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Rain Drops『シナスタジア』メジャーデビュー記念インタビュー
VTuber/バーチャルライバーシーンに革命
昨今のVTuber/バーチャルライバーシーンに多大な影響を与え、昨年末に前代未聞のバーチャルフェスを両国国技館で実現した“にじさんじプロジェクト”から1組の音楽ユニットがメジャーデビュー。
その名もRain Drops。性格も歌声も世界観もてんでバラバラで、関係性も大して築き上げて来てはいない……という個性派6人(える、三枝明那、ジョー・力一、鈴木勝、緑仙、童田明治)が選抜され、奇跡の一体感を創造! ここに1stアルバム『シナスタジア』を完成させてみせた。脇役不在、全員主役、そもそもグループ活動に適していないのかもしれない6人が巻き起こす、いまだかつてない革命物語の序章的インタビュー。ぜひご覧あれ。
参加メンバー(3者同時オンラインインタビュー):
三枝明那、ジョー・力一、緑仙
2Dと3D、ヴァーチャルとリアルの境界線がより曖昧になっている
--Rain Dropsのメジャーデビューアルバム『シナスタジア』発売タイミングのインタビューになりますので、初見の方々にも皆さんの魅力を伝えていきたいのですが、まずRain Dropsの母体となる“にじさんじプロジェクト”がどんな存在なのか教えてください。
Rain Drops 5/13発売『シナスタジア』SPOT CMナレーションに挑戦してみた!(える/鈴木勝/ジョー・力一/三枝明那/緑仙/童田明治)
一同:(笑)
三枝明那:よろしくお願いします! ジョー・力一:どこから説明すればいいのか(笑)。遡ると「誰でもVTuberになれる」アプリの開発から始まりまして、VTuberになろうと思っても色々準備が必要だし、敷居が高かったところを手軽に出来るようにしたんですよね。そこでテストプレイヤーみたいな人たちを集めてみたら、たまたま妙に面白い連中だったんですよ。試食コーナー用のパートを集めてみたつもりが、そこそこの店を構えられるぐらいの人ばっかりだったっていう。--めちゃくちゃ分かりやすい例えですね(笑)。
ジョー・力一:そこにオーディションとかで我々後発組も集まっていって、気付いたら「VTuberシーンににじさんじあり!」みたいな非常に大きいハコになっていったんです。 三枝明那:バーチャル個性派集団みたいな。 ジョー・力一:そうだね。どちらかと言うと、セルフプロデュースの上手さみたいなモノを全面に打ち出していっている。わりと個人個人のキャラクターが立っているので、だからこそ各々がコラボ配信とかで掛け合わさったときに「こことここの組み合わせが面白い!」と楽しんでもらえる。そういう強みも持ったコンテンツチームになっているんじゃないかなと。--2019年12月8日には、前代未聞のバーチャルフェス【にじさんじ単独音楽ライブイベント「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」】も開催。あれだけのVTuberが一堂に会すイベントも革命的でしたよね。
ジョー・力一:出演していた側からすると「楽しかったー!」ぐらいの印象しかないんですけど(笑)。でも、今振り返ってみると、2Dと3D、ヴァーチャルとリアルの境界線がより曖昧になっていることを象徴するようなイベントだったと思いますね。VTuberやバーチャルライバーという新しいフレーム自体よりも、それぞれの持っている個性やスキルがクローズアップされて、その結果として大勢のファンを獲得していっている。そういう大きな流れの象徴だったり、ひとつの到達点だったのかなと思います。--たしかに、既存のアーティストやアイドルと変わらぬアイコンとしての役割を十二分に果たしているなと思いました。
ジョー・力一:そうですね。ただ、それがなんて言うか……逆に「怖いよね」と思うところもあるんですよ。--具体的には、どの辺に怖さを感じるんでしょう?
