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<インタビュー> ØMIが語る“ANSWER...”シリーズ集大成 自問自答の末にたどり着いた先は――
2021年2月にソロプロジェクト『CDL entertainment』を本格化させて以降、精力的に楽曲をリリースしてきたØMI。それらの楽曲“ANSWER...”シリーズは、2020年1月にリリースしたアルバム『Who Are You?』への答えである。そして、集大成として2月2日に約2年ぶりの3rdフルアルバム『ANSWER...』をリリース。同作にはどんな思いが込められているのだろうか。アルバム制作について、そしてアーティストとしての在り方についてなど、赤裸々に語ってもらった。
どちらの面も表
――2年ぶりのフルアルバム『ANSWER...』はどういった経緯で誕生したのでしょうか?
昨年から『ANSWER... SHADOW』や『ANSWER... SHINE』などの作品をリリースしてきましたが、もともとは2年前にリリースした『Who Are You?』が始まりでした。『Who Are You?』をリリースした当初から、『ANSWER...』というアルバムを作ってツアーをしようと考えていたのですが、それが今回やっと形になりました。
――できあがったアルバムを見て、改めてどんな心境ですか?
ソロ・アーティストとして、ソロ・プロジェクトとして、一つの集大成になる作品になったと感じています。無事リリースして、ツアーも組めて、安心感もありますね。僕の思いの丈やいま表現できる音楽はここにすべて詰め込みました。
――DISC-1は“SHINE”、DISC-2は“SHADOW”というように、“ANSWER...”シリーズのコンセプトがアルバムにも反映されています。
アルバムのジャケ写も白と黒、光と影、表と裏というようになっていますが、作り手側の僕としては両方とも表という感覚です。なので形式としてDISC-1、DISC-2となっていますが、両方ともDISC-0というか。順番はなくて、並列しているものと思っています。
――たしかに楽曲自体も光と影、どちらとも取れると感じました。制作時点でそれは意識されていたのでしょうか?
楽曲のリリースは『ANSWER... SHADOW』から始まって、光が見えて『ANSWER... SHINE』という順番でした。ですが1枚のアルバムになったとき、どちらから聴いていただいてもいいというか。SHINEから聴いてSHADOWに行っても、SHADOWからSHINEに行ってもいいですし、MVもリリースした順とは逆に見ても繋がるようにしています。そういった意味では、こだわりを持って制作をしてきました。どちらの面も自分ですし、どちらの面も表という感覚があるので、それが伝わるようにしたいとは考えていましたね。
――となると、曲順もこだわったのでは?
曲順でいうとSHINE、SHADOWともに聴いてもらいたい順番にしてあります。リリース順とは異なるのですが、SHINEはまずタイトル曲のように世界観を作っている「SHINE」があって、BTSのSUGAさんと一緒にやらせていただいた「You (Prod. SUGA of BTS)……という順番で自分の感情の流れや聴いていただきたい順で並べています。SHADOWは自分の中の孤独な部分や弱さ、感じる恐怖などを表現した「ANSWER... SHADOW」でまずリスナーを引き込む世界観を作り込みました。深く沈んでいくなかで微かに見える光が「Can You See The Light」、その暗闇の中で気づいたら横にいた誰かとの関係性を表した「Give up」、その「Give up」の世界が終わった後に光に向かって葛藤している姿を描いたのが「Colorblind」という流れです。
ØMI - ANSWER... SHADOW (Official Music Video)
ØMI - Can You See The Light (Official Music Video)
ØMI - Colorblind (Official Music Video)
“偽らない”というのがテーマ
――それぞれイントロも新しく作られていますね。どちらも似た旋律が使われているなど繋がりも感じますが、どんな狙いで制作されたのでしょうか?
ライブやMVの作り方もそうなんですが、作品を通して1本の映画を観たような感覚になってほしいという思いが、僕のソロプロジェクトの軸としてあって。今回も頭からそれぞれの世界観に没入できるようにしたいと思っていました。そこで自分の楽曲からスタートするのではなくて、各テーマをイントロで表現。それぞれ1曲目に置いている「SHINE」と「ANSWER... SHADOW」に繋がるコード感にしてくださいというオーダーをしたのですが、あくまで一つのアルバムなのでまったく別物にならないように、構成やコードで繋がりを感じられるものを制作していただきました。
――“映画”という表現はとてもしっくりきますね! そして、今作には「Just the way you are」と「After the rain」という2曲の新曲も収録されています。
はい。楽曲を作るうえでライブをすごく意識することが多々あるのですが、「Just the way you are」もライブを意識した楽曲の一つです。この曲はファンの方との距離を縮める楽曲がほしいと思って生まれました。僕がステージから手を差し伸べて、ファンの方がその手を取って、一緒にステージに上がって踊る、というような距離感を曲にしたかったんですよね。そういう思いが歌詞にも反映されています。
――というと、歌詞に出てくる“君”はファンの方?
そうですね。このアルバムに出てくる“You”や“君”はすべてファンの方です。“ANSWER...”シリーズを作ろうと思ったときに、僕の中で“偽らない”というのがテーマにあって。カッコつけずに、シンプルに自分の思ったこと、感じたこと、弱さや強さを表現したかったんです。音楽的にもっと考えたほうがいいこともあったかもしれないですが、今回はストレートで素直な言葉を使ったほうがいいな、と。
――なるほど。もう1曲の「After the rain」についてはいかがですか?
