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BE:FIRSTとファンが共に世界で躍進、Billboardグローバルチャート「Hot Trending Songs」成功を紐解く



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BE:FIRST「Gifted.」の躍進ぶり

 アーティスト・音楽プロデューサーのSKY-HIが仕掛けるグループ、BE:FIRSTが米国ビルボード・チャートで躍進している。

 11月3日にリリースされたデビューシングル「Gifted.」は、全世界のアーティストのファンや一般ユーザーがTwitterに投稿した楽曲に関する投稿をトラッキングするグローバルチャート「Hot Trending Songs」で、日本人アーティストとしては異例の堂々1位を獲得した。そして、リリースから1カ月過ぎた今でも、同チャート上位に君臨し続けている。BE:FIRSTをサポートする「BESTY」(ベスティ)のTwitterでも連日話題となっている。日課のように最新のチャート情報を共有してくれるファン・アカウントも運営されている。


▲BE:FIRST / Gifted. -Music Video-

 すでに多くのニュース記事で紹介されているが、「Gifted.」はBillboard JAPAN HOT 100チャート(11月10日公開)でダウンロード、ストリーミング、動画再生といったデジタルを中心とした指標にラジオ指標を加えて計4指標で首位を獲得し、総合1位デビュー。 アーティスト別週間ストリーミング再生数では歴代3位を達成するなど、日本の音楽業界においても、近年稀な記録尽くしのデビューアーティストだったことをチャートでも示した。



BE:FIRST「Gifted.」チャート変遷(2021年12月22日公開まで)


 HOT 100においてストリーミングやYouTubeにおける楽曲再生数に強さを持つ楽曲が上位にランクインすることは、日本の音楽シーンでも、今ではもはや珍しくない。CDセールスが日本市場において最重要とされてきたCD一辺倒な時代から、音楽の楽しみ方と消費形式が分散している現状が、反映されやすくなった。特定の領域に強さを発揮する新人アーティストや、オンラインとSNSにおいて絶大な楽曲ヒットのパワーを持つアーティストもチャートインできる音楽市場に進化している。最近では、ユーザー生成コンテンツ(UGC)に紐付いた動画再生のカウント指標が改定されるなど、独自の基準が加えられている。チャートで上位を狙いたいアーティストやレーベルにとって、チャート戦略は欧米のそれに一歩ずつ近づき始めたと言える。

 一方で、日本と比べて、欧米のチャートでは進化の速度が速い。欧米の音楽チャートは、常に新しい指標が取り入れ、換算基準を変えている。その理由は、常に多様的な音楽消費と向き合っているからだ。勿論、チャート会社や音楽業界が配信プラットフォームから得ているデータの質と量に、日本と欧米の音楽業界では大きな差がある。そのため、チャートに反映される再生データや消費データも異なってくる。だが、音楽チャートのルールが変わることは、業界にとっての新しい常識だ。よりグローバル規模の消費者と音楽との相互関係を反映するデータをチャートで示そうとしている。それはビルボードに限らず、SpotifyやApple Music、YouTube Musicなどのサブスクリプションサービスが提供するチャートでも同じことが言える。

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国や文化を超えるファンダムの存在

 こうした変化が起きているグローバル音楽シーンで、米国ビルボードが新たに始めたのが、「Hot Trending Songs」チャートだった。この新しいグローバルチャートにBE:FIRSTがチャートインし続けている。世界のチャートで勢いを維持するBE:FIRSTの成長は何が要因なのか。そして、日本人アーティストや、日本の音楽にとって、どんな意味があるのだろうか?



 「Hot Trending Songs」チャートの内容はこのようになっている。これは、米ビルボードがTwitter社のデータを元に更新している新しいグローバル音楽チャートで、Twitterに投稿されるテキストで言及された楽曲をリアルタイムでモニタリングしながらランク付けしている。チャートの更新頻度は、24時間毎と、米国金曜から木曜までの7日間毎。2021年10月から公開し始めていた。そして、最も重要なのは、Twitterの集計する投稿の対象がグローバルでの投稿、という点だ。

 チャートを動かす言及方法も様々だ。 ファン同士が曲名を省略ではなく、正式名称で投稿する。曲名を含む固定のハッシュタグを投稿する。Twitterを見ると、アーティストファン・アカウントが毎日チャート情報を更新したり、チャートで上位を狙うための投稿方法を促していたり、ファンが協力しやすいようにハッシュタグを設定するなど、ファンの活動が可視化されやすい。

 「トレンディング」の言葉の通り、言ってみれば、世界中で最も多くTwitterで話題にされた楽曲をリアルタイムで示すグローバルチャートと言える。だが、再生やセールスをカウントするチャートとの大きな違いは、ファンダムのアクティブ度、常に楽曲の話題を投稿してくれるファンの存在、ファンコミュニティの強さが可視化されるという点だ。

