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<インタビュー>lynch.がメジャーデビュー10周年 方向性を見出せたターニングポイントについて語る



 葉月(Vo)、玲央(Gt)、悠介(Gt)、明徳(Ba)、晁直(Dr)からなる愛知県出身の5人組ロックバンド、lynch.(読み:リンチ)がメジャーデビュー10周年を記念した完全限定生産盤『2011−2020 COMPLETE BOX』を12月27日にリリースする。メジャーからリリースした全アルバム、全シングルを網羅したCDに全ミュージックビデオを収録したBlu-ray、182Pにも及ぶ豪華ブックレットをパッケージした本作品。漆黒のオーラをステージから放つlynch.の魅力は、なんといっても速く・激しく・メロディアスが三位一体となったヘヴィネスがかもしだすダークな世界観。この魅惑的なダークネスはメジャーデビュー後、どう構築されていったのか。これまでの10年を振り返りながら、それぞれのターニングポイントとなった音楽、映像について5人に語ってもらった。

『EXODUS-EP』以降に見出したlynch.のスタイル

――『2011-2020 COMPLETE BOX』はどんな経緯で生まれた作品ですか?

玲央:メジャーデビューして10年、せっかくだから形にしませんかということでメーカーさんの方から提案頂いたんですよ。僕ら自身はメジャーで10年続けることが目標とかではなかったので、周りにいわれて「そうなんだ」という感覚なんですね。なので、この作品はご提案頂いたことに対して「ありがたいのでお願いします」という流れで作りました。

――10年前、メジャーに行ったらすぐに有名になってやる、みたいな野望はありました?

葉月:最初はありましたけど、違うんだなというのはすぐに分かりました。

――どの辺りで?

葉月:『EXODUS-EP』というミニアルバムを出した頃ですね。1枚目のアルバム(『I BELIEVE IN ME』)はうまいこと作れたと思うんです。

――サウンドは明らかにいい音になって、でもメジャーでも変わらない姿勢を貫くというlynch.像がでた作品でしたね。

葉月:でも2枚目のアルバム(『INFERIORITY COMPLEX』)ぐらいから噛み合わない部分が出てきて。2枚目はチャートの順位が落ちたんでよ。それでレコード会社からは「このままだとちょっと」というお話をされたので、レコード会社とディスカッションしながら「LIGHTNING」、「BALLAD」というキャッチーなシングルを2枚作ったんです。だけど、実際はそれで売れる訳でもなく、ファンも喜ぶ訳でもなく。これは自分たちでしっかり考えてやんなきゃダメだなと思ってやりだした、その第1弾が『EXODUS-EP』です。それをヒントに、自分たちの土台となるものを築いたのがその次に出した『GALLOWS』というアルバムです。

――『GALLOWS』はまさにいまのlynch.のスタイルを決定づけた作品ですよね。

葉月:僕もそういうものを作ろうと思ってましたから。もっと分かりやすくlynch.っていうものを伝えないとみんなに伝わらないだろうなと思ったから、あえてメイクとか音とか歌詞の世界とかを固めにいったんですよ。



葉月


――固めにいく、というのは?

葉月:デビューしてからlynch.はノーメイクでデニムにTシャツという姿でやってたんです。そもそもは我々もヴィジュアル系というシーンで生まれたはずなのに、そこから脱却しようとデビューのタイミングからどんどん“普通”になっていって「LIGHTNING」、「BALLAD」というキャッチーなシングルまで作ってみたものの、lynch.がうまく伝わらない。どうやったらもっとlynch.というバンドが分かりやすい存在になるのかって考えたときに、ハードなサウンドでよりヘヴィでダークで、日本語の歌詞がしっかりメロディーにのっかって、メイクも目の周りを黒く囲って、黒い衣装を着てバシッと決めこんだアー写を撮ってというという方向になっていった。それが『GALLOWS』、『D.A.R.K.-In the name of evil-』、『AVANTGARDE』というアルバムで固まっていった感じです。

――この3作でlynch.の醸し出すダークネスはここで構築されていった訳ですね。では、個人としてこの10年を振り返ってみたとき、転機となった楽曲をあげるとすると?

悠介:『EXODUS-EP』に収録されてる「BE STRONG」。僕が作った曲の第1号です。それまではずっと葉月君がメインコンポーザーで作ってたんですが、ここからコンスタントに僕が作った曲も収録されていくようになったので。

葉月:3曲入りのシングル『BLØOD THIRSTY CREATURE』。アルバム『GALLOWS』から『AVANTGARDE』まででlynch.の土台作りが完成して。そのあと明徳君の脱退があって『SINNERS-EP』を作った後がこれなんですけど。このときはもう何かを狙って作らなきゃというのが僕の中にはないんですよ。だから、1曲目の「BLØOD」は「曲が求めてるんだからもういいっしょ」ってことで全英詞だし、2曲目の「CREATURE」は今までになかったチューニングでコミカルな部分も恐れず入れられた。ここでは、もうなにをやってもOKっていう自信が芽生えてるんですよね。


▲CREATURE / lynch.

明徳:『EXODUS-EP』の「NIGHT」です。lynch.の基盤作りが始まったアルバムのなかで「NIGHT」は曲としてもlynch.節炸裂で、ミュージックビデオも撮ったんですよ。映像ではみんな真っ黒な格好をしてて、lynch.としての見せ方もここで固まったと思ってます。


▲NIGHT / lynch.

