Special
【ビルボード 2021年上半期インタビュー】YOASOBIの二人が振り返る「夜に駆ける」以降の歩み「核の部分に触れてほしくて」
Billboard JAPANの2021年上半期チャートが発表され、YOASOBIがトップ・アーティスト・チャート“TOP Artists”の総合首位に輝いた。デビュー曲「夜に駆ける」のヒット以降、より多くの人に対して”YOASOBIとは何者なのか“を伝えるべく、自分たちの「核の部分」を知ってもらうべく、EPのリリースやオンラインライブの開催など、去年以上にチャレンジングな姿勢で駆け抜けてきたこの半年間について、二人に話を訊いた。
ーーYOASOBIがBillboard JAPANの2021年上半期トップ・アーティスト・チャート“TOP Artists”の首位となりました。特定のヒット曲だけでなく、たくさんの作品がチャートで好成績を収めた結果として、アーティスト単位のランキングも上昇した形になります。まずは率直な感想をお聞かせください。
Ayase:めちゃくちゃ嬉しいです。自分たちとしても色々なチャートを追いかけていくなかで、YOASOBIの名前がランキング内に複数ある場面を見かけていて。もちろん先導してくれたのは「夜に駆ける」なんですけど、それ以外の過去の曲も、自分たちですら驚きのタイミングで何かのチャートに入ったりしていたので、色んな層の方に聴いていただけているんだろうなっていうのは、わりと肌感覚でも実感しています。
ikura:ちょうど去年の今頃は「夜に駆ける」が色んなチャートに入り始めた時期だったんですよね。それから1年間、たくさんのシングルをリリースしてきて、「夜に駆ける」に引っ張ってきてもらった私たちも、少しずつYOASOBIとして認知してもらえるようになってきたのかなって、そんなふうにこの1年間の歩みをすごく感じます。
▲ 「夜に駆ける」MV / YOASOBI
ーーお二人が“YOASOBIとしての認知”を実感し始めたのはいつ頃からですか?
Ayase:やっぱり『NHK紅白歌合戦』に初出場させていただいたことは大きかったのかなって。そこを皮切りに色んなTV番組に出させていただけるようになったし、自分たちも本格的にメディアという場所にどんどん出ていこうという気持ちが出てきたので。やっぱり2020年は楽曲が先行していて、YOASOBIがどんなアーティストなのかを知らない方も多かっただろうし、それは僕らも分かっていたので、だからこそ2021年は僕らの本質というか、YOASOBIの核の部分に触れてほしくて、そこを知ってもらうための活動も頑張っていこうというのが一つの目標としてありました。そういう意味でもこの上半期、いいスタートダッシュが切れたなって思いますね。
ikura:去年はずっとシングルを1曲ずつ出していたので、1月に1st EP『THE BOOK』をリリースしたことで、ほかの色んな曲を聴いてみようと思ってくれた方が増えたんじゃないかなって思います。
Ayase:僕、YOASOBIとしてリリースしてきた曲って、あまり自分で聴き返したりすることはないんですけど、適当にプレイリストで音楽を流しているときに、ふと自分たちの曲がかかったりすると、「うわ、けっこういい曲だな」って(笑)。それで「ついでにほかの曲も聴くか」ってテンションになったりするんですけど、そこからEPに移動して、収録されている曲をざーっと聴けるから、みなさんもこういう感じで聴いてくれているんだろうなって、リスナーの立場でも感じたりしましたね。
ーー2月にはオンラインライブ【KEEP OUT THEATER】も開催されました。
Ayase:準備自体は去年の秋頃からやっていたので、やっぱりバンドのチーム感も強まったし、関わってくださるスタッフさんも多くなりました。なので、この半年間はYOASOBIにとって、色んな世界が広がった期間であり、手を貸してくれる仲間がたくさん増えた期間でもありました。僕ら二人もポジティブな意味での責任感を強く実感した半年間でした。
ーーライブにおいては発見や気づきも多かった?
