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<インタビュー>Ayumu Imazuが語るニューヨーク時代の刺激、「曖昧と正解」で揺れる最新シングル「ACCHI KOCCHI」に込めた想い



インタビュー

 2000年生まれの現在21歳、日本とアメリカを拠点に活動し、作詞作曲からダンスの振り付けや構成までをこなす大阪出身のアーティスト、Ayumu Imazuが最新シングル「ACCHI KOCCHI」を11月26日にリリースした。14歳のときに留学、ニューヨークで思春期を過ごし、その期間で得た刺激や磨いたスキルをもって、2021年8月にワーナーミュージック・ジャパンからメジャー・デビュー。情報番組や音楽メディアでは期待のニュー・ジェネレーションとして紹介され、アニメ作品とのタイアップも経験し、今後の飛躍がますます期待されるなか、同じくZ世代の新進気鋭アーティスト、yonkeyをプロデュースに迎えた今作は、曖昧さが溢れる社会で“答え”を求めて奔走する、とりわけ同世代のリスナーたちと共振しそうなメッセージ・ソングとなっている。現代的かつ等身大なテーマを備えた本作の制作過程、そして、そこに至るまでのこれまでの歩みについて、本人に話を訊いた。

14歳で渡米、ニューヨークでの日々

――改めて、幼少期から現在までの経歴を振り返ってお伺いしたいなと思います。

大阪出身で、6歳のときに母の勧めでダンス・スタジオに入り、そこからダンスを始めました。

――ダンスには興味はありましたか?

嫌いではなかったし、苦手でもなかったので、最初は続けてみようという軽い気持ちでした。ただ、小さい頃から自分を見てもらうことは好きだったので、ステージに立つことが楽しかったことは覚えています。その後、発表会やイベントの前に立ち位置やセンターを争うなかで、段々と上手くなりたいと思うようにもなっていき、人前でパフォーマンスすることをきっかけにもっと本気で頑張るようになりました。

――どんな曲で踊ってましたか?

ニュー・ジャック・スウィングが多かったです。それ以外はクリス・ブラウン、アッシャー、ファレルやN.A.R.D、ブラック・アイド・ピースとか。その中でも自分が特に好きだったのは、マイケル・ジャクソンとブルーノ・マーズです。




――そして、14歳で渡米してますね。

ずっと洋楽で踊っていて、自然と洋楽を聴く環境にいたので、世界で活躍するアーティストになりたいという夢はどこかでずっとありましたし、いつか本場で学びたいという気持ちはあったのですが、特にブルーノ・マーズがスーパーボールでパフォーマンスをしているのをテレビで見て、すごく衝撃を受けました。

――2014年ですよね。

イントロはドラムで入って、歌もうまくて、ダンスも踊っていて。楽器やダンス、歌のスキルが高いのはもちろんですけど、音楽を心から楽しんでいる姿が「いいな~」と思いました。そこで初めて「ソロアーティストになりたい!」という気持ちが明確になって、留学しようと決めました。

――当時の心境は覚えていますか?

正直、何も考えずに行きましたね。

――でも、思い立ったからといって、なかなか行動には移せないですよ。

14歳だったからできたのだろうなと思いますし、大人になる前に行けたのは大きかったなと思っています。英語もそうですし、成長過程で周りの環境が本場だったことは、今の制作にも生きていると思います。




――渡米後はまず何をしたんですか?

自分の曲でパフォーマンスしたいという気持ちが出てきたので、自分の曲を作り始めました。アコギを買って、練習し始めて。少し後にピアノも買って。最初の頃は弾き語りでパフォーマンスもしていました。

――アコギの弾き語りから始めたというのが少し意外ですね。ダンス・トラックを作って踊るという感じかなと思っていたので。

まだ14歳だったので、そこまで考えが及ばなかったんです。作詞作曲=ギターで曲を作って歌うということしか思いつかなくて。

――ニューヨークではどんな日々を過ごしましたか?