 「Gifted.」の「Hot Trending Songs」チャートでの推移を、順を追って振り返ってみる。

 24時間別チャートで同曲11月13日に4位でチャートイン。14日からは6位や7位をキープ。そして20日、このチャートの1位が定番になりつつあるBTSの「Butter」を抜いて、ついに1位を獲得した。22日にも再度1位となった。

 15日に4位ランクインのニュースがTwitterで拡散され、ファンが騒ぎ出し、チャート。そして22日の1位獲得では、SKY-HIがTwitterで驚きの声を投稿するなど、アーティストや事務所から「Hot Trending Songs」チャートに関する投稿が増えたことで、話題が活性化していった。



 11月27日に発表されたウィークリーチャートでは最高位の7位にラインクイン。12月25日付の時点で6週連続でチャート入りを達成しており、常にトップ10をキープしている。

 Billboardが同チャートを始めたタイミングと、BE:FIRSTのデビュー時期が重なる、という奇跡的な偶然はあったこともあるかもしれない。だが、先に述べたが、このチャートは全世界の楽曲データで順位分けされている。「Gifted.」は、BTSの「Butter」やLisaの「Lalisa」といったグローバルヒットや、ATEEZの「Turbulence」、Mew Suppasitの「Spaceman」、SB19の「Bazinga」、Dimashの「Fly Away」といった世界的なアーティストの楽曲の中で、勢いを持続しているのだ。

 そしてBE:FIRSTは現在まで、同チャートにランクインし、上位に居続ける、唯一の日本人アーティストなのだ。

 すでにお分かりかと思うが、このチャートで目立つのは、アジア発のアーティストの躍進だ。特に目を引いたのは、ウィークリーで1位を獲得している、フィリピン発のP-ポップ・グループのSB19のシングル「Bazinga」だ。SB19は、フィリピンに進出した韓国のShowBT Groupが始めたローカルタレント育成プログラムから生まれたグループ。今年7月にリリースした「Bazinga」(EP『Pagsibol』収録)は、10月29日にMVがYouTubeでプレミア公開されるなど、話題を集めてきた。12月11日発表のチャートでは24時間別、ウィークリー両方で1位を獲得。Twitterでの言及数はそれぞれ28万以上、300万以上だった。「Bazinga」は「Butter」とは再生数も売上も大きな差があるにも関わらず、ここ数週間に渡りBTSと1位争いを繰り広げている。グローバルアーティストに成長する過程における、ファンダムの重要性と持続性の事例として、SB19には大きなヒントがある。


▲SB19 'Bazinga' Official Music Video

 世界進出を目指しているBE:FIRSTとSKY-HIにとって、「Hot Trending Songs」チャートでの快挙は、今まで見えてこなかった世界標準まで楽曲を広げるためのバロメーターの一角が見えたのではないだろうか? 確かに日本人アーティストが世界の音楽市場に出ていくことは、音楽ストリーミングやSNSによって実現可能になった。だが、楽曲パワーを強め、維持することは、以前よりも難しくなった、と筆者は感じている。瞬間風速的なバズを起こすだけでなく、世界中の多様性あるファンとアクティブかつ持続的に繋がれるアーティストと楽曲が、広く長く支援される存在になっていくはずだ。BE:FIRSTと「Hot Trending Songs」チャートは、日本人アーティストの世界進出や育成にはファンとの関係性が必要不可欠であることを再認識させた。同時に、「Gifted.」のチャートインは、日本の音楽業界にとっても、グローバルチャートをどう攻略するかの対策を考えるキッカケになったと言える。

 BE:FIRSTが「Hot Trending Songs」から、次はどのように広がりを見せるのか、チャート戦略に注目だ。日本人アーティストが世界で成功する基準は多様化しているが、ビルボード・チャートで考えれば、「Emerging Artists」や「Song Breaker」、「Billboard Global Excl. US」など、攻略すべきステップが幾つもある。BE:FIRSTのファン・コミュニティが日本以外の国で生まれるかも、注目してみたい。ファンとのパートナーシップは、アーティストの育成と成長を支える現代の音楽戦略の一部となった。そして、グローバルアーティストを育てるためには、国や文化を超えるファンダムの存在が必要不可欠であることは、この数年の音楽業界で示されてきたが、この音楽的トレンドを日本で初めて取り入れ、成功させたのがBE:FIRSTと言えるかもしれない。日本人アーティストの世界進出が、新たなフェーズに入っていることを見せてくれた。

BE:FIRST「Gifted.」

Gifted.

2021/11/03 RELEASE
AVCD-61123 ¥ 3,300(税込)

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Disc01
  1. 01.Gifted.
  2. 02.Kick Start
  3. 03.First Step

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