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<インタビュー>yonkeyが語る成長の実感 新曲は足立佳奈をフィーチャー



インタビュー

 中田ヤスタカ、きゃりーぱみゅぱみゅなどを擁するアソビシステムのオーディションで発掘され、2019年7月に1stシングル「ダウナーラブ (feat. AAAMYYY)」でデビューした1997年生まれの音楽プロデューサー、yonkey。その後、「Haunter (feat. Ace Hashimoto)」「タイムトリップ(feat.さなり)」をリリースし、『ルパン三世』のリミックス企画『LUPIN THE THIRD JAM』に参加、88Risingからデビューを果たしたATARASHII GAKKO!!(新しい学校のリーダーズ)のデビュー曲「NAINAINAI」の楽曲プロデュースを行うなど、活動の幅を広げ続けている。

 エレクトロ、ヒップホップを軸にしたジャンルレスな音楽性、普遍的なソングライティングと斬新なトラックメイクを共存させた作風で注目を集めるyonkeyの新曲は、「飛ぶ、サイハテ。(feat.足立佳奈)」。サンライズ×アソビシステムによるオリジナルアニメーション『Artiswitch(アーティスウィッチ)』の主題歌として制作されたこの曲について、yonkey自身に語ってもらった。

時代背景を意識しながら音作り

――『ルパン三世』のリミックス企画、ATARASII GAKKO!!の楽曲プロデュースなど、活躍の場が広がっていますね。

ジャンルを問わず、色々な方面のリミックスやプロデュースを頼まれることが増えました。そのたびに(依頼された仕事の)ジャンルの研究をして、それが力になっている感覚はありますね。今まではエレクトロ系のトラックが多かったけど、 ATARASII GAKKO!!の「NAINAINAI」のときはクラシックなヒップホップの手法を用いて、サンプリングでビート構築したり。



【ルパン三世Remix】THEME FROM LUPIN III 2015(ンパッパラッパー) - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by yonkey[ルパン三世のテーマ]




ATARASHII GAKKO! - NAINAINAI (Official Video)


――オファーが増えることで、作風の幅も広がる?

そうですね。ヒップホップの歴史も勉強してみたんですよ。N.W.A(ドクター・ドレー、アイス・キューブなどが所属したヒップホップ・クルー)のドキュメントやエミネムの「8 Mile」とか。ブレイクビーツがどうやって生まれたのかとか、当時の楽曲に使われているシンセの研究もして、時代背景を意識しながら音をチョイスできるようになったというか。

――時代の音ってありますからね。00年代のオーバーグランドのヒップホップで、TRITON(KORGのシンセサイザー)のプリセットの音が多用されていたり。

今のトラップのシーンでも808(ローランドのドラムマシン“TR-808”)が活躍してますからね。あとは80年代のプリンスが使っていたドラムマシンの音だったり……。シンセやドラムマシンの実機をモデリングしたソフトを集めて、少しずつ自分の曲にも取り入れるんですよ。「この音がカッコいい」という感覚だけではなくて、時代背景や歴史を知ったうえで、「このビートにこのシンセの音を入れてみよう」とか、意味のあるチョイスや組み合わせができるようになったというか。

――素晴らしい。去年から今年にかけてライブやイベントが激減しましたが、その時間を活かしてトラックメイカー、プロデューサーとして進化したというか。

9割くらいは自宅作業ですからね(笑)。 Klang Ruler(yonkeyがフロントマンを務めるバンド)のライブも一切なくなって、活動が自宅で完結できるものばかりになって。家で音楽に触れる時間が増えたからといって、いい作品が作れるわけじゃないんだなと思いました(笑)。




――リアルな交流も大事だと?

