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<コラム>変幻自在の7マイク・フリースタイルグループBALLISTIK BOYZ~これまでの軌跡と最新シングル『Animal』レビュー
メンバー全員がマイクを握り、ダンスやアクロバットを繰り広げる、変幻自在の7マイク・フリースタイルグループ、BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE(以下、BALLISTIK BOYZ)。2019年5月にアルバム『BALLISTIK BOYZ』で鮮烈のデビューを飾り、グローバルな活動を続けてきた彼らが、今年2月3日、3rdシングル『Animal』をリリースした。2月1日にYouTubeで先行公開された『Animal』のミュージックビデオは、約3週間で100万回再生を突破(3月8日現在)。そのコメント欄には、これまでEXILE TRIBEに興味がなかったという新たなファンや、海外からのメッセージも多く寄せられている。今話題の『Animal』の魅力をBALLISTIK BOYZの歴史を踏まえて探っていこう。
Text:斉藤碧
『Animal』のサウンドプロデュースを手がけるのは、Chris Brown、Will.I.Am、Carly Rae Jepson といったアーティストへの楽曲提供で知られ、自身もアーティスト・DJとして活躍するプロデューサー、Cory Enemy。じつは『Animal』はリリースを前提にして制作されたのではなく、2018年にCoryが来日した際、セッションのようなノリで録っていたものが、満を持してリリースされたのだという。トラップビートとソリッドな音色のシンセサイザーが特徴的なR&Bナンバーとなっており、Cory Enemyが英語で綴った歌詞をもとに、R&BシンガーのJAY’EDが作詞。実際は英語と日本語を織り交ぜた歌詞なのだが、英語が堪能なJAY’EDとメンバー達のシームレスな表現により、まるで全編英詞のような印象となっている。2018年にレコーディングした際には、エフェクトをかけながら歌唱するなど、遊び心いっぱいに制作していたそうだが、時を経て、世界的に見ても質の高い楽曲として注目されることとなった。デビュー当初からBALLISTIK BOYZの楽曲制作に携わってきたJAY’EDを間に挟みつつも、新たなプロデューサーのもとで生み出された新曲は、以前から応援しているファンにも嬉しい驚きをくれたはずだ。だが、言語能力に長けているBALLISTIK BOYZだからこそ、個人的には、昨年3公演のみ開催された単独ライブツアー「BALLISTIK BOYZ LIVE TOUR 2020 ”BBZ”」で披露された全編英詞バージョンの『Animal』を聴いてみたい想いもある。もちろん、日本語ならではの語感のやキラーフレーズもあるが、英語詞のパートでは、ボーカル・ラップ共により流麗な歌い回しとなり、歌詞と曲が一体となって体に流れ込むような聞き心地の良さを感じるからだ。それに、そもそも、BALLISTIK BOYZは海外進出を前提として集められた実力派集団だ。これまでにも海外のトレンドを上手く乗りこなしながら、自分達らしい音楽を確立してきたし、2019年にはマレーシア、台湾、タイ、インドネシア、ベトナムでプロモーションツアーを行うなど、海外展開を視野に活動を行ってきた。では、<思うままに そう思うままに>という中毒性の高いフレーズが印象的な『Animal』は、他国語になったら、どんな響きを持つのか。どんなムーブメントを起こすのか。そんな展開を期待してしまう。
▲ BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE『Animal』
演技に初挑戦したMVも話題を呼んでいる。『Animal』の歌詞には、一線を越えられないもどかしい恋心や、本能が徐々に熱を帯びていく様が描かれており、そのエモーショナルな世界観をメンバーと女性モデルがペアを組んで熱演。普段はおっとりしている松井利樹が見せたクールな壁ドンや、留学先でも演技レッスンを受けていた砂田将宏のナチュラルなバックハグなど、7パターンの恋模様が楽曲を彩っている。白い衣装で統一したダンスシーンも、今までのアクロバットを駆使したダイナミックなパフォーマンスから一転、スタイリッシュでタイトな仕上がりに。振付は深堀未来・奥田力也・砂田将宏が担当し、要所にキャッチーなダンスを散りばめることで、セクシーに振り切りすぎない絶妙なバランスを実現した。それは歌詞に綴られた“理性と本能の狭間”を象徴しており、息を多く含んだ色気のある歌声とのギャップで、多くのリスナーを翻弄している。
