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<インタビュー>AAAMYYY 尊敬するアリシア・キーズを語る「声が素晴らしく、曲も心を奪われるものばかり」



AAAMYYYインタビュー

 【グラミー賞】15冠を誇るアリシア・キーズの通算8枚目の最新アルバム『KEYS』がデジタル配信中だ。1つの楽曲に対し、「オリジナルズver.」と「アンロックドver.」の2種類が対をなして収録された本作から、実験的ながら、彼女のルーツと飽くなき音楽への探求心を感じられる。マイク・ウィル・メイド・イットをプロデューサーに迎え、スウェイ・リーやカリード、リル・ウェイン、ブランディ・カーライルといった幅広い客演も、それぞれのトラックを彩る重要な役割を担っている。

 このアルバム・リリースを記念して、Tempalayのメンバーであり、TENDREやRyohuのサポート/楽曲提供など、様々なフィールドで活躍するAAAMYYYにインタビュー。アリシアの音楽スタイルから多大な影響を受けたというAAAMYYYが、ファンとして、そしてミュージシャンとして感じるアリシアの魅力と新作の聞きどころをたっぷりと語ってくれた。

――AAAMYYYさんがアリシア・キーズのことを知ったきっかけは?

AAAMYYY:2007年の高校生の頃に「No One」という楽曲を知ったことがきっかけですね。私は中学生の頃から海外に興味があって、英語の勉強の一環として洋楽を耳にしていて、当時購入したコンピレーション・アルバムの収録曲にこの曲がありました。他の収録曲とは異なる輝きがあったというか。タイトルを繰り返し歌うサビのフレーズに一気に心を奪われました。それから、この楽曲が収録されたアルバム『As I Am』(2007)を手にして、さらに過去の作品へ遡るようになりましたね。


――当時の彼女の楽曲にまつわる思い出はありますか?

AAAMYYY:「No One」に出会った翌年にはアメリカに留学しまして、そこで「カラオケ・ナイト」というイベントがあったんですけど、クラスメイトの多くはアリシアの楽曲を披露していたんですよね。私も彼女のように歌うことができたらと思っていたことを覚えています。

――AAAMYYYさんが音楽活動を始めるルーツもここにあったのでしょうか?

AAAMYYY:そう言える部分があるのかもしれませんね。当時、彼女のほかにもビヨンセやリアーナなど、多様な女性シンガー(ディーヴァ)が登場し、迫力あるヴォーカルを披露していて、そのどれにも魅了されたんですけど、彼女たちの存在を知ったきっかけを与えたのが、アリシアでした。また、そこから派生して女性ヴォーカルのバンドにも興味を持ち始めましたね。

――彼女の音楽で最も心ひかれる部分は?

AAAMYYY:教会やゴスペルの影響を感じるヴォーカルですね。かすれたような声からニュアンスで聴かせるものまで、いろんな表情を持っていますが、特に私が好きなのはハイトーン。これは唯一無二のものなのではないかと思います。

――サウンドに関しては、その声の特徴を活かしたシンプルなものが多い印象ですよね。

AAAMYYY:声が素晴らしいし、曲も心を奪われるものばかりだから、トラックに関しては引き算したシンプルなものにしているのだと思います。また、彼女は主にピアノで曲作りをしていると思うのですが、ビートもミニマムで、ドラムのシンバルもあまり使用していないですね。

――彼女のライブ・パフォーマンスも歌をメインにしたシンプルな構成で、観客を魅了させますよね。

AAAMYYY:私は残念ながら生で体感したことはないのですが、映像で観る限り、彼女のピアノ1本で成立させてしまうライブ・パフォーマンスは、他の追随を許さないというか。よくアメリカのオーディション番組で彼女の楽曲を披露する方が登場するのですが、皆さん魂を込めすぎな印象。彼女はピアノの前に腰掛けて、まるで私たちに語りかけるような自然な雰囲気で、サラッと魅了させる歌声を披露している。あれは、彼女でしか表現できないものだと思います。もちろん、私も表現はできないけれど、全体のライブ構成とか感銘を受けている部分はありますね。

――そして、このたび最新アルバム『KEYS』が完成しました。率直に、どういう印象でしたか?