やっぱり日本が恋しくなることが多かったです。日本の学生の青春映画を見て「めっちゃ帰りたい!」と思ったりもしました(笑)。

――あはははは。こっちはこっちで『ハイスクールミュージカル』の世界に憧れていたりするのに。

そうですよね。だいたいは朝、学校に行って授業を受けて、終わったらダンス・レッスンやヴォーカル・レッスンを受けに行って。あとは、公園に行ってパフォーマンスをしたり、ストリート・ライブを見に行ったりもしていました。ストリートでは、基本的にはみんな上手いですが、楽しそうにやっている人もいるし、お金が欲しくてやっている人もいて。僕がニューヨークで好きなところはそこなんです。本当に色々な人がいるし、どんな人でも受け入れてくれる街だから、自分自身も一番リアルな自分でいれる。そこがすごく好きだなと思います。

――3年間過ごしたニューヨークの日々で一番の思い出というと?

特別な1日。アポロ・シアターでパフォーマンスしたのは大きい経験でしたし、一人でストリート・ライブをやったことも……いま振り返ってみると、よく挑戦したと思いますね。あとは、ダンスが本当に好きになったきっかけにもなっています。ニューヨークに留学する前もダンスが好きだと思っていたのですが、その100倍くらい好きになりました。

――どうしてそんなに好きになりましたか?

それまではたぶん、技術のことばかりを気にしていたんですよね。日本のダンスはレベルが高いですが、ニューヨークのダンス教室には、僕と同い年の子もいれば、おばさんやおじさんもいるし、色々な人がレッスンを受けにきていました。体を動かして、楽しい時間を過ごしたいという理由で来てる人もいるし、トレーニング目的の人もいる。先生が教えていることも、技術だけじゃなくて、いかに音を感じて踊れるかということでした。そういう根本的なことを教えてもらったときに初めて「ダンスってそういうものだよな」としっくりきまして。より踊ることが好きになりました。




――ご自身にとってはどんな経験になりましたか?

14歳から17歳までの3年間で、挑戦し続けたのが大きかったなと思いますし、日本にずっといたので、アメリカに行って初めて日本を外から見て、自分のことも客観的に見れたところがありました。あっちに行けば外国人になるので、それもいい経験だったなと思いますし、留学しないと得られない感覚だなと思っていて。より自分を見つめ直せたという感じです。自分はどういうことがしたいのか。自分はなぜ歌いたいのか。なぜ踊りたいのか。なぜ曲を作りたいのか。自分と向き合うことができたなと思います。

――その答えは見つかりましたか? どういうアーティストになりたいか。

留学中に見つかったものというのはなくて。いまもまだ答えは出ていないですし、その答えは変わっていくものだと思っていて。ただ、変わっていくものではあるけど、自分がいま何を感じているのかを発信するのがアーティストだなと思っています。変わっていくのはいいけど、いま自分が思っていることを100%で発信するのが大事だなと思います。


少しずつ殻を破っていく段階

――似たような質問になりますが、理想とするアーティスト像は見つかりましたか?

昔はブルーノ・マーズみたいになりたかったんですけど、そこはまた違うかもしれない、ということに気がついて。やっぱり誰かになるのではなく、自分を見せないといけない。特に最近は、自分のアーティスト像を見つめ直す機会もあります。もっともっと成長したいと感じています。現状では、ダンスが強みだと思うので、自分を表すときに一番最初に出てくるキーワードでありつつ、作詞作曲にもパッションを持ってやっています。

――作詞作曲をご自身で手掛けることは譲らず?

作詞作曲に関わることはこれからもやっていきたいなと思っているのですけど、一人で全部やっていくことにはこだわりがあるというわけではないです。信頼できる人、高め合っていける人と強いチームを作ってやっていければ、よりいいものが作れると思っています。いまは最初の段階なので、自分ができることは極力一人でやっていますけど、そこにこだわりはあまりないです。

――ジャンルに関してはどう考えてますか?

R&Bがルーツで、ポップスも好きなので、そういった音楽を追求して、いつかは絞っていきたいですね。いまは幅広くやっていますが、さらに広げるというよりは絞っていきたいです。

――ちなみに留学後はどんな音楽を聴いてましたか?

洋楽のポップスが多かったですね。弾き語りの勉強をしていたこともあり、エド・シーランやギャビン・ディグロウ、ジェームス・モリソンとか。最初の1年くらいはバラード系が多かったですね。そこからR&Bを聞くようになり、ミュージック・ソウルチャイルドとか、オールドのスティービー・ワンダーとかを意識的に聴くようになりました。好きで聴くというよりは、作曲の勉強として聴いていた感じですね。

――オリジナル楽曲で一番古い曲は?

