Billboard JAPAN


Special

<インタビュー>シズクノメ 手探りしながら完成させた新曲「Why”you”」

シズクノメインタビュー

 2019年9月18日に結成した5人組バンド・シズクノメが、2ndデジタル・シングル「Why”you”」をリリースした。「リズムで〇〇メドレー」などの動画から人気に火が付いた注目の次世代型バンドは、作詞・作曲・撮影までを自ら行い、音楽と映像そしてクリエイティブの面では今のところ敵無し。

 別れと旅立ち、かけがえのない日々を綴った新曲は、人生の分岐点に立つことが多いこの時期に心によりしみる。メンバー全員が胸を張るこのバラードの制作過程やバンド成長のために必要だったある出来事、そして彼らの卒業式エピソードまでが赤裸々に明かされる最新インタビューをどうぞ。

左から:YAH(Ca)、しゅん(Vo.)、宮本 テツ(Dr.)、ミチヒロモトキ(Gt. / Vo.)、ぐれむりん(Key. / Cho)

――新曲「Why”you”」は、最初どんなイメージからできていったんですか?

ミチヒロ:初めに頭の中に「Why”you”」って言葉と歌い出しのフレーズが出てきたんです。「『Why”you”』ってどんな意味なんだろう?」と考えながら、そのフレーズを元に作っていった感じですね。曲作りは、いつもそういう感じで始まるんです。

――この曲はドキュメント的なメイキング映像がYouTubeにアップされてますが、デモを最初に聴いたときからメンバーのみなさんはいい反応をされてましたね。

しゅん:うちらの曲はデモの段階でも世に出せるくらいのクオリティーで上がってくるんですけど、これはみんなの感触がよかったですね。

YAH:うちらの一番最初の曲「ワンナイトスタンド」のときからそうなんですけど、ほんとにデモからクオリティー高いんですよ。特に今回、自分的にはシズクノメの曲の中で一番好きかもしれないです。それくらい、最初に聴いたときからインパクトの強い曲だなと思いました。

――曲のブラッシュアップはどう進んだんですか?

ミチヒロ:デモを元にアレンジを始めたんですが、完成形とデモの1番の違いは鉄琴みたいなイントロをなくしたことです。この曲自体が、冬の終わりから春の始まり、寒さが残る春ってイメージだったんです。でも、最初のデモのイントロだと真冬っぽかったので、より自分の頭の中にあるものに近づけるように作っていきました。アレンジの作業自体は、アレンジャーさんと一緒に試行錯誤しながら進めて、ほぼ完成形まで固めるんです。レコーディング現場で、メンバーのその場のノリやアイディアが加わっていく感じですね。

――なるほど。では「Why”you”」というワードですが、直訳だと「なぜあなたは」になると思うのですが、ミチヒロさんの中ではどんなものを想像していたんですか?

ミチヒロ:オレの中では、「Why”you”」の意味を探すこと自体がこの曲の作詞作曲だったんです。それを見つけるために書いていったっていうのが一番近いかもしれないです。なので、質問に答えるとするならば、歌詞を読んでくださいって感じになるんですよ。

――歌詞には、別れと旅立ちの場面、そこから進んでいく思いが描かれていますね。

ミチヒロ:そうですね。冬の終わりから春の始まりの頃って、学生も大人も別れの季節じゃないですか。その別れに向かう過程の一瞬を書きたかったんです。作り終えたあとに、「Why”you”」っていうのはそういうことだったんだろうなって思いました。この曲に限らないですけど、完成したときに、言葉が降りてきたときの自分と答え合わせするような感覚なんです。

――では、YAHさんは歌詞にはどんな印象を受けましたか?

YAH:オレはカメラなのでMVを作るって考えになるんで、最初に歌詞を見ると情景が浮かぶんですよ。別れ方にもいろいろあると思うので、どう表現しようかを考えました。この曲は、パッと浮かんできたときに全体の型ができたんです。そこからミッチー(ミチヒロ)とすり合わせて構成を作っていったんです。

――MVのイメージをお聞きしたいです。

YAH:(取材の時点では)これから撮影なんですが、今回シズクノメとして初の縦の動画にしようと思ってるんです。今は若い子はケータイを横にして見ない人もいるみたいだし、縦の動画が流行りだったりするので。上の画面が過去、下が現在って二軸構成にした男女の物語にしようと思ってます。あとミッチーが言ってた卒業だったり別れだったりの一瞬の儚い感じを、男女の物語としてわかりやすく表現したいなと思ってます。


――しゅんさんは歌詞に対してどういう感想がありますか?

