Billboard JAPAN


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<インタビュー>MIYAVI ~唯一無比の「サムライ・ギタリスト」が語るコロナ禍の音楽



MIYAVI インタビュー

 スラップ奏法を駆使したプレイで「サムライギタリスト」の異名を取り、ギターとドラムだけのユニットで国内のみならず世界各国をツアー。アンジェリーナ・ジョリーに抜擢されてハリウッド映画に出演したことから、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使を日本人で初めて務めることになった。まさにグローバルな活動をしているMIYAVIにとって、新型コロナ禍が世界を襲った2020年はとてつもない1年になったことだろう。だがその中で新作を発表しインターネットを活用して発信し続けている。ようやくリアルなライブをビルボードライブで行うようになって、あらためて気づいたことがあると言う。

どうやってリアルではできない伝え方を見つけ出せるか

──MIYAVIさんにとって2020年は、どんな年でしたか?

MIYAVI:2020年は、僕たち音楽家だけじゃなく世界中の人にとって、自分や自分の仕事、存在意義ともう一度向き合う時間にならざるを得なかったんじゃないでしょうか。生活様式も経済活動も何もかも。僕も、ファッションのお仕事はさせてもらっていますけど、ツアーや映画の撮影もすべて延期やキャンセルになりました。ライヴや海外ツアーなど、これまで当たり前だったものが一瞬で当たり前ではなくなりました。

──今年の頭にはロサンゼルスにいたんですか?

MIYAVI:そうですね。1月には以前と同じように南米にツアーをしに行って、コロンビア難民キャンプに行って、ハワイでライブもやってました。2月頃には中国で新型コロナの影響がすごいことになってると聞いていましたが、まさか東京オリンピックまで影響が及ぶとは思っていなかった。僕も予定していた国内外のツアーがなくなったので、緊急事態宣言が出て、じゃあ自宅で何ができるかということになって。おのずと家族と向き合う時間が増えて、娘たちとバンドやったり、自宅から配信をしたり、日本のTVにリモートで出演したりしていました。

──やはりネットを活用しての活動に?

MIYAVI:リアルとヴァーチャルの比率がどんどん変わって行く中で、リアルでやっていることとヴァーチャルでやることでは戦い方が変わってくるのをひしひしと感じましたね。音の届け方も違うし、まず情報量が圧倒的に限られる。リアルのライヴならその時の景色とか温度とか匂い、誰とライブに行ったとか、そのすべてが対価となり、経験として記憶に残るけど、やはりスマホやパソコンなどのデバイス上だと、同じパフォーマンスをしても同じように伝わらない。そのなかで、どう自分たちが存在していくか、どうやってリアルではできない伝え方を見つけ出せるかを、この夏はずっと試行錯誤しながら発信していました。



▲MIYAVI Holy Nights JP Tour 2020 - Virtual Live -

──ツアーが延期や中止になっての不安はありませんでしたか。

MIYAVI:それは僕、あまりなかったんですよ。むしろ「配信で何をやったろうか」とずっと考えてました。今はリアルでもステージに立てて、それは収まってきましたけど、あの時期は配信のことばかり毎日やってましたね。不安を感じるというよりも、今やらないと!という思いの方が強かったです。

──その夏を経て9月にビルボードライブ東京で有観客ライブを行われましたが、そのときはどのように感じましたか?

MIYAVI:すごい感慨深かったですね。こんなにもステージに立つことが尊かったとは!(笑) 目の前にお客さんがいて、もちろん規制があるので飛んだり跳ねたり叫んだりできないんですけど、聴いてくれる人がいるありがたさを感じました。今、世界中のアーティストが感じてると思いますよ。何よりこの状況下でやれる場所があるというのは僕たちにとってすごく尊いし、ありがたいことです。これからヴァーチャルの比率が上がっていくにしても、やっぱりこの文化というか、ライブで直接パフォーマンスや音を感じるっていうのは変わらないでほしい。少なくとも僕たちの世代はね。まあ、次の世代はわからないですけど。

──次の世代というと?

MIYAVI:アナログレコードを聴いてきた世代が「配信ってどうなの?」とそこに人の温度を感じられないと思うのと同じで、時代が変わっていく中で、もちろん物事の価値観も推移していきますから、次の世代はわからないですけど、少なくとも僕たちの世代では失いたくない。やっぱり人として生まれて、音楽をやっていて、目の前にいる人に届けるということの、尊さを僕は感じました。

──ライブをはじめ、表現への制限が強まって大変だったと思います。

MIYAVI:4月に出たアルバムのMVをロサンゼルスで制作する予定だったんですけど、2〜3月でいきなり状況が変わって、アメリカはいきなりロックダウンになり、現地のクリエイターたちが物理的に動けなくなりました。僕は緊急事態宣言が出る前に東京に戻って来ていたので、東京でボリュメトリックキャプチャ(人物等の立体的な情報を取得しそのまま3DCG化する技術。撮影には多数のカメラを使用する)を使って映像を撮り、そのデータをアメリカのクリエイティヴディレクターに送って、それをブラジルやヨーロッパにいるヴァーチャルリアリティのエンジニアたちなど、とにかく動ける人を集めて作りました。



▲MIYAVI「Need for Speed」Music Video

人が人として尊厳を持って『生きている』と感じられるものとして
エンタテインメントはすごく重要

──MIYAVIさんは早くからネットで様々な発信をされてきていますが、今後はさらに可能性を感じていますか。

MIYAVI:もちろん可能性は感じています。そこに需要が高まって、プラットフォームが急激に発展してきてる。ただ、僕たちパフォーマーがやることはステージと変わらない。そしてさっきも言ったように、スマホのようなデヴァイスでは受け手の情報量が限られる。どうハードとソフトが両輪で成長していけるか。戦い方が変わってきますよね。毎日やってる若い人とか24時間垂れ流しにしている人とかいるわけだし。

