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<インタビュー>Da-iCEがCONCEPT EP『REVERSi』リリース--レコード大賞受賞後も「まだまだ上を目指せる余地がある」
高いアーティスト性を武器に、存在感を示してきた男性5人組アーティスト・Da-iCE。2021年には結成10周年を迎え、シングルやアルバムのリリース、オンラインライブ、全国ツアーなど精力的に活動をしてきた。さらに2021年10月、21stシングル表題曲「CITRUS」が日本人男性ダンス&ボーカルグループとして初となる累計再生回数1億回を突破し、『第63回日本レコード大賞』を受賞。今もなお再生数は伸びており、累計再生回数2億回を突破している。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進し続けるDa-iCEが、2月16日にCONCEPT EP『REVERSi』をリリースする。さらなる飛躍のきっかけになるであろう同作には、どんなメッセージが込められているのだろうか。メンバーの工藤大輝と花村想太にじっくり語ってもらった。
“どうせ”という言葉のネガティブさを越えていく
――『REVERSi』の「白黒つける」というコンセプトはどうやって生まれたのでしょうか。
工藤大輝(以下、工藤):コンセプト自体は2021年の3月くらいにすでに話をしていました。Da-iCEのトータルイメージを話し合っていて、白黒の衣裳で統一しようというところが始まりです。そこから白と黒のモチーフのようなものを探して、「リバーシ」という案が出て。ライブの演出にも使えそうだし、曲も作りやすいと話し合って生まれたコンセプトです。
――字面だけを見ると、やや挑戦的なコンセプトにも感じます。
工藤:「白黒つける」というそのままの意味ももちろんあるんですが、僕らが書いている楽曲は白い面も黒い面もあるので、上辺だけにあまり囚われないようにしようという意味も込められています。
花村想太(以下、花村):「正義は立場に寄って変わる」なんてことをよく言われていますが、僕らの楽曲もそうなんです。例えば「Kartell」には〈こんなんじゃまだまだ終われない〉という歌詞があって。それは「CITRUS」を多くの方に聴いていただいて、レコード大賞も獲らせていただいて、でもまだまだ俺たちは上に行くよという意味も含まれている強さを与えてくれる言葉です。でも、聴く人によってはすごく辛く聴こえることもあるかもしれないですよね。
▲Da-iCE /「Kartell」 Music Video
――今回収録されている楽曲も多面性がありますよね。まずはリード曲の「DOSE」。これはお二人が作詞・作曲されていますが、リード曲を作ろうと思って制作されたのですか?
工藤:そうですね。「CITRUS」で知ってくれた方もたくさんいるので、あえて1曲目をダンス&ボーカルグループっぽい曲にして「僕たちは実はこういうグループなんですよ」と提示しました。それと、今までのファンの方に「僕ら変わってないですよ」と伝えたかったという思いもあります。
――“どうせ”というフレーズはかなりのパンチラインですよね。
花村:最初は“Oh Yeah”だったんです。その語感は崩さずに違う言葉に変えたいねと話していたのですが、ほぼ2人同時に「“どうせ”っていいんじゃない?」と出てきました。「どうせお前ら無理だよ」というネガティブな言葉を越えていく意味もありますし、「どうせ俺らならいけるよ」という強気な気持ちも表現できるんじゃないかな、と。
▲Da-iCE /「DOSE」 Music Video
工藤:実は想太にも言っていない話があって。「どうせ」というフレーズと楽曲の方向性だけ決まっている状態で、先行して僕が歌詞を書かせてもらっていたんです。ある日、サウナに入りながらニュースを見ていたら「Instagramの悪影響」みたいな特集が流れていました。Instagramっていい面ばかりを載せるじゃないですか。だから自分の人生に納得していない人が見て、よりマイナスな状態になってしまうという特集だったんですけど、それを見てピンときて。整理整頓された上っ面だけを見て判断するのはよくない、「どうせ自分なんて」って言うのはもったいない。そんな思いで冒頭の歌詞を書きました。〈整理された盤上の眺めじゃ物足りない〉はサウナで生まれた歌詞です(笑)。
――そんな秘話があったとは……! 2曲目の「Clap and Clap」は花村さんの作詞・作曲です。
花村:この曲は夏フェスがテーマです。みんなで盛り上がれる楽曲を作ろうというコンペが行なわれたのですが、声が出せない状況はこの夏も変わらないんじゃないかと思っていて。かつ、Da-iCEにはお客さんにクラップをしてもらう楽曲が1曲もなかったのでライブでクラップできるように、と生まれた楽曲です。イメージなのですが、最後に(大野)雄大くんがハイトーンで伸ばしているところで、みんなで拍手をして盛り上がれたらいいですよね。
▲Da-iCE / 「Clap and Clap」Lyric Video
――たしかに、最初に聴いた時にライブでクラップするための曲なんだろうなと思いました。
花村:そうなんですよ。最初、歌詞を〈Clap Clap Clap〉にしていたんですが、それだとやっている方も単調で楽しくないかなと思って、ちょっとリズムを取るのがしんどいけど〈Clap and Clap〉に変えたんですよね。「この曲疲れるよね」って言いながらも楽しんでもらえたらと思います。
リリース情報
- 2022/2/16 RELEASE
- <初回生産限定盤(CD+DVD(スマプラ対応))>
- AVCD-96893/B 5,000円(tax in.)
