんですよ。のもっちゃんが動いたことで幽霊みたいな影ができたり、スタンドライトが二つになったり、さっき慧が言ったような“夜”のぼんやりとしたイメージを表してみました。夢を映像化したような写真にもなったかなと思っています。

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「今までにないタイプの曲も制作中」

――ところでみなさんは、“夜”と聞いてどんなことをイメージしますか?

荒谷:僕はお酒を飲むので、お酒が真っ先に思い浮かびますね(笑)。

野元:俺は月。僕は福岡の田舎に住んでいたんですけど、ライブを終えて帰ってくると月が出ていて。満月のときなど、月の周りに光の縁ができている現象とか見かけると見入ってしまう。そういう風景を思い出します。





斉藤:僕は夜が深くなって、音がなくなる感じがすごく好きですね。しんと静まり返っているひとときを思い浮かべます。

田中:難しいことでも何でもできちゃう気がする時間帯というか。一番自分と向き合える気もするし。自分と周りの境界線がなくなっていく感じ……クラブとかであんなに踊れるのも周りが暗くて、音と一体になれるからかもしれない。

荒谷:たしかに!

――ちなみに、この作品を作っているときによく聴いていたのは?

荒谷:雄哉はビリー・アイリッシュをよく聴いていたんだよね?

斉藤:「苺」をアレンジしていたときによく聴いていたのは、ビリー・アイリッシュの「listen before i go」でした。あの曲を聴いているときに途中のシンセを思いついたんです。




荒谷:「空色素肌」のアレンジを考えているときは、井上陽水さんの「背中まで45分」を参考にしていました。全体的に淡々として起伏がないけど、物語性があって。のもっちゃんと話し合って、パーカッションのアプローチなども参考にしましたね。

野元:最初に考えていたのはThe 1975の「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」のリズム。四つ打ちだけどうるさくなくて、程よい感じの音質を作るときに参考にしました。で、荒ちゃんのリファレンスを聴いて、あ、そっちのほうが近いなと。




田中:直接ベースに影響を与えたかはわからないですけど、僕も「背中まで45分」が入っている陽水さんのアルバム『LION & PELICAN』はよく聴いていました。

荒谷:「チャイニーズ フード」とかいいよね。

田中:大好き!

――では最後に、今後の展望をお聞かせください。

荒谷:今年はフェスに出る機会がけっこう増えると思うので、それに向けてフェスで楽しめるような曲を作れたらいいなと思っていて。ライブを想定した今までにないタイプの曲も制作中なので、ぜひ楽しみにしていて欲しいです。実は、今年になってから東京に引っ越してきたんですよ。みんなで一軒家に住んでいて、そこにプライベート・スタジオを作って音楽を作りながら生活しています。

斉藤:これまで4人で一緒に曲を作ることとかあまりなかったから、毎日が楽しくて。大抵は荒ちゃんが先に曲を作って、そこに僕らがアイデアを乗せていたけど、今は荒ちゃん以外のメンバーが出したアイデアに、荒ちゃんが後から乗っかるみたいなのもめちゃくちゃ新鮮です。そういう新たな試みがたくさん詰め込まれるはずの次のアルバムも期待していて欲しいですね。



衣装協力:荒谷翔大(Vo) = パンツ(ADJUSTABLE COSTUME×BARNSTORMER/¥27,800)、斉藤雄哉(Gt) = シャツ(古着/¥9,000)、パンツ(古着/¥9,000)、シューズ(opposite of vulgarity/¥9,500)、田中慧(Ba) = シャツ(saby/¥24,000、シューズ(MOONSTAR/¥5,500)、キャップ(STETSON/¥6,000)、野元喬文(Dr) = ニット(KAIKO/¥18,000)、パンツ(F/CE.(R)/¥32,000)



Interview by 黒田隆憲
Photo by Yuma Totsuka

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