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<コラム>SixTONESの2ndアルバム『CITY』考察 6人の“新しい表情”を提示するユニット曲を紐解く
3通りの化学反応を起こすユニット曲
SixTONESの待望の2ndアルバム、『CITY』がいよいよリリースされる。今回は“街(CITY)”を舞台に繰り広げられる数々の物語を繋いでいくコンセプト・アルバムで、彼らの表現力の広がりと洗練を如実に感じさせる飛躍の一作となっている。
初回盤A、初回盤B、通常盤でそれぞれに曲順が異なるというのも『CITY』の面白さだろう。街の1日を3パターンの時間経過で表現する試みで、それはリスニング・スタイルが聴き手に委ねられたプレイリストの時代=アルバム解体の時代にあって、極めて挑戦的なコンセプトだとも言える。
あらゆるジャンルに掴みかかり、整理する間も惜しんで詰め込んだデビュー・アルバム『1ST』のがむしゃらさと比べると本作には余裕が感じられるし、余裕がなければコンセプト・アルバムを作ることも、“CITY”の世界を俯瞰で捉えることも不可能だったはずだ。何しろ彼らは本作の選曲はもちろん、曲順も自分たちで選び、悩み、考え抜いてこのかたちに至ったのだから。
楽曲の多彩なバラエティは前作同様だ。SixTONESはアイドルだからこそジャンルに縛られないクロスオーバーが可能なわけだが、同時にここまでサウンドの精度に拘り抜いた楽曲優先主義のアイドル・アルバムも滅多にないだろう。通常アイドル・ソングでは“誰が歌っているか”という観点が重要視されるが、『CITY』では“誰がどう歌えばモアベターなサウンドになるか”という観点がより優先されている、とでも言うべきか。
SixTONES - 2ndアルバム “CITY” nonSTop digeST
そんなアルバム・トータルの硬派なコンセプトと比較すると、もう少しアイドル的というか、メンバー6人それぞれのキャラクターのパーソナルな部分がより引き出されていると感じるのが、いわゆる“ユニット曲”だ。アルバムのコンセプトから、“SixTONES“という広義の人格からいったん離れ、彼らが1対1の個として向き合ったからこそ浮かび上がるものがあるからだ。
『1ST』に続き、『CITY』にもメンバーが二人ずつ3組に分かれてのユニット曲が収録されている。組分けは『1ST』からシャッフルされていて、組む相手によって全く異なるケミストリーが生み出されているのが面白い。
初回盤Bに収録されているユニット曲のトップバッターは、ジェシーと森本慎太郎によるアッパーなダンス・チューン「LOUDER」。この曲でフィーチャーされているニュー・ジャック・スウィング(NJS)はヒップホップ・ソウルの原型とも呼ぶべきジャンルで、80年代半ばから90年代半ばにかけて大流行したノスタルジックなサウンドが特徴だ。
NJSは近年ではブルーノ・マーズ『24K・マジック』(2016)の大ヒットをきっかけに再注目され、K-POPアーティストも積極的に取り入れるなどリバイバルが顕著なサウンド・ジャンルでもあって、こうした世界のポップ・シーンの最新動向ときっちりリンクしているのもSixTONESらしい。
ジェシーと森本がフリー・アレンジも交えつつ踊りまくるミュージック・ビデオも最高だ。アナログな画質といい、アーリー90’s風のストリート・ファッションといい、あえてブラウン管TVの縦横比(3:4)に切り揃えられた画面サイズといい、とことん凝った“あの時代”へのオマージュになっているMVなのだ。そして、その小さな画面を内側からガンガン突き上げる様なパワフルなパフォーマンスに、二人がこれほどまでに相性が良かったことに驚かされる。バラエティでの活躍も目立つジェシー&森本のオープンでポジティヴな気質が噛み合った相乗効果で、無敵のオーラを生み出している。
NJSはスウィング感、ノリが重要で、上手く歌おう、踊ろうという気負いはむしろ枷になる。その点、ジェシーと森本はあくまで自然体、日常の延長線上にエンターテインメントを見出すようなパフォーマンスだからこそ様になっているのだと思う。二人の生まれ持った勘の良さ、そして自分への自信と相手への信頼をベースにした思い切りの良さがスパークしているナンバーだ。
引き出された新しい表情
高地優吾と松村北斗が歌う「真っ赤な嘘」は気鋭のクリエイター、和ぬかが提供した、ジャパネスクな旋律と歌詞が異色のナンバーだ。「うやむや」「フィギュア」などSixTONESはコンスタントにボカロ界隈、ネットカルチャーとの親和性が高い楽曲にチャレンジしているが、今回は特にコンセプチュアルな1曲だと言える。