──ツールでいえば、プロとアマチュアの差がないですよね。その中でプロとして何を伝えるかというところで、生のステージが重要になりますね。

MIYAVI:それはもちろん、ライブが主戦場なので。ここが僕たちの生きる場所であるし。ただ、それとどう両立していくか。ライブは耳だけで聴いてないから、体に響く音で体感してる。体感できる喜びは無くなって欲しくないなあと思いますね。このままカルチャーとしては残っていくとは思うけど、どう伝えていくのかが問われてる気がします。何をではなく、どう伝えるか。本来はそうじゃないんですけど、そこはみなさん試行錯誤してるところでしょう。

──音楽以外にもUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)など多方面でMIYAVIさんは活動していますが、そういったところへの影響も大きかったのでは。

MIYAVI:本当は難民選手団の皆さんを迎えて、いろんなイベントをやろうと皆で企画していましたが、オリンピックも延期になって、それもできなくなりました。去年行ったケニアの難民キャンプにも、もう1回行こうと思っていたけどそれも叶わなかった。ですが、6月20日の世界難民の日には、長野智子さんとオンライン・イベントを一緒にやらせてもらって、他にもオンラインでも繋がって発信していけるところを企画しています。やれることはいっぱいあるはず。こうしていると、今更なんですけど、俺、「ギタリスト」じゃないよなあ、何なんだろうと思ったりもします(笑)俳優活動もそうですけど、呼ばれてそこに自分のなすべきことがあるのなら、それも自分の人生なんだろうなと思うし、やれること100%やっていきたい。音楽も演技もファッションも人道支援の活動も、全部全力でやれたらと思います。

──そうした活動している中で、音楽との向き合い方も変わりますか。

MIYAVI:そうですね。発信したいことにも影響はあります。やっぱり音楽がセンター。バランスは変わっても軸は持っていたいですよね。これは難民支援活動をしている時に毎回突きつけられてきた問題でもあるんですけど、緊急フェイズの時は、まずは衣食住、医療、ライフライン。エンタテインメントはその次。存在意義を考えさせられます。でもね、大事なんですよね。人が人として尊厳を持って『生きている』と感じられるものとして、エンタテインメントはすごく重要な部分でもある。
 今年は、そこを僕たちがどう担っていくのか、なぜ音楽をやっていくのかを改めて考えさせられた。アルバムのタイトルトラック歌詞の一節でもありますが『たとえ世界が終わっていくとしても、僕らは歌う』そこにたぶん目に見えない音楽のパワーがある。そんな気がしています。
 国連がリードをしてSDGs=持続可能な社会にしていこうというテーマを掲げていますけど、正直な話、まだなかなか進んでいない。これからもっと何を持って成功とするのか、成功の価値観をアップデートして、地球と寄り添った上での本当の成功を追求していかなくちゃいけない。今年は改めて考えさせられる年だったんだなと思います。インターネットでこんなにすぐに繋がれるのに、逆にどんどん分断されていく社会。
 一晩のショーじゃ何も変わらないかもしれないけど、続けていくことで誰かの意識を変えられるということ、そしてその積み重ねこそが未来への道を作る、と僕は感じながらやっています。

──4月にリリースしたアルバム『Holy Nights』はパンデミック前に制作されたそうですが、9月にアコースティック・ヴァージョンのEP「Holy Nights(Lockdown 2020)」を配信で発表されましたね。この半年の間に曲の意味が変わったように感じましたが、ご自身の中でも曲の解釈が変わったりしましたか。

MIYAVI:コロナの状況がこうなる前に作った曲ですけど、歌っていることは変わってない。パンデミックがあろうとなかろうと、人種差別の問題もずっとあった問題だし、僕たちはずっとこの問題に直面していて、変えないといけなかった。警告を鳴らそうとは思っていないけど、音楽家として何を歌うか、何を歌いたいだろうと思った時に、ああいう歌が生まれたんです。「Holy Nights」って聖なる夜ですけど、僕たちはこの先進国に生まれて平和だし楽しい、でも見渡したら世界が燃えているという、この状況で何を歌えるのかという作品だったので、今回コロナ禍の中で、僕の中では全然変わらずに歌えた。この曲を作ったのはある意味で必然だったのかなと思います。


▲MIYAVI Billboard LIVE 2020 冒頭部分チラ見せ配信

──そのEPのリリースに合わせて東京・大阪のビルボードライブで公演されましたが、12月には東京・大阪に横浜のビルボードライブでのステージがあります。抱負をお聞かせください。

MIYAVI:9月は、感染拡大防止のルールも考えて完全にアコースティックでやったんですけど、もう少しエレキを入れてもよかったかなと思ったんで、今回はエレクトリックにしようかなと。クリスマスだし「MIYAVI Electric Xmas at Billboard Live 2020」。いつものライブほどではないけど、少しでも皆が楽しい!って思える空間にできればなと思っています。


MIYAVI「Holy Nights」

Holy Nights

2020/04/22 RELEASE
TYCT-60158 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Holy Nights (Intro)
  2. 02.Need for Speed
  3. 03.Holy Nights
  4. 04.Bang!
  5. 05.Heaven is A Place On Earth
  6. 06.Danger Danger
  7. 07.TOKIO
  8. 08.Tomaranai ha-ha
  9. 09.Perfect Storm (feat.Amber Liu)
  10. 10.Live To Dream (feat.FAIS)
  11. 11.Hands To Hold
  12. 12.DAY 1 (Reborn)

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