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<コラム&メール・インタビュー>CVLTE初ワンマンで提示された“バンドの本質”、フロントマンaviel kaeiが描き出す“理想の音楽”



コラム

カリスマ・フロントマンが率いる次世代バンド

 2022年1月15日、4人組バンドCVLTEがキャリア初のワンマンライブ【RITUAL vol.1】を東京・渋谷WWWで開催した。その模様が現在、2月28日までの期間限定でYouTubeに公開されている。

 2018年に本格的な活動を開始し、地元・札幌を中心にライブを行いつつ、その音楽性やビジュアルのクオリティの高さが話題を呼び、“SNS世代のニュー・アイコン”とも呼ばれるCVLTE。特にアルゼンチンと日本をルーツに持つフロントマンで、ソング・ライティングの中心でもあるavielは、現在21歳ながらすでに強いカリスマ性を感じさせる。



aviel kaei(Vo)



 バンドは当初、Sleeping With Sirens(日本ではONE OK ROCKとの交流でも知られる)やI See Starsといったアメリカのポスト・ハードコア/メタルコアのバンドに影響を受けていたが、もともとavielは中学生のときからDTMで楽曲を作っていて、バンド・サウンドに捉われない自由な感性の持ち主。そんなavielの本質が表れ、ラッパーの釈迦坊主らがゲスト参加したEP『616』で、ジャンル横断的なバンドのスタイルを確立すると、昨年は国内外からゲストを招いた1stアルバム『praystation 2』と、これまでの英語詞中心から日本語詞も大胆に取り入れた最新EP『HEDONIST』を発表。ワンマン・ライブの数日後には、Spotifyが2022年の飛躍を期待する注目の国内新進アーティスト『RADAR:Early Noise 2022』に選出されている。

 ライブはこれまでサポートを務め、この日、バンドへの正式加入が発表されたドラマーのHALをフィーチャーしたオープニングで幕を開け、序盤はオートチューン使いが印象的な「robbers.」や、場内から一斉に手が上がったアンセミックな「heartbreak.」といった『praystation 2』からの楽曲を披露。同期を駆使しながら楽曲ごとに世界観を構築するバンド演奏や、シアトリカルな雰囲気のVJもさることながら、やはりステージ中央でスキルフルなボーカルを聴かせるavielの存在感が際立つ(以下の発言はワンマンライブ後に行ったメール・インタビューに対する、avielからの回答)。

「CVLTEの音源のドラムは僕のこだわりで打ち込みにしているので、ライブではしっかりHALの見せ場を作りたいと思い、オープニングの演出を考えました。HALはもともとMAKE MY DAYというメタルコア・バンドのドラマーで、僕の音楽のルーツもメタルコア/ポスト・ハードコアだったので、そこがリンクしたというか。力強くて、でも繊細で、細かいところにもこだわりを持っている素晴らしいドラマーです。」

「歌に関してはリリックに感情を乗せることがあまりなくて、感情とスキルのどっちを取るかを考えたときには、圧倒的にスキルのほうが重要だと思っているんです。スキルがあれば感情が乗っているふうに歌うこともできますし、淡々と歌うこともできて、表現の選択肢が増えるんですよ。」




 ライブ中盤では福岡発の次世代メタルコア・バンド、PaleduskからフロントマンのKaitoがゲストで登場。かつてイギリスをはじめ、欧米でも活躍した日本発のデジタル・ハードコア・バンド(エレクトロニコアの先駆けとも言える)、THE MAD CAPSULE MARKETSをいまに更新するような「eat acid, see god.」、トラップ・ビートを用いた「ritual.」など、avielのエモーショナルな歌とKaitoのスクリームが交錯し、パーティー・モードを強めていった。

「Kaitoは僕から見たら陽キャというか、僕は完全に陰の側の人間なので(笑)、住む世界が違うなと思う部分があって。でも、そこが合わさって化学反応が起きているのかなって気がします。やっぱり彼の声が好きですし、メンタリティもフロントマンとしての佇まいもカッコよくて、友達としてもなまらいいやつですし、リスペクトしています。」


