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中川翔子 『Cosmic Inflation』インタビュー
しょこたん 間違い無い3rdアルバム完成!
11月には幕張メッセでの2DAYSライブも控える中川翔子が、前作以来、約1年10か月ぶりのオリジナルアルバム『Cosmic Inflation』を遂に完成させた。『涙の種、笑顔の花』以降の全シングル表題曲に加え、方々に振り切った新曲も多数収録。「悲しいことがあったら思い出してくれ!」とまで豪語するとびっきりの1枚について、隅々まで答えてもらいました!
よし! 今の自分の想いはコレだ! ドンッ!
--8月リリースのシングル『フライングヒューマノイド/千の言葉と二人の秘密』で、オリコンシングルランキング10作連続TOP10入りを果たしました。
中川翔子:凄いことですよね。自分の気持ち自体は凄く脆(もろ)いし、ネガティヴに「私なんか……」って何度も思ったのに、それでも立ち止まらずに走っていけたのは待っててくれる人がいたからでもあって……。どんなことがあっても間違いじゃないんだって思えるような、あたたかい皆さんの支えがあるって感じたので、10作連続っていうのは ―――数字ってあんまり気にするとキリがないし、毎回胃が痛くなっちゃうから考えないようにしてるんですけど(笑)、本当に嬉しかったです。
--活動を続けるほど、周囲の存在の大きさに気付ける?
中川翔子:前のアルバムから2回のツアーと武道館を経験する中で、どの曲も歌うたびに違う色になっていく感じがして、“みんなで育ててこれたんだ”って思います。以前、松本隆先生が言って下さった「歌は財産で30年経っても宝物だから、大切にしなさい」って言葉の意味を、少しずつ理解できていくような気がしますね。
--また、映画館では現在、初主演を果たした「恋の正しい方法は本にも設計図にも載っていない」が2週間限定で公開されているんですよね?
中川翔子:(演技は)かなりの試練で3.5kgも一気に痩せたりしましたけど(笑)、新鮮でした。昔は、自分にないモノ、怖いモノは全て拒絶だったんですけど、“やってみると楽しい”っていうのが今年は出てきている気がします。……でも、その直後に短編映画の監督の話がきた時は、本当によろず屋の気分というか、「私の主軸は何なんだ?」って(笑)。
--その「七瀬ふたたび プロローグ」では、絵コンテも作成したんですよね?
中川翔子:以前やっていた漫画連載の経験が役に立ったんです。コマ割もして現場に持っていってカメラマンさんに見せたら、イメージ通りに撮って下さったりして。それに“演じる”が終わった瞬間に“作る”に変わったので、不思議な気持ちになりましたね。これもまた生きた証になりますし、ずーっと一番大好きな大好きな筒井康隆さんの世界の一部になれたこととか、「人生、何が起こるか分からんのう」って感じです。
--それにしても取材をするたび、しょこたんには必ず大きなトピックがありますよね(笑)。
中川翔子:一年前は深海に潜ってたなあ、とか、スイスに行ってたなあ、とか……。今日もこの後、北海道までクジラを見に行くんです(笑)。見る人によって、私が何者なのかが変わるんですよね。「飛び出せ!科学くん」を見ている人だったら“バラエティで身体を張っている人”だし、「ポケモンサンデー」なら“ポケモン好きな部長”だし、中には歌っていることを知らない人や、ブログだけを知っている人もたくさんいると思うんです。でも、そういう全てがあって今があるって思うと、楽しいですよね。
--続いて、いよいよリリースとなる3rdアルバム『Cosmic Inflation』についてですが、初めて聴いた時、“これまでで一番しょこたんらしい1枚だ”と感じました。
中川翔子:新しいターニングポイントになりそうな幕張メッセ2DAYSコンサートのセットリストを考えている時に、「もっとこういう曲が欲しい」とか色々見えてきた所があったんです。アニソンカバーの3枚目を出した時も、「自分にこういう曲があったらな」って感じた部分があったし、ジャケットやタイトルまでやりたいことをやらせてもらったから、ある意味吹っ切れていると思います。
1st『Big☆Bang!!!』は「アレもコレもやってみよう!」って色んな音楽に挑戦したおもちゃ箱みたいな作品だったんですけど、2nd『Magic Time』ではちょっと落ち着いた感じになって。また一周して戻ってきたというか、ロックが歌いたい!って気持ちは新たに増えたページだったりもするので、“まだまだココからインフレーション(膨張)していきたい!”って願いも込めて、このタイトルにしました。「よし! 今の自分の想いはコレだ! ドンッ!」って感じです!