- <初回生産限定盤(CD+Blu-ray Disc(スマプラ対応))>
- AVCD-96894/B 5,000円(tax in.)
- <通常盤(CD ONLY(スマプラ対応))>
- AVCD-96895 2,800円(tax in.)
CONCEPT EP『REVERSi』
関連リンク
取材・文:高橋梓
写真:Masanori Naruse
飽き性がゆえの “花村手癖”がめちゃくちゃ出ている
――そして3曲目の「SWITCH」は、工藤さんが作詞を手掛けた『ユーチューバーに娘はやらん!』(テレビ東京系)の主題歌。Twitterでドラマを見て、すらすら書けたとお話されていましたね。
工藤:3時間くらいで書けてしまいました。大好きな秋元康さんが原案を考えているドラマに携われるので、めちゃくちゃテンションが上がってしまって。秋元さんは作詞家でもありますし、目に留まるかもしれないと思うと自ずと気合が入りました。そう言えば、Da-iCEの曲で恋愛曲は久々に書いたかも。
▲Da-iCE / 「SWITCH」Lyric Video
花村:全然恋愛を感じへんけどね。すっごいオシャレさと緻密さを感じる。
工藤:ほんと? 〈愛に恋い焦がれて〉っていうフレーズは、本当に出てきてよかった。トラックを聞いてドラマの尺を考えると、少なくとも3回くらいは流れるなと思っていたので、わかりやすくしておかないと埋もれてしまいそうだったんです。それでありそうでなかった表現をずっと探していたんですが、「恋に恋い焦がれて」とか「愛されるより愛したい」とか、そういったフレーズはすでにあるじゃないですか。で、改めてドラマの主人公である佐々木希さんの役の立場に立って考えてみて、このフレーズが出てきました。
花村:車を運転しながらデモを聴いていたんですけど、「やっぱり天才やな」って1人でぼそっと言いました。僕は変化球というよりは、「熱血剛速球投げときましょう」というタイプなので、リサーチ力、想像力、表現力が羨ましい。楽曲にも、ドラマにも合っているのがすごいです。僕が書いていたら「リモコンファイター」って曲になっていたかも。
工藤:やばい、ダサい(笑)!
――(笑)。そんな花村さんは次の「Break out」の作詞・作曲を手掛けていらっしゃいます。かなり力強い楽曲で、こちらも印象的です。
花村:夢を叶えるときって、少数派になってしまう側面がありませんか? 例えば、勉強を頑張っていると1人になってしまったり、部活を頑張るほど孤独になっていってしまったり。僕自身も15歳でこの道を決めた時に友だちから笑われたり、無理だって言われたりしたことがありました。「Break out」が主題歌になっている『オリエント』の主人公も自分の夢を言葉にすることができないというところから始まっているので、夢を口に出すことの難しさを楽曲の中に落とし込みました。
▲Da-iCE / 「Break out」Lyric Video
――歌詞も然ることながら、メロディも耳に残ります。サビの部分のキーはかなり高いですよね。
花村:Natural Lagの智くん(福田智樹)と一緒に書いたんですが、智くんがトラックを送ってきてくれた時に「サビは高い方がいいんですよね」と言っていて。なので、「CITRUS」と同じくらい高くしました。ただ、「CITRUS」はいきなりDを出さなきゃいけないんですけど「Break out」はその前にC#があって準備運動ができる分、サビでDを連発していますがそこまで神経を使うほどではないんですよね。トップラインは僕が全部作ったので、そういった調整もできました。
工藤:この曲、“花村手癖”がめっちゃ出てるよね。なんかね、めちゃくちゃ刻むんですよ。2番のAメロとか特にそうだけど、すごく変化をつけるんです。サビは一緒にしなきゃいけないみたいなのがあるから、そこはギリギリ守ってくれてるけど、Aメロ、Bメロに関しては正直全部変えたいレベルでしょ?
