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中川翔子 『しょこたん☆かばー4』インタビュー
今度の『しょこ☆かば』は2枚同時!
夏には渋谷や原宿も巻き込んでの“夏祭り”で大盛況を呼んだ中川翔子が、大人気カバーシリーズ第4弾で、アイドル篇とロック篇を2枚同時リリース! 震災で悩んでいた自分に「今、自分に何ができるか」を教えてくれたのは、ファンのみんなだったと語る彼女が、ありったけの愛を凝縮させたこの2枚について語ってくれました。PVに登場する新アイドルユニット“Shococo”とは!?
渋谷原宿も巻き込んだ! 夏祭りの思い出
--夏にNHKホールで全国ツアーを締め括る2DAYS公演【今こそ団結~笑顔の輪~夏祭りスペシャル】を行いました。震災の影響で一部延期となり、タイトルを変更して臨んだツアーですが、開催にあたって色々と悩んだようですね。
中川翔子:「本当に今、ライブをやっていいのか?」とか「この言葉は今言っちゃいけないんじゃないか?」とか、正解が無い中で自分の頭をぐるぐる回り続けてました。でも、Zepp Tokyoでやった時には東北からもたくさんのお客さんが来てくれたし、仙台公演でも色々と大変なのにそれでも来てくれて……。
私は勝手に迷っていたけど、お客さんは去年よりも濃くなったライブを観に来てくれたんだから、心から楽しまないとダメなんじゃないかって、改めて思わされたので、【夏祭りスペシャル】は楽しむだけで行くぞ! って覚悟ができましたね。―――まだ迷い続けてはいるけど、ライブをやらせて頂けることの意味とか楽しさとか、……はい!
--【夏祭りスペシャル】では、映画「塔の上のラプンツェル」のハイライトシーンを再現する演出がありました。あの光景はステキでしたね~。
中川翔子:私もビックリしました(笑)。「塔の上のラプンツェル」の歌をうたうという“まさか”から始まって、本棚とかテーブルとかの舞台装置を用意してミュージカルっぽくやることも初めてだったし、何より一番凄かったのがウルトラオレンジのサイリウムを使ってランタンを模した演出に、お客さんが参加してくれたことです!
あの2日間で1回ずつしかやれないことだったし、お客さんは入口でサイリウムを渡されて知る訳だから、本当にぶっつけ本番だったのにキレイに揃った! 中には「塔の上のラプンツェル」を観ていないお客さんだっていたと思うのに、どうして通じたんだろう? 自分がラプンツェルになっちゃったみたいな! 宇宙の中に浮かんでるみたいな! 夢の中にいるみたいな! 「今、生きてるんだろうか!?」みたいな! 本ッ~~~当に幸せでした!
--しかも、【夏祭り】では原宿や渋谷の各所で関連ショップやコラボが展開されていて、しょこたんがあの一角をジャックしたような2日間に……
中川翔子:あ、そうだった(笑)。……って一瞬忘れちゃうくらい、本当に盛りだくさんでしたよね! 他にも、ライブでのトークが苦手なのに、まさかのトークコーナーを設けられちゃったんですけど、やってみたら楽しかったんですよ! ラプンツェルとかゼルダとか色んなミラクルも重なって、アイルーとのコラボも実現して……。盆踊りをやってみたいっていうのも、夏だったから実現できたし。戦隊メドレーも今年はスーパー戦隊35周年だし、「今しかねぇだろう!」と(笑)。これだけ長いツアーになったのに、バンドさんは最後まで同じメンバーでやれましたし、盛りだくさんで一番濃い、何の迷いもなく全力で楽しめた、「悔い無し!」っていう夏祭りになりました!
--渋谷や原宿まで巻き込んでの壮大なお祭り。こんなことができるのはしょこたんだけだって、改めて実感した2日間でしたよ。
中川翔子:ライブツアーを始める当初は、もしかしたら誰も来ないんじゃないか……くらいに思ってましたし、「この衣装は止めておこう」とか「この歌は別れの歌だから止めておこう」とか色々考えちゃってたんですけど、みんなが求めてくれるのはいつも通りの“しょこたんのライブ”だったんですよね。
その時、その時でできることを精一杯やっていたつもりだったんですけど、自然に何かを抑えてしまっていた部分があったんだと思うんです。それで落ち込んだ時に、初めて宝塚を観に行ったんですけど、凄かったんですよ! いつも通り、伝統通りの振り切ったステージで、その3時間は全てを忘れられたし、「またいつか観たい!」っていう生きる源になる。そういう魔法の時間こそがライブなのに……って気付けて本当に勉強になりました。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
[ロック編]は、特に中川翔子感が強く出ている
--振り切ったという意味では、恒例のカバーアルバムシリーズ第4弾『しょこたん☆かばー4』も思いっきり振り切りましたよね。まさかの2枚同時リリースです。
中川翔子:3で振り切ったつもりだったし、“しょこたん☆かばーに一片の悔い無し!”くらいのつもりでやらせてもらったので、まさか4まで出せるとは……。5年間、音楽を続けさせてもらったんだなっていう時間の長さも感じるし、4がいけるってことは5もいけんじゃね? って(笑)。
……さらに言うと、ドラクエは3よりも4の方が好きで、5はさらに好きだったりもするので、5が出せるまでは死ねないなっていう新たな目標もできました! ……ただ、2枚同時って聞いた時は「どひゃー!」って言いましたね、本当に(笑)。椅子からずり落ちました!