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
3は間違いないって印象はドラクエも一緒ですよね!
--新曲の中でも、強烈にハードなロックに挑戦したM-12『TYRANT too young』は驚きました。
中川翔子:今まではロックでも歌詞の世界観が自分の人生に基づいていた所があったんですけど、「ガラッと空気が変わるようなロックがやってみたい! 激しいヤツ! 早いヤツ!」ってお願いしてみたら、想像よりも激しいのがきて(笑)。自分で言ってはみたものの、大丈夫かな? って感じだったんですけど、歌ってみたら楽しかったです。
--また、同じく新曲のM-06『shortcake adventure』は、いまやライブの必殺チューンにまで成長した『pretty please chocolate on top』の進化版のような楽曲ですよね。
中川翔子:2ndの頃からずっとやりたかったので、やっと叶った感じですね。“プリチョコ”よりもリアルな感じになっていながらガンガンいける。“ホイップ”とか“苺”とか甘い歌詞がいっぱい出てくるし、歌詞カードにもショートケーキの絵文字とかが描かれているんですけど、“ガツンとお見舞いしてやる!”って甘えだけじゃない部分もあるんです。女子ってそうだと思うんですけど、ファッションとか食べ物は甘いのが好きで、それを活力にメラメラ燃えていくというか。(作詞の)meg rockちゃんはいつも、一歩先を行く予言みたいな歌詞を書いてくれるんです。
最近は落ち着いたシングルが続いていたので、アルバムだったらもっと遊べるんじゃないかって。思いっきり振り切った激しい曲と甘い曲をやりたかったんです。ジャケットもドアップの口半開きっていう、80年代のレコードみたいなゴージャス感を出したくて(笑)。3枚目なので間違いのない作品にしたかったですし、今回の新曲はどれもアッパーでメッセージもあるんです。
--『空色デイズ』が3rdシングルなら、アニソンカバーも第3弾でフルアルバムにと、思えば3枚目がターニングポイントになることが多いですよね。
中川翔子:「3は失敗できんぞ」っていうのはあるかもしれません(笑)。3は間違いないって印象はドラクエも一緒ですよね! 久々のアルバムってこともありますし、やりたい曲も見えてきていたし……。自分が作詞したM-10『RAY OF LIGHT』も入ってるし、松本隆さんと細野晴臣さんが作って下さったM-04『心のアンテナ』も入ってるのが面白いですよね。
--『フライングヒューマノイド』を手掛けた松隈ケンタさんによる新曲、M-03『涙星』も収録されました。
中川翔子:松隈さんの書く詞は凄くストレートで、“最後の最後に笑える そんな日々になりますように”って、この曲を聴くたびに思えるんです。小さな塵(ちり)が集まってぶつかって星になって、星が星座になって、何億年も経って人が生まれて、だけど今、色んな感情とか気持ちがあって、偶然が偶然じゃなくなっていって……。そう思うと一回リセットできるというか、星を見上げるとつらいこととかがリセットされるんです。『涙星』は今、勇気をくれる楽曲ですね。
--星があってアイドルがあってロックがあってと、作っている方々の「今のしょこたんに歌って欲しい」という想いが、強く表れた楽曲が揃いましたよね。
中川翔子:それは本当にそうかもしれないです。自分だけじゃなくて、みんなとの歩みが形になったと思ってます。出会ってくれた全ての方々の人生が重なっていって、今の自分がある。みんなと生きた証のアルバムって感じですね。『RAY OF LIGHT』は自分で書いた詞なのに、時間が経ってから「あ、そっか!」って思えることがあったりするのが面白いんですよ。アニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」エンディングという大きな機会を頂く中で、ずっと考えることを避けていた気持ちと向き合って書けた詞なので、凄く良かったと思ってます。
……歌うたびに不思議な気持ちになるんですよね、“今日よりもっと 強くなりたい”って詞は最初にパッと書いたんですけど、どんどん意味を持ってきているというか。強さって何だろう? ってまだ全然分からないし、もがいている感じがあるんですけど、とにかく今日よりもって思ってますね。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
悲しいことがあったら思い出してくれ!
--今のしょこたんが持つ一番の強さは何だと思いますか?
