Special
<インタビュー>BoAが日本デビュー20周年 これまでの軌跡と新曲「My Dear」を語る
2021年5月30日に日本デビュー20 周年を迎えたBoA。
11月5日に配信された新曲「My Dear」はそんなBoAからの最大級の感謝とファンへの信頼を表現したおよそ1年ぶりとなる新曲。そして20thプロジェクトの第一弾楽曲だ。今回はこれまでの20年間の日本での活動で節目となった出来事などを振り返りつつ、「My Dear」に込めた思いや今後の展望について、リモートでインタビューした。
好きだったからやれたと思う
――2001年5月30日、14歳という若さで日本デビューしました。日本でデビューすることが決まったときのことを覚えていますか?
BoA:「あ、行くんだ?」っていう、ライトな感じでした。若かったからこそ、日本デビューとか海外に行くっていうことを一大事に感じられなくて。今、たとえば「アメリカに行きます」って言われたらプレッシャーもあるし、いろんなことを考え始めるけど、当時はシンプルに考えてましたね。
――「やったー!」みたいな嬉しさはありましたか?
BoA:嬉しいというよりは、当時は今みたいに日本語が話せなかったから、まず言葉をどうしよう?って。それまで日本語の勉強はしてましたけど、大至急、授業の時間を増やしました。
――当時の日本の印象は?
BoA:日本は派手な場所だなって思いました。渋谷のスクランブル交差点とか、あまり海外で見られない風景じゃないですか。あと、若い子の外見も当時は、みんな肌が黒くて金髪だったから。ヤマンバギャルとか、ガングロとか。「なんか私、白いかも…」って思ってました(笑)。
――2003年に、ファーストツアーとなる【BoA FIRST LIVE TOUR 2003~VALENTI~】を行いました。最終公演は国立代々木競技場第一体育館という大きな会場でしたが、そのときのことを覚えていますか?
BoA:実はあまり覚えてないんです。初めてのツアーで、全部日本語で、まずはパフォーマンスすることに精一杯だったから、目の前の光景の記憶が無くて。それが悲しいです。たまにそのときの映像を見ると、「うわ、すごい。なんでこれを覚えてないのかな」って残念に思います。
――日本での活動は移動なども含め忙しく、しんどいものだったかと思いますが、そのときの心の支えがあれば教えてください。
BoA:しんどいというわけではなく、好きだったからやれたと思うんです。好きじゃなかったらどうやって乗り越えたのだろうと思うくらいですね。好きなことをやっていること自体が心の支えになったんじゃないかなと思います。そしてそれを楽しんでくれる皆さんのエネルギーも支えになっていましたね。
――日本での音楽活動で印象に残っている楽曲はありますか?
BoA:「LISTEN TO MY HEART」ですね。初めてオリコン上位(5位)に入った曲なので、驚いたし、すごく嬉しかった思い出があります。あと、最近すごく思うのは「メリクリ」です。もう15年以上前の曲だけど、いまだに冬になると街で流れるっていう話を聞くとありがたいなって。
――「メリクリ」はBoAさんにとって、どのような存在の曲になりましたか?
BoA:もともと好きな曲だし、きれいな曲だな、素敵な歌詞だなと思っていたんですけど、みなさんから愛してもらって、こんなに長い期間、聞いてもらえることはすごく嬉しいです。外国の歌手が歌った日本語の曲が、日本の冬の定番曲になったわけじゃないですか。自分が生まれてない国で、その季節になるとその歌手の曲が街中で流れるっていうのは、歌手として誇りに思います。
――「メリクリ」はアメリカの有名なバンドであるウィーザーにもカバーされました。自分が生まれてない国で今でも冬の定番曲として流れることに「誇り」があるとおっしゃっていましたが、日本以外でも親しまれていることに関しても同様な思いを持ってますでしょうか?
