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<インタビュー>TikTokでも大人気!注目ラッパー24kGoldnが語る全米8週No.1ヒット曲「ムード」と1stアルバムができるまで



24kGoldnインタビュー

 西海岸ベイエリア出身、現在20歳の24kGoldn(読み:トゥエンティー・フォー・ケー・ゴールデン)の待望の1stアルバム『エル・ドラド』が配信スタートした。TikTokでもおなじみの「ムード feat. イアン・ディオール」や最新シングル「3, 2, 1」など、巷を賑わせたトラックが勢ぞろいの本作には、ダベイビーやフューチャー、スウェイ・リーといった、これまた豪華なゲストが参加し、新世代を代表する注目ラッパーのデビューを彩る。コロナ禍で掴んだ成功の裏側や、音楽制作のプロセス、そして初めての日本体験など、様々なトピックに応えてくれた24kGoldnのインタビューをお届け。インタビュアーはR&B、ヒップホップ、レゲエ専門に詳しい音楽ライターの池城美菜子氏だ。

 24Kは、純度100%の純金を意味する。金相場はコロナ禍で爆上がりしたあとに急落したけれど、「純金」を意味する名前でアメリカの自主隔離期間中に大ヒットを放ち、そのまま上昇気流に乗ったラッパーがいる。24kGoldnだ。昨年の夏、イアン・ディオールを招いた「ムード」が全米ビルボードのシングル・チャート1位に上り詰め、累計8週間もキープ。20才のラッパーが「どうしてそんなにご機嫌斜めなの、こっちまで気分が悪くなるよ」と掛け合った曲が、人の行き来が途絶えた分、身近な人の機嫌に影響を受けやすい状況にストレートに響いた。肩書きはラッパーだが、2019年のEP『ドロップド・アウタ・カレッジ』からのスマッシュヒット「シティ・オブ・エンジェルス」はロックの要素が強く、歌も上手いマルチ・タレントである。デビュー・アルバム『エル・ドラド』を完成させ、ロサンゼルスに自宅にいた本人にZoomで取材した。

――写真より実物のほうがずっとカッコいいですね。

24kGoldn:え、ほんと? これ、めっちゃフィルターかけてるから。

――そんなことできるんですか?

24kGoldn:冗談だよ(笑)。

――『エル・ドラド』を一足先に聴きました。ヴァーサタイル(多面的)な仕上がりで、すばらしいです。ここ2年で、自身にとって最大の変化はなんだと思いますか?

24kGoldn:音楽的にすごく成長したことかな。クレイジーなくらいだよ。EPをリリースしたのは19歳になったばかりで、「俺って最高!」って気分はあったけど、様々なジャンルの音楽のまとめ方がわかっていなかった。いまは、それらを混ぜてゴールデンらしい、ユニークな音楽……ただのラップの曲、ロック、ポップの曲ではない音楽を作れるようになった。

――そのやり方は自分で身につけたのでしょうか? それとも、一緒に音を作るチームがいますか?

24kGoldn:もちろん、ひとりで全部できるわけではないよ。すごい才能があるプロデューサーたちと組んでいる。Kブリージー、オマー・フェディ、ニック・ ミラ(=インターネット・マネー)とか。音楽的な天才から、俺はいろいろ学んでるんだ。

――高校生の時に音楽活動を始めたんですよね? 2016年、ヒップホップ雑誌『XXL』のフレッシュマン・クラスの特集を見て、自分の目標にしたそうですね。

24kGoldn:あの特集自体は毎年、チェックしていたけど、2016年はとくにインパクトが大きかったんだよね。そこからキャリアを積んで、大物になった人が多かった珍しい年だったから。

――わずか4年での達成、おめでとうございます。2020年に選ばれたときは、どんな気持ちでしたか?

24kGoldn:嬉しかったよ! ずっと目標だったから「夢が叶った」って。あれに選ばれると、プロモーションの規模も変わるし。

――一緒に選ばれたリル・ティージェイやジャック・ハーロウは一緒に曲を作るなど親しいようですが。

24kGoldn:リル・ティージェイは「バレンチノ」のリミックスに参加してもらったけど、すごく親しい訳ではないかな。ジャック・ハーロウは仲が良いよ。彼がLAに来たり、俺がアトランタに行ったりした時は会うようにしている。すごく面白いやつなんだ。


――年上のアーティストより、年が近い人に刺激を受けますか?

