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Billboard Styleの言葉からvol.3「ギャップも楽しむ大人のファッション」──Billboard Live Newsの既刊号から“音楽のあるライフ・スタイル”を再考する。
ビルボードライブ東京が発刊する月刊フリーペーパー[Billboard Live News]。2007年の創刊号から巻末を彩ってきたのが、コラム&インタビューを掲載する[Billboard Style]です。ここでは、約150回にわたって続いているそのページで語られてきた数々の「言葉」をピックアップ。[Style]のタイトル通り、あらためて「音楽のあるライフ・スタイル」を探るシリーズをお届けします。
創刊からこれまでの[Billboard Style]に数多く登場しているアーティストといえば、まず印象的なのが[Billboard Classics]のシンフォニック・コンサートを続ける玉置浩二さん、そのヴィジュアルを手がける横尾忠則さん。まさに「ここでしか読めない」対談が何度も掲載されてきました。
そして、もうひとり、誌面への最多登場を誇るのが、シンガーの野宮真貴さんです。彼女は「野宮真貴、渋谷系を歌う。」と題したシリーズを[ビルボードライブ]で毎年開催。彼女がヴォーカリストを務め、カルチャー・アイコンとして渋谷系の象徴となったピチカート・ファイヴのナンバーをはじめ、渋谷系ソングとそこに影響を与えた洋楽ポップスなどの「渋谷系スタンダード」を幅広くセレクトしたライブは、すでにライフワークとなっています。
▲Billboard Live TOKYO
ビルボードライブも「おしゃれは足もとから」
そんな彼女が[Billboard Style]で語ってくれているのは、主にファッション。『赤い口紅があればいい』や『おしゃれはほどほどでいい』などの著書もある彼女は、例えばこんな言葉を残してくれています。
『ステージやパーティーでは最先端のモードやゴージャスな衣装を身に纏うことも多いのですが、普段の私のファッションは、ベーシックなお洋服がメイン。昔から大好きな60sファッションに、ここ数年凝っている50sスタイルのスーツやワンピースなどがワードローブの中心です。長年、さまざまなモードの変遷を見てきましたが、いつの時代も不思議とアウトにならないのが50年代から60年代のスタイルだと思うし、それは私自身のおしゃれの原点でもあります。』(野宮真貴/Billboard Live News 2014年11月号)
この言葉に続けて、バービー人形が「私の永遠のファッション・アイコン」と語る野宮さん。50年代〜60年代のスタイルに「おしゃれの原点」を見い出しながら、さらに最新のトレンドの取り入れたコーディネートのポイントをこんな風に語っています。
『私の秋冬のおしゃれプランは、たいていの場合、靴から始まります。お洋服が仮にヴィンンテージだとしても、靴だけは最新のものにこだわりたい。「おしゃれは足もとから」というのは本当で、どんなに素敵なドレスでも足もとが汚れていると台無しに見えてしまいます。』(野宮真貴/Billboard Live News 2014年11月号)
「靴だけは最新のものにこだわりたい」という彼女は、別の誌面でも「靴」がキーワードの言葉を残してくれています。ちょうど梅雨のシーズンに発行された2012年7月号では「雨の日だからこそできるファッションがある」というお話から、季節やシチュエーションを楽しむ、そんな足もとのおしゃれに注目。
『最近は、若い女の子が普通にレインブーツを履くようになりましたよね。最初はちょっと意外だったんですけれど、そうやってシチュエーションに合ったファッションを楽しむ時代に、またなってきたのかもしれないですね。レインシューズもとてもカラフルだったりするし。』(野宮真貴/Billboard Live News 2012年7月号)
▲Billboard Style 2012年7月号誌面より。表紙は5周年のアニヴァーサリー・イヤーに登場したエステル。
そして、野宮さんは[ビルボードライブ]に出かける時の「いつもとは違う足もと」についてもひとこと。女性・男性を問わず[ビルボードライブ]というシチュエーションだからこそできるおしゃれを楽しむ、そんな素敵なスタイルを提案してくれています。
『[ビルボードライブ]は、ゆっくりお酒やお食事を楽しみながらステージを観ることができる大人には嬉しい場所。スタンディングの会場ではきびしいハイヒールや和服でもOKだし、コートを預かってくれるクロークもあり、いつもよりおめかしできるハレの雰囲気も好きです。』(野宮真貴/Billboard Live News 2014年11月号)
▲Billboard Style 2014年11月号誌面より。表紙はジェイミー・カラムでした。
「変わらない」ことへの意思表示
ここでもうひとり、野宮さんとは違った視点でファッションを語ってくれた言葉をご紹介しましょう。[ビルボードライブ]のステージでもおなじみとなったクレイジーケンバンドのギタリスト、小野瀬雅生さん。ダニエル・ラノワやドクター・ジョンなど、ちょうど「ヒゲのアーティスト」の来日が続いた時期に「ヒゲ&ロック・ファッションの効用」を分析してくれています。
『ロックにおけるヒゲ、結論から言えば、それは「非日常へのパスポート」ではないでしょうか。音楽を聴くとき、特にそれがロックであれば、人は「日常にはない何か」を求めていますし、「何かのトビラを開いてくれる」効果を期待しているわけですよね。そのステージにです、もし「普通の人にしか見えない人」しかいなかったら、トビラが開かないと言いますか、説得力がないと言いますか、とにかく魅力が半減するじゃないですか。』 (小野瀬雅生/Billboard Live News 2013年8月号)
こう語る小野瀬さんも、もちろんヒゲの人。後期のビートルズへの憧れから長髪&ヒゲのスタイルになっていったという小野瀬さんですが、この感覚は、特にミュージシャンに限らないと続けます。
『ミュージシャンに限った話ではなくて、「格好」が自分で腑に落ちていないと、伝えたいことも伝わらないんじゃないかって思います。クレイジーケンバンドは、その「格好」の部分は変わらないけれど、だからこそ時代時代で変化できる。変わらないからこそ時代に対応できるのではないかと、長年やってきて思うところです。ロック・ミュージシャンのヒゲは、その「変わらない」ことへの意思表示なのかもしれません。』(小野瀬雅生/Billboard Live News 2013年8月号)
▲Billboard Style 2013年8月号誌面より。表紙はチャカ・カーンでした。
「変わらない」から変わり続けられる。野宮真貴さんともリンクしている、この言葉から浮かんでくるのは「大人の嗜み」ということなのかもしれません。
では、最後に、大人の嗜みとファッションの関係について、もう一度、野宮真貴さんにご登場いただきましょう。ちょうど秋の号、グルメなシーズンをテーマに語ってもらった言葉です。
『着飾って素敵なレストランに出かける機会もありますが、ひとりでふらっとカフェに立ち寄ったり、親しい友人と気の置けない居酒屋で盛り上がったり、好んで行くお店のテリトリーは広い方だと思います。音楽、ファッション、食事でもコントラストがあるものが好きなんです。(中略)でも、そこがたとえ大衆居酒屋であってもお洒落には気を抜かず、そのギャップを楽しむことが私の流儀。』 (野宮真貴/Billboard Live News 2013年11月号)
▲Billboard Style 2013年11月号誌面より。
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