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中川翔子 『Magic Time』 インタビュー
謹賀新年! しょこたんが早くも2nd アルバムをリリース!
ブログのアクセスは15億PVを越え、テレビのレギュラー番組も激増するなど、いまや見ない日はないといっても過言ではない程の人気を誇る中川翔子。彼女が前作より9か月という短いスパンで、2nd アルバム『Magic Time』を完成させた。
“朝日が昇る時と夕陽が落ちる時の空が青く染まる瞬間の12分間”を意味するタイトルが冠されたこのアルバムから、ファンへの想い、コンサートの意味、そして生と死について……。これまでとはちょっと違った視点から、今のしょこたんを語ってもらいました!
人と触れ合うのがこんなに楽しいんだ!
--2008年のしょこたんも色々ありましたね。
中川翔子:人生の中でまったく想像したことのない瞬間ばかりが訪れて、その時その時の自分には高すぎる壁な気がするくらい、大きい出来事がいっぱいあって。でもその度に色んな人に助けられて、「楽しかった!」って言えてる感じなので、凄く怒濤でビッグバンな一年だったと思います。……ただ、コスプレをあんまりできなかったのが心残りです(笑)。
--でも最近も赤くてゴッツイのやってましたよね? あの……。
中川翔子:モモタロスですね!
--それです(笑)。相変わらずブログも毎日更新してますし、漫画にゲームにアニメにとテンションも下げることなく楽しんでますよね。
中川翔子:下げたくないんですけど、まだまだまだまだ、全然ですね! アニメももっと観なければいけないですし、漫画ももっと読まなきゃです。本もゲームも絵も……って、全部趣味なんですけどね(笑)。小学5年生とか中3で止まっているところが脳の大部分を占めている中で、プロとして頑張らなければいけない部分、向き合わなければいけない部分もたくさん出てきたし、でもやっぱりステージに立つと楽しかったりして、人生ってドリルの螺旋だな!って改めて思いましたね。漫画読める回数も猫を撫でる回数も、どれだけ頑張っても有限な分、今を精一杯生きなければいけないって。
--コンサートでコスプレをしてくるお客さんって、そのしょこたんのテンションと勝負をしているようなところがあるじゃないですか。如何にインパクトを与えるコスプレをできるか、みたいな。
中川翔子:“翔子の恩返し”っていうサブタイトルで始めた全国ツアーなのに、「何なの!?」って思うくらいに楽しませてくれて。最終公演に近づくにつれて「血管切れるんじゃないか!?」ってテンションの方もいっぱいいたし、途中で付き合い出すカップルもいっぱい(笑)。それくらいインターネットを素晴らしい使い方してて、強制してないのにコスプレするし、私の衣装を暗記して作ってくれたりとか、最近はマネージャーとかブリトーのコスプレまで(笑)。
やっぱり「次は何をやってやろう?」っていうのがお互いにあるのかもしれないですね。ブログで何かを擬人化すると、すぐにそれをコスプレしてくるし。こないだもブログに「おぼっちゃまくん」読んでるって書いたら、学園祭の時にいたんですよ! 地毛で角を作ってピンクのタキシードを着て、何故か顔は白塗りでほっぺに赤い丸が描いてあって、ずーっと直立してるんです(笑)。
そういう訳分からない面白い人もいっぱいいるし、普通にオシャレしてくる子もいるし、カップルとか夫婦で応援してくれる人も。独りが大好きなのは変わらないんですけど、人と触れ合うのがこんなに楽しいんだ! って気付けたのは歌があったからですね。
--では続いて2nd アルバム『Magic Time』についてですが、ジャケットも今までのしょこたんとはまた違ったイメージの1枚になりましたよね。
中川翔子:ブログでは毎日写真を載せてるけど、CDのジャケットだとコスプレとか宇宙に立ってるとか(笑)、そういうのが多かったので、等身大の、レベル23の自分をナチュラルに自然光でっていうのが今までなかったんですよ。だから一番普通なんですけど、逆に新鮮だったというか。
--そういう自分を見せることに照れは?