カップリングには、ファンキーなパーティーチューン『Life Is Party』と、HIP HOPナンバー『HIGHWAY』、Jr.EXILEの楽曲として先行リリースされた『WAY TO THE GLORY』のBALLISTIK BOYZ ver.が収録されている。既発曲のリードトラックに通じるアップテンポの『Life Is Party』が、あえてカップリングであることも、今までのBALLISTIK BOYZとはひと味違うアプローチだが、目玉はやはり『HIGHWAY』だろう。ボーカルだけが歌唱している曲はこれまでにもあったが、ラップのみの楽曲がリリースされるのは、今回が初めて。しかも、普段から英語で作詞をしている奥田力也、ブラジル人の母を持ちポルトガル語を操る海沼流星、中国語検定4級を持つ松井利樹が、それぞれの言語を用いて書き下ろしたというから驚きだ。プロデュースユニットO.M.W<P-CHO(DOBERMAN INFINITY)、JAY'ED、NAOtheLAIZA>が手がけるトラックも、4ヵ国を融合したようなオリエンタルなムードのイントロで幕開け。ラップのスタイルも三者三様で、中毒性のあるソリッドな声質で心地よいグルーヴを届ける海沼流星、太く厚みのある低音で威厳を示す松井利樹、対照的な2人を繋ぐ奥田力也の耳馴染みのいい軽やかなフロウ……と、カラーの違いを見せつける。過去のライブや昨年の配信ライブ『LIVE×ONLINE』でも披露され、大好評だった楽曲だけに、まさにファン待望のリリースとなった。なお、こちらも『Animal』と同様、数年前に遊び心から作り始めた曲とのこと。制作当時の“ここから駆け上がっていく”意気込みを込めた歌詞には、<愛するFamilyならBBZ>というパンチラインが輝き、初心を思い出させる1曲となっている。
さて、ここからは、改めてBALLISTIK BOYZの軌跡を辿っていこう。
2018年に結成されたBALLISTIK BOYZは、EXILE TRIBE初の“メンバー全員が歌い踊るグループ”。結成当時は平均年齢18.8歳という若さも衝撃的だったが、彼らの経歴も目を見張るものがある。まず、深堀未来、奥田力也、砂田将宏は、2013年、当時15歳までの少年を対象に開催されたオーディション『GLOBAL JAPAN CHALLENGE』の合格者。グローバルな人材を育成する『PROJECT TARO』の一員としてアメリカ・ニューヨークに留学し、3年に渡って本場のエンタテインメントを学んだ。そして、2017年に開催された『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 5』のボーカル部門からは、『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 4』で一度挫折を味わいながらも、念願のアーティストデビューを勝ち取った日髙竜太と、ダンス歴わずか1年でBALLISTIK BOYZのメンバーとなった努力家の加納嘉将。同じく『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 5』のラップ部門からは、運動神経が抜群でポルトガル語も話せるブラジルとのハーフ、海沼流星。ダンサーとして九州大会や日本大会での優勝経験もある松井利樹という、ファイナリスト4人が集結した。
その音楽性は、HIP HOPを軸にしながらも、EDMやR&Bなどジャンルレス。メンバーの組み合わせや歌割のバランスによっても形を変える。複数人が歌うボーイズグループとなると、声だけでメンバーを特定するのが困難なこともあるが、BALLISTIK BOYZは初めて楽曲を聴いた人でも歌声の違いを感じ取れるほど、1人1人のキャラクターが際立っているのが魅力だ。そんな7人が強烈な個性を放ちながら次々に歌い繋ぐ姿は、まさに弾丸<BALLISTIK>が猛スピードで飛び交っているよう。音源がリスナーの脳内でアクロバティックな映像に自動変換されるという彼らの強みは、デビューアルバム『BALLISTIK BOYZ』のリードトラック『テンハネ -1000%-』でも存分に発揮されている。バイブス担当・海沼流星の挑発的なラップから始まるこの曲は、力強いビートが効いたアグレッシブなダンスチューン。華麗なマイクリレー、メンバー全員でのアクロバット、一糸乱れぬユニゾンダンスといった武器で、これでもか!と攻め立てる。新人らしからぬ完成度のパフォーマンスは高く評価され、デビュー年にはミュージックビデオの祭典『MTV VMAJ 2019』でRising Star Awardを受賞。『テンハネ -1000%-』はGENERATIONS白濱亜嵐が主演するドラマ『小説王』の主題歌にも起用された。
