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<インタビュー>米ビルボード・ウーマン・オブ・ザ・イヤーのオリヴィア・ロドリゴ、怒涛の1年と次回作を語る
オリヴィア・ロドリゴが、失恋バラード「drivers license」で2021年初の大ヒットを記録した時、それが彼女の躍進の年を象徴する唯一の結果になる可能性はかなり高いと思われていた。何しろこの楽曲は、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で初登場1位を獲得したあと、8週間トップを維持するという、公式なデビュー・シングルとしてはほぼ前例のないレベルの快挙を達成したからだ。
だがオリヴィアのルーキー・シーズンが終わるころには、「drivers license」は彼女の数々の功績のほんの一部になっていた。次に発表した「good 4 u」は、彼女にとって2度目となる“Hot 100”首位を獲得しただけでなく、痛烈な別離後のメッセージあるこの楽曲が持つ一緒にシャウトしたくなるようなコーラス、焼け付くようなギター、脈打つドラム・フィルは、それまでヒタヒタと浸透してきていたポップ・パンクのリバイバル・ブームが正式にメインストリームでブレイクした証となった。
この2曲が収録されている、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”首位獲得アルバム『サワー』は、2021年に最も売れたフル・アルバムの一つとなり、評判も上々で、今年の【グラミー賞】の<最優秀アルバム賞>にノミネートされた(オリヴィアは今年4月に授賞式が開催される同賞で、7つの部門でノミネートされている)。ソロ活動を始めてわずか1年の19歳のシンガー・ソングライターは、自身が一発屋でも二発屋でもなく、シンプルにオリヴィア・ロドリゴというアーティストであることを世に知らしめた。
2021年1月に「drivers license」が発売される3日前にオリヴィアとの契約を発表したゲフィン・レーベルを擁するInterscope Geffen A&M(IGA)の会長兼CEOであるジョン・ジャニックは、「世界中にいるさまざまな立場の人々が、あるアルバムやアーティストとこれほど強力につながるとき、邪魔をしないことが肝心です。アーティストとプロジェクトにとって正しいこと、信頼できると感じることをするのです。また、長期的な視野で物事を考えます」と述べている。
▲「drivers license」 / Olivia Rodrigo
短期的な面では、2022年4月から7月上旬まで北米と欧州を巡る予定となっている、オリヴィアにとって初めてとなるワールド・ツアー【サワー・ツアー】の準備だろう。このツアーに関しては、初期の大ヒットのおかげでアリーナ級の会場を満員にできることは間違いないにも関わらず、彼女は小規模な円形劇場やコンサート・ホールを主に訪問することを選択した。この控えめな戦略について彼女は、「自分のキャリアの段階をスキップしないことが重要だと思うんです」と説明しつつ、「あとは、これらのより親密な会場で演奏して、自分のファンをより深く、より個人的なレベルで知るようになることが本当に楽しみなんです」とコメントしている。
それに加え、米ビルボードによる2022年の<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>に選ばれたオリヴィアは、これから自分自身を再認識し、次のアルバムのための土台を築くことになるが、そのプロセスを自身のチームに新しく加わった重要人物と共に進める。彼女は1月に長年のマネージャーだったCamp Far Westのクリステン・スミスと別れ、最近Lighthouse Media + Managementのアリーン・ケシシアンとザック・モーゲンロスと契約した。Lighthouseは、セレーナ・ゴメスをはじめ、多くのトップ俳優を擁する事務所だ。
ケシシアンは、「オリヴィアは、一世代に一人いるかいないかというレベルのシンガー・ソングライターです。私たちは、彼女の類まれな知性、勤労意欲、感性、そしてヴィジョンに圧倒されました。彼女と知り合って、彼女がいかに地に足が着いているか、そしていかに感謝の気持ちを持っているかを目の当たりにし、とても感動しています。彼女は協力的なだけでなく、協力者を尊重し、感謝もしています。アーティストにとって、提案を受けとめて統合しながら自身のヴィジョンを確実に実現できるという資質は、非常にユニークであり、オリヴィアが得意とするところなのです」と絶賛している。
今後のオリヴィアは、シンガー・ソングライターとしてよりもディズニーTVのスターとして知られていた高校生の頃とは違うプロセスを踏むことになりそうだ。しかし、彼女は既に『サワー』の共同作詞作曲家/プロデューサーであるおなじみのダン・ニグロと再タッグを組んでおり、次回作の制作が進行中で、すでにタイトルさえ決まっているという。
By Andrew Unterberger / Billboard.com掲載
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David Needleman
ーーこの1年で、「こんなことが自分に起こるなんて信じられない」と思った瞬間は数知れずあったと思いますが、その中で特に印象に残っているものはありますか?
