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中川翔子 『フライングヒューマノイド/千の言葉と二人の秘密』インタビュー
成長の証を今! さらなる高みを目指して
春にアニソンカバー第3弾をリリースし、その後は同作を反映させた唯一無二のステージをと、アイドル全盛のこの時代に、変わらぬ独自のスタンスでファンを魅了。久しぶりのテレビアニメ オープニングにして、『空色デイズ』以来の爽快ロックチューンをリリースする中川翔子が、5周年イヤー突入の意気込みを余すことなく語ります!
メタルキングを50匹倒したくらいの充実感
--今年の7月で歌手活動における5周年イヤーに突入しました。
中川翔子:“イヤー”って不思議ですよね、「丸5年だと思ってない?」って色んな人にツッコまれます(笑)。丸4年で5周年目に突入って意味なんですけど、例えようが無いくらい濃い時間でした。それまでネガティヴすぎて見えてこなかったモノが全部詰まった、発見と衝撃の丸4年。さい箸を差したら抜けなくなるくらい濃かったです(笑)。
--先に開催した【Prism Tour 2010】は、正に中川翔子にしかできないステージでした。何より印象的だったのは、ラストまで涙を見せず、笑顔で会場を後にしていたことで。
中川翔子:今回も最終日前日に熱が出ちゃって、ごはんが食べられなくて点滴を打ちにいって、「どうしよう……?」ってなったりしたんです。セットリストの半分以上がアニソンだったり、アニメ映像とのコラボがあったりと冒険もあったんですけど、全員が「やってやるぜ!」って気持ちで参加してくれた。昨年の武道館後で燃え尽きちゃったり考え込んでいた自分を、立ち直らせてくれてたんです。
これまで大事なコンサートやCD発売日、イベントの時はほぼ雨だったのに、今回のツアーは全国で晴れて、最終日だけ雨が降った。“Prism Tour”っていうタイトル通り、「これは虹がかかるための雨だな」って。人生の躓いた瞬間に背中を押してもらえて、また大きな一歩になって、メタルキングを50匹倒したくらいの充実感で、ツアーファイナルを迎えられました。
あと、熱が出てひどく落ち込んでいた時、社長が連れて来てくださったレーベルの偉い方が、「リラックスだよ、君!」とだけ仰って去って行かれたんです。それが神様のように思えて、「今の私に足りないのは、それだ!」と。最終公演はとにかく一秒一秒を全部楽しみたい! っていうポジティヴに包まれた。それって本当に来てくれたみんなの、貪欲さのおかげだと思います!
--後方スクリーンのアニメ映像とのコラボも大きな見所でした。
中川翔子:ツアーキャラクターのJEWELちゃんと私が一緒に踊っているシーンでは、お客さん全員が踊っていたことに驚きました! 気合いを入れて臨んでくれた方もいれば、何となく誘われてフラッと来た方もと、色んな方がいたと思うんです。でも、『空色デイズ』だってピッタリ綺麗な合唱になっていたし、JEWELちゃんも含めて全員で引っ張ってくれたから、絆やポジティヴな笑顔。改めて感動することがたくさんありました。
サンライズさんが全ての映像を書き下ろしてくれるなんて本当に凄いことだと思うし、いとうのいじ先生もいっぱい考えてくれたりとか、素晴らしい方々が惜しみなく全力で来てくれた。お客さんもこの一日を全部楽しもうって、コミュニティを作ったりしてインターネットをポジティヴに使っていて。みんなが「自分も主役だぜ!」って思ってやってくれている感じが凄いですね。
--是非、DVD『中川翔子 Prism Tour 2010』も色んな方に観てもらいたいですよね。
中川翔子:私も改めて、冷静に細かい所まで観たいと思いましたね。オープニングアニメも実はもの凄く細密に描いてあって、幼い頃の私が魔法で今の中川翔子になるシーンでも、そこまでに通ってきた道のりが描かれていたような気がして。こういった形で生きた証が刻まれるのは嬉しいです! ひとりじゃできないこととか、3次元の現実ではできないことが、コンサートだったらできてしまう。「何でもアリだ!」って教えてくれたのが、JEWELちゃんだったと思いますね。
--そうしたしょこたんのスタンスがあるからこそ、コンサートでは開場前から笑顔が絶えず、本当にみんなが楽しんでいるという状況が生まれるんですよね。
