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<インタビュー>FATE GEAR、世界に向けた渾身の作品『Battle Against Justice』



FATE GEARが、シングル『Battle Against Justice』を7月14日にリリースする。

2015年に活動を始めて以来、2019年3月に行われた大規模コンベンション含む5か国12公演にわたるヨーロッパツアーをはじめ、これまでに約30回の海外公演を行ってきたガールズ・スチームメタルバンド・FATE GEAR。本作は、海外に向けた初のプロモーション作品となっている。

今回、リーダーのMina隊長にリリースまでの経緯や海外活動への思いなどを伺った。

FATE GEAR結成から今までの歩み

――そもそも、なぜガールズスチームパンクメタルを始めようと思ったんですか?

Mina隊長:私はFATE GEARの前にもガールズメタルバンドをやっていて、2007年から長いこと活動していたんです。今、日本で起こっているガールズメタルブームのきっかけとなったと言われているバンドで、実際Wikipediaには「ガールズメタルのパイオニア」みたいなことを書かれてるんです(笑)。で、そのバンドを辞めたあともガールズメタルにはこだわりがあったし、「またやりたいな」と思っていたんですけど、普通にガールズメタルをやるのではなく、私はスチームパンクのファッションがもともと好きだったので、そういう要素やゲームチックな物語性を取り入れたバンドを、ということでFATE GEARを結成しました。

――ゲームも好きなんですね。

Mina隊長:小さい頃からやってます。最初は『ポケモン』や『ゼルダの伝説』とかをやっていて、今でもSwitchをやってますね。FATE GEARは楽曲の中でストーリーを描いたりしているので、そういう意味ではゲームと音楽を融合させている部分はあります。

――しかしその後、度重なるメンバーチェンジがあり、それをきっかけにメンバーを固定せずに多人数制という形をとることになりましたが、どうしてそんな大胆な決断ができたんでしょうか?

Mina隊長:コミケとかで音源を売っているような同人メタルをやっている人たちの中にもメンバーを固定していないバンドが多いんですよ。毎回ボーカルが違ったり、声優さんが歌っていたりして。そういう人たちの中で一番有名なのがRevoさんのLinked Horizonだと思うんですけど、それ以外にもメタルシーンにはそういうやり方をしている人たちがいるので、自分もやってみたいなと。

――今の形になったことで活動はやりやすくなったんですか?

Mina隊長:なりましたね。いろんな人とコラボできるのは楽しいし、バイオリンを入れたければバイオリン奏者をゲストに呼んだり、ハイトーンが得意なボーカリストを呼んだり、曲によって自在に変えられるので活動の幅が広がりましたね。

――楽曲制作においても幅が生まれるんですね。いろんなミュージシャンやボーカリストが入れ替わり立ち替わりバンドに参加する中で、どうやってFATE GEARらしさを保っているんですか?

Mina隊長:お客さんが言うには私が書く曲はゲームっぽいみたいで、あとはスチームパンク的なビジュアルもそうだし、そういうところで世界観が保たれているんだと思います。

――では、FATE GEARを知らない人にFATE GEARのサウンドを説明するとしたら?

Mina隊長:ゲームサウンドっぽいメロディアスなメタル。アニソンぽいって言われることもあります。

――普段の楽曲制作やビジュアル面ではどういうところからインスピレーションを受けているんですか?

Mina隊長:2ndアルバム『OZ -Rebellion-』は劇団さんのストーリーを基に曲を書いた作品なんですけど、歌詞の題材があったことでわりと書きやすかったんですよ。そこで、「もしかしたら、ゼロから書くよりも基になるストーリーがあるほうが書きやすいんじゃないか」と気づきはじめて、最新作の『The Sky Prison』では先に自分でシナリオを書いて、それを基に曲を書いてみたんですよ。そうしたら曲が浮かびやすくて、これもゲームとかアニメが好きだからこそなのかなと。

――物語のサウンドトラックをつくる感覚?

