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【TikTok年間楽曲ランキング2020】国境を越えるミームの拡散力/UGCを通じて飛躍した次世代クリエイターたち



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 全世界のダウンロード数が20億回(※)を超えるショートムービー・プラットフォーム『TikTok』が、再生回数や影響力などを総合的に判断して生成した2020年の年間楽曲ランキングを発表した。今回は総合、邦楽、洋楽の計3部門で、それぞれトップ20までのランキングを見ながら、今年1年間のトレンドを振り返る。

※センサータワー調べ

グローバルなミームの拡散力

 総合1位を獲得したのは、Vicetone & Tony Igyの楽曲「Astronomia」。もともとガーナの“Dancing Pallbearers”という、柩を担ぎながら踊るグループの動画で注目を集め、以前から代表的なインターネット・ミームのBGMとして知られていたが、コロナ禍においてバズが加速し、TikTokでも同曲を使ったユーモラスな動画が多く投稿された。当サイトで毎週発表している国内週間楽曲ランキング“TikTok HOT SONG Weekly Ranking”では一度もトップ20入りしなかった楽曲だが、その汎用性の高さから根強く人気を維持し、1年間の集計でトップに躍り出た形だ。



Coffin Dance (Official Music Video HD)





 続く2位は、Conkarah「Banana (feat. Shaggy)」が獲得。ジャマイカのレゲエ・アーティスト同士によるコラボ・ソングで、曲中のブレイクを合図に、サングラスや被り物を顔の動きだけで着用するチャレンジがミーム化。日本では“#サングラスずらしダンス”や“#サングラスチャレンジ”といったハッシュタグで広がった。これまで週間ランキングでは18回の首位を獲得しており、これは2019年12月にランキングを発表開始して以来、歴代最多の首位獲得回数となる。




 そして3位には、2019年の年間1位を獲得したDance Hits 2015「Gentleman」がエントリー。テキスト機能を使った“あるある動画”がミームとなった。そして4位には、ハッシュタグ・チャレンジ“#tobecontinued”でお馴染みのYes「Roundabout」、5位には、メイク動画のBGMとして定番化したMAMAMOO「HIP」が入っている。この通り、総合では洋楽が上位を席捲する形となったが、これは海外発のミームが日本でもインフルエンサーや著名人を経由することで広まり、そこで使用された海外の楽曲がランキングを上昇する、TikTokの定石ともいえるヒット・パターンが顕在化した結果といえるだろう。




 Put a Donk on It「The New Sweet Groove」は、2012年放送のTVアニメ『妖狐×僕SS』に登場するキャラクター、髏々宮カルタ(CV:花澤香菜)が歌うキャラクター・ソング「sweets parade」の海外版リミックス。きゃりーぱみゅぱみゅのダンス動画も話題となったが、日本のユーザーはもちろんのこと、徐々に海外のインフルエンサーからも人気を集め、年間ランキングでは総合12位、洋楽7位にエントリーした。今後はこのように、日本発のミームが海外へ広がっていく展開も増えていくかもしれない。




TikTokは新たなカルチャーの発信地へ

 そうした中で総合7位、邦楽では1位を獲得したのが、ひらめ「きゅんです!」だ。「ポケットからきゅんです!」のフレーズが印象的な同曲は、歌詞に合わせて指ハートを作る遊びが流行り、週間ランキングでは最高2位を獲得、トップ20入りは6月から19週連続でキープした。さらに「きゅんです!」は、『TikTok流行語2020』の大賞や『JC・JK流行語大賞2020』のコトバ部門1位を獲得するなど、2020年を代表するキーワードの一つとして親しまれており、音楽リスナー層だけに留まらない訴求を見せている。ちなみに、昨年の『JC・JK流行語大賞2019』では“ぴえん”がコトバ部門1位となったが、このワードをフィーチャーした針スピ子「「ぴえん」のうた」は総合7位、邦楽3位に入った。




 そのほか総合18位、邦楽6位の瑛人「香水」、総合19位、邦楽7位のyama「春を告げる」、総合20位、邦楽8位のTani Yuuki「Myra」など、今年はTikTokでのバズがきっかけでブレイクした新人も多かった。中でも瑛人「香水」、そして邦楽14位のYOASOBI「夜に駆ける」は、年末の『NHK紅白歌合戦』でのパフォーマンスが決まっており、「夜に駆ける」に至ってはBillboard JAPANの総合ソング・チャート“HOT 100”で年間首位を獲得。どちらもSNS上のバイラル・ヒットがYouTubeや音楽ストリーミング・サービスにも波及し、プラットフォームを横断する形でプレゼンスを拡大した2曲で、今年を象徴するヒットであることは間違いない。

 瑛人「香水」は、主に“歌ってみた動画”を投稿するユーザーが多く、お笑い芸人のチョコレートプラネットやAAAの宇野実彩子など、著名人によるカバーも認知拡大を手伝った。ほかにもTani Yuuki「Myra」など、シンガー・ソングライターによるシンプルなアコースティック・サウンドの楽曲は、今年のTikTokにおけるトレンドの一つで、その多くがセンチメンタルなラブソングであることも特徴的だ。