中川翔子:やっぱりコスプレしている方が落ち着くっていうのはありましたね(笑)。でも、『冬の遊園地』のPVもデートをしているような映像になってて、袖で手を隠したりとかマフラーしてたりとか、思い描いていたモテファッション的な要素がたくさんあったので、“デートに向かう女の子のコスプレ”をした感じですね!(笑)
元々、夕闇の時間が好きなんですけど、その時間には“逢う魔が時”とか“BLUE MOMENT”って呼び名があるんですよ。太陽が沈んだ直後と昇る直前の、青く空気が染まる12分間しかない夕暮れと夜明け。その時間って過去のことを思い出し易いんですよね。空の色って過去と今とを繋いでいる唯一の変わらないものだし、そういう時間にナチュラルな感じの写真が撮れて良かったです。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:梅原直也
空が真っ直ぐシンプルに教えてくれてる気がする
--夜には死のイメージもあって、生から死に移っていくのが夕闇の時間でもありますよね。
中川翔子:“逢う魔が時”って一日の中で一番、人が亡くなる時間でもあるみたいです。切なくなるし哀しいことを思い出したりもするんですけど、楽しい思い出も蘇りますよね。それでこの時間の他の呼び名を探してたら、「女の子が一番綺麗に見える瞬間」って意味の“Magic Time”って言葉をファンの子が教えてくれたことを思い出したんです。過去の辛かったこととか哀しいことも思い出すし闇が広がっていくけど、星の光と共にまた、朝の“Magic Time”がやってくるから。落ち込んだ後に元気だそう! って思える大事な時間でもある気がしてます。
--闇の先には夜明けがある、というメッセージはずっと歌い続けてきたことでもありますよね。
中川翔子:“迷いながらでも先に進みたい”っていうメッセージは、一番はっきり言ってるかもしれないです。(「螺旋(らせん)」を意味する)『Spiral』なんてタイトルから既にそうだし、そういう過去の一瞬一瞬がなかったら違う明日になっちゃってたし、今がまた未来を作ってて……。っていうのは空が真っ直ぐシンプルに教えてくれてる気がします。『Spiral』は一番最初に録ったんですけど、(歌詞は)今の自分が考えていることを凄い話し合って、想った気持ちを書いて下さいました。
--この曲や『Brand-new day』もそうなんですが、最近はしょこたんのロックのスタイルがひとつ、出来上がってきましたよね?
中川翔子:ロックも歌謡曲っぽいのも可愛らしい曲もいっぱい出会っていきたいですね! 前は「怖いよ怖いよ!」が多かったのんですけど、欲が出てきたんでしょうか。『続く世界』も凄いハードな楽曲だったんですけど、やっぱり空の色を連想させるようなタイトルでもあるし、“生きていくこと、死について”、毎日脳の中にこびり付いてることも、歌なら素直に言い易いですし。哀しいけどその先の『空色デイズ』に繋がっていくと思うので、『Spiral』のように一周すれば前に進んでるよって。
……だから逆に“シャイ毛”(=『Shiny GATE』)が元気すぎて何処に入れるか迷ったんですけど、体育委員みたいな役割ですね。「さあ目指せ何も恐れず!」って、人間だったら鬱陶しいくらいの勢いなんですけど(笑)、こういう人がいないとクラスは成り立たないんで。
--先ほど、“生きていくこと、死について”という言葉がありましたが、しょこたんにとっての死のイメージというのは?
中川翔子:ん~……、筒井康隆さんの短編の中に“九死虫”っていう話があって、その虫は動物の中で唯一9回死ぬんだそうなんです。若い時は何度も死ねるけど残りの回数が少なくなると怖くなってくる。でも死は何処にでも潜んでいて、常に怯えていた主人公がその恐怖に耐えられなくて狂っちゃう、っていう恐ろしい話で。あと、横尾忠則さんの「死の向こうへ」っていう本も凄い面白くて、幼い頃から常に死に怯え続けていて、残り何時間残されているかとかできることの回数の限度を考えてる、ってことを70歳を越えてから書かれているんです。
『冬の遊園地』も失恋の歌なのか別れの歌なのか、何となく死別の歌に聴こえたんですよ。遊園地って楽しい場所なんですけど、その分、哀しいことが起きた時の反動は大きいと思う。でもほんの少しずつでもいいから前に進んでいくことが、生きていくことに繋がっていくんだ、って優しいメロディの中で立ち直っていく様子が描かれているのが切なくなりましたね。
--死に向かって生きていく中で、その一瞬一瞬を如何に大切にできるか、というのはしょこたんのテーマでもありますよね。
中川翔子:勿体無い精神って必要かもしれないですね。無駄なことってないし、楽しいことだけじゃなくても、全部今しか起きないこと、今しかできない経験の積み重ねだし! 『シャーベット色の時間』は筒美京平さんが書いてくれた曲なんですけど、夕闇時の他の呼び方を考えてた時に、(作詞の)meg rockちゃんが“シャーベット色の時間”って例えてくれて。
これは夜明けの方のイメージかなって思ったんですけど、自分にとっては12分しかないMagic Timeでも、世界の何処かでは常に起きてる。恋もそうで常に世界中の何処かで色んな形の恋が起きてる、って話をmegちゃんがしてて、「おぉぉおお!!」と(笑)。常に起きてるしまた来ることだし、変わるものだけど変わらないものでもある。色んな空の色を積み重ねて毎日変わって来たのかな、何万年も……、と思うとこの一瞬しかない人生を楽しみたいですよね。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:梅原直也
テレビやブログ、色々全部があるから歌に繋がっている
--meg rockさんとはプライベートでも相当仲良くなってますよね?