中川翔子:そうして下さいって私たちがお願いしている訳でもなく、思い思いに自主的にやってくれているから、カップル誕生率が凄く高いんです(笑)。親子も凄い多くて、男の子も女の子も全力で楽しむことの大切さをみんな知っているから、毎回、恩返しのつもりでステージに臨むのに、また教わってばっかりですね。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
広い世界の中には同じ気持ちの人がいっぱいいる
--このたびリリースされる『フライングヒューマノイド』は、そういう意味でもひとつの恩返しとなる楽曲になりました。
中川翔子:今回は5周年イヤー突入や夏という季節、25歳になってリラックスする部分ができたりとか、色んなタイミングが合ったんですよね。改めて原点回帰、好きなことに日々助けられているんだなって気持ちと、新しいことにチャレンジしたい気持ち。無理をしないポジティヴな曲と、このタイミングで出会えたことが凄く嬉しかったです。
こういう感じのアッパーな曲がA面になるのも、そういう曲でテレビアニメのオープニングを担当するのも『空色デイズ』以来ですけど、比べると凄く変わりましたね! あの頃は「こんな人生のヤツがロックなんて、恐れ多き事態!」ってドキドキだったんですけど、今回は「こんな曲が歌いたかったぜ! 待ってました!」って、180度どころか一周回っちゃった(笑)。
あと、「オカルト学院」のオープニングで、歌詞に合わせて飛び立っていく主人公 神代マヤさんを見て感動しました。またひとつ、元気に生きた証ができたのは嬉しいですね。これからみんなの前で歌う機会も何度かあるので、ちょっとずつ試行錯誤していけたら良いなって思います。
--成長の証といえる1曲になったと。
中川翔子:やっぱり今も友達から「アンタって本当にネガティヴだね」って言われたりするんですけど(笑)、“飛び立とうよ”でも“飛び立てたら良いな”でもなく“飛び立とうとしてんだ”って歌詞が凄く好きで。もっともっと、やらなきゃいけないこととかもきっとあるけど、今、この宇宙に生まれたことを噛み締めて、何かをやらなければ勿体無い。そういう気持ちになれるんです。
--また、歌詞の中に“十年先の未来が見える魔法があったら”というくだりがありますが、それこそ10年前には想像もできない未来が待っていましたね。
中川翔子:まったくですね(笑)。でも、あの頃、芸能界に入るきっかけになった「未来戦隊タイムレンジャー」のタイムピンクのお姉さんを毎日追いかけていて、切り抜きも全部集めたりとか。学校が凄く嫌だったけど、パソコンがあったから自分の好きなことに没頭する術を覚えてたし、今も親友のみおるが当時、「周りに何を言われても、アンタは変わらなくていいんだよ!」って言ってくれたりとか。今の自分の全てが、10年前の1年間でできていたと思います。
--10年前に今の自分を観ていたら、ファンになったと思いますか?
中川翔子:趣味がまったく一緒なので、友達になりたいですね(笑)。
--もし、一声をかけてあげるとしたら?
中川翔子:“その調子でどんどんヘコめ!”(笑)。それは無駄じゃないし、好きなことは全部やっておけ、と。広い世界の中には、同じ気持ちの人がいっぱいいるから。
--今、そうやって勇気付けられているファンが、たくさんいると思います。
中川翔子:同じ学校だったら絶対仲良くなれるのに、って思うんですよね。「何で学校で出会えなかったんだろう?」って(笑)。
--また、M-02『千の言葉と二人の秘密』は、初主演にも抜擢されたケータイ音楽ドラマ DOR@MO「恋の正しい方法は本にも設計図にも載っていない」の主題歌となります。
中川翔子:演技のお仕事ってそんなになかったんですけど、DOR@MOで主演と主題歌を両方やるのは初めてなんだそうです。色んな方が期待する中で、25歳のこんなヤツが「色々できないんです……」なんて言いながら入っていけないというか。台詞の覚え方も分からなくて、受験用のチェックシートと下敷きで隠しながらやっていたら、みんなに笑われました(笑)。
でも、現場に入って、素敵な図書館だったり風だったり空の色だったりを感じて、「あ、私は一歩違ったら(主人公の)泉ちゃんだったんだな」って思ったんです。ブログにも出てこないような内面の奥の奥が全部一緒だったりして、凄く不思議な気持ちになれた。だから撮影が終わってからもしばらく泉ちゃんが抜けなかったし、ドラマが無い状態からこの曲を歌っていたら、もっと(歌が)軽くなってたと思います。
--これからも演技は続けていきたい?