--スケジュール的に、かなりタイトだった?
中川翔子:正直、ちょっとボロボロになりました(苦笑)。ライブの直後にレコーディングだったので、喉もガラガラでハスキーになっちゃってたし、そもそも最初の会議では“歌謡曲カバーにしよう”って感じだったんですよ。ちあきなおみさんとかハイ・ファイ・セットとか渋いところから、「でもアイドルはやりたいですよね」とか。
--歌手での活動をあまり知らない方からすれば、しょこたんがロックっていうセレクトは意外かもしれないですよね。
中川翔子:今ではライブをやる時、ロックが柱になっていますし、そこに到るまでのアイドルポップやバラード、面白いことをしてみたりがあって、最後にガッとロックで合体、変形、カタルシス! みたいな(笑)、人生の中でもライブの上でも欠かせない感じになってきてます。
私は昔、「お前の声はパンチがねえな」って言われたことがトラウマになってるんですよ、「分かる、分かるよそれ……」って。今回の[ロック編]の原曲は、相川七瀬さんもNOKKOさんも渡瀬マキさん(※2) も、皆さん声が特徴的で、一節聴いただけでその人だと分かる。「そうなるためには、どうすればいいんだろう?」っていつも思ってたんですけど、私は曲ごとに全然声が違うし、CDとライブでも全然変わっていくので、レコーディングの時の歌声ではもう歌えないかもしれない。
でも、それが逆に面白かったりもして、育成しているような気分になれるんじゃないかと。みんなで餌を与えて経験値を積ませて……って(笑)。今回の[ロック編]は、特に中川翔子感が強く出ている気がします。
--選曲というのはどのようにして?
中川翔子:アイドル編は全て自分でセレクトさせてもらったんですけど、ロック編はM-01『恋心』以外は色々教えてもらった感じですね。『しょこ☆かば』のセレクトの面白いところは、その日の体調とか気持ちとかおなかの具合とか、テンションとか気温とかが全て関係しているくらい、めちゃめちゃ直感的なんですよ。今にして思えば、1のセレクトが挿入歌とエンディングテーマばっかりになってたりして、「何でそこにいったんだ!?」って(笑)。
あと、以前「しょこ☆かばで『ロマンティックあげるよ』を初めて知りました」って言われたことがあったんです。私も再放送で知ったんですけど、地球上の全人類生命体の細胞に染み込んでいる曲だと思っていたので、「えぇっ!?」って。(カバーは)恐れ多いんですけど、それで原曲に辿り着いてくれたんだったら、私がそのガイドができたんだったら、10代の子がお母さんと一緒に聴いて、原曲を知ってもらえると凄く嬉しいです☆
--また、『恋心』にはPVもありますが、何とも面白い映像になってますね。
中川翔子:『しょこ☆かば』シリーズのPVは、いつも意味が分からない映像ばっかりなんですよね(笑)。今回は緊縛シーンから始まって、怖いお兄さんが出てきて、破れた編みタイツになってたりとか……。実は『はんぶん不思議』([アイドル編]収録)のPVと繋がっているんですけど、『恋心』は『Shiny GATE』とも繋がっていて、あのPVに出てきた負けちゃった選手のお兄さんが復讐するために現れる。私はロックモードになって怖いお兄さんを引き連れて、マイケル・ジャクソンさんみたいに踊るっていう(笑)。爆笑しながら撮影しました。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
こだわり満載! [アイドル編]で新ユニット“Shococo”!?