晁直:これはただの思い出なんですけど、『SINNERS-EP』のレコーディングからメンバーが誰も現場にこなくなったなっていうのを、いま思い出しました。lynch.の基盤と同時にレコーディングの基盤も確立されたからこそ、みんな現場に来なくなったのかなと。



晁直


玲央:『I BELIEVE IN ME』の一番最初のレコーディングです。いままで自分たちだけでああだこうだとやってきたところに、ギターテックさんをはじめいろんな方が関わって。ここでプロのレコーディンを初めて経験したのが大きいですね。



玲央


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いま聴くとすごく響くよなっていう曲がたくさんある

――アルバムのなかでは『XIII』という作品がBillboard JAPANの週間アルバム・セールス・チャートで自身最高位となる7位を記録しましたよね。この結果についてはどう感じてらっしゃいますか?

葉月:僕らの歴史上、過去一番売れるCDになるなという自信は最初からありました。勢いがどんどんついてきてるのも自分たちで感じてましたし、作品自体もすごくいいものができたので。あとはミュージックビデオの影響もあると思います。リード曲の「JØKER」がカッコいいのが撮れたので、これを見てアルバムを買おうと思ってくれる人はたくさんいるだろうなと思いました。このアルバムは昔のヴィジュアル系といわれる音楽へのオマージュがすごい入った作品なんですよ。だから、僕もそれを楽しんで眼帯を付けてみたり、サーカス小屋のような場所で映像を撮ったり。サウンドも映像もヴィジュアル系の強みを武器として使うことを楽しんでやった作品です。


▲JØKER / lynch.

――ではこの流れで、ミュージックビデオについても聞かせて下さい。Blu-rayに収録された19曲のミュージックビデオのなかで、各々思い出深い作品をあげるとしたら?

葉月:僕は「MIRRORS」ですね。あれの2番のサビのど頭でスローモーションになるシーンがあるんですけど。そこで僕がマイクケーブルを上にブンっと巻き上げるんですが。カッコいいのが撮れるまでものすごい時間がかかったのと。あとは、僕の手に水がバシャとかかるシーンをみんなの撮影が終わったあと、一人寂しく撮ったなという思い出があります。


▲MIRRORS / lynch.

明徳:「FROZEN」です。この曲で初めて各々のちょっとしたイメージシーンを撮ったんですが。まあそれが難しくて。バンドマンは楽器持ってないとダメだなと思いました。完成した作品を見ても恥ずかしかった。というか、メンバーに笑われた(苦笑)。


▲FROZEN / lynch.

悠介:単純にカッコいいなという意味で「SORROW」。全員スーツでビシッときめて、特に横並びで歩いてるシーンとかは映画っぽくていい映像が撮れたなと思ってますね。


▲SORROW / lynch.

玲央:僕は「DEVIL」です。これを撮るとき、僕が一番最初に撮ったんですけど。大道具さんが中で何か作ってたみたいで、現場は化学薬品の匂いが凄かったんですよ。その匂いに酔ってヤバかったです。

晁直:僕も「DEVIL」なんです。なにげなくTVを見てたら、同じ場所でMVを撮ってる女性アイドルの人がいて。同じ場所で撮っても、見た目が違うとこんなにも変わるんだなと感心した思い出があります。


▲DEVIL / lynch.

――音源、MVとともにライブはlynch.の最大の武器。みなさんがライブで他と圧倒的に違うと誇れる部分とは?

葉月:5人並べばそれでOKというところ。ものすごいテクニックで圧倒するバンドはたくさんいると思うんですけど、メンバーがステージに立っただけで圧倒できる。そういうバンドってなかなかいないと思うんですよ。練習すればそうなれる訳ではないんで。そこを、lynch.は持ってるバンドだと思ってます。

――そんなlynch.がファンとともに掲げてきたのが日本武道館公演。本来なら今年2月3日にその夢が叶った訳ですが、コロナ禍であえなく中止。いまはどんな気持ちですか?

葉月:サラッとしてますよ。ファンとこれだけ長く共通の目的として掲げてきたものだから、みんな絶対来たいという人ばかり。だからこそ、みんなが来られる状況のときにやればいいんじゃないという感じでした。

――ということは、この先に武道館公演は。

葉月:タイミング待ちです。

――この作品を通してどんな風にlynch.を楽しんでもらいたいと思ってますか?

葉月:初心者の入門編にしては値段が高いんですが、全部を聴けるいい機会で、リマスタリングもされているんでよりいい音で聴けます。コレクターアイテムとしてもカッコいいんですよ。箱とか中身が。なので、音をサブスクとかでまずは聴いてもらって。気に入ったら買ってもらえたら嬉しいですね。

晁直:買ってもらったら所有感はすごいあると思います。全部持ってるよっていう方も記念品として買ってもらうのもよし。lynch.を知らない人には簡単に買えよとはいえない値段ですが、気に入ったら買って下さい。

悠介:本当に高いですからね(笑)。車の中で音楽をCDで聴きたい派の人にはとても便利だと思うので、そういった方にオススメしたいですね。



悠介


明徳:いままではアルバムごとに箱のサイズが違ったりしたんですけど、これはCDの棚に綺麗に収まるので、コレクターの人はいいと思います。リマスタリングのときに思ったんですが、普段は僕も自分の好きな曲ばかりを聴いちゃうんですけど、改めて全曲聴いてみるとのは面白いなと思いました。「この曲いま聴くとめっちゃいいな」っていうのがたくさんあると思うので、発売されたら改めて全曲をゆっくり聴いてみて欲しいです。



明徳


玲央:僕も全曲聴いたんですが、その時々のことを思い出したり、昔はそこまでじゃなかったけどいま聴くとすごく響くよなっていう曲がたくさんあるんですよ。そういう意味では、すごく面白い作品だなと思うので、ぜひ手にとっていただければなと思います。

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