AAAMYYY:今回は「オリジナルズ」と「アンロックド」という2つのヴァージョンで構成されていますけど、最近はステイホームやロックダウンの影響もあってか、音楽制作に集中できる環境が増えたぶん、2つの世界を1つの作品として表現するミュージシャンが多いですよね。「オリジナルズ」で彼女は自身のルーツに根ざした音楽を、「アンロックド」ではいろんなプロデューサーを迎えて楽曲をモダンにトリートメントして、現代にフィットする聴きやすいサウンドに仕立てているのかなと思いました。

――それぞれのヴァージョンで音色に違いがありますよね。

AAAMYYY:「オリジナルズ」では、飾りのない彼女の姿が見えるというか。全部、音を修正していない印象がしました。小さく囁く声や、またブレスが多すぎてヴォーカルが途切れている部分など、ちょっとしたミスもお構いなしに収録している気がしました。また、アナログ・レコードの針を落としている音が入っているのも耳に残りましたね。

――いっぽうで「アンロックド」のほうはいかがですか?

AAAMYYY:多様なプロデューサーとタッグを組んで制作しているせいもあって、ゴージャスな姿が見える内容になっていると思いました。着飾っていても、普段着でも、どちらも素晴らしく見える姿をこのアルバム全体で感じることができましたね。

――特に印象に残った収録曲はありますか?

AAAMYYY:タイトル曲の「KEYS」ですかね。これは「オリジナルズ」と「アンロックド」をつなぐ役割のインタルード的なピアノのインストなんですけど、全体に流れるチルな感じが好きというか。これから世界が切り替わっていくというところを、短い時間ながらも伝えているのかなって。

――ヴォーカル部分で印象に残った楽曲は?

AAAMYYY:「Like Water (Originals)」ですかね。終始ヴォーカルにディストーションをかけていると思うんですけど、その中で声に強弱をつけているテクニックに圧倒されました。また「Skydive」のコーラスも素敵です。最初はオクターブだったのに、途中から広がりのある雰囲気になって、フレーズごとに異なる雰囲気を醸し出していて印象的でした。


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音楽が心の底から大好きで
クリエイティブであり続けようとする姿勢が見えた

――シングル曲として発表されたナンバーに関しても感想をお伺いしたく。まずは本作からの1stトラック「LALA (Unlocked) feat. Swae Lee」に関して。

AAAMYYY:アリシアはいろんなミュージシャンと共演していますが、ここでフィーチャリングしているラッパーのスウェイ・リーが、これまでで一番相性のいいコラボレーターではないかと思いました。他のミュージシャンも含め、フィーチャリングをする曲って、すでにありきたりな印象がしていたのですが、これは誰かと共演することで生まれるケミストリーの素晴らしさを感じました。また本人もお気に入りだったから、他にもシングル向きなキャッチーな楽曲がある中で、これをリード・トラックに選んだのではないでしょうか。

――確かに、楽しんでいる雰囲気はありますよね。

AAAMYYY:確かネット配信の番組で、新進気鋭のクリエイターと一緒に楽曲制作するプロジェクトがあったんですけど、彼女はそれをとても楽しんでいる雰囲気がしたんですね。音楽が心の底から大好きで、日々新しいものを作ろうというか、クリエイティブであり続けようとする姿勢が伺えました。そういう姿勢が、日々素晴らしい楽曲を作り続けられる秘訣なのではないかって思いましたね。


――フィーチャリングといえば、「Come For Me (Unlocked) feat. Khalid & Lucky Daye」も豪華なコラボレーションですね。

AAAMYYY:この楽曲の顔ぶれは大好きです。まず、カリードというビッグ・シンガーとの共演は贅沢としか言いようがないし、ラッキー・デイは私がデビュー当時から注目していた存在。だから、クレジットを見ただけで満足でした。楽曲自体も、キャッチーさを失わずにいながらも、3人で心地よい音を追求している印象。心通じる人と一緒に聴けたらいいなとか、シチュエーションが浮かんでくる仕上がりだと思います。