しゅん:まず曲全体の印象として、デモの段階では今みたいな壮大な印象はなかったんです。アレンジが進んで、各々の楽器が曲に魂を入れるみたいな感じで曲が大きなものになっていったんです。極端に言うと、最初と完成形では曲自体の印象が全然違いましたね。歌詞は最初のデモの段階ではなかったし、最後の最後までモトキが悩んでたんですよ。できた歌詞について、モトキから説明や込めた思いを聞いてから歌っていったんです。

――歌うときにこだわったポイントは?

しゅん:基本、うちの歌レックは、モトキと2人でディレクションしながらやるんです。最初にモトキが録った仮歌を聴いて、それを元に「オレだったらこう歌うな」って録っていくんです。モトキから歌詞のイメージを聞いて、それを自分の中で噛み砕いて自分の経験とモトキの経験を織り交ぜて歌う感じですね。それが、よりリスナーに届きやすい形になればいいなって思いがあります。

――抑えきれずに感情が爆発するようなボーカルが印象的ですが、歌は表現しやすかったかですか? 難しかったですか?

しゅん:この曲に限らないんですけど、オレはボーカル録りのときに「絶対自分の中の100%を出し切ろう」って気持ちで臨んでるんです。でも、オレは歌を歌うことで難しいって思ったことはないんですよ。

――歌の表現の追求は苦じゃないってことですか?

しゅん:そうですね。モトキのリクエストに応えたいって気持ちがあるので、モトキが納得いかなかったら「じゃあ、これはどう?」って提案をしていく感じです。なので、「今回レックしんどかったな」って思いはなかったですね。

ミチヒロ:それで言うと、シズクノメとしてここまでレコーディングを重ねてきて、しゅんとの意思疎通度がどんどん上がってきてるんです。「こういう歌の感じでやりたいけど、しゅんなりに表現するならどう?」って聞くと、前は「それはどういうこと?」っていうやり取りがあったんです。それがどんどんやりやすくなってる。そのぶん、さらに試行錯誤に時間を割くようになったんです。

――意思疎通がスムーズになったぶん、作品をよりよくするために時間をかけるようになったと。

ミチヒロ:そうです。結果的に、この曲の歌録りは今までで一番時間かかりました(笑)。

しゅん:そうだね、長かったね(笑)。

ミチヒロ:昼から始めて朝4時までやってたからね。

――それだけ気持ちを込めて歌わなければ表現できない曲だったと。つまりは、シズクノメにとってもすごく大事な曲であるってことですね。

ミチヒロ:ほんとにそうです。

しゅん:確かに、それは自分も感じました。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. 3人の卒業エピソード
  3. Next >

友達5人と勝負したんです
オレが一番でした(笑)!(YAH)

――曲中の2番のAメロだけミチヒロさんが歌うパートがあります。2人で歌うことによって、人の心の中にある様々な感情がより広がって聴こえるなと思いました。

ミチヒロ:それはありますね。歌詞自体はひとりの心情を歌ってるんですが、1番のAメロは状況に関して書いていて、2番のAメロはその状況の中の個人の感情について書いてるんです。自分が歌うところは、独り言でもなく頭の中で淡々とつぶやいてるような感じを意識して歌いました。

――なるほど。では歌詞の話に戻りますが、シズクノメは雨のモチーフが多いじゃないですか。グループ名に繋がるキーワードでもありますが、今回、雨を使ったきっかけについてお聞きしたいです。

ミチヒロ:オレの中では、「雨を絶対入れなきゃ」って意識はないんです。1stアルバムに入ってる「ジューンブライド」に関しては、結婚式をただただ明るいだけじゃなく、このバンドなりの表現をしたくて“雨”っていう言葉を借りたっていうのはあるんですけど、それ以降の曲は、自然と出てくるんですよ。今回は<雨にも風にも負ける僕らは>ってフレーズがあるんですけど、それは最初に宮沢賢治の『雨ニモマケズ』が浮かんだのがきっかけでした。

――宮沢賢治からのインスパイアですか。

ミチヒロ:はい。でも、「この主人公はたぶん雨に負けるんだよな」って思ったんですよね。もちろん負けたくはない気持ちはあるけど、誰しも「雨でも風でも全然余裕だよ」って人はあまりいないと思うんです。オレは、ある意味、そういうところを書きたかったんです。