中川翔子:ん~……、何だろう。どんな悲しいことがあっても力にして、前に進んでいけるポジティヴさなんだろうけど……、難しいですよね。前よりは、って思います、薄い皮一枚な感じで(笑)。
--でも、弱さも知っているからこそ提示できる強さがあって、それがリスナーを惹き付ける魅力になっていると思いますよ?
中川翔子:強さを持っている人がたくさんいるんだってことをいつも教えてもらっているので、そこを目指している所はありますね。どんなに頑張っても報われないことはあるし、願った通りにならないこともある。でも、でもでも、星を見上げてちょっとリセットすると、本当に素敵なことって余りにもたくさんあるから、って思えるようになって楽になった部分もあるので、本当にみんなに感謝してます。
だから今回は何でもアリで次元すら飛び越えている気がするし、例えばM-07『Jewelry heart』とか「LV25(=25歳)で大丈夫かよ!?」って照れたら終わりなんですけど(笑)、みんなは年齢も性別も関係なく盛り上がって笑ってひとつの瞬間を作ろうとしてくれるんだから、いいじゃん! って思うんですよね。
--その『Jewelry heart』は、かつて『ストロベリmelody』を手掛けた渡邊亜希子さんによる歌詞になっています。
中川翔子:だいぶ悩んで下さって、テーマが宝石になるまで大変だったみたいです。海に行ってみたり呪文を唱え続けるのだったり……。1年くらい前、強くなりたくて赤いモノをよく買ってたんですけど、武道館の祈願というか思い出にルビーの指輪を買ったんです。それを見るたびに“強くならなくちゃ”って思えたりするんですけど、女子ってそういう所があると思うんです。……『Jewelry heart』みたいな恋ができればいいんですけどね(笑)。
--そういえば、今回の曲順はどのように決められていったんですか? 個人的には、M-09『「ありがとうの笑顔」』ではなくM-13『千の言葉と二人の秘密』が最後だったのは意外でした。
中川翔子:難しかったですね、『心のアンテナ』の位置とかも全然想像できなかったですし。『「ありがとうの笑顔」』で終わりと思っても、また違う世界が現れるというか、『千の言葉と二人の秘密』は今までとは声とか雰囲気が違っているので、「やっとここから」っていう風に聴こえたら面白いなって思いますね。
--ラスト2曲の『TYRANT too young』と『千の言葉と二人の秘密』は、「今後もまだまだ、やりたいことがあるんだぜ?」って予感させるような締め括りになってますよね。
中川翔子:同じ人とは思えないですよね(笑)。『TYRANT too young』は(作詞の)畑亜貴さんとお仕事できたことが嬉しかったし、(作曲の)齋藤真也さんとは『空色デイズ』以降の繋がりになりますけど、M-05『rainbow forecast』とか本当に色んな曲を作ってくれて。『TYRANT too young』があったからこの先が見え出した気もするし、『千の言葉と二人の秘密』は(ドラマの主演を)演じての延長線っていうのが初めてだったので、楽しかったですね。
--では、リスナーにはどんな時に聴いてもらいたい?
中川翔子:悩んだ時には、このアルバムを思い出して欲しいです。時が経ってから「あ、そうか!」って刺さる言葉がたくさん入っているので、“悲しいことがあったら思い出してくれ!”っていうヒーロー的なポジションの作品だと思うんです。それは1枚目とも2枚目とも違って、これまでいっぱい助けてもらった私が、今度は何かできないかって。
--そういう変化は近年のライブにも出ていましたし、実際、最近のインタビューでも「聴いて欲しい!」って言えるようになりましたよね。
中川翔子:時間かかりましたね(笑)。本当にここまで続けられるとは、ってしみじみしているんですけど、だからこそちょっとずつちょっとずつ見えてきたモノが詰まったアルバムになりました。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
Cosmic Inflation
2010/10/06 RELEASE
SRCL-7383 ¥ 3,204(税込)
Disc01
- 01.フライングヒューマノイド
- 02.午前六時
- 03.涙星
- 04.心のアンテナ
- 05.rainbow forecast
- 06.shortcake adventure
- 07.Jewelry heart
- 08.lemonade
- 09.「ありがとうの笑顔」
- 10.RAY OF LIGHT
- 11.涙の種、笑顔の花
- 12.TYRANT too young
- 13.千の言葉と二人の秘密
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