Billboard JAPAN


Special

<コラム>dTVに「ライブ」ジャンルが追加 dTVのファン目線に立った独自戦略とは



top

有料配信・過去映像・オリジナル番組などといった多岐なコンテンツ

 映像配信サービスdTVがリニューアルを遂げた。動画好きから幅広く支持を集めてきた同サービスが、新たに加えたのは「ライブ」ジャンルだ。圧倒的な本数の音楽映像をすでに配信するdTVで今、有料ライブ配信や見逃し配信、過去のライブ映像など、独自の音楽コンテンツが増えているのだ。


▲dTV_ライブジャンルWEB CM

 動画配信サービスの中でも、音楽ライブに特化したジャンルは滅多に設けていない。さらに俯瞰すれば、音楽ストリーミングの世界を見回しても「ライブ」をジャンル化するサービスは殆ど無いのが現状だ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ライブやツアー、音楽フェスの多くは、オンライン動画配信や有料配信に新たな活路を見出している。動画配信はアーティストのファン獲得やPRに繋げやすい。コロナ禍で、音楽レーベルやマネジメント会社の多くは、過去に販売したライブやドキュメンタリーなど映像コンテンツのライブラリーをオンラインで公開するなど、ライブに行けないファンの熱狂や期待を煽ってきた。中には、有料配信を通じて好きなアーティストを応援しよう、多くの人と体験を共有しよう、とするファンダムの動きは益々強まっている。

 当然ながら、昨年からプラットフォーム各社はライブ動画配信に意欲的だ。群雄割拠の音楽動画配信市場において、dTVはファン目線に立った独自戦略を打ち出している。前述の「ライブ」ジャンルによるリニューアルにもチャレンジが感じられたが、同サービスが目指す将来像は「音楽動画配信に強い日本のプラットフォーム」というブランディングではないだろうか。

 dTVは、すでに多くの有料ライブ配信や見逃し配信を手掛け、音楽コンテンツに関するノウハウが豊富に蓄積されていることも、同サービスの強みだろう。今年に入ってからも、GLAYやHKT48の有料ライブを配信してきた。9月、10月にはB'zの有料配信も決定した。同ライブではdTV会員限定の割引チケットを販売するなど、他社に無い独自性を強めている。会員向けに様々な施策を展開できる背景には、dTVやNTTドコモが長年築いてきた、音楽業界との関係性が生かされている。例えば、dTVはコロナ以前からマルチアングル配信や見逃し配信、VR配信など多岐にわたる配信方法を実現する技術「新体感ライブCONNECT」を導入してきた。こうした技術は、視聴者であるdTV会員、アーティスト、音楽業界まで多方面に付加価値を提供できる。まさにコロナ以降の新しいライブ視聴体験に必要な要素だ。dTVは「新体感ライブCONNECT」で培ったノウハウをライブ配信に実装し、独占コンテンツの提供や差別化を目指すという。今後はNTTドコモのサービスや技術とのシナジーにも期待したい。VRやXRを活用した配信や、5Gによる高画質・高音質配信など新しい視聴方法も増えてほしい。

 過去のライブ映像がいつでも楽しめる点も重要だ。特にファンが予習したり、ライブ後の余韻に浸れる過去動画は、アーティストとの距離を縮めてくれる。dTVではライブ映像が1,200作品以上揃っており、生配信と過去映像を同じサービス内で楽しめる環境が充実している。ファンの熱量を最大化する取り組みでは、『三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2016-2017 “METROPOLIZ”』や、『THE RAMPAGE LIVE TOUR 2017-2018 "GO ON THE RAMPAGE”』などの映像作品は、ライブDVDやアルバム発売を記念してダイジェスト版が独占先行配信されてきた。過去のライブ映像を限定開放したり、フル尺で公開することは、アーティストのプロモーションとしても効果が高まるため、今後さらに先行配信コンテンツには注目したい。

 dTVが「ライブ」で強化するのは有料配信や過去映像だけではない。オリジナルの音楽番組にも注力している。6月からきゃりーぱみゅぱみゅとスチャダラパーのBoseがMCを務めるエンタメ情報番組『KPPとBoseみんなの放課後』を無料生配信。様々なゲストを迎えたトークや、音楽や映画ドラマなどエンタメ最新情報を広く発信するバラエティ番組だ。そして8月からは新番組『Roots』の配信が始まった。こちらは一人のアーティストにフォーカスし、1夜限りの特別なライブパフォーマンスと、音楽活動の原点や人物像を掘り下げていくトークで構成される音楽番組。第一回目の配信では、メジャーデビュー10周年を迎えたきゃりーぱみゅぱみゅとOKAMOTO'Sのオカモトレイジが対談。お互いの交友関係を振り返る内容からは、アーティストの新たな一面や作品作りへの想いに気付かされた。


▲ Roots −きゃりーぱみゅぱみゅ−

 「ライブ」ジャンル以外でも、韓国のボーイズグループ発掘オーディション番組『LOUD』を日本独占配信するなど、音楽コンテンツの充実は広がっている。コロナ禍でライブ映像の楽しみ方は多様化が加速した。スマホやTVなど対応メディアの選択肢も拡大する中、dTVは全方位でオンラインライブの魅力を引き出してくれる配信サービスと言える。多目的なファンの熱量に支えられてきた日本人アーティストや日本の音楽業界にとって、ポスト・コロナにおけるファン体験の観点からも、ライブ映像の可能性には今後注目したい。

関連キーワード

TAG

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    JO1、ワールドツアー開催を発表「ここから世界に羽ばたいていきます」

  4. 4

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  5. 5

    <ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

HOT IMAGES

注目の画像