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中川翔子 『心のアンテナ』 インタビュー
中川翔子 松本隆×細野晴臣のネ申コンビでポケモン主題歌!
「グレンラガン」主題歌に続き、今度は「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール アルセウス 超克の時空へ」主題歌を担当する彼女。その作詞作曲に松本隆×細野晴臣を迎え、さらに自身が敬愛する後楽園遊園地のキャンペーンソングから、もうひとりのネ申 松田聖子カバーまで。超充実の1枚となったニューシングル『心のアンテナ』について、春の全国ツアーの想い出と共に訊いてきましたので、ライブレポートと一緒にお楽しみ下さい!
「コンサートって何なの!? 生きてる!」
--【中川翔子 マジカルツアー2009】は本当にぐっとくる最高の公演になりました。
中川翔子:始まる前と終わった後、感覚が全然違いますね。こんなに楽しくて新しい出会いがあって、こんなに興奮できる空間なんだって勉強できて、楽しかったです! 去年やりたいことを色々詰め込んじゃったから最初は悩んだし、元々踊りが苦手なこともあってドタバタだったんですけど、みんなの気合いも去年よりヒートアップしていて、貪欲で……。「この瞬間って魔法みたい!」って思うことが何回もありました。
でもツアーの数も去年より多かったし、他のお仕事もあるから声を休ませることができなくて、名古屋で声帯炎になっちゃって……。中止になりかけたりもしたんですけど、色んな所から駆けつけてくれるみんなを思ったら絶対にそんなことできない。ただ、話すこともできない状態だったので絶対に無理と思ってたんですけど、社長が「声じゃなくて気持ちでやりなさい!」って。
それで舞台に立ってみたらみんなが応援してくれたおかげか、何とか歌えたんです。バラードでムセちゃって泣きそうになった時も、「俺らが歌おうぜ!」って合唱してくれて、最後も『空色デイズ』を合唱してくれて……、感激でしたね。そういうピンチがあったから、「最終公演は全員で作らなきゃ!」っていう気合いになって、何とか終わることができたんじゃないかなって思います。
最終公演で全部終わった後、会場の照明が付いて『涙の種、笑顔の花』のSEが流れたんですけど、それに合わせてお客さんが全員で合唱してくれたんです。しかもみんなお花を用意していて、持ってこなかった人のために造花を1,000本も持ってきてくれた人もいて……。凄い感激でしたね、「コンサートって何なの!? 生きてる!」って感じがして。ピンチがあったからこそ、あの最終公演に繋がったと思うと、何か(週刊少年)ジャンプの漫画みたいでしたね(笑)。
--確かに見ていてもグッと来るものがありましたよ。
中川翔子:全員が参加する意識でやってくるのが本当に凄いなって。みんなの貪欲さでまたしても色んなことを教わって、助けてもらって、みんながいたから声が出たんだと思う。リハーサルでもまったく歌えなくて大泣きしちゃってたんですけど、……何で本番で歌えたのか、魔法としか言いようがないですね。みんなが作ってくれた貪欲空間は凄いです!