はい。SNSではかなりやり取りしてましたけど、それだけではなくてライブの対バン相手だったり友達と話をして、そのなかで刺激を受けることも多かったんだなと。それが全部なくなって、一人で考える時間が増えたので、「これからどうやって活動していこう」と悩んだ時期もありました。今は自分のトラックメイクの能力、プロデュースのセンスを伸ばしていきたいと思ってるし、そのために準備しているところですね。


『Artiswitch』から受けた新鮮なインスピレーション

――では、新曲「飛ぶ、サイハテ。(feat.足立佳奈)」について。サンライズ×アソビシステムによるオリジナルアニメーション『Artiswitch(アーティスウィッチ)』の主題歌として制作された楽曲ですが、ポップスとしての強度がすごく高い楽曲だなと。

ありがとうございます。まさにそういう楽曲を作りたいと思っていたんですよ。ふだんはトラックメイク主導で、パソコンで作ることが多いんですが、「飛ぶ、サイハテ。」は家にあるピアノを弾いて、iPhoneのボイスメモでずっと録音しながら、いいなと思ったコードやメロディを組み立てて楽曲の基礎にしました。本当にいい曲って、サウンドやトラックを取っ払ってもやっぱりいいんですよね。ビートルズの「レット・イット・ビー」もそうですけど、ピアノと歌だけでも成立する曲にしたくて。

――たしかに素晴らしいメロディだと思います。普遍的なポップスの手触りがあるというか。

だいぶボツにしましたけどね(笑)。曲を聴いたときにメロディが頭に残るようにしたかったし、「これはグッとくる」と思えるものができるまでずっとやっていたので。



yonkey - 飛ぶ、サイハテ。(feat. 足立佳奈) [Official Music Video]


――ちなみにピアノの素養はどうやって身につけたんですか?

3、4歳までクラシックピアノをやっていたんですけど、理論を学んだのは19歳くらいの頃ですね。通っていた学校で楽典をしっかりやって、どういう仕組みで曲が成り立っているのかを学んで。ずっと楽譜を追っていたので、コードの概念も知らなかったんですけど、そのときにメロディとコードの親和性なども勉強しました。実際に曲を作るときは理論を取っ払って、何が感情にいちばん訴えるかを意識してますね。

――なるほど。歌詞については?

アニメの脚本を読ませてもらって、イメージを掴んでから書き始めました。言葉数をしっかり決めて、Aメロ、Bメロの歌詞のリンクなども考えて。時制や場所、曲の主人公がどこで何をしているかもしっかり伝わる歌詞にしたかったから、助詞の使い方も細かく意識して。パズルみたいな感じでした(笑)。

――すごい! 専業の作詞家のような作り方ですね。

最近、作詞のこともすごく考えているんですよ。阿久悠さんの『作詞入門』を読んでいるんですけど、阿久さんも言葉数をあらかじめ決めて、そこにフレーズを当てはめていたみたいで。言葉の響きもいいし、意味も深いし、マジで芸術だなと思いながら、ピンクレディーの曲を聴いたりしてます。

――yonkeyさんがピンクレディーを聴いてるってめちゃくちゃ興味深いです。軽快なエレクトロのテイストと生楽器の音色を共存させたトラックメイクも印象的でした。

メロディと歌詞をしっかりハメてから、どういうサウンドがいいか考えたんですよ。『Artiswitch』は原宿を舞台にしたアニメなんですけど、ファンタジーの要素もあって。エレクトロを基本にしつつ、オルゴールの音を入れたり、自分らしい音選びができたと思っています。ドラムのサウンドはいつもと違うんですよ。普段はもっとパキッとした音をチョイスすることが多いんですけど、「飛ぶ、サイハテ。」は生ドラムをサンプリングしていて。それもアニメの世界観を意識したセレクトですね。




――『Artiswitch』のストーリーや世界に沿うことで、これまでになかった楽曲に結びついた。

そうですね。作品からインスピレーションを受けて曲を作ること自体が新鮮だったし、すごくいいなと。書き下ろしにはまたチャレンジしたいです。


ジャンル関係なく「良い音楽ならそれでよし」

――そして、シンガーには足立佳奈さんをフィーチャー。この組み合わせも意外でした。

足立さんの曲は以前から聴いていて、「この楽曲には、足立さんの声が合う!」と思ってオファーさせていただきました。お会いするのは初めてだったんですけど、めちゃくちゃ気さくな方で。レコ―ディングの現場には関係者の方もいて、真剣なムードもありつつ、足立さんのおかげで和やかな雰囲気にしてもらって(笑)。歌声は想像以上でしたね。素晴らしかったです。

――もちろんyonkeyさんがディレクションを行ったんですよね?