1曲目は2019年10月に初のオリジナル楽曲MVとして公開した「PARADISE」(1stデジタルEP『Epiphany』に収録)です。いま考えたら何もわかっていなかったんですけど、弾き語りで作ったメロディを持って、今井了介さんのスタジオに入ってコライトしました。BPM 120で4つ打ちの曲なのですが、自分としては何を発言していいのかわからないし、どうしたら良くなるのかもわからないので、とりあえずメロディ・ラインにはこだわりつつも、作るのが難しかったのを覚えてます。



PARADISE - Ayumu Imazu【Music Video】


――EDMの要素も入ったオルタナティヴR&B系の曲になってますよね。完成したときはどう感じましたか?

世に出るまでは「この曲はどうなんだろう? みんなどう思うのかな?」という心配のほうが大きかったですね。曲自体はいま聴いてもいい曲だなと思うんですけど、作った最初の頃は「これでいいのかな?」と感じたことはありました。

――では、これまでに作った曲の中で、自分らしさが最も出ている曲を挙げるとすると?

意外かもしれないんですけど、自分の中では「Lover」が一番ナチュラルです。LAに行ったときに作った曲なんですけど、いい意味でJ-POPっぽくないというか。僕は普段、歌詞は全然関係なくて、サウンドで聴いて気持ちいいかどうか、という曲ばかりを聴いいます。でも「Lover」は、歌詞もすらすら出てきて、今井さんもニュー・ジャック・スウィングの雰囲気を熟知しているので、制作もスムーズにいきました。自分の中では気に入っている曲というよりも、より自然な曲だなと思います。

――2nd EP『Waves』に収録されている「Light Up」かなと思ってました。

そうですね。「Light Up」は、いい意味でバランスのとれた楽曲だと思います。もともとは特徴的なベース・ラインをメインにした曲を作りたいというところから始まって。ダンス・チューンで、ポップな要素もありつつ、ファンキーなベース・ラインがあり、ダンスも見せれる。僕の理想とするアーティスト性を考えたときに、すごくバランスのとれた1曲になっていたし、周りの反応も一番よかったりしましたね。



Light Up - Ayumu Imazu 【Music Video】


――一方で、ライブだとバラードも多いですよね。

バラードを作るのが好きですし、J-POPのバラードも好きなんです。ニューヨークにいたときも、RADWIMPSさんやback numberさんのロック・バラードを聴いたりもしていて。日本語にしか出せない切ない感じも好きなので、バラードを書くのも好きですね。

――2枚のデジタルEPを経て、2021年夏にメジャー・デビューしました。デビューが決まったときの心境は?

小さい頃からの夢として、メジャー・デビューというのは一つのテーマでありました。それがいざ叶うとなると……最初は全然実感が湧かなかったのですが、周りの人から「おめでとう」という言葉をたくさんいただいて。「あ、デビューしたんだな」と実感しましたし、アーティストとしてもっと自分を見つけていかないとダメだなと思うきっかけにもなりましたね。

――メジャー・デビューして何か変化はありましたか?

インディーズでやっていたときは、やっぱり自分の知っている箱の中だけにいて。そこからデビューして、もっと多くの人と関わるようになったり、新しい方向に挑戦するようになりました。色々なアプローチの仕方で少しずつ殻を破っていく段階というか、いまは試している、挑戦する期間という感じがあります。


等身大の自分を発信し続ける

――メジャー・デビュー曲「Juice」はご自身にとってどんな曲になってますか?

海外の作家さんとの初めての曲でした。わかりやすくてフレッシュで、ポップな明るい曲になっています。みんなで踊れるような曲がいいなと思っていたんですけど、ライブで披露したときもみんなすごくノッてくれたし、反響もあってよかったなと思っています。

――2ndシングル「Stranger」は、アニメ『SCARLET NEXUS』の第二期EDテーマでした。

まずお話をいただいたことが嬉しくて。「がんばります!」という感じでした(笑)。初めてのタイアップで、アニメのイメージに寄せすぎても、離れすぎてもおかしくなってしまうので、そのバランスを考えながら作りましたね。

――歌詞にはどんな思いを込めましたか?