--ライブ中、「色んな文化を自分たちで作っちゃったね」という言葉もありました。
中川翔子:それも来ているみんなが自発的にやってくれた結果の文化で、「コスプレして来てね!」なんて言ってなかったんですけど、全力で今を生きることを楽しむために、みんなが好きでやってる。そういう気合いを教えてもらいましたね。
--また、実に20曲を超えるアニソンをメドレー形式で披露する一幕もありました。
中川翔子:去年は5曲くらいだったんですけど、絞り切れなくて悩んでたら「1コーラスで繋いでみたら?」って話になって。それでもまだ多かったから2パターンに分けて交互にやったりしてたんですけど、最終公演では全部繋げて歌いました。母から「なげーよ!」って言われましたけど(笑)。
それにアニソンメドレーまで生バンドでやるって意味わかんないですよね? しかも何度も何度もパターン変えたり、曲を入れ替えたり……。普通だったら無理って言われちゃうと思うんですけど、何も言わずに全力でやってくれたバンドさんもCOOLで嬉しかったですね。
--そして通称“ナミエ”と呼ばれる『涙の種、笑顔の花』も、あの千秋楽の最後に歌われたことで、みんなにとって大切な1曲になりましたよね。
中川翔子:ツアーの序盤はまだみんなが知らない楽曲だったので、(本編の)ラストに歌うのはチャレンジだったんですけど、ずっとやっていくことでみんな覚えてくれたし、最終公演では笑顔の花を咲かせてくれて。感極まって号泣しながら歌ったんですけど、それは嬉し涙で、「こういう歌い方もあるんだ」って気付けたんですよ。それはレコーディングでは気付けなかったことで、ステージの上じゃないと分からなかった。ツアーの序盤と最終公演とではまた全然違うし、歌詞を書いてくれたmeg rockちゃんにもみんなにも感謝ですね。
Interviewer:杉岡祐樹
気持ち良い時間を選んで生きていかなきゃいけない
--では続いて7月15日にリリースとなるニューシングル『心のアンテナ』ですが、今回もネ申タッグが実現しましたね。
中川翔子:恐れ多すぎて口にすることもできない組み合わせです、 松本隆さんと細野晴臣さんは……。映画「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール アルセウス 超克の時空へ」の主題歌を歌えることが決まって、ポケモンのスタッフさんが「お二方に頼みたい」という形で実現した夢なので、導かれたようでした。松本さん、細野さん、映画ポケモンの主題歌。しかも映画では“ギザみみピチュー”というポケモンの声優も担当させて頂くことになったんですけど、大きな出来事がドドンッと来たのでまだ処理しきれていないです。もう今後の運気を使い切ったって感じで(笑)。
--『心のアンテナ -Haruomi Hosono Original Mix-』をレコーディングしたのはいつぐらい?
中川翔子:細野さんのご実家で録音したんですけど、松本さんも軽井沢から駆けつけて下さって。松本さんとは『綺麗ア・ラ・モード』の時よりもお話しできて、軽井沢に別荘を造っていることとかオンラインゲームにハマッていることとか(笑)。細野さんには「このカレーパン、美味しいから食べなさい」って言ってもらえたことが忘れられないですね!
レコーディングは緊張している場合じゃないから一生懸命歌おうと思ったんですけど、歌詞が深くて難しいんですよ。そうしたら松本さんと細野さんがドラクエのように並んでブースに入ってきて、「ココはこうだよ!」って同時に歌詞カードを指差して! その瞬間は本当にBlu-ray Discに録画するべきだった(笑)。
--確かに難しい楽曲ですよね。
中川翔子:文字数は少ないんですけど深いですね、歌詞が。 アレンジの違いでも全然違う曲になるし。 1曲目の『心のアンテナ』の方は明るいアレンジになってるんですけど、そのレコーディングの時も松本さんが駆けつけて下さって、「僕の歌詞は何も考えない方が良いんだよ」って。その方が聴き手にとっては意味が沁みてくるから良いって、それがまた深いですよね……。辛いこと哀しいこと苦しいこと、人間の心って波があるから上手くいかない時は黒くなっちゃったりもするんですけど、限られている一瞬々々を幸せに生きるために、相手を思い遣ること、愛すること。今を大切に生きることが大事なんだって気付かせてもらえる曲でした。
--また、今作も“空を感じさせる”曲となっていますよね。
中川翔子:空とか風とか、歌っていても気持ち良いですよね。ふっと空を見上げてほっとする瞬間、そんな歌です。最近、 椿姫彩菜ちゃんと仲良くなったんですけど、彼女は本当に思い遣りのある、他人を悪く言わない娘で。学生時代、悪口を言われてるのは分かってるけど、怖いから無理して仲良くしたりもしてたんですけど、そうじゃない。気持ち良い時間を選んで生きていかなきゃいけないんだって、『心のアンテナ』を歌っていると思いますね。でも詞が本当に深いから、何処かで歌える機会があったら変わっていくような気もします。