BoA:今や音楽がボーダレスに広がることは当たり前のことに感じますが、当時はJ-POP、K-POPなどのジャンルの区切りがはっきりしていた時期なので、日本語の曲を海外のアーティストが日本語で歌うことは結構珍しいことで。ウィーザーさんも当時から知っていましたが、海外のアーティストが自分の曲をカバーしてくれるのは、とても驚きました。
――ウィーザーの「メリクリ」のカバーを聴いてBoAさんはどんなことを思いましたか?
BoA:ありがたい気持ちがまず先に出てきます。私は日本人ではないですが、海外のアーティストに日本語の曲を歌う機会をつくれたことへの嬉しさがありました。
――日本の音楽活動で、特に印象に残っているMVはありますか?
BoA:「メリクリ」です。途中で降ってくる雪は「CGでしょ?」って言われるんですけど、本当の雪なんです。その年のトマムの初雪で、あの場で奇跡のように突然、降り出したんです。MV自体もきれいで思い出深いんですけど、撮影の翌日の朝、部屋の窓から見えた風景が本当にきれいでした。誰もまだ踏んでない、足跡の付いてない白い雪。あの風景はいまだに思い出します。
▲BoA「メリクリ」
――MVは海外でも撮影されていますが、特に覚えているロケ地はありますか?
BoA:苦労したという意味で覚えているのは「KEY OF HEART」です。ロサンゼルスで撮ったんですけど、砂漠で、あのヒールブーツで踊るのは本当に大変です。もう膝が痛くて(笑)。あのMVを見ると大変だったなぁって思い出します(笑)。
▲BoA「KEY OF HEART」
新曲「My Dear」と今後の展望は
――10周年以降は、「Only One」を始め、ご自身で作詞作曲する機会が増えました。曲作りで意識していることを教えてください。
BoA:曲調とか歌詞とか、みなさんが求めるBoAはスタッフさん側で作れると思うんです。だからこそ、自分が書く曲に関しては、自分が今やりたい曲調、伝えたいことを書くようにしてます。だからギャップはあると思うけど、そこにいちばんプライオリティを置いてやっています。
▲BoA「Only One」
――作詞を行うときに一番気をつけていることは?
BoA:ストーリーの流れです。みなさんが曲を聴いて、自分の経験と重ねられる曲になって欲しいなと思いながら書いています。
――2006年に始まった【BoA THE LIVE】というライブシリーズは、ブランド化してBoAさんの代名詞といえるライブになりました。BoAさんにとってライブとは、どのようなものですか?
BoA:最近はライブに対する思い入れがすごく強くなってきました。特にこの2年間は、コロナ禍でライブが全然できてないから、ライブってすごく大事なものだなって。唯一、ファンのみなさんと私が同じ場所で同じ時間を過ごせる場所だから。以前は、ライブを仕事の一環と思っていたから、ライブをやるのは当たり前という感覚だったんです。でも、今は当たり前のことが当たり前じゃなくなってきた。これからもっともっとライブを大事にしていかなきゃって思いました。
――ライブを行うときに大切にしていることは?
BoA:セットリストのクオリティです。それがライブ自体のクオリティに繋がると思うから。セットリストを見て、私がつまらなさそうだなと思ったら、正直、ファンもつまらないと思うし。
――セットリストの作り方は変わってきましたか?
BoA:以前は、昔の曲を歌うのがそんなに好きじゃなかったんです。だけど、他のアーティストのライブに行ったときに、自分が聞きたかったヒット曲を歌わないと「なんで!?」って思ったりするんですよ(笑)。きっと私のライブに来るファンのみなさんもそういう気持ちになっているんだろうなと思って、あまり歌ってなかった昔の曲とかをセットリストに入れるようにしています。
――2017年にはBillboard LIVEでも公演していただきました。当時を振り返って印象的なことはありますか?