初ワンマンで見えた“伝えたいこと”

 ライブ後半では最新作『HEDONIST』からの楽曲が続けて披露され、歪みを抑えて、これまでになくポップなアプローチを見せた「hedonist.」や、日本発のハイパー・ポップを掲げる4s4kiをゲストに迎えた「kuromi.」など、より多彩になった現在のバンドのモードを提示。avielは近年ではDJ/プロデューサーのポーター・ロビンソンや、同じくジャンル横断的な作風を展開するSayWeCanFly、nothing,nowhereのようなアーティストにシンパシーを表明していて、やはりこの開かれた感性がバンドの大きな魅力に繋がっている。

「他人が勝手にCVLTEにジャンル名をつけてくるのがものすごく嫌いで、何でも当てはまるから一番手っ取り早いという理由で、ずっと“オルタナティブ”を名乗っているんですけど、『HEDONIST』は安易にカテゴライズできないような作品になっています。5曲だけでフルアルバムを聴くのと同じ満足感を感じさせるというのを意識しながら制作しました。僕は常に自分にとっての理想の音楽を作っていて、いま作っているのは21歳の自分の理想の音楽で、来年には変わっているかもしれません。CVLTEにおいては僕が正解だと思えば全部正解なので、制限をかけずに自分が思う良い音楽を作り続けて行きたいです。」




 ライブ終盤でavielはオーディエンスに向けて、「ぶっちゃけ、俺はいますごい感動してるよ。こんな自己満音楽がさ、これだけの人に届いて、もっと来れなかった人もいるってことでしょ?(この日の公演は事前にソールドアウト)」「俺はこれからも人のために音楽を作ることは絶対にしないけど、それでもついてきてくれる人たちみんな愛してます。ありがとう」と呼びかけると、胸の前でハートを形作ってみせる。

「MCで言ったことに関してはけっこう本質だと思っていて、人のために作ったとしても、それがもし自分のやりたいことじゃなかった場合、絶対にやるべきじゃないと思うんです。もしそれでみんなが喜んでくれたとしても、のちにそれが自分の首を絞めることになるので。実際にライブで演奏するときに『幸せだな』『楽しいな』と思えるように、あとで後悔することがないように、自分が好きなものだけを作っていきたいと思ってます。」

 ジャンルレスであることが一般的になり、リスナーの好みも細分化し、特定の音楽ジャンルが世界的なムーブメントとなって、それに後続が一斉に続くという現象が起きにくくなった時代において、重要なのはアーティストが何かに寄りかかることなく、自らの音楽を信じ、それを発信するパワーである。avielの言葉を借りるなら、ポジティブな「自己満」のパワーこそが、国境を越えて多くのリスナーを巻き込みうる。ライブ終盤では再び『praystation 2』からの曲を続け、リリカルなメロディーの「memories.」をステージに座ってしっとりと届け、ラストの「wasted times.」で「心の中で一緒に歌おう」とオーディエンスに呼びかけたavielは、この日のライブを終えての心境の変化をこのように語ってくれた。




「この日、初めて『あ、CVLTEってこんなに愛してくれてる人たちがいるんだ』って気づいたのと、その愛を実際に体験して、言葉にし切れない感動がありました。この日を境に、音楽を通してオーディエンスに伝えたいことが見えてきたような気がします。」

 “SNS世代のニュー・アイコン”が、初めてオーディエンスの存在を実感した初のワンマン・ライブ。ひたすらに自身の音楽を信じ、アレンジやボーカルのスキルを磨き続けてきたこれまでと、オーディエンスに向けた開かれたメッセージが結びついたとき、CVLTEは世代に限定されることのない、音楽シーンの真のアイコンになりうるかもしれない。



CVLTE - RITUAL vol.1 (Supported by The Orchard Japan) [Official Livestream]


Text by 金子厚武

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