 一方で、yama「春を告げる」やYOASOBI「夜に駆ける」を筆頭に、小気味よいテンポ感と耳馴染みのいいキャッチーなメロディを併せ持つ、近年のネット音楽シーンの潮流を汲んだ楽曲にも要注目。これらは特定のシチュエーションやミームが浸透したわけではなく、vlogから小技系、面白系、ダンスまで、様々なタイプの動画を彩るBGMとして親しまれている。こちらはボーカロイドのカルチャーを下地にしたムーブメントでもあり、YOASOBIのメンバーであるAyaseや、yama「春を告げる」を手掛けたくじらも、ボカロPとして活動するクリエイターだ。




 邦楽15位のReol「第六感」は、10月頃から週間ランキングで上位をマークし始め、Billboard JAPANの新人アーティストを対象とした新チャート【Heatseekers Songs】では、11月から12月にかけて通算5度の首位を獲得。TikTokによる新人アーティストのフックアップ機能はいまだ健在で、早くも新たなヒットの芽が出始めているのだ。

 また、総合8位、邦楽2位のLiSA「紅蓮華」、総合11位、邦楽5位のNiziU「Make you happy」、総合17位、洋楽12位のBTS「Dynamite」、邦楽11位のOfficial髭男dism「I LOVE...」など、社会的に話題性の高い楽曲がTikTok内のブームに影響する展開も見られた。




 コロナ禍を受けたステイホーム期間で、TikTokの人気は加速度的に拡大した。そこは様々なユーザー層が混ざり合い、ジャンル豊かな次世代クリエイターたちが集まり、多種多様なカルチャーが生まれる、トレンドの坩堝ともいうべき様相を呈している。だからこそ、TikTokはこれまでのポップ・ミュージックの常識に囚われない音楽が生まれやすい環境となり、刺激や共感を求めるユーザーたちが集まる場になったのではないか。いまやコンテンツの受け手であるユーザーは、同時にコンテンツを広める発信者でもあり、今後はいかにコンテンツを共有し、拡散してくれる“仲間”を増やすかがヒットのカギとなっていくのだろう。


Text by Takuto Ueda

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TikTok 2020年年間楽曲ランキング <総合>トップ20
1位「Astronomia」

Vicetone & Tony Igy

2位「Banana (feat. Shaggy)」

Conkarah

3位「Gentleman」

Dance Hits 2015

4位「Roundabout」

Yes

5位「HIP」

MAMAMOO

6位「Rumors」

Jake Miller

7位「きゅんです!」

ひらめ

8位「紅蓮華」

LiSA

9位「「ぴえん」のうた」

針スピ子

10位「HACK」

Shuta Sueyoshi

11位「Make you happy」

NiziU

12位「The New Sweet Groove」

Put a Donk on It

13位「I'm Just a Kid」

Simple Plan

14位「Laxed Siren Beat Loop」

Jawsh 685

15位「SOS (feat. Aloe Blacc)」

Avicii

16位「Blueberry Faygo」

Lil Mosey

17位「Dynamite」

BTS

18位「香水」

瑛人

19位「春を告げる」

yama

20位「Myra」

Tani Yuuki

TikTok 2020年年間楽曲ランキング <邦楽>トップ20
1位「きゅんです!」

ひらめ

2位「紅蓮華」

LiSA

3位「「ぴえん」のうた」

針スピ子

4位「HACK」

Shuta Sueyoshi

5位「Make you happy」

NiziU

6位「香水」

瑛人

7位「春を告げる」

yama

8位「Myra」

Tani Yuuki

9位「会いたいわ」

iri

10位「クラシックメドレー2019」

Pianica Magician

11位「I LOVE...」

Official髭男dism

12位「どうにかなりそう feat.トミタ栞」

ROCKETMAN

13位「なにをやってもあかんわ」

岡崎体育

14位「夜に駆ける」

YOASOBI

15位「第六感」

Reol

16位「Walking with you」

Novelbright

17位「ルーヴル美術館侵入」

幡谷 尚史(SEGA)

18位「チューリングラブ feat.Sou (サビ Version)」

ナナヲアカリ

19位「My Way」

Def Tech

20位「ポッピンキャンディ☆フィーバー!」

キノシタ

TikTok 2020年年間楽曲ランキング <洋楽>トップ20
1位「Astronomia」

Vicetone & Tony Igy

2位「Banana (feat. Shaggy)」

Conkarah

3位「Gentleman」

Dance Hits 2015

4位「Roundabout」

Yes

5位「HIP」

MAMAMOO

6位「Rumors」

Jake Miller

7位「The New Sweet Groove」

Put a Donk on It

8位「I'm Just a Kid」

Simple Plan

9位「Laxed Siren Beat Loop」

Jawsh 685

10位「SOS (feat. Aloe Blacc)」

Avicii

11位「Blueberry Faygo」

Lil Mosey

12位「Dynamite」

BTS

13位「WOAH」

KRYPTO9095

14位「Lose Control」

Meduza & Becky Hill & Goodboys

15位「Choices (Yup)」

E-40

16位「How You Like That」

BLACKPINK

17位「Way Back Home」

Shaun

18位「Bang Bang Bang」

BIGBANG

19位「Game over!」

Harris Cole

20位「Love Story」

Disco Lines

 

 

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