僭越ながら(笑)。楽曲のセクションごとに歌い方をディレクションさせてもらったんですけど、理解度も高いし、こちらの意見に対して想像以上のものを出してくれて。もちろんこちらもリサーチしてるし、ポテンシャルを感じているからお願いしているんですけど、自分のイメージを超えて「そう来たか!」と感じられる瞬間があるんですよ。プロデュースの楽しさであり、やりがいなんですよね。

――『Artiswitch』の映像と「飛ぶ、サイハテ。」が融合したときの印象はどうでした?

本当に素晴らしくて、感動しました。自分たちの楽曲がアニメーションと一緒になっていることにワクワクしたし、今までに味わったことがない感覚だなと。観てくれた人も「いい」と言ってくれているし、時間をかけて作って良かったなと思いましたね。



『Artiswitch(アーティスウィッチ)』 アニメーションPV


――『Artiswich』にはyonkeyさんのほか、Hakubi、長谷川白紙、Moe Shop、TORIENA、諭吉佳作/menなどが楽曲を提供。新世代のアーティストが集結した、音楽ファンも大注目のプロジェクトになっています。

長谷川白紙とMoe Shopは同世代だし、一緒にプロジェクトに参加できるのは嬉しいですね。1話ごとに違うアーティストが挿入歌を提供して、曲のテイストにアニメーションが沿っていて。そういう作品は観たことがないし、すごく新鮮ですね。

――ここ数年、新しい価値観やスタイルを持ったアーティストが続々と登場していて。この世代で新たなシーンを作りたいという気持ちもありますか?

すごく思ってますね、それは。お互いに「もっといい音楽を作りたい」と思っているし、DMでやりとしながら曲に対してリアクションを送り合っているんですよ。殻にこもらず、アーティストしてリスペクトできてるのはすごくいいいなと思います。ジャンルは関係なく、「良い音楽ならそれでよし」みたいな感じなんですよ、みんな。僕自身もジャンルはまったく気にしてないし、自分の周りも「今はラップをやっているけど、それがすべではない」というタイプが多くて。“ジャンルを超える”という表現がありますけど、そもそも超えるものでもないというか(笑)。サブスクが浸透してすべてが手元にあるのも大きいと思いますね。

――J-POPのど真ん中で活動している足立佳奈さんとのコラボにも、ジャンルにこだわらない姿勢が出ているのかも。yonkeyさん、J-POPは聴いてました?

めちゃくちゃ好きですよ! 小学校のとき、GReeeeNの「キセキ」が流行って、給食の時間にも毎日のように流れていたし、クラス全員が知っていて。音楽の知識がついてから聴いてみたら、もっと良く聴こえるんですよね。アレンジには時代の雰囲気が出てるんですけど、メロディや歌詞は本当に素晴らしいし、今聴いてもグッとくる。「後世に残る曲って、こういうことだよな」と思うし、自分もそういう曲を作りたいですね。




――最後に今後の活動について聞かせてください。現在はKlang Rulerの新作に取り掛かっているそうですね。

そうなんです。当たり前ですけど、バンドの曲の作り方はソロとは全然違っていて。去年からずっと一人で作っていたんですけど、最近はバンドのメンバーとセッションしながら制作していて、それがすごく新鮮なんです。自分からは出てこないフレーズもどんどん出てくるし、作るペースも早いんですよね。いいものができている手ごたえもあるので嬉しいですね。今年中にはバンドとしてもいい報告ができそうなので、楽しみにしておいて欲しいです。yonkeyとしては、Shin Sakiuraさんや80KIDZさんのリミックスを手がけていて。ソロとバンドをバランスよくやっていけるのが一番いいのかなと思ってますね。

Text&Interview by 森朋之
Photo by Yuma Totsuka

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