テーマとして、もう一人の未知の自分というものをイメージしました。自分の中に秘めているもう一人の自分を曝け出す、勢いのある曲にしたいなと思っていて。この曲も編曲は今井さんです。LAでレコーディングしたのですけが、とてもいい楽曲に仕上がったと思います。今井さんは僕のアーティスト像をわかってくれているので、個人的にはとても安心して作業できる方ですし、センスもすごいので編曲は任せていたりという感じですね。



Juice - Ayumu Imazu 【Music Video】


Stranger - Ayumu Imazu 【Music Video】


――駆け足になってしまって申し訳ないですが、最新シングル「ACCHI KOCCHI」は編曲に22歳のプロデューサーでトラック・メイカーのyonkeyさんを迎えています。

とてもいいプロデューサーです。歳も近くて、センスもすごいので、気楽にできるというか。聴いている曲も似ている部分があるので、自分が直して欲しいところもすぐにわかってくれる。一緒にやったのは初めてでしたが、意外とスムーズにいきましたし、同世代の才能のある人と出会えたので、次はもっとセッションみたいな感じで曲を作りたいなと思いますね。

――ブギー・ファンク系のグルーヴィーなポップ・チューンになっていますが、歌詞にはどんな思いを込めましたか?

タイトルにもあるように、あっちこっちに振り回されて、どうすればいいかわからない。その答えを見つけるというテーマで書いた曲なのですが、曲調はポップで聴いていて楽しくなるような感じなのに、歌詞の内容が振り回されて大変というミスマッチが起こすシュールさや面白さを表現できればいいなと思って書きました。




――振り回されている主人公はご自身と重なってますか?

そうですね。自分が歌詞を書くときは「自分がこういう状況に陥ったらどうなるかな?」ということを頭の中でストーリーにして考えることも多いのですが、僕だけじゃなく、SNS上で他の人からもらう“いいね”の数で自分の価値を決める癖がついちゃっている人も多いと思うんです。だから、ポップで面白い曲なんですが、若い子たちが共感できるようなメッセージも込められたらいいなと思って作りました。明日から人生頑張ろうとかじゃなくて、「わかるわかる」と共感してもらって、少しだけでも気が楽になったらいいなと思って書いた曲です。

――他人の意見に惑わされて振り回されている人はどうしたらいいですか?

その答えを探している曲ですね。あははははは。

――(笑)。一緒に探している感がAyumuさんらしさの一つかなと思ったりします。明確な答えを提示したり、上から目線で言い切ったりしないという。

そうですね。難しいトピック、正解のないトピックについて書くことに自分はすごくやりがいを感じていて。「Stranger」や「浮遊夢」、そして「ACCHI KOCCHI」もそういったテーマになっています。それはいまの自分がいる状況も関係しているなと思っていて。例えば30代になって、たくさんの経験から正解を得ることができれば、それを発信していくことになると思う。でも、いま自分の中にある迷いや悩み、葛藤を抑えて、これが正解だよと発信するのは間違っていると思うんです。等身大の自分を発信し続けることが自分は大事だと思っています。



ACCHI KOCCHI - Ayumu Imazu 【Music Video】


――今後はどう考えてますか? 最後に未来像を聞かせてください。

自分のアーティストとしての道のりはまだ始まったばかりだと思っていて。メジャー・デビューをきっかけに絞っていくというか、自分はどういうアーティストを目指していくのかを見極めていくことが課題になってくるなと思っています。まずはそこに集中して、試行錯誤しながら、色々な楽曲やメッセージを発信していきたいなと思っています。近い未来としては、何かをきっかけに僕の音楽が広まってくれたらいいなと思います。そしてグローバルに活躍したいという気持ちは変わっていないので、将来的にはアジア・ツアーやワールド・ツアーは絶対成功させたいです。

――スーパーボールまで書いていいですか?

あははははは。きっつ! それはもう少し自分のアーティスト像が固まってから言えたらいいなと思いますね(笑)。

Interview by 永堀アツオ
Photo by Yuma Totsuka

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