Mina隊長:ああ、そういうイメージです。

――意外とアニメの劇伴もやれそうですね。

Mina隊長:案外できるかも(笑)。

――今の話にも出たアルバム『The Sky Prison』からシングルカットという形で『Battle Against Justice』をリリースしますが、この経緯は?

Mina隊長:FATE GEARは海外ツアーをやっていることもあって、海外からも『The Sky Prison』に対する反響があったんですけど、海外のメタラーって激しい曲が好きなのかこの曲が特に人気で、早く新しいミュージックビデオが観たいというリクエストが海外からあったんですね。そこで、海外のファンはYouTubeを中心に情報を集めていると思うので、彼らのためにここで新しいミュージックビデオを出してあげられないかなと。なので、ミュージックビデオを作るために出すシングルって感じかもしれないですね(笑)。

――FATE GEARは映像にも力を入れているんですね。

Mina隊長:YouTube中心の時代になってきたと自分でも最近感じ始めていて、音楽だけじゃなく、映像もセットにして表現していくことがますます求められていると思うので、これからは映像にも力を入れていくつもりです。

――スチームパンクという人の目を引くコンセプトも今の時代に合っているのかもしれないですね。

Mina隊長:もともとはそういうファッションが好きというだけだったんですけど、そこを評価してくれる人も海外にはいっぱいいますね。ビジュアル系を聴いてるような女の子とか、スチームパンクな格好をした女性も来てくれたり。

▲「Battle Against Justice」

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海外活動で培ったスキル「総合的に成長できたと思います」

――海外での活動は最初から視野にあったんですか?

Mina隊長:前のバンドで一度だけアメリカに行ったことがあったので、「FATE GEARでももう一回行けないかな?」とぼんやりとは考えていたんですけど、まさかアメリカよりも先にヨーロッパツアーをすることになるとは想像していませんでした。

――初のヨーロッパツアーは2019年ですよね。どんな経緯で実現したんですか?

Mina隊長:2018年に【Evoken Fest】という海外のメタルバンドを集めたフェスが東京と大阪であって、その大阪公演のオープニングアクトとして出演したことがあったんです。それが直接のきっかけになったのかはわからないんですけど、そのフェスのあとに「海外でツアーをやってみないか」というお話がきました。

――初めてのヨーロッパツアーは16日間で12公演を行うというなかなかハードな内容で。でも、かなり過酷で大変だったのかと思いきや、楽しかったそうですね。

Mina隊長:過酷ではありました。日本だと各ライブハウスに機材が全部きれいにセッテイングされてるじゃないですか。でも、海外のライブハウスはアンプからドラムセットから全部自分たちで組まないといけないんですよ。なので体力的には厳しかったですけど、向こうの人たちと交流してライブをやって、精神的にはすごく楽しかったですね。

――去年行われた2度目のヨーロッパツアーはコロナ禍ギリギリで。

Mina隊長:本当にそうだったんですよ。ツアーを終えて3月3日ぐらいにフランスから帰ってきたんですけど、あと2週間帰国が遅くなってたら空港で隔離されてたでしょうね(笑)。

――このツアーはどうでしたか?

Mina隊長:向こうのツアーって本当に時間がなくて常にギリギリのスケジュールで行動するので、最初のツアーは下手したらご飯も食べられないんじゃないかっていうぐらい大変だったんですけど、このツアーでは時間の使い方もうまくなって、準備の流れもわかっていたし、お客さんの数も増えて、総合的に成長できたと思います。

▲「Scars in my Life」

――精神的にタフになりますよね。ライブにもポジティブな影響があったんじゃないですか?