▲ BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE『テンハネ -1000%-』
一方で、同作にはラブソング『Crazy for your love』も収録されており、この曲の存在は今後の活動を語る上で重要な意味を持っている。というのも、『Crazy for your love』にはボーカル4人だけが参加しており、深堀未来の透明感のある甘い歌声や、大人びた最年少・砂田将宏が届ける等身大で誠実なメッセージ、日髙竜太のソウルフルなハイトーンボイス、歌唱力の高さに定評のある加納嘉将の豊かな表現力が、見事に調和。ここでの一歩を皮切りに、ボーカルのみで構成されたR&B調のドラマティックなラブソング『Strangers』(2ndシングル『ANTI-HERO'S』カップリング)や、ラップのみで構成されたHIP HOPナンバー『HIGHWAY』(3rdシングル『Animal』カップリング)へと広がりを見せていく。また、アルバム『BALLISTIK BOYZ』には“世界を目指して駆け上がっていく姿”を描いた楽曲を多く収録しており、だからこそ、“生意気で恐いもの知らずのBALLISTIK BOYZ”がふいに見せるピュアな恋心が、リスナーの心をくすぐる。近年は配信シングルやサブスクリプションサービスを通して、1曲単位で楽曲を届けることも多いが、彼らの場合は、初めからアルバムをリリースし、今の自分達の振り幅を最大限に見せたことが功を奏したと言えるだろう。
▲ BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE『Crazy for your love』
ちなみに、『テンハネ -1000%-』や『BLAST OFF』の作曲には、EXILE SHOKICHIが参加。『PASION』や『Make U a believer』に関しては、『Animal』の作詞を手がけるJAY’ED と、DOBERMAN INFINITYのP-CHO、NAOtheLAIZAによるプロデュースユニット“O.M.W”が作詞作曲を担当しており、当時から「いずれは自分達で作詞作曲をしたい」と意気込んでいたメンバー達にとって、アルバム制作は、先輩達のクリエイターとしての姿を間近に感じられる学びの時間でもあったようだ。複数のクリエイターが生み出した多彩なトラックに対して、作詞の多くをEXILE TRIBEの楽曲を多数手掛けるZERO(YVES&ADAMS)が担当していることも特筆すべきだろう。『テンハネ -1000%-』を始め、その後リリースされた『44RAIDERS』と『ANTI-HERO'S』、配信シングル『SUMMER HYPE』といったメイン曲の作詞をZERO(YVES&ADAMS)が1人で担うことで、BALLISTIK BOYZの基盤を創り上げ、メンバー達の意志の強さやグループとしての一体感を明確に打ち出してきた。その中で新たに発表されたのが、渾身の1曲『Animal』であり、“EXILE TRIBE”や“Jr.EXILE”といったイメージを越えて、彼らの本質を伝えるシングルが完成した。
『Animal』で世界水準のパフォーマンスを見せつけ、新境地を開拓したBALLISTIK BOYZ。だが、『Animal』の制作がそうであったように、彼らはすでにずっと先を見据えているはずだ。今後もたくさんの驚きをくれるであろう7人から目が離せない。
リリース情報
『Animal』
- 2021/2/3 RELEASE
<CD+DVD>
RZCD-77326/B 3,182円(tax out)
<CD>
RZCD-77327 1,364円(tax out)
https://avex.lnk.to/3rdAnimalSG23
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