Billboard JAPAN


Special

<Billboard JAPAN SDGs プロジェクト第一弾>Def Tech:環境問題に取り組む彼らが音楽を通して発信していくもの



DefTechインタビュー

~音楽を通じて持続可能な未来を創る~

 Billboard JAPANは「音楽」と「食」を通じて、社会の諸問題の解決に主体的に関わりながら、人々の暮らしを彩る「夢」と「感動」を未来に繋いでいくSDGsプロジェクトをスタート。アーティストが力を入れている取り組みや思いを不定期で発信していく。記念すべきプロジェクト第一弾には、2000年初期から環境問題や貧困、子供たちの未来のための音楽を発表しているDef Techが登場。海や自然を愛する彼らがここ日本で目撃した危機迫る現状から、SDGs実現のための簡単なステップまで、日本人がまだ知らない、彼らならではの視点を語ってもらった。

――おふたりがSDGsを知ったのはいつ頃でしょうか?

Micro:実は日本でSDGsを頻繁に見るよりも前から知っていました。2015年9月に採択された当時から気にかけていたんです。国連が発表した長文の資料を読んだり、新聞を読んだりしても分からなかったので、TED Talksとかも見て、SDGsの17項目をどう実現していけばいいのかを勉強しました。

Shen:昔から地球のために動きたいって話はしていて、お互いソロ・アルバムを発表したときも、活動はしていました。最近になって、やっとSDGsが身近な言葉になったので、よかったです。これからみんなでやって行こう、よろしくです!

Micro:情報をキャッチして、小さなことから実践していくことが大事だと感じています。最近Netflixで観た『地球の限界:“私たちの地球”の科学』では、COVID-19が発生するまでのプロセスが描かれていました。気候変動で地盤がゆるんだり、開発によって山や森が切り崩されていったりすると、土地が弱くなり、逆に細菌が強くなるんです。砂漠化や気候変動など、今抱えている問題のほとんどを止められる唯一の希望が植樹だそうで、僕も何らかの形で植樹に参加をしようと決めています。

――その計画はいつ頃思い付いたんですか?

Micro:去年の2度目の緊急事態宣言あたりですね。とにかく家でNetflix and chillをしまくっていたときは、かなり絶望的な気分だったんですけど、『デヴィッド・アッテンボロー:地球に暮らす生命』を観て、かなり希望が湧きました。


▲『デヴィッド・アッテンボロー:地球に暮らす生命』

――食べきれない量の注文はしない、電気をこまめに消すなど、当たり前のことを心掛けるだけで、地球環境が改善していきますよね。

Shen:シャンプーで使う水の量を減らすために、俺ら、髪の毛も短いですから(笑)。あと、ガスをあまり出さないように、温水じゃなくて冷水でシャワーしてます。実はこれ、体にすごく良い影響を与えるんですよ。体が強くなって、風邪をひきにくくなるんです。温まった風呂場から出た瞬間、冷たい空気に触れるのも嫌でしょ。それがなくなるし、冷たい水を浴び続けると体が温まるんですよ。

Micro:あと、海に行くときは必ずビーチをキレイにするんですけど、これは海に通う者にとって基本中の基本ですね。沖縄の金城浩二氏の人口サンゴ移植活動を応援するために、「Sea Seed」(2008)を書き下ろしたことがあるんですけど、当時は「サンゴを植えてどうするんだ? それで海が本当にキレイになるのか?」ってバカにされました。あれから、海面温度の上昇に耐えられるミラクルコーラルを金城さんが作られて、これから人間の手でサンゴを海に帰していきます。海に潜ると、昔と今の違いがよく分かるんですよね。すごくキレイだった世界が真っ白に変わってしまって……。行動を起こす前に、見たり体験したりするほうがいいかもしれない。西表島に行ったとき、海があまりにも汚くてびっくりしました。

Shen:人が住んでいないのにゴミだらけで……。ラベルを見ると、全部中国語でした。そのゴミが森の奥に入り込んでしまっていて、ショックでしたね。そのときの経験をもとに書いた「All That's In The Universe」に、<この流れてる赤い血はヒマラヤから インドをつなぐ川ガンジス 呼吸は風 エジプトの土は僕の肌 汗は海 雨は涙>っていう歌詞があるんですけど、人間は地球と同じなんです。分離の錯覚という言葉があるように、俺はあなた、あなたは俺、そしてみんな一緒っていう意識にならないと動かないよね。


▲「All That's In The Universe (Document)」

Micro:私とあなたは違うって考えたら、よその話になってしまうけど、地球と自分は同じ価値のあるもの、すべて同じ物質でできていると考えるべきだと思うんです。そう気づいてもらえるように「Golden Age」では<その肌はこの大地の土や水 That’s why you are my twinkle, twinkle little star 宇宙であり 世界でたった一つしかないジュエリー>と歌っています。


▲「Golden Age」

――Shenさんがお住まいの沖縄の方々は、自然と隣り合わせということもあって、やはり本土や都市圏で暮らす人たちよりも、環境問題に目を向けられていますか?