--続くM-02『せーので恋しちゃえ♥』では、meg rockさんと共作で作詞も担当した楽曲です。
中川翔子:私がプロデュースするイベント「恋活遊園地 in 東京ドームシティ“しょこたんのマジカルサマー”」(7月18日~9月13日)テーマソングになってるんですけど、後楽園遊園地も死ぬほど好きで。昭和の後楽園の画像とか動画を集めるために、ヤフオクで高いお金を出して当時のチラシを買ったりしてるんです(笑)。
私は3歳の頃から「“スカイフラワー”の天辺でチューするぞ!」って決めてたんで、自分がしたいデートコースを描いた感じですね。取りようによっては1番の歌詞が男子からの視点で、2番が女子からの視点にも聴こえると思うんですけど、時間帯も昼間から夕暮れになっていく中で“スカイフラワー”でチューしちゃって、噴水広場で一番星を見上げながら「これからもラブラブしましょうね♪」みたいな。チクショー! って感じですね(笑)。
Interviewer:杉岡祐樹
聖子さんの歌だけは絶対にカバーしちゃいかん
--楽曲はしょこたん得意のアップテンポなナンバーになってますよね。
中川翔子:曲は「涼宮ハルヒの憂鬱」のED『ハレ晴レユカイ』を作った田代智一さんが手がけてくれたんです。後楽園で一日中かけてもらえるらしいので、何度聴いても鬱陶しくない歌い方にしたくて、力加減が難しかったですね。
期間中は後楽園のカフェのメニューとか巨大マミタスオブジェとか、お化け屋敷に生首置いたりとか(笑)。色々やらせて頂けるので、どんな人たちも楽しんで頂けるような楽しい遊園地にしたいです! 本当に嬉しいです。
--そして『硝子のプリズム』はもうひとりのネ申、松田聖子さんのカバーになります。
中川翔子:コンサートでは歌わせて頂いてたんですけど、聖子さんの歌だけは絶対にカバーしちゃいかんと決めてたんですよ、好きすぎて崇拝なので。でもやっぱり松本さん細野さんというまたとない機会なので、愛、尊敬を込めて歌っちゃえ! ってことで。
13歳で初めて聴いた時、「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫 もう…屈折しそう」ってフレーズでゾクッてしましたね。昔はあだ名で呼び合っていたのに今では“さん”付けで、車も途中で降ろされちゃったりとか、当時は気付かなかったんですけど、哀しい歌なんですよね! 涙を堪えながらも切なく歌う、当時の聖子さんの映像なども観返したりして……、こりゃあタマランですね!
ただ、時間がなくてレコーディングは声帯炎真っ最中の時に強行することになってしまったんです。でもこれじゃ絶対に一生後悔する! って声が治ってから無理やり機会を頂いて、何とかレコーディング終わらせることができたんです。コーラスも自分でやりたかったんです、ここが超80'sポイントなんで! 当時生まれていない娘とかもいると思うので、是非聴いて欲しいですね。
--あと、今作で面白いのが『せーので恋しちゃえ♥』で恋をして『心のアンテナ』で愛を知り、『硝子のプリズム』で別れへ……って、恋愛の始まりから終わりまでが揃ってるんですよね。
中川翔子:うわ、凄い! ホントだ! ……気付かなかった。ありがとうございます(笑)。早くコンサートしたいっていう楽しみな気持ちもあったりして、自分の中での色んな気持ちが詰まった濃い1枚、特殊な1枚になりましたね! あと、シングル『心のアンテナ』には“ギザみみピチュー盤”というのもあるんですけど、ジャケットが最ッ高ですよね!?
--こちらには『もえよ ギザみみピチュー!』なる楽曲も収録されるようですね。
中川翔子:是非、“ギザ”の数を数えて欲しいですね! アフレコしてても何度も泣きそうになっちゃいました。歌詞も不思議ですよね、カオスです(笑)。ポケモンの映画の声優をやらせて頂くのもこれで3回目なんですけど、最初は人間役で台詞が3つくらいしかなくて、前回はアンドロイドで今年はポケモン。どんどん人間から離れていくんだけど、ギザみみピチューが一番すんなりできて、人間の時が一番苦労しました(笑)。ギザみみピチューは「ピー」と「チュー」だけで感情の移り変わりを表現しなきゃいけないから難しかったんですけど、本編の収録が始まる頃にはギザみみピチューの視点で世界が見れたりとか。ギザみみピチューって生きてるんだ! って思えたし凄く楽しかったですね。
--このシングルの発売も楽しみですが、遂にこの秋、武道館公演が決定してしまいました。
中川翔子:怖いですね(笑)。でも、みんながツアーで教えてくれたこと、絶対に1ミリたりとも忘れてなるものか! って心に刻んで、やっぱり貪欲に。シングルを出せてまた曲も増えるので、歌う機会を大事に大事にして行きたいですね!
Interviewer:杉岡祐樹
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