24kGoldn:いや、同世代より年上の人のほうが影響されているかも。俺はラップ・ミュージックをやっているラッパーだけれど、参考にしている音楽は幅広いんだよね。(ラッパーで)影響を受けている最近の人となると、せいぜいドレイクやケンドリック(・ラマー)、カニエ(・ウェスト)といった2010年代に活躍した人たちになる。それから、最近はあまり知らなかったジャンルの昔の名曲からインスパイアされることが多いよ。

――『エル・ドラド』に収録されている「カンパニー」ではマイケル・ジャクソンの名前を出していますし、手に負えない女性を“ビリー・ジーン”と呼んでいます。あなたは2000年生まれですが、彼からどのような影響を受けていますか?

24kGoldn:俺は、マイケル・ジャクソンの音楽を聴いて育ったんだよ。『グレイテスト・ヒッツ』を聴いたり、DVDを見たりね。彼の音楽はもちろん最高だし、それを引き立てるダンスや衣装、ビデオの作り方も参考になる。

――「ムード」は、だれでも身に覚えのある気分のすれ違いを見事に描いています。世代を問わず共感できるテーマですが、あの曲はどうやって生まれたのでしょう?

24kGoldn:「ダンナの機嫌が悪くて、めんどくさいんだけど!」みたいなことってみんなあるでしょ(笑)? 結婚とか恋愛関係じゃなくても、友達や上司の機嫌が悪くてこっちの気分も害される、みたいな。そこまで考えて作ったわけじゃないけど、結果的に普遍的な曲に仕上がった。自主隔離期間中でみんな外出できなかったから、余計(ほかの人の機嫌に左右される状態に)共感してくれて、大ヒットしたんだと思う。


――イアン・ディオールはどういう経緯でフィーチャーしたのでしょう?

24kGoldn:イアンはたまたま、LAに引っ越してきたタイミングが近かったんだよね。大学に行くために俺が来た半年以内に彼もITの仕事をするために(テキサスから)出てきたんだ。で、スタジオでばったり出会ってすごく気が合って。俺の大学のパーティーや、寮にも遊びに来てくれた。お互い、成長して、前進しているのを見守っているような関係。

――中退するまで、大学はどれくらい通っていたのですか?

24kGoldn:1年。でも、実際は1学期間だけきちんと行って、2学期がひと月過ぎた頃は、大学や寮から追い出されないために1クラスだけ出席して、あとは全部行かなくなった。そのたった一つ出席したクラスのおかげで、日本に行けたんだ! 初めての海外旅行が東京だったんだよね。

――いつの話ですか?

24kGoldn:2019年の夏。別に、このインタビューが日本向けだから言っているんじゃなくて、東京は世界の中でも大好きな場所だ。なんか、未来にいるみたいで。

――ありがとうございます! どれくらいの期間に、何をしたのでしょう?

24kGoldn:1週間。もっと長く居たかったよ。日中はコカ・コーラやコストコ、トヨタを訪問して、日本でどんなふうにビジネスが展開されているか学んだ。夜は遊ぶ時間があって、ショッピングしたり、クラブに行ったりした。生まれて初めてのタトゥーも入れたよ。ほんと、楽しかった。

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 24kGoldnの本名は、ゴールデン・ランディス・ヴォン・ジョーンズ。ユダヤ系アメリカ人の母親と、アフリカ系アメリカ人の父親の両方が元モデルだそうだ。EP『ドロップド・アウタ・カレッジ』のリリース後に<コロンビア・レコーズ>と契約が決まったが、デビュー作もジャンルレスな彼の音楽性をより強めた作品だ。「こういう時期だからこそ、あえてシリアス過ぎない音楽を作りたかった」と話す通り、失恋や喪失感をテーマにしていても、メロディを重視した『エル・ドラド』から絶望は聴き取れない。24kGoldnは、等身大の痛みをそのまま分かち合う率直さ、リアルさが共感を呼ぶタイプのラッパーなのだ。

――デビュー作の客演は、フューチャーやダベイビー、スウェイ・リーと人選が的確だと思いました。ひとり、クレジットにない女性のアーティストがいました。

24kGoldn:あれはカーシュ・ペイジ。(ポスト・マローン主催の)【ポスティー・フェス】で会って、友達になった。


――客演のアーティストはどうやって決めたのでしょう?