花村:楽曲を作っている時にこっちもやりたい、これもやりたいってでてくるので、飽きちゃうんです。
工藤:Mrs. GREEN APPLEの大森(元貴)くんも飽きるって言ってたなぁ。
花村:僕ら、飽き性です!
――天才は飽き性なのかもしれませんね(笑)。そして「Sweet Day」と「NIGHT OWL」は、androp・内澤(崇仁)さん、きのこ帝国・佐藤(千亜妃)さんからの提供曲です。
工藤:「Sweet Day」の方は、昨年リリースしたアルバム『SiX』で「Love Song」という曲を内澤さんに提供いただいたのですが、その時2曲デモをいただいていました。そのうちの1曲が「Sweet Day」。どちらもいい曲すぎてダメ元で2曲ともくださいとお願いしたら、いいですよと言っていただけたのでずっと温めていた楽曲です。
――満を持しての発表なんですね。提供曲をパフォーマンスする上でのやりやすさ、やりづらさなどはあるのでしょうか。
花村:歌に関しては、そもそも僕たちの楽曲は多ジャンルなので「Sweet Day」も「NIGHT OWL」も気持ちよく歌うことができています。それに、この2曲が『REVERSi』に入ることで新しいDa-iCEに近づいている気がしています。
工藤:ダンスで言えば、実は踊りやすいんじゃないかなと思っています。僕らのダンスは歌詞を表現することが多くて、意外とビートが入っていなくてもできてしまうんですよね。新しい振り付けとか、演出とか、そういったこともできそうです。
――そして、7曲目の「ホンネはJoke」はメンバーの大野(雄大)さんが作詞をされています。
工藤:曲が思いっきりR&Bでかっこよかったので、その対比で雄大はちょっとふざけないとって書いたんだと思います。こういう歌詞は、雄大ならでは。一歩間違ったらオヤジギャグみたいな領域なので、書いている人の人格が伴ってないと嘘っぽくなってしまうんですよね。でも雄大が実体験を書いているから説得力があるんだと思います。
花村:僕、今までの人生って1人で戦ってきたイメージがすごくあって、友だちが周りにいた印象がそこまでないんです。でも雄大くんは仲間と笑ったり、飲んだり、遊んだり、仲間とともに成長してきた人生だったからこそ、こういった言葉が出てくるんだと思います。真逆の思考回路の僕は、100%この歌詞を書けない。でもこの歌詞を通して雄大くんの思考回路に触れられたし、楽しい人生なんだろうなと思いながら歌っていました。
リリース情報
- 2022/2/16 RELEASE
- <初回生産限定盤(CD+DVD(スマプラ対応))>
- AVCD-96893/B 5,000円(tax in.)
- <初回生産限定盤(CD+Blu-ray Disc(スマプラ対応))>
- AVCD-96894/B 5,000円(tax in.)
- <通常盤(CD ONLY(スマプラ対応))>
- AVCD-96895 2,800円(tax in.)
