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<特集>“世界から愛されるシンガー”カミラ・カベロの音楽キャリアをプレイバック



コラム

 2022年4月8日に世界同時リリースされる最新アルバム『ファミリア』で音楽シーンに舞い戻るカミラ・カベロ。再び各国の音楽チャートを賑わすであろう彼女の完全カムバックを前に、その輝かしいキャリアをここでもう一度振り返ろう。

 今年でソロ活動も6年目に突入し、“フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロ”だった期間より、今や“シンガー・ソングライターのカミラ・カベロ”時代のほうが長くなった。ガールズ・グループの一員としての彼女を知らないリスナーも増えつつあるのだろうし、恐らく最新作『ファミリア』のリリースで、ますます過去は遠のいていくのではないかと思う。先行シングルの「ドント・ゴー・イェット」と「バン・バン feat. エド・シーラン」が予告しているように、キューバとメキシコにある自身のルーツにオマージュを捧げると共に、かつてなくパーソナルな内容になったという今回のアルバムには、ただならぬ期待が寄せられているのだから。


 そう、1997年にキューバの首都ハバナの郊外で生まれた彼女の母はキューバ人で、父はメキシコ人。6歳の時に家族とアメリカに移住し、キューバからの移民が多く暮らすマイアミで育った。それゆえに、両親からは中南米諸国の音楽への愛情を受け継ぎ、他方で欧米のポップ・ミュージックに親しんで、12~13歳になる頃にはエド・シーランやテイラー・スウィフトに憧れてギターを練習し、曲作りに夢中になったのだとか。以下は、2016年初めのカミラの発言だ。

「ギターで自分の思い通りに何でもクリエイトできるのが、私は好き。いろんなコードや音階を模索し、ひたすら練習して、だんだん上手くなっていくのを実感すると、すごく満足感が得られる。だからギターを弾くのが大好きだし、ソングライティングも好きなの。それは私にとって、自分自身とコミュニケートし、感情を全てさらけ出すこと。嫌な日があったり、胸のつかえを下ろしたい時は、話したり考えたりするより、ソングライティングを通して表現するのが私のやり方。とてもパーソナルで、心を癒してくれて、それなしでは全く違った私になっていたでしょうね。」

 そして音楽界を志した彼女は、2012年にアメリカ版『Xファクター』第2シーズンの予選に応募。その選出過程で、同様にシンガーを志望する4人のガールズとフィフス・ハーモニーを結成したことは、ご存知のことと思う。本選に進んで3位に入賞し、翌年デビューした彼女たちは順調に大ブレイクするのだが、2枚目のアルバム『7/27』のリリースから半年を経た2016年末に、カミラはグループを脱退してしまう。

 当時ちょうど初来日公演が発表されたばかりで、突然の知らせに驚きはしたが、グループ内ではどことなく浮いた存在だったことは否めず、脱退自体は必ずしも意外ではなかった。例えば音楽嗜好。しばしばヒップホップやEDMに寄るフィフス・ハーモニーのサウンドは彼女の守備範囲とは言えず、セクシーな衣装で力強い女性像を打ち出したグループのイメージも、オードリー・ヘップバーンをアイコンとし、どこかロマンティックなファッションを好むカミラには今ひとつ馴染まないものだった。その上、マシン・ガン・ケリーとの連名シングル「バッド・シングス」を発表したりと、他のアーティストと共演し、グループの枠外で精力的に活動していたのも、後から思えばソロ転向を見越して布石を打っていたようなところがあるのかもしれない。

 2017年春には早速正式なソロ・デビューに至り、秋にはラテン・フレイバーを前面に押し出したシングル「ハバナ feat. ヤング・サグ」で、世界各地のチャートの頂点を極めた。中でもアメリカでは、同曲とファースト・アルバム『カミラ』が翌年1月の<ビルボード200>にて同時にナンバーワンを記録。ソロ・アーティストとしては、2003年にアルバム『デンジャラスリィ・イン・ラヴ』とシングル「クレイジー・イン・ラヴ feat. ジェイ・Z」で同時に1位を獲得したビヨンセ以来の快挙だった。


 その『カミラ』では全編で自ら曲作りを行ったが、前掲のコメントにもあるように、こよなくソングライティングを愛している人だけに、フィフス・ハーモニーではほとんどの場合、外部から提供される曲を歌っていたことにも不満を募らせていたのだろう。「リアルな曲を書く」ことを目標に掲げた彼女は、フランク・デュークスことアダム・フィーニー(ポスト・マローン、ザ・ウィークエンド)をメイン・コラボレーターに迎えて、たっぷり時間をかけてレコーディングを敢行。グループ時代の体験を題材にするなど等身大の曲を綴り、終始アコギを弾きながら歌う姿が想像できる生楽器を多用したプロダクションで、トレンドに捉われない自然体のポップ・ミュージックを鳴らした。【第61回グラミー賞】では<最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞>候補に挙がり、ソロ・アーティストとしての評価をスピーディーに固めたカミラはまた、トランプ政権の移民政策を厳しく批判したり、社会的な問題に対して声を上げるなど、ヒスパニック系の若いセレブリティとして自身の影響力をポジティヴに行使するようになったことも、指摘しておきたい。

 続いて2019年末に登場したセカンド・アルバム『ロマンス』(全米ビルボード200最高3位)では、実体験をもとに、“恋をすること”のハイとロー、ライトとダークのコントラストを追求。ハイ及びライトの部分は言うまでもなく、この頃にゴシップ欄を賑わせていた、ショーン・メンデスとの交際にインスパイアされたものだ。そのショーンとのデュエット曲「セニョリータ」で早くも2曲目の全米ナンバーワン・シングルを手にしたカミラは、多数のプロデューサーや共作者を起用。激しく抑揚する多様なサウンドに乗せて、恋心に翻弄される自分をドラマティックに描写し、時に脆くもあり、時に激情に駆られて行動する、ファーストとはひと味異なる表情を我々に見せてくれたものだ。

 残念ながら、2020年5月にスタートするはずだった『ロマンス』に伴うツアーはパンデミックでキャンセルを余儀なくされたものの、ロックダウンの合間を縫って彼女は、俳優デビュー作にあたるミュージカル映画『シンデレラ』の撮影に臨んだ。Amazon Prime Videoで昨年9月に公開された同作で、自ら逞しく人生を切り拓く、時代に即してアップデートされたシンデレラを生き生きと演じ、今後は役者業でも活躍が期待されている。他方で、パンデミックはサード・アルバムのテーマを具体化する時間ときっかけをカミラに与えたようだ。というのも、長い時間を実家で過ごしたことで改めて家族や自分のルーツに目を向けた彼女は、冒頭で触れた通り、『ファミリア』にキューバとメキシコを中心とした中南米の音楽を大々的に取り入れ、これまで以上にパーソナルな作品に辿り着いたという。


 このあとはアルバム発表に先立って、まずは英国バーミンガムで3月29日に開催される、ウクライナからの難民支援のためのチャリティ・コンサート【Concert For Ukraine】にエドやスノウ・パトロールと共に出演し、日本時間4月8日午前8時からは自身初のTikTok LIVE【Camila Cabello - Familia: Welcome to the Family】を生配信する予定のカミラ。これに留まらず、大舞台で彼女の姿を目にする機会が増えることは間違いないだろう。

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