--一方のアイドル編ですが、こちらはもう完璧ですね、色々と。
中川翔子:思い入れがありすぎて、M-07『蒼いフォトグラフ』だったら“腕を組んでいる~♪”の「る~♪」を「るぅん♪」っぽく歌うと原曲の奇跡の感じに近付けられるとか、“写真はセピア色に~♪”のところも“色”の「い」と「ろ」の間に(松田)聖子様の天才的な魔法があって、「今のテイクで良くね?」って言われても「ダメです!」って、この部分だけで何十回も録り直しさせてもらったりとか、本当に面倒臭いヤツでした(笑)。それにM-01『はんぶん不思議』はCoCoさん……、あ。今思ったんですけど[アイドル編]でカバーさせて頂いた方って、名前が全部“コ”で終わってる。昭和感ありますね(笑)。
--あ、ほんとだ(笑)。
中川翔子:『はんぶん不思議』のレコーディングはひとりだけどパート分けして、それぞれ歌の雰囲気までしっかり設定して作りこんだんです。1番の“あなた意地悪♪”は三浦理恵子さんのパートなので天然で「テヘ☆」みたいに、でもやりすぎちゃダメ! で、2番の“どうしてあなた♪”は一番大人びていた瀬能あづささんが歌っているので、表情もご本人になりきるくらいの感じとか……。PVでも“Shococo”っていう架空のアイドルグループのメンバー5人に分かれて、衣装も5着作ったんです。
--PVではそれぞれのキャッチコピーなども出てきて、面白い映像になっています。
中川翔子:撮影していくうちに紫色の子は一番年下だから、ちょっと不器用な素人っぽい感じになってきて、リーダーの赤は芸能界慣れしてて、早くソロデビューを狙ってる、とか(笑)。青は一匹狼派で落ち着いてて、ピンクが天然だけど最年少ではなくて、赤とは犬猿の仲とか……。疲れてきたこともあって、設定が勝手にどんどん生まれてきたんですよ。
私は一人っ子だし、学校でも芸能界でも一匹狼というか、ソロでずっと生きてきたところがあるので、ユニットに入るのが凄く憧れだったんです、今はグループアイドル全盛ですし。みんなで相談したりしながらやってみたい! って思ってたら叶ったんです! ……まあ、全部自分ですけど(笑)。で、全部撮り終わって、「やっぱりソロが良い」って思いました。
--やっぱりダメでしたか、団体行動は(笑)。
中川翔子:いつの間にかメンバー間に軋轢(あつれき)が生まれてきて、メンバー同士が仲良くできなかったんです。紫が脱退したがってました(笑)。自分が26歳になって思うんですけど、特に女の子は一瞬一瞬、毎年毎年、今しかできないことがありすぎるから、日本のアイドルっていう文化。80年代にここまで恋焦がれる感じは……、あ。今気付いたんですけど、M-02『吐息でネット』とM-06『くちびるNETWORK』ってタイトルかぶってますね。([ロック編]の)『フレンズ』と『ともだち』も。
--ほんとだ(笑)。因みに『くちびるNETWORK』は岡田有希子さんのカバーですが、岡田さんの楽曲なら『花のイマージュ』を期待されていたファンも多かったと思います。
中川翔子:うん、やっぱり歌いたかったんですけど、さすがに発売されなかった楽曲だから難しいかなって。私は岡田有希子さんが本当に大ッ好きで、『くちびるNETWORK』と『花のイマージュ』で好きになったんですけど、今思うと18歳で歌うにはちょっと大人びてる歌詞なんですよね。
26歳でも大人っぽく思えちゃって困っちゃったんですけど(笑)、恋と宇宙感が合わさっている曲って大好きで、80年代には多いんですよね。キレイな霧に包まれたような童話っぽい世界もあれば、小悪魔みたいな曲もあるし、あの独特の不思議な感じは85~86年の頃の岡田さんにしか出せないと思うんです。超かっこいい! カバーできて嬉しいです!
--また、M-03『ロコモーション・ドリーム』の原曲は田村英里子ですが、田村さんといえばアニメ「アイドル伝説えり子」で一世を風靡したアイドルです。
中川翔子:私にとって、田村英里子さんが人生初のアイドル体験だったんです。初めてマイクを持ってステージに立って、母とかお婆ちゃんに「えりり~ん♪」って呼んでもらって、振り付けして踊ってたりして。伊勢丹とかに連れて いってもらった時も、店内を歩いているお姉さんを捕まえて、「聴いて下さい……、田村英里子で、『涙の半分』」とかいきなり歌い出したり(笑)。初めて一曲フルで歌えるようになったのも、アイドルっていう単語を知ったのも、歌う快感を覚えたのも田村英里子さんのおかげだと思うんです。
--その結果、『しょこたん☆かばー4-1~しょこ☆ドル篇~』は名盤に成り得る作品になったと思います。
中川翔子:本当にリスペクトが強すぎて恐縮です! って感じです。CDデビューをさせて頂く前からアイドルカバーをやってみたいって思っていたので、5年越しの夢が叶った! 雨の日も風の日も悩める日も、いつもパワーをもらってきたのはアイドルソングとアニソンだったので。
ロックは歌うことの楽しさ、ネガティヴ・中川翔子がポジティヴ・中川翔子に“初めまして”できたきっかけを作ってくれたし、色んなことでのご褒美であり、夢が叶ったでもあり、勉強や挑戦でもあり……、はい! 大きな意味を持った、まさかの4になりました!
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
しょこたん☆かばー4-1 ~しょこ☆ドル篇~
2011/10/12 RELEASE
SRCL-7744 ¥ 1,781(税込)
Disc01
- 01.はんぶん不思議
- 02.吐息でネット
- 03.ロコモーション・ドリーム
- 04.赤道小町ドキッ
- 05.約束
- 06.くちびるNETWORK
- 07.蒼いフォトグラフ
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