24kGoldn:パンデミックの時期の制作だったから、その点は大変だったよ。フェスとかでばったり出会って、そこから話を進めるとか一切できなかったから。だから、わざわざアトランタに1週間くらい滞在したり。それで、マイク・ウィル(マイク・ウィル・メイド・イット)を通じて、スウェイ・リーを紹介してもらった。フューチャーは大好きだから、「カンパニー」は彼以外に考えられなかった。ダベイビーも「ココ」にはぴったりだったでしょ? 彼とは一緒にビデオを撮ったけど、すっごくクールな人だったよ。


――同世代のラッパーに比べて、あなたのリリックには「ハイになる」という描写がありません。その理由は?

24kGoldn:状況を映した、正直でリアルな曲を作るのは大事だけれど、どの曲でも似たような話をする必要はないと思う。ほかの人がふだん何をしようが、どんなライフスタイルで生きてようが、それは気にしない。ただ、俺は同じテーマ、同じサウンドを繰り返したくない。どの曲も似たトーンなのはダサいよ。だから、全部の曲で、視点や雰囲気を変える。

――デビュー・アルバムから日本のファンに解説を加えたい曲を選んでいただけますか?

24kGoldn:最初に解説したいのは「ザ・トップ」。頂点に上り詰めるのはすばらしいけれど、その一方で、新しいチャレンジや障害も出てくるって曲だ。あと、世界的なパンデミックの最中に大ヒットを飛ばしても、実感が沸かないって気持ちも入れた。俺の曲を知っている人は多いけど、俺自身はまだ知られてないから。一番、気に入っているのは、「ラヴ・オア・ラスト」かな。



――私も好きな曲です。あなたの歌唱力がよく出ていますよね。

24kGoldn:自分でも一番、よく書けていると思うんだよね。構成もうまく行ったし。あの曲は、木星と土星の大接近の時にレコーディングして(注:2020年5月)、なんかエネルギーもいい感じだし、曲もうまく行く気がしたんだ。

――時々出てくる、赤裸々な歌詞がおもしろいです。初めて「バレンチノ」を聞いた時、<君の裸を見たかっただけなんだよね>でぶっ飛ばされました。

24kGoldn:(爆笑)。ああいうのを書くのが、俺なんだよ。正直に言い過ぎて、トラブったりもする。


――歌詞を書くときは、どの程度自分の体験に基づいていますか? 周り人の経験、映画や本からアイディアを拾ったりもする?

24kGoldn:リリックの9割は自分の生活感情から出ているよ。ただ、ほかのアーティストと大きく違うのは、自分の経験をそのまま歌詞にはしないことかな。“金曜日の夜に女の子に出会ったんだ/その子にフラれてさ/レベッカっていうんだけど”みたいなリリックは絶対に書かない。失恋の曲を作るとしたら、自分の積み重ねた経験を思い起こして、その中心にある感情を曲にする。その感情こそがストーリーを牽引するんだ。そうすると、曲も整いつつ、リアルさを残せる。

――あなたの曲はTikTokで火がつくなど、ソーシャル・メディア(SNS)の使い方が上手な印象があります。自分なりの戦略ですか?

24kGoldn:自分の曲をソーシャル・メディアでプロモートしないなんて、怠け者か、無知のどちらかだよ。とくに、自主隔離期間中は、それをうまく使える人と、使えない人の差がはっきり出たよね。俺は高校で曲を作り始めてから、ずっと自分でデジタル・マーケティングをやってきた。だから、ほかのアーティストより上手だし、本音を言うと、ほとんどのマネージャーやレーベルより得意だと思う。だから、自主隔離期間が始まったとき、「さて、コンサートはできないけど、自分でコントロールできることに集中しよう」って頭を切り替えた。曲作りはできるし、その曲をソーシャル・メディアでプロモーションするのもできるなって。そうやって集中してできたのが「ムード」だ。

――2021年の予定を教えてください。日本には来てくれますか?

24kGoldn:行けるようになったら、すぐにでも行きたいよ! ステージでパフォーマンスするのが一番好きだ。レコーディングで曲を作るのも好きだし、インタビューやラジオ出演も楽しんでいるけど、ぜんぶステージで歌う準備だから。みんなの反応を見て、自分が与えられた影響の手応えを感じられるのは、ステージだから。

――最後に、言い残したことがあれば。

24kGoldn:日本の女の子、大好きだよ!

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