Billboard JAPAN


Special

<特集>全音楽好き必聴 洋楽ヒット曲満載『SING/シング:ネクストステージ』



コラム

 『ミニオンズ』のイルミネーション・エンターテインメントが製作を手がけて、日本でも興行収入51億円を記録した大ヒット・アニメーション映画『SING/シング』。動物キャラの愛らしさのみならず、新旧ヒット曲が満載されていることでも話題を呼んだ前作から約5年、続編となる『SING/シング:ネクストステージ』が公開された。前作に引き続き、原作・脚本・監督にあたったのは、レディオヘッドやベックなどのミュージックビデオを手がけてきたイギリス出身のガース・ジェニングス。今回も音楽愛溢れる一大エンターテインメント作品となっている。

 前作で大活躍を繰り広げた動物キャラ、吹替陣も引き続き登場する。スカーレット・ヨハンソン、リース・ウィザースプーン、タロン・エガートンらが歌唱を含めた吹替で好演を繰り広げるが、今回の最大の目玉となるのがアイルランド出身のベテラン・ロックグループU2のフロントマン、ボノによる初の吹替挑戦だ。しかもU2は書き下ろしの新曲を含めて、全4曲のオリジナルソングも提供する。その新曲「ユア・ソング・セイヴド・マイ・ライフ」は、彼らにとって約2年ぶりのニュー・シングルとなり、映画のプロモーションにはボノと一緒にギタリストのジ・エッジも積極的に参加した。グループとしても、まもなく2017年の『ソングス・オブ・エクスペリエンス』に続くニュー・アルバムの制作に取り掛かるという。


 その他の3曲も、いずれもよく知られているU2の代表曲ばかり。「スタック・イン・ア・モーメント」「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終りなき旅)」「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム(約束の地)」の3曲を、スカーレット・ヨハンソン、ボノをはじめとするキャストが歌い上げ、映画の中でも重要な役目のキーソングとなっている。ボノ演じるライオンのクレイ・キャロウェイは、愛妻を失って以来、表舞台から姿を消してしまった往年のロックスターという、如何にもありそうな設定なのも音楽ファンの心をくすぐることだろう。日本語吹替版ではB’zの稲葉浩志が演じているのも話題だ。


 また新たに、ファレル・ウィリアムスやホールジーといった音楽界の人気スターもキャストに加わった。ホールジーは最新アルバム『イフ・アイ・キャント・ハヴ・ラヴ、アイ・ウォント・パワー』で、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーらとタッグを組んで、ロック界に急接近。同アルバムは、【グラミー賞】の<最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム>部門にもノミネートされている。映画の中ではUKグラムロックバンドのザ・ストラッツの大ヒット曲「クッド・ハヴ・ビーン・ミー」をカバーして、ヤー・ヤー・ヤーズの「ヘッズ・ウィル・ロール」を歌ったスカーレット・ヨハンソンと並ぶロックガールぶりで圧倒する。

 もっとも映画の最大のハイライトといえば、タロン・エガートンが朗々と歌い上げるコールドプレイの「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」を抜きには語れない。タロンによるカバーでは、打楽器パートを挟んだ新しいアレンジが施されて、手に汗握る瞬間が生み出されている。コールドプレイのオリジナルに協力したEDM界のスーパースター、アヴィーチーもきっと天国で微笑んでいるに違いない。


 一方、そのタロンとトリー・ケリーによるデュエット「ホールディン・ミー・バック」も、2人の瑞々しい歌唱がひと際光っているナンバーだ。映画のエンドロールにはショーン・メンデスによるオリジナル・バージョンも使われており、この映画の鑑賞後の爽やかな気分をいっそう盛り上げてくれる。トリー・ケリーは、前述のファレル・ウィリアムスとのデュエット「小さな願い」(オリジナルはディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリンでお馴染みのバート・バカラック&ハル・デヴィッドによる名曲)でも、とびきり愛らしい歌声を聴かせてくれる。クリスチャン歌手としての活動が多い彼女だが、もっとメインのポップシーンで活躍できそうな逸材だ。


『SING/シング:ネクストステージ』全国公開中
(C) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

 前作と同様に、世代やジャンルを超えたヒット曲が網羅されているのは今作も変わらない。笑いを誘うオーディション・シーンのメドレーには、テイラー・スウィフトの「…レディ・フォー・イット?」からエミネムの「マイ・ネーム・イズ」、スティーヴ・ミラー・バンドの「アブラカダブラ」、リッキー・マーティン、アデル、ビリー・アイリッシュ、ドレイク、DNCE……などなど、ほとんどイントロ当てクイズのように矢継ぎ早に繰り出される。

 最新トレンドという意味では、世界的なラテンブームもしっかり押さえられていて、ブラジルを代表するシンガーとなったアニッタや、映画やゲームなどで頻繁に用いられてきたコロンビア出身のボンバ・エステレオの「ソイ・ヨ」なども登場する。1970年代のエルトン・ジョンのヒット曲「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」から、2020年のビリー・アイリッシュの【グラミー】受賞曲「バッド・ガイ」や、更には1980年代のホイットニー・ヒューストンの秘蔵の歌声を、昨年ノルウェー出身のDJ/プロデューサーが蘇らせた「ハイヤー・ラヴ」まで、正しく時代を超えた多彩なヒットソングが並んでいる(この3曲はCD盤にのみ収録)。


 日本語吹替版には、内村光良をはじめ、MISIAや長澤まさみ、大橋卓弥(スキマスイッチ)、斎藤司(トレンディエンジェル)ら前作で大好評だったキャストが再び集結。日本語版の音楽プロデュースを担当した蔦谷好位置、日本語歌詞監修のいしわたり淳治、音響監督の三間雅文の制作チームも続投する。日本盤CD&デジタル版『シング:ネクストステージ-オリジナル・サウンドトラック』には、長澤まさみによる「スタック・イン・ア・モーメント」、大橋卓弥による「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」、アイナ・ジ・エンド(BiSH)による「クッド・ハヴ・ビーン・ミー」、坂本真綾&斎藤司による「ブレイク・フリー」が追加収録されている。

 普段はあまり洋楽に親しんでいない人の入門編としても最適だと思われるこのサントラ。お気に入りのジャンル以外は聴かないというリスナーにとっても、広く世界で聴かれている音楽を知る絶好の機会となるに違いない。このサントラを聴くたびに、今回動物たちが力を合わせて乗り込む架空都市“レッドショア・シティ”や“SFミュージカル・ショー”が思い出されたり、あの迫力のビジュアルやテーマパークのような楽しさが蘇ってくるはずだ。

関連キーワード

TAG

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  4. 4

    <ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

  5. 5

    ロゼ&ブルーノ・マーズ、11/22大阪開催【MAMA】で「APT.」世界初披露へ

HOT IMAGES

注目の画像