中川翔子:できれば! まあ「恋の正しい方法は本にも設計図にも載っていない」を観て、引いちゃう人がたくさんいるかもしれないですけど(笑)。この前、映画雑誌の連載でクリント・イーストウッドさんを描いていて、「こんなに深い眼差しをできる人になりたい!」って、まだまだ経験値が足りないって改めて思いましたね。私は恋愛の深みとか全然知らないんですけど、今回は泉ちゃんで歌うことができたので楽しかったです。しかも、皆さんのアクセスが多かったり、劇場公開をのぞむ声が多数届いた様で、10月2日から2週間限定で劇場公開が急遽決まり、ホントに嬉しいです。
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
女の子たちが集まった歌声は最高。でも……
--やっぱり今作もしょこたんにとって大切な1枚になったようですね。
中川翔子:今、一周してここから! ってモードなので、それが表れていると思いますね。『フライングヒューマノイド』はスカッとする曲なので、何も考えずに聴いてもらえば、「そうだ! 飛び立とうとしてんだよ!」って奮い立たせられると思います。『千の言葉と二人の秘密』は、恋が苦手で諦めちゃってる泉ちゃんが、色々悩んで「もっと強くなりたい!」って思っている最中を描いているので、やっぱり恋に悩んでいる方に聴いてもらいたいです。
--また、今作の【初回生産限定盤】には『フライングヒューマノイド』のミュージックビデオを収録したDVDも付属されます。
中川翔子:撮影現場に行って初めて、サムライに変身することを知らされたんですけど、変身する理由も、何故かほくろが増えた理由も教えてくれないんです(笑)。スタンドマイクを左手で抱えて歌っているから、剣の鞘を右腰に差していたりして。「そんなサムライ、いないだろ!?」って思うんですけど、それも私だからなんですよね(笑)。左利きサムライ。
あと、これまでに無いくらいリップシンクのシーンも多いんですけど、作詞作曲をしてくれた松隈ケンタさんがギターを弾きながらガンガンに頭を振ってる。ツアーの時はCOOLだったベースのたぼくんもノリノリで、私も凄い頑張ったんですけど、ヒットポイントがどんどん減っていって……(笑)。
でも、フラフラで瀕死の赤ゲージになっても、周囲の素敵な人たちや好きな趣味がポーションになってくれる。何の心配もなく委ねちゃってるので、もっと頑張って何かでお返ししないとな、って感じです。突き抜けた感じは映像にも表れていると思うので、ある意味、今までで一番お気に入りです!
--また、今後ですが、秋には【超貪欲☆まつり IN 幕張メッセ】が控えています。
中川翔子:【Prism Tour】から毎日ずっと、幕張を見据えていますね。それまでだったらツアーが終わるとモードを切り換えてグニャっとなってたんですけど、全然シャキーンとしたままだし。チケット発売開始になっても、「よし、やっとキター!」って気持ちになれたり。今、さらに新曲も作っているんですけど、幕張を見据えて、欲しい曲をお願いしています。
--前回『しょこたん☆かばー3 ~アニソンは人類をつなぐ~』の取材時も、選曲やアレンジについて「色々戦っちゃいました」と仰っていましたよね。
中川翔子:聴いてくれる方は「中川翔子が良いと思って、コレをやってるんだ」って思う訳ですよね。今までは「ここはもうちょっとこうしておけば良かった」って飲み込んじゃってたんですけど、何かを後悔しちゃうと歌うのも難しくなってしまう。ワガママにはなっちゃいけないと思うんですけど、譲れないところは「ココは絶対お願いします!」「こういう曲も欲しいんです!」って。
--しかも、【超貪欲☆まつり】の会場には、ファンクラブ会員が出展できるスペースもあるんですよね?
中川翔子:詳細はまだ分からないんですけど、幕張ってゲームショーとかジャンプフェスタで使用する大きいイメージだから、普段コスプレしたりして自主的に楽しんでくれてるたみんなと、もっと楽しめたらいいなって。“貪欲祭り”って単語がピッタリくるコンサートにしたいです。
--近年は“戦国時代”と言われるくらい、たくさんのアイドルグループが活躍しています。それこそ4年前とは、大きく様変わりする中で、しょこたんはひとりのアーティストとして、独自の道を歩んでいますよね。
中川翔子:昨日も深夜にCoCoのアルバムを聴いていたんですけど、ハーモニーというか女の子たちが集まった歌声は最高だなって思うんです。でも、集団行動したら一日で挫ける(笑)。ひとりだから誰にも頼れなくて凄く怖いんですけど、その分やりたいことをぶつけたら100%反射した答えが返ってくるから……、私はひとりで良いです(笑)。それに、ひとりだけどひとりじゃないんですよね、スタッフの方々やファンのみんなとか。
--また、09年1月の『Magic Time』以来となるオリジナルアルバムのリリースにも期待がかかります。
中川翔子:そうですね。リリースはどうなるかまだ分からないですが、改めて5周年の全部をぶつけるつもりで挑みたいので、「後はこういう曲が欲しい!」とかヴィジョンにあったモノを作っていきたいですね。迷わずやりたいので色んな瞬間が詰まったアルバムに、1st『Big☆Bang!!』に近いかもしれないですね。あの頃とは全然違う所に立っているけど、ぶりぶりのアイドルソングもあれば、ロックやシリアスもあって……
って、おもちゃ箱みたいな作品になると思います! それまで今回のシングルを聴いてお待ち下さい!!
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
フライングヒューマノイド
2010/08/18 RELEASE
SRCL-7328 ¥ 1,282(税込)
Disc01
- 01.フライングヒューマノイド
- 02.千の言葉と二人の秘密
- 03.君にメロロン feat.8bit Project -“胸キュン□”8bit version-
- 04.フライングヒューマノイド -Instrumental-
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