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<コラム>野宮真貴が世界中に届けるアニバーサリー・プロジェクト“World Tour Mix”に注目



コラム

 デビュー40周年を迎えた野宮真貴の周辺が騒がしくなってきている。まず、2021年9月から始まった「配信向けのピチカート・ファイヴ」というシリーズで、ピチカート・ファイヴ在籍時の音源が続々と各種音楽サービスで配信され始めた。その第3弾として「配信向けのピチカート・ファイヴ その3 野宮の巻」が、11月17日に公開されている。また、11月24日には『高音質のピチカート・ファイヴ』と題されたCD 2枚組のコンピレーション・アルバムもリリースされた。一方、野宮自身は12月18日にビルボードライブ横浜で矢舟テツローと2マンライブを実施。DJに小西康陽が参加ということでも話題を呼んだ。(ライブレポートはこちら

 そして大きな目玉は、12月17日に配信リリースされた「東京は夜の七時 (feat. Night Tempo)」だ。タイトル通り、ピチカート・ファイヴ時代の名曲をリメイクしたものだが、今をときめく韓国人DJ、Night Tempoとのコラボレーションとなっている。Night Tempoはご存知の通り、日本のポップスや歌謡曲に造詣が深いことで知られている。ジャンルとしてはフューチャー・ファンクやヴェイパー・ウェイヴと呼ばれる独特のムーヴメントの流れに位置し、シティポップやアイドル・ポップを独自にリミックスして人気を博しているDJだ。例えば、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」の非公認リエディットは1,000万回を超える再生数となり、フォロワーも多数追随した。

 ただ、これまで彼の興味対象は、杏里や菊池桃子といった主に80年代の作品だったが、12月1日に発売したオリジナル・アルバム『Ladies In The City』で野宮をフィーチャーした「Tokyo Rouge」を収録したりと、いよいよ90年代の渋谷系に向き始めたというところも興味深い。

 この「東京は夜の七時 (feat. Night Tempo)」はいかにもNight Tempoといえる今っぽいトラックだが、なんの違和感もなく野宮真貴の声がフィットしていることにも驚かされる。意外性がありながらも納得感もあり、それでいて新鮮なコラボレーションといえるだろう。


 野宮真貴の40年の歴史を振り返ると、コラボレーションという言葉が非常によく似合う。1981年のデビュー・アルバム『ピンクの心』は、ムーンライダーズの鈴木慶一が全面プロデュースしていたし、その後結成したポータブル・ロックは、元FILMSの中原信雄、元8 1/2の鈴木智文という東京のパンク・ニューウェイヴの先鋭たちが参加。いずれもある種のコラボレーションという見方もできるだろう。1990年にピチカート・ファイヴの3代目ヴォーカリストとして加入したのは、小西康陽からの熱烈なラブコールがあったからだそうだが、その起用に関してもリード・ヴォーカリストというだけでなく、ビジュアル面でシンボリックな役割を担当し、小西康陽の脳内にあるイメージに沿うようにフィーチャーされたという感覚だった。もちろん、ピチカート・ファイヴの一連のヒットと、海外でもリリースして世界中で評価が高まったのは、フォトジェニックで唯一無二の歌声を持つ彼女の功績であるのは間違いない。

 また、ビルボードライブの公演とも絶妙にリンクしたシリーズ【野宮真貴、渋谷系を歌う。】では、自身が中心だった渋谷系を振り返り、渋谷系のルーツとなった楽曲と、そこから派生した楽曲を丁寧に再構築することで、ピチカート・ファイヴ在籍時に駆け抜けてきた時代の華やかな雰囲気を現代に蘇らせた。また、このシリーズでは実際に、カジヒデキ、コリーン(スウィング・アウト・シスター)、横山剣、クレモンティーヌ、村井邦彦、渡辺満里奈、かまやつひろし、鈴木雅之、高野寛など多数のアーティストと共演を行っている。まさに音楽家、プロデューサー、クリエイターたちをインスパイアし続ける野宮真貴ならではの豪華なメンバーだ。

 そして、2021年末から始まるのが、“World Tour Mix”と題された新たなプロジェクトだ。先述したNight Tempoとの共演が第一弾ではあるが、今後も続々と海外のクリエイターが野宮真貴のレパートリーを料理するという企画のもとに、様々なコラボレーションが控えているという。世界中のファンに音楽を届けるアニバーサリー・プロジェクトに大きな注目が集まることは間違いないだろう。

 そして、4月にはソロ名義のライブも決定した。“World Tour Mix”のプロジェクトを経て、パワーアップした彼女のパフォーマンスを楽しめることだろう。常に最先端を突っ走ってきた野宮真貴は、40周年という節目を迎え、さらに次の時代へと歩み始めている。これまでになかった斬新なコラボレーションがどのような発展を見せるのか、今後の展開に大いに注目していきたい。

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