中川翔子:去年の冬に指輪の交換までしましたからね(笑)。『空色デイズ』で出会ってから、彼女が書いてくれた詞で向き合えたこととかもいっぱいあったし、アルバムの中でも『through the looking glass』から『続く世界』への流れってギャップが凄くてビックリすると思うんですけど、それくらい振り幅も広くて。甘くて可愛い詞も書けて、経験したからこそ書ける重く深い歌詞もあって。
でも、気が合って仲良くなってたからこそできたのが『マカロン♥ホリディ』なんですよ。凄い忙しかった時、megちゃんに「遊園地と水族館とプラネタリウムと伊勢丹に行きたいんだけど!」ってメールしたことがあったらしいんですけど、この詞を見たらAメロに全部詰まっててビックリしました(笑)。あと、2番の歌詞は弾丸トラベラーのイメージでもあるんですよ。この前も一泊三日でフランスに行って、ホールのケーキを5種類食べて、「やれるんだなあ!」みたいな(笑)。
--私は今作の中で一番しょこたんらしいと感じたのが『マカロン♥ホリディ』だったんですよね、貪欲だし可愛らしいし。
中川翔子:女の子が部屋でパジャマで妄想が止まらなくなって「うわー!」って叫んでしまうような感じかなと。サビの歌詞でキラキラつやつやメキメキふわふわってあって、意味が分からないけどどうしようもない衝動って妄想してるとありますよね? “命短し恋せよ乙女”じゃないけど、常に妄想しているのが良いんだなって改めて思います。
--また、『Ivy』はコンサートのラストに歌ったら映えますよね。
中川翔子:『Ivy』は歌詞が手紙みたいになってるんですけど、いつもちゃんと言えない分、歌に言葉を載せました。ノリも良い曲なので盛り上がりながらありがとうって言えたら楽しいなって。……ただ、本当はこの曲、作詞する予定だったんです(笑)。前回の『starry pink』の時もそうなんですけど(作詞は)死ぬ想いで、携帯に書いては「気持ちワル!」って消しちゃって……。「せめて消すな」ってスタッフに言われたんですけど、消して消してってやってたら間に合わなくて。でも、どの曲も想いは作詞家の方々に一生懸命伝えたし、血は通っていると思います。
--確かに作詞家、作曲家の方々から周囲のスタッフまで、全員がしょこたんのために本当に丁寧な仕事をしていることも分かります。
中川翔子:それを凄く感じたのはボーナストラックとして収録している『空色デイズ -天元突破EDITION-』の時で、アレンジのクレジットが見慣れない名前(齋須憲祐)だと思うんですけど、『空色デイズ』『happily ever after』『calling location』『続く世界』を全力で作ってくれた貪欲バンドのみなさんを合わせた名前なんです。色んな貪欲を真っ直ぐ詰め込んだつもりなので、是非、オリジナル版と比べて欲しいですね。ボーカルを再レコーディングして声の重心が低くなって、よりかっこよくなっています!
やっぱり今まで色んな曲と出会って、3か月連続シングルも“シャイ毛”は絶対コンサートに必要だと思うし、『続く世界』は“空色シリーズ”のロックで嬉しかったし、『綺麗ア・ラ・モード』はネ申さまたちに違う次元の扉を開いて頂いたような気がして。それまで私が歌っていることに興味も無くて、知らなかったかもしれない年配の方から「たまたま耳にして良いと思ったら筒美さんと松本さんだったんだよ」って言われたりもして、やっぱり幅広い方々に聴いてもらえるようになりたいですね。テレビやブログや色々あるんですけど、全部があるから歌に繋がっていてってところもあるので、それぞれを全力で頑張りたいです!
--では『Magic Time』はしょこたんにとってどんな1枚?
中川翔子:漢字一文字で言うなら前作『Big☆Bnag!!!』が“爆”とか“激”で、『Magic Time』は“麗”ですね。ちょっと落ち着いている感じで、色んな空の色があって。それはテンションが下がったんではなく、貪欲さはそのままに落ち着きとゆとりと……、レベルが一段上がったよ? っていうところが出ていれば嬉しいですね。
--そして2009年の目標は?
中川翔子:まずは全国ツアーを成功させたいですね! あとは、色んなアニソンも歌いたいし、作詞もやりたいし、歌をうたうのが楽しいので、生きた証を残せるためにも色んなお仕事を。ブログも今年、一日百回更新を果たせなかったし、コスプレももっといっぱいやりたいのがあるし、趣味にも全力投球で成長して、絵画展も「やるぞ!」って目標を持ってやれるような人になりたいので、技術を磨いて頑張ります!
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:梅原直也
Magic Time
2009/01/01 RELEASE
SRCL-6934 ¥ 3,204(税込)
Disc01
- 01.your “Magic Time”
- 02.Spiral
- 03.through the looking glass
- 04.続く世界
- 05.シャーベット色の時間
- 06.マカロン□ホリディ
- 07.Brand-new day
- 08.Shiny GATE
- 09.冬の遊園地
- 10.綺麗ア・ラ・モード
- 11.Ivy
- 12.空色デイズ -天元突破EDITION- -bonus track-
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