CONCEPT EP『REVERSi』
関連リンク
取材・文:高橋梓
写真:Masanori Naruse
ここから落ちていくことを想像するのが恐ろしい
――8曲目の「Promise」は花村さんが作詞・作曲を担当。SNSで「最強の雄大くんを聴いてほしくて落ちサビを作った」と仰っていましたが、花村さんが思う大野さんの最強ポイントとはどんな部分なのでしょうか。
花村:一番は温かみです。雄大くんが心の底から震える曲を歌う瞬間がほしかったんですよね。昔から家族愛を歌うのが好きだと聞いていて、この楽曲のテーマには家族愛もありました。そこで、落ちサビで親に向けての言葉を入れて、雄大くんの一番歌いやすいキーで1人で歌い上げてもらいました。それが、僕にとっての“最強の雄大くん”だと考えています。
工藤:うちのボーカル2人って特殊なんですよ。ダンス&ボーカルグループのボーカルって方向性が似てくるんですが、うちは真逆。CHEMISTRYさんのイメージが近いかもしれません。声質がまったく違うんですけど、だからこそすごく楽しめる。「私は想太くんの声が好き」、「私は雄大くんの声が好き」っていう論争が巻き起これば巻き起こるほど狙い通りというか。「Promise」に関しても2人のアプローチや捉え方が全然違うので、その違いを味わってほしいですね。
花村:僕はリズム感で歌うタイプで、雄大くんは声が綺麗に聴こえる歌い方をしてるんだろうなって思います。
――そして最後は工藤さんが手掛けた「Kartell」。
工藤:これは結構気合い入れて作ったんですよね。一緒に作っている方といつもはLINEでやり取りして作っているんですが、今回は細かい部分までちゃんと話し合いたかったのでスタジオに直接行ってかなり長く打ち合わせをして作りました。誰に向けたというわけではないんですが、世の中全体的にもどかしく思うところがあって。こういうのは思っているうちに曲にしておかないと、と作りました。MVもこだわっていて、CDのジャケットはMVを切り取ったもの。フードを被った群衆の中に僕らも紛れているんですが、退屈しちゃったのでその世界から抜け出す、そこにフォロワーが付いてくるという、僕らの活動の在り方を表現しています。
――こう振り返ると、本当に様々なタイプの楽曲が収録されています。多くの作品をお2人が手掛けていますが、自分なりの制作スタイルなどはあるのでしょうか。
花村:僕の場合、6割くらいは「こういう曲をつくりたい」とトラックを発注して、そこにトップラインを乗せています。残り4割は自分で弾き語りをしながら1コーラス目を作って、2コーラス目からチームと一緒に作るという形ですね。そして、「数撃ちゃ当たる」タイプ。「liveDevil」は4曲、「Clap and Clap」は3〜4曲作りましたし、とにかくたくさん作るスタイルです。毎回死にそうになりながら出しています(笑)。
――工藤さんはいかがですか?
工藤:僕の場合、楽曲ごとに作り方が違います。「SWITCH」のように最初からタイアップがあるとテーマがはっきりしているのでそれを軸に書きますが、自分の作品、提供作品でも違ってきます。Da-iCEで作っている楽曲はボーカル2人に提供しているという感覚。例えば「Kartell」だったら作詞は好きなこと言っちゃおうと思って書きましたが、歌に関しては2人じゃないと無理だなと思いながら作りました。よく詞先、曲先ってあるじゃないですか。僕の場合はアイデア先行。「Kartell」もサビの最後で2人が連続で掛け合う部分がほしいなみたいな、断片的なアイデアをまとめて書いています。
――楽曲制作もご自身で手掛けるなど精力的に活動されていて、昨年は10周年も迎えられました。年末にはレコード大賞も受賞されましたが、意識の部分で変わったことなどはありますか?
花村:本当に大きな賞で、僕らが獲ったことで「なんか違うな」って思われたくないので今のところプレッシャーを感じています。今年1年しっかり活動をして、「やっぱりDa-iCEが大賞だったね」って思ってもらえるようにしていきたいです。
▲Da-iCE /「CITRUS」 Music Video
工藤:会社の風当たりもすごくあたたかくなったよね(笑)。
花村:あと友だちも増えた。エゴサーチしていたら「花村くん、高校の同級生だからすごく嬉しい」って書いてあったんですけど、僕、中卒なんですよね(笑)。
工藤:(爆笑)。花村違いだったのかもね。もちろんすごい賞なんですが、僕らは固執することが良いと思っていません。最終的な着地点は、僕とか想太が作詞・作曲を100%担っている楽曲で賞をいただくこと。「CITRUS」に関してはいろんな方の力を借りて獲ったので、少し意味が変わってくるというか。まだまだ上を目指せる余地があると思っています。
――さすがの向上心ですね。
工藤:いや、ここから落ちていくことを想像するのが恐ろしいんです。急にハードルが上がっちゃったので、「CITRUS」に届かないと「下がった」と思われてしまいますから。なので今年1年頑張って曲を作ったり、いろんなことを仕込んでいかなきゃと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。
リリース情報
- 2022/2/16 RELEASE
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- <通常盤(CD ONLY(スマプラ対応))>
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CONCEPT EP『REVERSi』
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取材・文:高橋梓
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