DISC-1に収録されているのですが、「After the rain」はアルバムのエンディング曲という位置づけで考えています。この曲にも自分の思いをシンプルに乗せています。今回のアルバムとツアーはある意味、一つの集大成とも言えるので、そのエンディングを飾るための楽曲です。作詞も担当しているのですが、あえてシンプルに答えを伝えたかったので、小学生でもわかるようなワード・チョイスになりました。これもファンの方に向けた曲なんですが、改めて聴くとちょっとウェディング・ソングのようにも聴こえるんですよね。
――ファンの方への思いがそれだけ大きいのかもしれませんね。そして、以前Instagramで公開して話題になり、今回収録される「Love Letter」もファンの方へ向けた楽曲です。
これは三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEが10周年を迎えた当日にポストした曲ですね。僕はボーカリストなので、10年間ついてきてくださったファンの方に音楽で感謝の気持を伝えられないかなと考えて生まれました。実を言うと、僕としてはファンの方に“あげた曲”だったので、アルバムには収録する予定がなかったんです。例えば手紙を書いて相手に渡したら、自分で読み返すことってないじゃないですか。その感覚で作っていて、すでに“あげた曲”という認識なので、僕はいまだに聴き直していないんです(笑)。でも、「『Love Letter』をリリースしてほしい」と言ってくださったファンの方や周りのスタッフさんがたくさんいたので、求めてくださるのであれば喜んで、という形で今回収録することになったんです。ライブで皆さんに会えるはずだったのが会えなくなってしまって寂しいという気持ちがこもっていたりして、いま見たら恥ずかしいくらいストレートなタイトルと歌詞で、少し照れくさいんですけどね(笑)。
ØMI - Love Letter (Official Lyric video)
ストーリーの行く先はライブ会場で
――ØMIさんはファンの方への愛と感謝がとても強いんですね。
でも、昔はまったく違いましたよ。どちらかというと自分が表現するものを見てください、というスタイルでした。「ついてこれる人はついてきてね」というスタンスで、ファンの方が求めていなくても自分がかっこいいと思うものを表現していたんです。なので“寄り添う”とか“一緒に”という言葉は楽曲の中でもあまり使っていなかったと思います。ただ、“ANSWER...”シリーズで自分の弱さを見せようと思ったときに、「答えって何?」と自問自答をしたんです。長いあいだ活動してこれたのはファンの方がいるからこそ。求められなくなったらアーティストって存在する理由があまりないのかなと感じました。だからこそ、精一杯の愛を込めた楽曲を皆さんにお返ししていきたいんです。本当はもっと早い段階で気づくべきなんでしょうけど、あの頃は自分自身にムチを打って走り続けなければいけない状況だったので……。それはそれで間違いではなかったとは思っているんですけどね。
――そういった思いが、ØMIさんが書かれる詞にも反映されていますね。ØMIさんはどんなスタイルで作詞をされるのでしょうか?
わりとするっと書くことが多いです。僕は言葉よりも映像のほうが先に浮かぶタイプです。曲ができたときにMVの情景が先に浮かんでいるというか。今まで発表したMVも先に思い描いていたものが多くて、そこに言葉をはめていく感じです。なので「After the rain」も空の景色がしっかり見えていて。「SHINE」や「ANSWER... SHADOW」で降っていた嵐のような雨がスッと止んで、晴れ渡った空を眺めながら歌っているというイメージです。時には映像や色が一番最初に出てきて、それをサウンド・プロデュースのチームに伝えて曲を作ってもらうこともありますね。
――そのお話を聞くと、アルバムに収録されるMVを見るのも楽しみになります。
そうですね、基本的にMVすべてを連携させているのはこだわりです。同じ世界観の中でも時の流れや心境の変化をMVに反映して。「You」と「SHINE」の繋がりなど、ストーリー性も持たせているので楽しんで見てもらえると思います。そして、「SHINE」のMVの後のストーリーはライブ・ツアーで見てもらえれば、と。
ØMI - You (Prod. SUGA of BTS) -Official Music Video-
ØMI - SHINE (Official Music Video)
――2月5日からスタートする【ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER...” 】ですね。
はい。このアルバムの世界観を具現化して、目の前で見られるエンタテインメントにしたのが【ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER...” 】です。もちろんライブにもストーリー性がありますし、いつものように映像も駆使して作り上げています。ストーリーの行く先をライブ会場で楽しんでもらえたら嬉しいですね。これまでの映像作品を見てくださった方は繋がりがピンとくると思いますし、まったく見ていない方でも世界観を感じ取ってもらえると思います。
――アルバム、ライブ含めて“ANSWER...”シリーズでは、アーティスト・ØMIの光と影がテーマになってきましたが、プライベートでもご自身の光と影を感じられたりしますか?
影は、本当に何もしない普通な人なところかな(笑)。覗いても何も面白くない大人ですよと自信を持って言えるくらい、面白くない生活なんです。グループでの取材だとこういった質問をしていただくことが多いんですけど、他のメンバーがアクティブな趣味を持っていたり、ELLYみたいにぶっ飛んだメンバーがいるので、僕がエピソードを語らなくてもいいんですよね。なので、ソロで聞かれたときにエピソード・トークできるほどのプライベートがないのは完全に影ですね。光は、交友関係が広いことかな。少し前もKing Gnuの常田(大希)くんや米津(玄師)くんに会ったり、いつの間にか僕の家にSnow Manのメンバーが来ていたこともありましたし、サッカーの中田英寿さんにお会いしたりもしました。この華やかさは光と思えることかもしれないです(笑)。
――本当に広い交友関係ですね……! それでは最後に、アルバムを聴くファンの方にメッセージをお願いします。
『ANSWER...』は僕のすべてが詰まっていると言っても過言ではない作品です。そのすべてを感じ取っていただければ、この上ない喜びだと思っています。ぜひ、たくさん聴いてください。
Photo by Yuma Totsuka
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