Special
<コラム>miletが「Ordinary days」に込めた愛のメッセージと、彼女の表現者としての新フェーズについて
新進気鋭ディーヴァの新しい世界観
miletの最新曲「Ordinary days」が注目を集めている。
7月14日に配信がスタートし、8月4日発売の新作EPにも表題曲として収録されるこの曲は、戸田恵梨香と永野芽郁が主演を務めるドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』の主題歌として書き下ろされたナンバー。“刑事ドラマ”といえばスリリングで難解な物語が展開されるイメージもあるが、同作は戸田が演じる元エース刑事・藤聖子と永野が演じる新人警察官・川合麻依が――時にシリアスな展開も挟みつつ――基本的にはコメディ要素の強い交番エンターテインメントを繰り広げる作品だ。ドラマは世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)3話連続10%超の好発進を記録しており、すでに好調な人気ぶりを見せているが、主題歌を収録したEPの発売や物語の今後の展開なども含めて、まだまだ期待が膨らむ作品であると言えるだろう。
【戸田恵梨香&永野芽郁 W主演】 「ハコヅメ」今からでも追いつける!第1話ドラマダイジェスト!【三浦翔平 山田裕貴 西野七瀬 平山祐介 千原せいじ/ムロツヨシ】【日テレドラマ公式】
警察官たちの“日常=Ordinary days”に寄り添う温もりを湛えた「Ordinary days」は、milet自身が「今だからこそ書ける曲になった」と語っている通り、多くの人が何気ない日々の尊さを再確認した2021年、そういった社会のムードと強く結びついた1曲にもなっている。<願わくば、そう/悲劇よりも喜劇よりも見ていたいのは/奇跡のような当たり前を照らすこの日常>という歌い出しは、ますます社会が混迷していく今日において、平穏無事な暮らしを維持することがどれだけ難しく、それがいかに代えがたいものであったかを痛感した私たちの心情を代弁しているようであり、初めてのツアーが幾度も中止・延期となり、昨年リリースした1stアルバムの楽曲をファンに直接届けることが長らく叶わなかった、他ならぬmilet自身の心中が滲み出ているようにも感じられる。
2019年のセンセーショナルなデビュー以降、彼女の楽曲で表現されるのは内省的な没入感であったり、日常から切り離された深い世界観であることが多かっただけに、ここまで外に開けた楽曲は新鮮だ。「自分の頭で想像した描写にサントラみたいな感覚で曲を作っていくようなやり方」が多かったというこれまでの楽曲制作の手法とは異なり、自分がいま直面している現実と向き合い、聴き手にどんなメッセージを伝えたいかを自問した末に作られたからこそ、この「Ordinary days」の切実な説得力が生まれているし、miletというアーティストの新たな一面を覗かせる格好にもなっている。
「同じものが不便だと感じて、同じものが便利だと感じる、そういうフラットな状況って、なかなか今までなかったなと思って。だからこそ共感できる感情もあるし、コロナが早く解消されて自由になりたいという気持ちもみんな同じだと思うし。みんな少なからず同じ感情を持っているんだと思えるからこそ、歌にそれを込めたいと思いましたし、寄り添えるようにもなった。」(インタビューより抜粋)
彼女らしい愛のメッセージ
思春期をカナダで過ごした彼女は普段、英語と日本語を巧みに混在させた歌詞を書くが、今作は全編日本語詞となっているのも大きい。<君の隣で笑うより 君に笑ってほしいのさ>というサビのフレーズをはじめ、かけがえのない日常とそこにいる大切な人たちに愛を伝える言葉の数々は、優しく語り掛けるような歌唱と伸びやかなメロディーに導かれ、聴き手の心にまっすぐ届く。数多くのヒット・アーティストを手掛ける蔦谷好位置のプロデュースと、CRCK/LCKSの小西遼による華やかなブラス・アレンジのディレクションも、この曲が持つポップ・ミュージックとしての強度に一役買っていることは言うまでもない。詞の面でもサウンドの面でもチャレンジングで、なおかつ強いメッセージ性を宿したこの曲が、先日の『FNS歌謡祭』や『音楽の日』といった音楽特番で披露されたことも、とても意義深い出来事だったように思える。
milet「Ordinary days」Music Video(日本テレビ系水曜ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」主題歌)
とはいえ、miletのライブやラジオをしっかりチェックしているファンであるならば、彼女がもともと人間味に溢れ、他者に対して深い愛情を注ぐことに全力な人であることはよく知っているはず。念願叶って無事開催された先日の1stツアー【SEVENTH HEAVEN】でも、音楽を通して繋がるリスナーたちへの慈愛と、ようやく音を直接届けにいくことのできる喜びが、かつてないほど躍動的でエモーショナルなパフォーマンスとして表現されていた。そんなツアーの手応えとして、milet自身が語った「閉じこもっていたものがようやく外の世界に歩み出してきたような感じ」と、新曲「Ordinary days」のモードが重なるのも、彼女が今、表現者として新たなフェーズの入り口に立っていることを示唆しているようである。
マスクの着用や歓声の制限など、観覧マナーが厳しく定められた状況下においても、彼女を温かく迎え、生の音楽体験を共有した全国のファンたちへの愛を伝えているようにも感じられるこの「Ordinary days」は、新機軸であると同時に、かくも彼女らしい1曲でもあるのだ。<描くなら、そう/歓声もない正解もないゴールの向こう/君がいるなら頑張ってみようかな/呆れそうな言い訳でも信じたいんだ>
当たり前のように感じていた日常が当たり前ではなくなった今、miletが高らかに歌い上げる「Ordinary days」は、幸福で穏やかな日々を願う私たちの未来を明るく照らす1曲として、今まで以上に多くのリスナーの心に寄り添う音楽になるだろう。
Ordinary days
2021/08/04 RELEASE
SECL-2589 ¥ 1,375(税込)
Disc01
- 01.Ordinary days
- 02.Time Is On Our Side
- 03.Castle
- 04.Hit the Lights
関連商品