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<特別寄稿>「.mura」見据えるアーティストファーストなNFT生態系の未来
本事業の責任者Studio ENTRE代表の山口哲一は、エンターテック分野のエバンジェリストして広い知見を持ち、積極的に発言を続けています。本稿は.muraローンチに際しての特別寄稿です。
ブロックチェーンを応用した技術として熱い視線が注がれているNFT。音楽やアート作品の新たな流通方法として、また、これから普及が広がっていくメタバース内でのデジタルコンテンツとしても注目を集めています。
ブロックチェーンと音楽の親和性
ブロックチェーン技術は、インターネットの出現と同程度以上の大きな構造変化を社会にもたらすと言われています。Ginco代表の森川夢祐斗著『超入門ブロックチェーン』(MdN新書)から引用します。
”デジタルな空間に「確からしさ」を与えることで、アナログとの”いいとこ取り”を実現する技術”です。ブロックチェーンは、人間同士の間で形成される「信頼」を拡張し、進化をもたらすものです。”
ブロックチェーンの「確からしさ」や「アナログとの"いいとこ取り"」といった性質は「特定の管理者に依らずとも、自身の権利や生み出した価値を管理できる」という恩恵を個人にもたらすものです。そのため技術登場の当初から、音楽との親和性の高さは語られてきました。音楽ビジネスがデジタル化の進展で、個へのパワーシフトが起きて、構造変化が起きている中、ブロックチェーン技術活用による作品流通、著作権の管理徴収は必要性も必然性も高くなっています。
特定の管理者に依ることなく、利用実態が可視化でき、個人がダイレクトに収益を得ることのできる新しい著作権徴収分配の仕組みは近い将来必ず訪れますが、その件の詳細と考察は別の機会に譲り、本稿ではNFT技術に絞って進めます。
NFT技術で音楽家自身が希少性を担保することの意味
さて、NFTの登場は、著作権の歴史的な転換期になると思っています。なぜならば、著作権の基本的な仕組みであるマスターと複製をデジタル上で再現できるからです。
デジタル革命の進化の中で、音源や画像がデジタルファイルになったことで、簡単にそして、無限にコピーが可能になってしまいました。デジタル化には音楽を進化させる様々なベネフィットがありましたが、音楽家にとって「コンテンツは無料になる」という圧力を受けた側面もありました。NFT技術を用いることによって、音楽家たちは自分の作品を自ら定義づけ、コントロールすることができるようになるのです。レコード会社などを通さずに、アーティスト自身がルールを定めることができますので、マスター音源の確定という先祖返りをしたように見えて、螺旋的に進化した新しい方式と言えるでしょう。
音楽ビジネス(正確に言うと録音原盤市場)の生態系の視点でもNFTの価値は大きなものです。世界的に生態系の幹となり、日本でもまもなく訪れるストリーミング型サービスを中心とする「サブスク時代」は、再生回数至上主義の世界です。サブスクリプションサービスは、総売上を再生回数で分配するというシンプルで公平な仕組みを持っていますが、音楽界全体の生態系としては不十分です。音楽家にはそれぞれ活動段階のフェーズがあり、必要なファイナンスの条件も違います。
サブスクが幹となった生態系を補完するのは、アーティストとユーザーがデジタルサービス上で直接資金を得る「ユーザーダイレクトファイナンス」型の仕組みです。投げ銭やデジタル型のファンクラブなど様々な形態が出てきていますが、純粋に音楽作品への評価という視点では、NFT作品というやり方が有益です。特に音楽シーンにクラウドファンドが定着しなかった日本では、レコーディングなどの作品制作のための資金調達方法としてNFT作品市場がより重要になると考えています。.muraが貢献したい領域です。
「コモンズオーナー」という言葉に込めた思い
音楽ファンとの作品の共有の新しいコミュニティを志向する.muraは、オークション購入者を「コモンズオーナー」と呼びます。創作最初の強力なサポーターであり、2020年代型のパトロネージュの形と捉えることもできるでしょう。
.muraのオークションでNFT付き作品(楽曲ファイル+アートワーク)を競り落としたコモンズオーナーは、音楽家が丹精込めて制作した作品の価値を最初に認めたことになり、その価値を広めていく責任を持つことになるのです。価値が上がると、転売での収益をあげることもできます。その収益と目利き力(耳聴き力)を生かして新たな作品、新しい才能に再投資していくような流れが.muraの目指す「正の循環」です。そのアーティストのファンだけでなく、NFT作品であることをキッカケに存在を知ったユーザーもその投資の循環に巻き込んでいきたいです。アーティストを中心に音楽ファンが集まるコミュニティとなるためには、コモンズオーナー達の存在が重要です。
Gincoとの協業で体験をUPDATEしアーティストファーストな世界を
現在のNFTの加熱とも思えるブームは、仮想通貨との親和性も伴って、投機的な思惑という側面も否めません。.muraはデジタルカレンシー活用によるユーザー利便性の向上は最大限目指しますが、一方で、投機目的の過剰な動きとは一線を画していくつもりです。また、世界的にNFTを用いたマネーロンダリングへの警戒も強まるなかで、本人確認を丁寧に行い購入者とアーティストとをしっかりと結びつける設計を選択しました。このように、NFT技術を「アーティスト自身による鑑定書」にフォーカスして活用することで、アーティスト活動の持続可能性を高めるための生態系の形成に注力していきます。
ブロックチェーンによる取引やデジタル通貨などのミドルレンジ(サービス間の利便性の向上)に強みを持つGincoとの協業で、投機性を抑制しながら、健全な資金調達をアーティストにもたらすことができると考えています。
ファイルになった楽曲を「作品」に、サムネイルになったジャケットを「アートワーク」に取り戻す
.muraが掲げるテーマは、音楽を「安易に消費されるコンテンツ」から、音楽家の「作品」に捉え直すこと、デジタルサービス上の「サムネイル」と呼ばれる記号になってしまった「ジャケット」をクリエイターによるアートワーク作品として取り戻すことです。
アートワークのクリエイターにもフィーチャーしたいと思っています。写真家が複数の音楽家と組んで、一つの作品に違う楽曲を付けて販売する「ジャケット違いの逆パターン」なども興味深い展開になるのではと、考えています。活用してくれるアートディレクター、美術家、イラストレーターなどの出品も期待しています。音楽の在り方の再発見にもなるのではないでしょうか?