――「Best Of Me」はアリシアのみの楽曲。これは「オリジナルズ」と「アンロックド」、2つのヴァージョンが収録されています。

AAAMYYY:まず、この揺らぐビートはどのようにして生まれたのかが気になりました。手で打っているのか、それとも曲のスタート地点を他とは異なる場所にしてループさせているのか。また「アンロックド」ヴァージョンでは、陶酔感のある雰囲気が強くなっていますね。リリックにもそういうテイストが入っているのかなって思いました。アリシアって、これまで自宅映像を公開していたこともあるのですが、あまりプライベートが見えない人。お風呂に入る姿とか、お茶を淹れる姿があまり想像できなかったんですけど、この楽曲では生活が伝わってきました。これを先行トラックとして選んだのは、彼女のプライベートな部分も伝えたかったのでは?という思いも感じることができましたね。


――本作の全体における歌詞って、どんな印象を受けましたか? 事前に歌詞をお渡しできていなくて申し訳ないのですが。

AAAMYYY:以前は印象的なビートを駆使して、リスナーの士気を高めるようなメッセージ性のある楽曲が多かった印象ですが、本作は誰かに向けたものというよりも、自分に向けて思いを綴っているような。「私はこういう人間で、こんな弱さを抱えながら生活をしている」というモノローグが収められているような気がしました。

――また、アートワーク(ジャケット)からは、彼女のどんな姿を感じられましたか?

AAAMYYY:「鍵」のイヤリングが印象的で、大人の落ち着きが伝わりますよね。これまでの作品は、周囲の戦略もあったと思うのですが、ディーヴァというか女性の強さを引き立たせるビジュアルでしたが、今回はしなやかさがあるというか。年齢や経験を重ねてきた自分のこれまでの人生に対して誇りを持っている印象がします。それはお子さんが生まれた影響もあるのでしょうね。それまでは自分をいかに華美に見せることを大切にしていたと思うんですけど、母親になったことで他者に対する愛情も垣間見られるようになったというか。新しい表現方法を身につけた姿を感じ取ることができました。

――この『KEYS』という作品は、AAAMYYYさんの楽曲制作に何かしらの影響を与えるものになりそうですか?

AAAMYYY:多様なミュージシャンと共演するとか、メロウでダウナーな雰囲気だとか、私が今作りたい音楽のモードに近い雰囲気をアルバムから感じたので、自分のやろうとしていることに間違いはないと確信できました。また、どういう場所に、どういう雰囲気のコーラスを入れたら、より立定的になるのかとか、参考になるアイデアもたくさんもらえましたね。

――いちリスナーとして、どんな時間や風景で聴きたい作品でしょうか?

AAAMYYY:お家でじっくり聴きたくなる作品に仕上がっていると思います。この間、レコーディングスタジオで大きな窓から街の風景を眺めながら聴いたのですが、それが心にフィットしたというか。思いを込められているのでしょうが、それを強烈に発信しようとするメッセージ性のある楽曲はないので、集中して耳を傾けなくてもいいんですよね。メロウなトラックの雰囲気も相まって、ニュートラルな状態にしてくれる。人生をシンプルに捉えることができる作品になっているのかなって思います。

――今後のアリシア・キーズの音楽に期待することはありますか?

AAAMYYY:おそらくこの作品で、彼女が面白いと感じるものをすべて表現されているのかなという印象がしました。また、そのことで新しいアイデアが生まれたのではないのかなって。だから、今後もさらに新しい音を聴かせてくれるのではないでしょうか。個人的には、ジャズやソウルといった彼女にとって居心地の良い範疇から抜け出した時、声はどう変化するのか聴いてみたいところではあるのですが。いろんな国の人と共演していただきたいですね。

――いつかAAAMYYYさんとのセッションも期待したいところです。

AAAMYYY:恐れ多いです(苦笑)。

――最後に。AAAMYYYさん自身は、今後どのような音楽を追求していきたいですか?

AAAMYYY:今後もしばらくは思い通りの活動ができない状況が続くと思います。また、リスナーの方々の音楽に対する接し方も変化しているはず。その中で、新しさや楽しさを感じていただけるような作品やパフォーマンスをどう届けていけばいいのかを、たくさんの方々の知恵を拝借しながら追求できたらと思いますね。

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