Billboard JAPAN


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<インタビュー>flumpool ~「未来」が響くイヤーエンドへ



インタビュー

 2023年のデビュー15周年を前にして、自らの会社を立ち上げ、新たなフェーズに入ったflumpool。その変化の年=2021年のイヤーエンドに大阪・横浜・東京の[ビルボードライブ]でのアコースティック・ツアーが決定した。今回はメンバー4人が、その[ビルボードライブ東京]に集合。新曲「その次に」にも表現された2021年への思い、ツアーへの意気込み、そして「これからのflumpool」を語ってもらった。

再スタートを切ったからこそ、原点を見直した

――flumpoolにとっては会社の設立という環境の変化があった2021年でした。その2021年を締めくくる[ビルボードライブ]のツアーも発表されました。まず、この1年を振り返っていただけますか。


阪井一生(Gt):正直に言えば大変やった(笑)。特に前半は事務所の件もありましたからバタバタしていましたね。

尼川元気(Ba):前半もだけど、まだバタバタしていますね。自分たちで考えなければいけないことが増えましたから。

山村隆太(Vo):例えば今までは恵まれた環境の中で、スタッフに気軽に「こうしたい」って言ってきたことが、実現するのにはどれだけ大変だったのかっていうことですよね。ライブをどう組んでいくのかとか、いろんな責任を取らなくてはいけない。2021年はそれを感じてきました。

阪井:音楽制作もライブも、それを運営するために必要なことがたくさんある。そんなことをリアルに感じた1年でしたね。


――その変化の中でこれは達成できたと思える出来事はありますか。


阪井:うーん、どうやろ、達成できてるのかな。そう考えると答えるのが難しい(笑)。

山村:コロナ禍だったというのは大きいですね。家にいなくてはいけない中で、新しい刺激を受けたり、誰かと出会ったりということも制限されましたからね。でも、その分、今までのようにバンドで集まって、曲の話やライブの話をしていた、その当たり前に日常的にやってきたことが、実は当たり前ではなかったっていうことに気づかされました。

尼川:(達成は)これからだと思うんですよ。やっとここから始まると思ってますね。


――この間はメンバーもリモートでの打ち合わせが多かったですか。


山村:今はだいぶ変わりましたけど、やはりリモートでしたね。それに慣れてしまうと、今度は出かけなくていいことが楽になっちゃって(笑)。

小倉誠司(Drs):簡単な打ち合わせで出かけなくていいのは楽になりましたけど、リモートだと時間を気にせずどんどん打ち合わせを入れられてしまうという面もありましたけど(笑)。


――そんな中、今年は5月に「ディスタンス」をリリース、そして最新ナンバー「その次に」がデビューから13年目の記念日である10月1日にリリースされました。「その次に」の作詞をした山村さん、作曲をした阪井さんは、どんな思いで臨んだナンバーですか。


山村:自分たちのことでいえば、長年お世話になった場を出て、自分たちの場で新たなスタートを切った、そのことへの気持ちを表現したいということは大きいです。でもきっと、そんな「一歩を踏み出す」ことの気持ち、それは不安も含めて、コロナ禍を体験した誰もが感じていることだと思ったんですね。(この取材の時点で)例えば緊急事態宣言が明けたからといって、じゃあすぐに心も動き始められるのかって。でも、その一歩が難しいと思う反面、その分、すごくエネルギーもあるんじゃないか。自分たちも新しいことを始めましたし、年末には[ビルボードライブ]への初登場という挑戦もある、来年へのヴィジョンもできつつある、つまりエネルギーはすごく溢れているんですよ。それって何だろうと思ってみると、不安でも決して「ひとりではなかった」っていうことなんじゃないかって。リスタートする、一歩進み出すときに、仲間がいることでポジティヴになれる。ひとりでないと思えれば、仮に失敗があっても後悔はしないと思うんです。