ネガとポジ、男と女、愛と裏切り、真実と嘘……いくつもの二面性が浮かんでは消えていくこの曲の歌詞には、合わせ鏡の中に引き込まれていくような怖さも感じる。「LOUDER」がカリフォルニアのビーチやNYのダウンタウンを、後述する「With The Flow」が東京のアーバンな夜景を想起させるのに対し、「真っ赤な嘘」は日本独特の情緒、湿り気を感じさせるナンバーだとも言える。
自らサブカル体質を自負する松村が、この曲の文学性、複雑に作り込まれた世界と相性が良いのは自明かもしれない。いくつもの二面性を伝い歩く感覚、どっちつかずの曖昧さをふわりと越境していく感覚は、俳優としての活躍も目覚ましい彼にとっては演じるように消化できるものでもあるだろう。
そんな松村がこの曲のハマり役だとしたら、予想外のハマりぶりに驚かされるのが高地だ。アイドルとしてのイメージを引き受けて立つ俯瞰性と生来の笑顔を併せ持つ彼は、クセの強いメンバー揃いのSixTONESの中では比較的ニュートラルな個性の持ち主だ。しかし、陰か陽かで言えば陽の人である高地が、ここではミステリアスな影の部分を解き放っているのだ。そんな高地と(陰か陽かで言えば陰の人かもしれない)松村が入れ替わるような、互いの中に自分のもう一つの顔を見出すような瞬間があるのが、この曲の面白さだ。
京本大我と田中樹による「With The Flow」は、そのタイトルのとおりスムースなフロウが心地よいポップ・チューンで、歌だけではなく京本がギターを引き、田中がラップ詞を書いた濃密なコラボ・ワークになっている。
SixTONESの音楽面において、京本と田中は両極に位置するメンバーだと個人的に思っている。ミュージカルでも活躍する京本は、その歌唱力に定評がある王道のボーカリストだ。彼の美しくシアトリカルなファルセット・ボイスは現実を異化する力を持っており、楽曲の主にメロディ、そしてメロディが内包するSixTONESの物語を担う声の持ち主だと思う。
一方の田中は本人も自負するようにラップへのこだわりが最も強いメンバーで、彼のボーカル・パートはビート・メイクに近い機能性も兼ね備えている。田中はラップを通じて、SixTONESの明日を切り拓いていく推進力としての言葉の使い手だと言っていいだろう。歌とラップ、メロディとビート、物語と推進力――そう、二人はまさに両極の才能を持ち、それらを生かした異なる役割を担うメンバーだ。
だから京本と田中がコンビを組むと知ったとき、予想したのはより分業的な作業、個々が得意なフィールドで存分に異なる才能を発揮するというタイプのコラボだった。しかし「With The Flow」はそんな順当な予想を裏切り、二人が自分の陣地から一歩、二歩と踏み出して中和点を探る、より有機的なコラボになっている。いつもの自分を少しだけ相手に開け渡した結果、高貴な王子然とした京本のチャーミングな素顔が覗き、鎧を脱ぎ捨てた田中のナイーヴな横顔が垣間見える仕上がりになっているのが新鮮なのだ。
SixTONES - 2ndアルバム「CITY」初回盤B限定ユニット曲 nonSTop digeST
いま思えば、『1ST』のメンバー・コラボ曲は6人のそれぞれの“らしさ”が際立つカップリングになっていた。ジェシーと田中が得意分野のヒップホップやR&Bでバトルした「EXTRA VIP」にせよ、高地と森本が陽だまりの中で肩を組んで笑い合うような「My Hometown」にせよ、京本と松村のセンシュアルな歌声が溶け合っていく「ってあなた」にせよ、6人それぞれのパブリック・イメージを素直に反映したものだったし、デビュー・アルバムに相応しく、キャラクター紹介的な意味合いがそこにはあったと思う。
対する『CITY』の3曲は、彼らはこんなこともできる、こんな表情も持ち合わせているという新たな魅力のプレゼン、意外性をより強く感じるナンバー揃いなのではないだろうか。もう一段階深いところへとファンを誘う沼(?)的ナンバーとも言えるし、街の様々な風景を切り取った『CITY』に相応しい多様性を感じる3曲でもあるのだ。
CITY
2022/01/05 RELEASE
SECJ-39 ¥ 3,300(税込)
Disc01
- 01.[Interlude -Night-]
- 02.マスカラ
- 03.Rosy
- 04.フィギュア
- 05.[Interlude -Midnight-]
- 06.Odds
- 07.WHIP THAT
- 08.Everlasting
- 09.[Interlude -Sunrise-]
- 10.8am
- 11.僕が僕じゃないみたいだ
- 12.Ordinary Hero
- 13.Your Best Day
- 14.[Interlude -Sunset-]
- 15.Fast Lane
- 16.Good Times
- 17.Cassette Tape
- 18.Dawn
- 19.Strawberry Breakfast -CITY ver.-
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