Mina隊長:そうですね。ツアースタッフは最初のツアーと同じ人だったんですけど、「前よりもよくなったね」と言ってくれたので、それが自然と演奏や立ち姿にも出ていたんじゃないかと思います。

――ロンドン公演はUnderworldでやったそうで。

Mina隊長:Underworldはメタルやパンクの聖地で、入り口には有名なバンドの写真が飾ってあるし、楽屋にも有名なバンドのステッカーがベタベタ貼ってあって、自分たちのステッカーを持ってきてなかったことを後悔しましたね(笑)。ロンドンでのライブは2回目だったので、前回来てくれたお客さんがまた来てくれたり、色々と感慨深いライブでした。

――『The Sky Prison』に収録されている「The Sky Pirates」は、海外のリスナーから「日本は既存のメタルのイメージから抜け出せないのか」と言われたことをきっかけに書いたそうですね。

Mina隊長:はい、以前公開していたミュージックビデオのコメントで「日本人のメタルは速い曲が多いし、速弾きとツーバスばかり」と書かれて最初はスルーしようとしたんですけど、「確かにそうだよな」って自分でも思っちゃったんですよね(笑)。日本ではX JAPANが人気でそのフォロワーがたくさん出てきましたけど、これ以上同じようなスタイルのバンド……速くてハイトーンボイスのメタルバンドが増え続けても聴いてもらえないんじゃないかって自分でも思っていたんですね。なのでその意見を受け入れて、わざとミドルテンポにして、速弾きせずに歌いやすいメロで勝負したんです。

▲「The Sky Pirates」

――ネガティブなコメントではあったけど、思い当たるフシがあったという。

Mina隊長:でも、日本人のメタルが世界で認知され始めたからこそそういうことを言われたんだと思います。

――楽曲に対する反応はどうでしたか?

Mina隊長:意外だっていう反応もあったし、単純に曲が気に入ったという人もいました。あと、歌詞を半分英語にしたので、「歌詞が理解できて感動した」っていう海外からのコメントもありましたね。

――FATE GEARとしては、国内と海外のどちらを意識しているんですか?

Mina隊長:両方と言えば両方ですね。「The Sky Prison」は半分日本語、半分英語で歌詞を書いてるので。でも、今回のシングルに関しては完全に海外からのリクエストに応えた形です。

――今後、どんな活動を計画していますか?

Mina隊長:なかなか予定を立てづらい時期ですけど、コロナが明けたらヨーロッパにもう一回行きたいし、今、海外のブッキングエージェントと契約しているんですけど、その会社からオーストラリアとアメリカに行ってみるのはどうかと言われているので、そこは攻めてみたいですね。コロナ禍をきっかけに、インターネットを通じて日本のメタルの認知度が上がっている気がするんですよね。家に引きこもってインターネットでいろんな音楽をディグっているうちにFATE GEARにたどり着いたという人がたくさんいるんですよ。だから、コロナが明けたときに日本のバンドがどんどんツアーに行けたらいいですね。

――海外のガールズメタルバンドもチェックしたりしているんですか?

Mina隊長:チェックしてはいますけど、そもそもの数が少ないのであまり新しいバンドは見つけられてないですね。

――日本の状況が異常なのか。

Mina隊長:日本はライブハウスの環境が整っているからやりやすいというのはかなりあると思います。

――この先、シーンをさらに盛り上げるためにはどうしたらいいと思いますか?

Mina隊長:ガールズメタルは日本独自のものになりつつあって、インターネットを通じて世界にも知られはじめているので、私たちのようなバンドを見て海外の女子たちにも「自分たちにもできるんじゃないか」と思ってもらえたらいいですね。なので、まずは日本のバンドが頑張っていけたらいいなと思っています。

――ところで、このコロナ禍でどうやってモチベーションを保っているんですか?

Mina隊長:ミュージックビデオを作るのもモチベーションのひとつになってますし、自分でも映像編集を始めたんですよ、「弾いてみた動画」みたいな。今回のシングルのカップリングになっている「Super Sonic Samurai」の動画も作る予定です。iPadを使って自分たちで撮影して、私が編集して発表しようかなって。そうやって家でできることでモチベーションを保ってる感じですね。

――自分にできることを見つけていくという。

Mina隊長:自分で何かをつくることがもともと好きなんですよ。絵を描くのも好きだし、デザインも副業でやってるので、映像に関しても「じゃあ、やってみよう」っていう軽いノリというか(笑)。

――このままいったらなんでも自分でできちゃいそうですね。

Mina隊長:そうですね。けっこうそういうタイプなのかもしれません(笑)。

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