阪井:そんな「リスタート」っていうテーマが最初からあったので、曲作り、アレンジもそこを意識しましたね。例えばイントロがストリングスで始まるところとか、曲の構成とか、メジャー・デビュー・シングルの「花になれ」を意識していたりします。そういう意味では、まったく新しいことに挑戦するということではなくて、flumpoolの中で自分が今まで作り上げてきた、いろんな引き出しをちゃんと出してやろうと。「これぞflumpool」と呼べる曲が作りたかったんですね。


――尼川さん、小倉さんは、それぞれ「その次に」にどんな思いで臨みましたか。


尼川:そのflumpoolらしいアレンジがしっかりあったので、そこに忠実に「らしい」プレイを心がけました。なにしろ一曲前の「ディスタンス」のアプローチがかなり挑戦的でしたから。そういう意味で「帰ってきた感」がありますね。

小倉:僕も、その「らしさ」というか、スッと身体に入ってくる感じは同じですね。きっと皆さんの聴き心地もそうでしょうし、僕としては「叩き心地」に、これがflumpoolなんだなって、あらためて思わせてもらいました。

山村:それぞれの音の表情も、到達点であると同時に原点っていう思いはありますね。


▲flumpool「その次に」Music Video

――そんな2021年を過ごしたflumpoolがライブで今年を締めくくるわけですが、その会場が[ビルボードライブ]になった理由を教えてください。


山村:ひとつは再スタートを切ったからこそ、原点を見直したというのがありますね。原点に立ち返ってみればストリートライブで始まったバンドですから、その頃の4人を思い出して、今回はアコースティック、アンプラグドな形で届けたい。そういう意味でぴったりの場所だと思います。もうひとつは、まだライブでお客さんが大声を出したりできない状況で、安心して参加してもらえる、落ち着いて聴いてもらえる場としての[ビルボードライブ]ということがあります。そのふたつですね。もちろん自分たちにとって憧れの場所だということもありますから。


――それぞれ[ビルボードライブ]のツアーにどんな思いを持っていますか。


阪井:とても楽しみですよね。でも、まさに今、これまでのナンバーのアコースティック・アレンジを始めているんですけど、この4人の楽器の音色だけで表現することのハードルもなかなか高いです。そのハードルを感じながらインディーズの頃を懐かしく思い出したりしますね。あの頃はよくやってたなあって(笑)。

山村:アコースティックだと、どうしてもミスも目立ちそうだしね。

小倉:その緊張感もあるけど、バンドも客席も初めての体験っていうことは楽しみですよね。僕たちも[ビルボードライブ]のようなステージは初めてだし、flumpoolのお客さんには食事をしながらライブを見るということが初めての方もいらっしゃると思うんですね。僕自身もこういうライブ・レストランに行くときはちょっと気持ちが違いますから。

尼川:今日は[ビルボードライブ東京]でも取材ということで、僕は初めて来たんですが、あらためて楽しみになりましたね。客席に座って、バックに広がる夜景も見せてもらって、楽しみと緊張感が高まった感じです。flumpoolにしてみれば[ビルボードライブ]でやること自体が挑戦という面もあると思うんです。どちらかと言えば、歓声が上がる熱狂を求めてきたバンドですから。でも、コロナ禍だったり、再スタートだったり、そのことがなければこの挑戦がなかったと思うと、本当に意味があることだと思ってます。

山村:客席が近いっていうことは大きいですよね。僕がこういうライブ・レストランで他の先輩アーティストを見たときにも思いましたけれど、いつもはアリーナクラスのライブをやっているアーティストもここではある意味で「裸」ですよね。そこに人間くささも見えて、親近感が湧いてくる。じゃあ、僕たちがどこまでこの場を活かせるのか、どういう意味を生み出せるのか。その挑戦が楽しみだし、いい意味で緊張しますね。


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    この4人で前に進もうと思った、
    あの一歩があったからいまここにいられる
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この4人で前に進もうと思った、
あの一歩があったからいまここにいられる