――受け入れたくない運命にあらがっている心情ですね。

ミチヒロ:そうですね。どっちにしろ、自然には勝てないというか、時間を止めることはできないし、雨を止めることもできない。どうしようもないんだけど諦めきれない、そんな簡単に心の整理はつかないっていう曲を書きたかったんです。

――なるほど。ではここで歌詞にかけた質問で、みなさんの学生時代の卒業式の思い出を聞かせてください。

しゅん:オレの中学校は9クラスくらいあるマンモス校だったんです。卒業式ではクラスのヤツらと写真撮ったり寄せ書きとかしたりして、卒業式が終わったらイツメンとカラオケに行き、夜はファミレスに行きました。そのあと家の近いヤツらとうちでゲームしてって、1日フルで遊んだ感じですね。学生らしい卒業式の1日を送りました(笑)。

YAH:よく学生の頃の友達は一生もんって言いますけど、オレも中学の友達は今でも仲いいんです。なので中学校の卒業式は、「卒業したくない」ってみんなで泣いたりしてましたね。あと、すごく思い出に残ってるのは、うちの学校では憧れの先輩からボタンをもらう行事が代々あったんです。“先輩の第二ボタンをもらう”の発展形みたいな感じで、男子も女子も関係なく後輩が先輩のボタン争奪戦みたいになるんですよ(笑)。オレらの卒業式のときに、友達5人と誰が一番に無くなるかって勝負したんです。(間髪入れずに)オレが一番でした(笑)!

しゅん:うわ、自慢入った(笑)。

ミチヒロ:めちゃ自慢やん(笑)。

YAH:その頃が一番モテてました(笑)。

しゅん:ヤーちゃんは後輩の頃に、先輩のボタンもらったの?

YAH:うん。先輩のところに行ったら「投げるよー!」って餅投げみたいにパーって投げて、みんなで奪い合った(笑)。あと名札が一番の勲章で、バッグにつけて「〇〇先輩にもらったんだ」って自慢するのがうちの学校の卒業式のイベントとしてありました。オレが一番だったのもあって、いい思い出になってます(笑)。

ミチヒロ:オレはすごい田舎で、小中学校の同級生が全員で18人だったんです。だからクラス替えもなく、小中の9年間みんなずっと一緒なんです。上級生の卒業式って、下級生がイスを体育館に並べたりするじゃないですか。だから、卒業式はずーっと手伝うものだと認識してたんです。それがいざ自分たちの卒業式になったら、手伝わなくていいし、イスも準備されているしで、なんか気持ちが追いつかなくて。卒業式の最中に「あ、オレはほんとに卒業するんだ。これが終わったら、もうこの学校に来ないんだ」って実感し始めて、気づいたら終わっちゃっていたっていう。なんか現実感がなかったですね。あのときにしか感じられない、なんとも不思議な気持ちになったのを覚えてます。

――小学校の頃って、この時間がずっと続いていくような感覚がありますよね。

ミチヒロ:そうなんですよ。小学校の6年間って無限のように感じてました。体感20年くらいじゃない?

YAH:マジでそうだよね。

しゅん:それわかる。しかもクラス替えなかったんでしょ?

ミチヒロ:そう。小中学校ずっと同じメンバーだった関係性が、ある日突然終わってしまって。卒業って自分が決めたものじゃないし、「もういいや」って辞めるわけでもない。「何なんだ、この仕組みは?」って整理がつかないまま終わってしまった印象が強くて、オレにとって卒業式はそんなイメージです。でも、はなから終わりが決まってるものもあるんだって、そのときに学んだのかもしれないですね。「人生にはこういうことってあるんだな」って。

――大人の階段を登る感じですね。あと「Why”you”」のジャケットについてもお聞きしたいです。

ミチヒロ:2人にも今ここで初めて見せるんですけど、イメージとしては、ケータイとケースの間に写真が入ってる感じです。普通に並べると永遠に手を繋げないけど、ケータイを上下にずらして逆さにすることでようやく手を繋げる。「でも、それはありえない。時間は進んでいくから」っていうことを表現しようと思いました。

しゅん:ええやん。

YAH:めっちゃいいね。ファンの人は、ジャケットを見たあとに曲を聴いてくれると思うので、めちゃ「Why”you”」に合ってると思ってくれると思います。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. バンドがより団結した出来事と今年の目標
  3. Next >

去年はみんなに“来てもらう”感じだった
今年はオレらが“会いに行きます”(しゅん)