Shen:すごく意識している方々がたくさんいて、アーティストも繋がっているから、いろんなプロジェクトが発信されてます。さっきお話した金城さんの「さんご畑」は台風の影響で何度もやられてしまったことがあるんですけど、以前訪れたときに「そこの木の根っこを見てよ」と言われたことがあって。その木だけは全く倒れないんです。それを見て、人間が作ったものは壊れちゃうけど、大地の力は簡単には崩れないって感じて、泣きそうになった。

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子供も大人も気づき
行動に繋がる音楽を続けていきたい

――日本は世界的に見てもフィジカルCDのマーケットが断トツに強いですが、デジタル配信も主流になってきたので、環境に優しくなってきたようにも思います。Shenさんは、ソロ・アルバム『SOLAIRO』(2009)のCD制作にカーボンオフセット(録音・印刷・プレス工程で排出されたCO2を測定し、排出された分のCO2を、太陽光発電などのグリーン電力、植林などによって相殺)を採用されたり、CD売上の一部を地球環境を守るためのGREEN STYLE基金に寄付されたりと、環境に還元するリリース活動もされてきましたね。

Shen:ジャック・ジョンソンのアルバム『スリープ・スルー・ザ・スタティック』(2008)の裏面に“Recorded with 100% solar energy(太陽エネルギー100%で録音されました)”と書いてあって、その隣に“1% FOR THE PLANET”というロゴが書かれていたんです。アルバムの売上の1%が地球に戻るシステムで、超カッコいいと思って、「やりたい!」と思ってやりました。それで、夏は涼しく、酸素も出る一石二鳥で、近くの学校の壁にかかっているネットに植物を付けましたね。ここから見える外の景色はコンクリートだらけだけど、全部が植物の壁になったら、かなり空気がフレッシュになると思う! CDに関しては、まだまだ買いたい人は多いし、マーケットも大きいし、僕たちも恩恵を受けているから、矛盾しちゃって、なかなか難しいところでもあるけれど……リユース、リサイクルができたらいいですね。

――コールドプレイの新しいアルバム『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』はリサイクルのヴァイナルで発売されたり、環境に配慮して、ロードはCDディスクが入っていない100%生分解性のハードエコ・ボックスをリリースしたりと、著名アーティストたちも環境問題に取り組んでいるようです。

Micro:それは面白いですね。アナログ・レコードが売れているのは、CDやデジタル音源よりも音が良いから。昔に戻るんじゃなくて、近未来も感じられるプロダクトが出てくるといいですよね。例えばスマートリングみたいな、誰もが欲しいと思えるモノ。

――カセット、MD、CD、サブスクと、音楽の聴き方が変わっているので、新しい聞き方が今後生まれるんでしょうけど、それが環境に配慮したものだと、よりいいですね。

Micro:骨伝導で音が聞こえて、舐め終わったらなくなっちゃう飴タイプの音源とか。一回限りだけど、売れると思うんだよな~(笑)。

――もうどこかでそれを開発している人がいるかもしれないですし、もしかしたらそのアイデアを実現させる人が出るかもしれないですね。

Micro:じゃあ、記事に出すのはやめてください(笑)!

――(笑)。SDGsにはほかにも教育や保健、陸上資源保全の促進・向上も目指しています。音楽を通して、SDGsに取り組みたいことはありますか?

Micro:僕たちが活動を始めたきっかけが2001年の米ニューヨークの同時多発テロで、日本とアメリカを繋ぐことが自分達のミッションでした。2004年にはスマトラ島沖地震が起こりましたが、インドネシアに住んでいた僕の友人である先輩サーファーは、何キロも先の沖に流されたおかげで、津波に遭わなくて助かったんです。それをモチーフに、「Deep Blue」(EP『Lokahi Lani』(2005)収録)を書き下ろしたり、スマトラ沖地震で苦しんでいる方をサポートするために、ライブDVD『Def Tech武道館』の売上をユニセフに寄付したりしたこともあります。2005年には、子供たちを救うワクチンを促進するために、アルバム『Catch The Wave』(2006)に入っている「Canción de la Expansión」の収益をユニセフに寄付しました。


▲「Deep Blue (LIVE)」

 人間には何か困難にぶつかったときに、レジリエンスという内発的な何かがそれを跳ね返す力があるんですけど、これこそ教育だと思うんです。人間って誰かが教えないと、無知なだけの動物だから、音楽を通して気づきを発信していきたいです。エデュテインメント(教育(education)とエンターテインメント(entertainment)を掛け合わした造語)として、子供も大人も気づき、行動に繋がる音楽を続けていきたいと思っています。

Shen:コロナ禍になって、エンタメはすぐに消える存在なんだって実感しました。過去に戦争があったときもアートが全部消えましたよね。俺らの職業って必要ないんだって思ったこともありましたが、Microが「音楽のない世界なんて寂しいから嫌だ」って歌っているように、人間には娯楽が必要だと思います。学びながら楽しめたらベストだし、心がポジティブになれれば、地球の感情を感じ、それのために動けると思う。SDGsの意識が高い人や企業はたくさんいるから、手を取り合って動いていくべきだと思います。

――最後に、【Billboard Live 20th Anniversary Special~Surf Me To The Ocean~】を楽しみにされているファンへメッセージをお願いします。

Micro:去年、俺がコロナにかかっちゃって公演がキャンセルになってしまったんですけど……追加公演まで決まって、嬉しいです。俺らって、家族と喧嘩するとかで、ライブの前は必ず気分が下がるんですよ。20年くらい、ずっとそれが続いていたのに、今回は穏やかに過ごせているのは、COVID-19の影響が大きいかもしれない。ライブが続いているときは「疲れた。もうやりたくないよ~」なんて思うこともあったけど、ライブができない状況が2年も続いて、本当にライブが恋しくて。ないものねだりですね。

Shen:もうライブがやりたくて、しょうがない! 今この瞬間を味わうために、みんなでその空気感をシェアして一緒に楽しみたいですね。ワンチャンス、ワンテイク、ワンライブだから、楽しみです。

Micro:これがほんとの<THE FIRST TAKE>ですね(笑)。どれも一度限りの生ライブだからこそ、本気のDef Techを堪能していただきたいです。

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