――そんな[ビルボードライブ]ツアーが終わると、来年10月からはデビュー15周年イヤーですね。ちょっと早いですが15年間を振り返って、いま、どんな思いを感じていますか。


山村:さっきの「その次に」のテーマにも通じるんですけど、15年前に不安を抱えながらも上京して「一歩を踏み出したこと」はよかったなと思うんです。結成から来年で15年、今回のリリースがデビュー13年、その年月のすべて楽しかった、すべて良かったということではありませんけれど、この4人で前に進もうと思った、あの一歩があったからいまここにいられるということは、すごく思います。

阪井:15年はあっと言う間でしたけど、でも、どこかで「ひと周りした」というのも感じますね。結成した頃から変わっていないところもあるんですけど、それでもいろんなことに挑戦してきましたから。その挑戦を重ねてきて、ひと周りして、今に帰ってきたというか。

小倉:お客さんから「小さい頃から聴いていました」って言われると、さすがに15年って凄いことだと思います。でも、やっとここまで来られたという気持ちもありますね。特にデビューした頃を思い出すと、同じ衣装を来るのでもどこかで背伸びしていて「服に負けてた」部分もあったと思うんですけど、いまは自分たち相応の服の着方ができてるように感じます。

尼川:15周年の実感は、そんなにまだないですけど、ただ自分たちがデビューした頃に出会った先輩たちが、当時15周年とか20周年とかだったことを思いだすと「ヤバいな」って(笑)。ある意味でプレッシャーを感じますね。

阪井:確かにプレッシャーはありますね。15周年とかなってくると、後輩のバンドがめちゃ増えますから。

山村:俺たちがずっと「後輩」でいたかった(笑)。それが向いているバンドっていうことかな。

阪井:若手のバンドと対バンしたりする機会もありますけど、そうするとヘンに意識しちゃって(笑)。

尼川:でも、干支がひと周りぐらい下の世代だと、もう「違うジャンル」のようにも思えるけど。同じ土俵には上がってないというか。

阪井:そうだね。今は楽屋で集まって「大人っぽくしような」みたいな気持ちにはなりますね。昔はあんなにとがっていたバンドだったのに(笑)。

山村:でも、今が一番、メンバーはいいバランスなんじゃないですかね。しっかり音楽でつながっているということが健全だなって思うから。


――最後にここから始まる、これからのflumpoolのテーマ、ヴィジョンを教えてください。


山村:とにかく「やりたかったこと」をどうやって実現していくのか、それがテーマですね。

小倉:個人的には、flumpoolは「遠い憧れの存在」のようなイメージのバンドではないと思っているんです。ヴィジョンというほど大袈裟なものではないですが、聴いてくれる人たちと一緒に歩んでいける、支えあっていけるバンドでいられたらいいなと思っています。

尼川:やりたいことはメンバーからたくさん出てくるので心配していませんが、環境が変わりましたから、そこに負けたらいけないなと思っています。運営面も責任感を持ってしっかりやっていきましょう(笑)。

阪井:そういう意味では、実際に来年以降のいろいろなプランが動き出しています。ここではまだ言えないのが歯がゆいですが、楽しみにしていて欲しいです。

山村:flumpoolは、幼なじみから始まっているバンドとして、いい意味で変わらずに来ることができたんですね。だからこそ逆に「変化」を感じることが少なかったかもしれない。でも、その中でも音楽的にも人間的にも成熟してきたことがあるはずで、きっと今までとは違う[ビルボードライブ]のような場に立ったときに、どう変化してきたのかが自分たちでも感じられる気がしています。その変化も感じながら、もう一度、原点を見つめ直していく。きっとそれが「これからのflumpool」を生んでいくと思っています。

flumpool

flumpool「ディスタンス」

ディスタンス

2021/05/26 RELEASE
AZCS-2084 ¥ 1,430(税込)

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