BoA:【BOA THE LIVE】よりも距離が近かったのですが、そういった経験は初めてでした。ステージのバンドメンバーも少人数だったので、そこから生まれるサウンドが新しいサウンドとして聴こえたことも印象的です。あと、Billboard LIVEは1日2回公演ということで体力的には大変でしたが、自分のキャリアにとってはとても貴重な体験でした。
――今までのライブで最も鳥肌を覚えたのは何でしょうか?
BoA:いまだに思い出に残っているのは渋谷の109でサプライズライブを行ったことです。平日の午後で最初はそんなに人はいなかったんですが、曲が流れ始めてからスクランブル交差点にどこからともなくいきなりたくさんの人が現れたんです。現実を超えた感覚でした。
――20周年を迎え、今のBoAさんが表現したいことや挑戦したいものは?
BoA:最近、韓国で「STREET WOMAN FIGHTER」という番組の審査員をしているんです。女性ダンサーたちがダンスでサバイバルしていく番組なんですけど、踊りに関してすごく良い影響をもらっています。なので、ダンス曲を出してみたいなって思っています。重いビートの曲でかっこよく踊る、ダンスをメインにした曲に挑戦してみたいです。
――コロナ禍のステイホーム中は、どのような過ごし方をされていましたか?
BoA:家で料理して食べていました。日本に行けないから、日本食を作って食べたりもしました。蕎麦が好きなので、蕎麦を茹でて、つゆも買って、わさび買って、大根をおろして食べました。あと、去年は外でのランニングが増えました。韓国の漢江(ハンガン)という川の両サイドに公園があって、そこを毎日10キロメートル近くランニングしていました。でも走りすぎて、去年、体重がめちゃくちゃ減ったんです。痩せすぎも良くないから、今年は体重を増やすように努力しています。
――音楽面で変化はありましたか?
BoA:私はもともとアンタクトな生活だったから、人に会えないことに対する辛さはあまりないんです。マスクも喉のケアのためにいつもつけてたいから、不自由に感じないんですけど、海外に行けないとか、ファンに会えないことからくるストレスで、自分で作る曲に結構ダークなものが多くなりました。自然とそういう影響が曲作りに表れていて、歌詞もわりと暗いものが増えましたね。
――日本に来られない日々が続いていますが、日本に来たらまず何をしたいですか?
BoA:油そばを食べに行きたいです! それが最優先(笑)。もちろん、ファンのみなさんの前でライブもやりたいです!
――11月5日にリリースする新曲「My Dear」は約1年ぶりのリリースです。楽曲を聴いたとき、どう感じましたか?
BoA:シンプルで気軽に聞けるサウンドだなって思いました。でもメインのシンセが特徴的だから、耳に残る曲になっているんじゃないかなと思います。
――歌詞に出てくる「My Dear」は何を指しているんですか?
BoA:自分を今まで支えてくれたファンのみなさんです。この曲はファンのみなさんに対する私からのメッセージソングなんです。もしもライブができていたら、20周年だからBoAというアーティストをもう1回、パフォーマーとして見てもらえる曲を出したかったんですけど、今はまだ家にいる時間が多いと思うから、ゆったり聞ける曲を出した方が、みなさんも癒されるんじゃないかなと思って、この曲を出すことにしたんです。
――歌詞の中に、BoAさんの過去曲を連想させるワードも入っています。
BoA:「デニム」とか「Only One」とか「抱きしめて」とか、そういうところはファンのみなさんなら気付くと思います。あと、ファンだからこそ知っている私の性格が歌詞に表現できていると思うから、ファンのみなさんは聴きながらクスッと笑える感じもあるんじゃないかなと思います。
――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
BoA:20周年支えて下さってありがとうございます。コロナ禍であまり活動できないから、アニバーサリーイヤーという実感があまりないんですけど、これで活動が終わりじゃないし、ひとつの通過点としてこれからも頑張っていくので応援宜しくお願いします! コロナ禍をみなさんで乗り越えて、また元気な姿で日本で会いましょう! 早く日本に行きたいです!
関連商品