.muraが目指すのはアーティストがファンの健全サポートを得て、持続可能な活動ができる世界です。出品時の価格決定権はアーティスト自身が持ち、ユーザーのオークションによって価格が決まり、転売時の収益からもアーティストには還元されます。
NFT技術を適切に活用することで、原盤制作のための資金調達/ファンとの有機的なコミュニケーション/作家性の保護という3つの課題を解決できると考えています。
日本発で、アーティスファーストで良質な音楽好きのコミュニティ形成を
インターネット以上に、ブロックチェーンの世界は国境を超えて広がっています。NFTマーケットプレイスの存在が、日本人音楽家の海外ファンとの交流の機会に繋がることを期待しています。NFT作品という旬なキーワードが興味を持ってもらうキッカケになればとも期待しています。もちろん日本人以外のアーティストの出品も歓迎です。
作品の価値を多面的に伝えるキュレーターの存在も重要です。音楽コンシェルジュのふくりゅうさんが第一号となってくれた公式キュレーターも拡充していき、作品の価値を多面的に伝えられる場となることを目指します。
アニメ界でも注目の活動が始まっています。SAMURAI cryptosというサービスです。ファウンダーはアニメ会社ゴンゾCEOの石川真一郎さんです。「アニメにおいて重要なポジションにありながら、これまで経済的に陽の目を浴びなかったアニメーターに収益をあげられる仕組みとしても活用したい」とのいう考え方で、クリエイティブに貢献した当事者にユーザーダイレクトファイナンスの仕組みを通じてベネフィットを提供するという思想は.muraにも通じる考え方です。グローバルに連携して「日本ブランド」の向上に繋げられればと考えています。
小室哲哉、ニルギリス、ザ50回転ズ、浅田祐介、クラムボン、など著名アーティストが参加
しばらくは、毎週、1アーティストが作品企画を発表→オークション実施をやっていくつもりです。第一弾は、音楽プロデューサーとアートディレクターのユニット・am8の7曲の作品群です。素晴らしい楽曲&アートワークに加えて、デジタルサービスでの収益の50%をコモンズオーナーに分配するという画期的な内容になっています。たくさんの入札を期待しています。
第二弾は、J-WAVEイノフェスとコラボした小室哲哉作品です。NFTを音楽についてトークセッションをした直後にステージ上で即興演奏したという、記念碑的な作品です。
その後も、ニルギリス、ザ50回転ズ、浅田祐介、クラムボン、林ゆうきと、高い音楽性と世界観を持ったアーティストの作品が出品されていきますので、毎週、チェックをお願いしたいです。銀行振込、クレジットカード決済から、Bitcoin、Ethereum決済までグローバルに対応して、国内外の広範囲の音楽ファンの参加をお待ちしています。
新事業を連続して産み出すスタートアップスタジオによるタイムリーなサービス
NFT作品をオークション型で販売する.muraは.スタートアップスタジオStudio ENTREとブロックチェーン会社として進境著しいGincoとの共同事業として始まりました。
スタートアップスタジオとは、ハリウッドの映画製作手法を真似て、0から1になる際のプロダクトを重視しながら、同時に起業家育成を行い、新事業育成をする業態です。近年は世界中で多くのスタートアップスタジオが生まれています。法人設立して投資家から資金を集める前に、事業の仮説検証をしっかり行うというのが、スタートアップスタジオの趣旨です。
Studio ENTREは「エンターテック」をテーマに掲げたおそらく世界で唯一のスタートアップスタジオです。.muraもカーブアウトする形での法人化を想定しています。現在、創業チームを組成準備中ですので、音楽生態系のUPDATEに取り組みたい起業志望者はご連絡ください。