オリヴィア・ロドリゴ:人生で最高の瞬間のひとつだったのは、ホワイトハウスに行ってジョー・バイデン米大統領に会い、米国でのワクチン接種の推進を支援できたことですね。ホワイトハウスでこの素晴らしい体験をしている間中ずっと、自分のベッドルームで何曲も書いたからこそこんなことができてるんだって考えていました。まさに“私をつねって!”と言いたくなるような瞬間でしたね。
ーー『サワー』は、2021年で最も売れ、最も評判の良かったアルバムのひとつでしたが、発売後、あなたはこれをある意味音楽的に放置していましたよね。『サワー』時代を補強するためのデラックス・エディションやボーナス・トラック、公式リミックス、コラボや1回限りの企画などが昨年は一切発表されませんでした。このアルバムを自立させることは、あなたにとって重要だったのでしょうか?
オリヴィア:ボーナス・トラックやスペシャル・エディションを作らないことにしたのは、『サワー』が自分の人生であまりにも特別な時代だと感じていて、曲やアルバムを呼吸させる時間をあげたいなって思ったからなんです。そして、そうですね、自分の音楽の新しい時代を作るのが楽しみです。このアルバムが、ひとつの作品として存在していた感じがすごく好きなんですよ。
ーーアルバムのリリースから約1年後にツアーに出発するわけですが、これだけ時間が経つと楽曲とのつながり方は違ってくるものでしょうか?
オリヴィア:曲作りで本当に素晴らしいのは、自分にとって非常に個人的だった楽曲が、世に出て別の命が吹き込まれていく様子を見れることです。ですから、ベッドルームで曲を書いていた時よりも、今パフォーマンスするほうがより特別です。今ではほかの多くの人々の物語もそこにより合わさっているので。ツアーでそれを直接体験できることが本当に楽しみです。
ーー曲作りをやめることはないと思いますが、新しいプロジェクトを意識した曲作りはできていますか?
オリヴィア:次のアルバムのタイトルは決まっていますし、数曲できています。これから始まる自分の次の世界のことを考えると、本当にわくわくします。曲を書くのが本当に好きなんですよ。あまり自分にプレッシャーをかけないようにしています。今はただ、探りながら楽しみたいです。
David Needleman
ーー『サワー』の主要なアーティスティック・コラボレーターであるダン・二グロとはまたスタジオ入りしていますか?次のプロジェクトが何であれ、また一緒に仕事をすることにコミットしているのでしょうか?
オリヴィア:ダンと一緒に仕事をするのは最高です。私たちはとても良いグルーヴ感を生み出せています。いつもアイデアを出し合って、スタジオで一緒に作業する時間を確保しています。『サワー』が世に出たときの狂騒は、実際には私とダンだけが共感できるものだったので、それが私たちの絆を一層強めてくれたと思います。彼をとても信頼していますし、私たちが作ってきた音楽をとても楽しんでいます。
ーー「good 4 u」の爆発的なヒットは、それまでメインストリームの表面下で浸透していたポップ・パンク・リバイバルを後押しする大きな役割を果たしたように思います。そのジャンルとのつながりは感じていますか?
オリヴィア:ポップ・パンクやエモ系の音楽は本当に大好きなんです。ああいう、音楽における超エモーショナルで洗練されていない瞬間に人々は何より憧れていて、パンクのアグレッシヴな側面がすごく魅力的に感じられるのだと思います。
ーー2022年のポピュラー・ミュージックに最も期待していることは何ですか?
オリヴィア:ポップ・ミュージックおけるジャンルの垣根がどんどんなくなっていることが最高だと思うんです。一言で“ポップ・ミュージック”と言ってもさまざまな意味がありますし、最近は本当に色々なフレーバーを聴くことができてすごく楽しいです。あと、女性のシンガー・ソングライターたちが、とても正直に、誠実に発言していることにも胸が躍ります。それはいつも私にとって刺激的なんです。最近のように若い女性たちの意見が聞かれ、評価され、賞賛されているのを見ると本当にわくわくします。未来のこととか、仲間たちのこととか、次世代の女性シンガー・ソングライターたちを応援したくてたまらないんです。
ーー「drivers license」以降、曲作りはそれまでと違う感じですか?同じような自由奔放さで曲を書けているのでしょうか?
オリヴィア:デビュー作が好評だっただけに、2ndアルバムを書くのがまた違った経験になっているのは確かです。でも、私は今でも自分のベッドルームで多くの曲を作っていますし、その経験はこれからも変わらないと思います。曲作りが、いつまでも私にとって何よりも先に自分の感情を処理するためのはけ口であってくれたらいいなと願っています。
By Andrew Unterberger / Billboard.com掲載
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