――音もビジュアルもトータルでしっかり見せられるのは、まさにシズクノメの強さですね。では、ここからはバンド活動の話題に入りたいと思います。昨年11月から12月にかけて行われた、初のツアー【シズクノメ1st Tour -単純的希望 –】の感想を聞かせてください。

ミチヒロ:もちろんツアーはすごく楽しかったです。ただ実はバンド内が微妙な時期で、ケンカ中だったんですよ(笑)。

しゅん・YAH:そうだったね(笑)。

ミチヒロ:でも、オレらのケンカはファンには関係ないじゃないですか。やけくそになってライブを適当にやるなんてしたくなかったし、絶対にライブはファンの人が楽しんでもらえるものにしたいって臨んだんです。その心の切り替えが難しかったですけどね。

――どんなことでぶつかってたんですか?

ミチヒロ:そもそもオレらがバンドを組んだとき、ほぼ初対面だったんです。ほんまに初めましてから始まって、ぶつかることを避けながらやっていたところがあって。バンドを応援してくれるファンが増えたし、バンド活動に本気になればなるほど本気の議論をしないといけない場面が出てきたんです。ぶつかり合いに慣れてる人達なら(ケンカしても)こういうもんだと思うんでしょうけど、慣れてないぶん、全員がダメージを受けて不安になるっていう状態だったんです。

――バンドに限らず人間同士って、時間をかけて信頼関係を作っていくものですもんね。いい作品を作るためによりよいチームワークを築くには、ぶつかり合うことも必要だったりしますよね。

ミチヒロ:まさにそうですね。

しゅん:さすがにこのままじゃダメだってことで、確かクアトロのツアーファイナルの2日前くらいにみんなで話し合ったんだよね。

YAH:そうそう。みんなでしっかり話し合って、メンバーそれぞれが言いたいことを素直にぶつけたのが1番の解決策になったと思います。やっぱり、みんな遠慮してた部分があったんですよ。メンバーひとりひとりが腹を割って話したのが(その日が)初めてぐらいだったよね?

ミチヒロ:そうだったね。

しゅん:最終的に落ち着いてよかったです(笑)。

――バンドとしてより結束できた感覚はありますか?

ミチヒロ:ありますね。ケンカはしてよかったなって思います。たぶん、あの時期がなかったらバンドが弱かった気がします。バンドとして、ひとつ強くなれたと思います。

――よりバンドとして固まり前進していくシズクノメって感じがしますね。4月には東名阪クアトロツアー【シズクノメ LIVE TOUR 2022 – Why”you” –】を開催しますが、今年シズクノメはどんな活動をしていきたいか、希望願望を込めて聞かせてください。

ミチヒロ:オレとしては、去年よりももっとお客さんの心に深く入り込めるライブをしたいですね。お客さんの人生を変えられるようなライブをしたいです。

しゅん:いいね、素晴らしい。オレは北海道、沖縄だったり、もっと地方に行きたいですね。自分の地元の広島、モトキの地元の岡山とかで凱旋ライブもやりたいです。とにかく、できるだけ多くファンに会いたいです。去年やった初めてのライブが無観客のオンラインで、そこから有観客ライブをするまでになって、少しずつ前進できてるのはうれしいです。まだ難しい状況が続いてはいますが、去年はみんなに“来てもらう”って感じだったので、今年はオレらがみんなに“会いに行きます”って感じにしたいですね。

YAH:去年、オレらが第一の目標としていたお客さんの前でライブをすることが達成できたのはすごくうれしかったです。でも、僕らはコール&レスポンスのない状況のライブしかしたことがないんですよ。今も手拍子とかでライブの一体感は生まれるんですけど、やっぱり声を出してより熱い一体感を作りたいっていう希望がめちゃあります。もちろん今はまだ難しい状況ですけど、早くそうしたライブができたらうれしいです。あと、自分も今年は地方に出向いてライブをしたいなと思います。去年、名古屋と大阪に行きましたけど、その土地でノリが違うなと思ったんです。なので、いろんな地方でライブを通してお客さんとたくさんコミュニケーションしたいなって思います。とにかくライブをしたいっていうのが、今年の目標であり願いです!

関連キーワード

TAG

関連商品

単純的希望
シズクノメ「単純的希望」

2021/08/11

[CD]

¥3,080(税込)

単純的希望
シズクノメ「単純的希望」

2021/08/11

[CD]

¥4,500(税込)

単純的希望
シズクノメ「単純的希望」

2021/08/11

[CD]

¥3,080(税込)

単純的希望
シズクノメ「単純的希望」

2021/08/11

[CD]

¥4,500(税込)