ikura:発見と気づきしかなかったです(笑)。二人ともソロでずっと活動してきましたけど、YOASOBIにとっての初ライブはやっぱりすべてのことが新しくて。一つの目標に向けてバンドのみんなやスタッフの方々と一緒に高め合う時間も、やっぱりライブならではの醍醐味だなって思いました。
Ayase:YOASOBIは楽曲制作もほとんどリモートでやれるし、もちろん裏にどんなシステムがあって、どんなスタッフさんがサポートしてくれているか、なんとなく分かってはいるけど、実際にその現場を見ているわけではないんですよね。でも、ライブはそこにスタッフさんがたくさんいるし、オフラインの環境で大きいことをすることがYOASOBIでは初めてだったので、こういう周囲のサポートがあるからこそ地に足をつけてやれているんだなっていう実感に繋がったというか。
ーーYOASOBIとしての活動もどんどん活性化していきましたが、一方で個人での活動も広がっていきましたよね。特に印象深い思い出があれば教えてください。
ikura:ソロ名義の“幾田りら”として新曲「Answer」を3月にリリースしたんですけど、たくさんの方にYOASOBIのikuraとして認知していただけるようになった中で、一人のシンガー・ソングライターとしてもオリジナル作品を出せたことは大きかったです。あと、松本隆さんのトリビュート・アルバムに参加させていただいたり、カバー曲を歌わせていただく機会も増えたんですけど、誰かが作った曲を自分の歌声でどう表現するかということについては、YOASOBIの活動で日々学んでいるので、その経験が生かされているなって感じる部分はありますね。
▲ 「Answer」
Ayase:僕は色んなアーティストさんに楽曲提供させていただいて、今年もリリースされた曲がいくつかあるんですけど、実はほとんど去年に制作したもので。最近いただいたご依頼もあるんですけど、今年に入ってからはYOASOBIの制作が忙しすぎて(笑)。同室にスタッフさんがいるので、あまり言うとクレームみたいになっちゃいますけど…(笑)。でも、去年は楽曲提供のお話をいただくとき、YOASOBIのイメージに寄った楽曲をオファーいただくことが多かったんですけど、最近は一人の作曲者として求めていただいているなって感じる機会が増えたように思います。
ーーこれは昨年の年間チャートのインタビューでもお聞きしましたが、お二人の“心のヒット・チャート”があるとして、今年の上半期の首位を選ぶとしたら何でしょう? ちなみに前回はAyaseさんがBTS「Dynamite」、ikuraさんがデミ・ロヴァート「ウォーリアー」でした。
Ayase:最近はダニエル・パウターの「バッド・デイ」をよく聴いてます。曲自体はずっと知ってましたけど、あるとき友達に歌詞がすごくいいんだと言われて、それで改めてちゃんと読んでみたら、すごく素敵な曲だなって。あとは、仲の良いボカロPにツミキっていう人がいて、彼が今年2月に『SAKKAC CRAFT』っていうアルバムを出したんですけど、最近の移動中はそれしか聴いてないぐらいです、本当に(笑)。シンプルにメロディが良くて、リズム感も気持ちいいんですよ。
ikura:私が最近、とても勇気をもらったというか、心を強く持っていようと思わせられたのが、米津玄師さんの「ピースサイン」です。昔からこの曲は好きだったんですけど、ちょっとイヤなことが重なった時期にたまたまサブスクで流れてきて、久しぶりにじっくり聴いてみたら、本当に元気をもらえまして。これぐらいの人生を転がすようなスピード感で自分も走っていけたらいいなって思わせてくれた曲です。
▲「バッド・デイ」MV
▲「ピースサイン」MV
ーーお仕事で忙しい日々だったかとは思いますが、プライベートの時間はどのように過ごしていましたか?
Ayase:僕は赤ワインにハマりましたね。友達に詳しい人がいて、それぞれの歴史とか相性のいい食べ物とか、そういうことを教えてもらって、家でワインとそれに合うご飯を作って食べる、っていうのがめっちゃ楽しくて。でも、これけっこうお金がかかるんですよね(笑)。それに僕、ビール党でもあるので、お仕事が終わったらまずビールを飲むんですけど、飲むスピードが遅くてなかなかワインまでたどり着けない(笑)。これはちょっとした悩みですね。
ーーikuraさんはいかがですか?
ikura:4月には大学が再開したので1年ぶりに会う友人がいたり、緊急事態宣言が出る前には久しぶりに高校時代の同級生に会ったり、それこそバンドのメンバーのみんなとも紅白以降はよく会っていたので、この半年間は周りの人と「最近どう?」みたいな話をすること多かったですし、それによって自分のことを見つめ直す時間もすごく増えました。去年はあまりに人と関わる時間が少なかったので、今年に入ってからは友人の誕生日を盛大に祝ってあげたりとか、そういう愛のある時間を過ごしていました。
ーー大学生としてはキャンパスライフも満喫したいですもんね。
ikura:そうですね。仲の良い友人とお昼ご飯を食べたり、そういう当たり前のことがすごく幸せに感じます。お仕事と家を行き来するだけの生活だと、どうしても気持ちが内向きなってしまいがちなので。
ーーでは最後に、今後の展望や目標をお聞かせください。
Ayase:まず冒頭にお話しした、YOASOBIの核に触れてもらうための活動については、今後もちゃんと続けていきたいなって思いますね。あと、一人のクリエーターとしては最近、今までやったことのない手法を試してみたり、あまり触れたことのない音楽からインスパイアされてみたり、そういうチャレンジがすごく楽しく感じられているし、そもそもYOASOBIってジャンルとかにとらわれず、色んなことをやれることが持ち味のユニットなので、その幅を自分自身の力でもさらに広げていけたらいいなって思っています。
ikura:YOASOBIがこの二人であることをもっと知ってもらいたいという、2021年に入ってからの目標が今回の“TOP Artists”の1位にも繋がっていると思うので、私もそれは引き続き目標として掲げていきたいです。あとは、ライブという場面でYOASOBIがどこまでできるのか、みたいなことは考えていて、そのために自分自身、もっともっと歌を追及して、やっぱりYOASOBIっていいなと思ってもらえるようなパフォーマンスができるようになりたいと思っています。
関連商品