ジョー・力一:我々VTuberのフットワークの軽さみたいなモノって、良くも悪くも素人感みたいなところから来ていると思うんですよね。おしゃべりのプロとして活動してきた訳でもないし、芸人として舞台に立ってきた訳でもない。どこからやって来たのかよく分からないけれども「なんか面白いことやっているらしいぞ、奴ら」ぐらいの、非常にふわっとした存在なんですよ。だから「VTuberかくあるべし」みたいなモノも今のところないですしね。--その曖昧さを何か確固たるものにしてしまうと、身動きが取りづらくなってしまい、そもそものVTuberやバーチャルライバーの良さが半減してしまう恐れもある訳ですね。
ジョー・力一:そうなんですよねー! まだちょっと間借りしている感があるんですよ!一同:(笑)
ジョー・力一:ラジオ番組をやらせてもらったり、声優シーンや音楽シーンにも進出しているんですけど、まだ「失礼しますね」とちょっとずつ間借りしている感じなので。だからこそ、にじさんじが両国国技館で大型イベントをやるって凄いことだったと思うんですよ。なので、今は「このままどこまで突っ走るのかな?」という状況に一抹の不安と、それ以上の期待が入り混じっている感じ。その中でさらにRain Dropsというグループとしてのメジャーデビューも決まったので、僕らからすると「果たしてどうなっていってしまうのだろう」っていうね。だから非常にドキドキしています。--そんな大役を任せられたRain Dropsがどんなグループなのか、どんな個性や魅力を持ったメンバーの集合体なのか掘り下げていきたいのですが、まず緑仙さん。バーチャルライバーになったきっかけから教えてもらえますか?
緑仙:人間関係に悩んでいて、あの……高校デビューを失敗したんですよね。それで「この世に自分みたいな人間と友達になってくれる人なんていないんじゃないか」みたいな感じになっちゃって、でもネットの世界でバーチャルライバーになれば、3次元の人間とも絡めるんじゃないかと思って。そこで「自分と同じような人いますかぁ?」と発信していったのがきっかけですね。- 緑仙、三枝明那、ジョー・力一がVTuberになった理由
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リリース情報
シナスタジア
- 2020/05/13
- 初回限定盤A[TYCT-69168(CD+DVD)]
- 定価:2500円(tax out)
- 詳細・購入はこちらから>>
- 初回限定盤Bの詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
緑仙、三枝明那、ジョー・力一がVTuberになった理由
--ただ、ネットの世界は誰とでも仲良くなれるメリットがある一方で、誰からでも叩かれるリスクも伴う訳じゃないですか。その中で緑仙さんは「批判も受け止める」という方針を打ち出されていますよね。
緑仙:根本に「いちばん怖いものは、無関心」という考え方がありまして。好きになってもらえたらソレがいちばん嬉しいですけど、もし「キライ」と思われたとしても、それは自分にちょっとでも関心を持ってくれている証拠じゃないですか。これまで18年間ずっとそういうポジティブな捉え方をしてきたので、ネットの世界でもその姿勢は変えることなく強く生きています。--とは言え、傷つく言葉を投げられたりもする訳じゃないですか。
緑仙:そしたらミュートします。--あ、わりと簡単にミュートするんですね(笑)。
一同:(笑)
--三枝さんは、どうしてバーチャルライバーになったんでしょう?
三枝明那:小さい頃から音楽がすごく好きで、ずっと自分でも音楽がやりたいなと思っていたんです。でも、中学生ぐらいまでは、まわりにそこまで本気で音楽を一緒にやってくれそうな友達がいなくて、それで軽音部がある高校に入ろうと夢見ていたんですけど、いざ入ってみたら、そこにも自分と同じ温度感で音楽をやっている人はいなくて。言い方悪いけど、お遊びみたいな。メジャーデビューや日本武道館を本気で目指すような意識じゃなかったんですよね。それで、音楽の道は一度諦めたんです。--良い仲間に恵まれなかったんですね。
三枝明那:普通に学生生活を送ることになっちゃいました。でも、ネットの世界を知っていく中で、VTuberやバーチャルライバーの存在を知って、自分もそれになって活動していけば、いずれ音楽を一緒にやってくれる仲間が見つかるんじゃないかなと思って、にじさんじに応募したんです。その結果、今、Rain Dropsのメンバーとしてメジャーデビューして、みんなと一緒に音楽をやれる状況に至っているので、夢を少しずつ叶えることができている。--今の時代ならではのストーリーですね。
三枝明那:自分はちょうど1年前ぐらいにバーチャールライバーとしてデビューしたんですけど、初めて配信したときに「夢は日本武道館に立つことです」と掲げていて。それを応援してくれる人もいれば、「バーチャールライバーが武道館なんて」とバカにする人もいたんですけど、今となっては、そんなに遠くない夢になっているんじゃないかなって。なので、自分の夢を応援してくれているファンの方からしたら喜んでもらえるというか、良いストーリーを歩めているんじゃないかなって思いますね。--そんなロック的なストーリーを歩んでいる三枝さんなんですが、バーチャル尿路結石に苦しめられていた時期もあるんですよね?
三枝明那:ハハハハ! バーチャルライバーは電子的な概念なので、そもそもは排泄器官や尿路みたいなモノが存在する訳がないんです。ただ、自分は「バーチャルライバーだって人間だからあるんだぞ」と。--新しい概念を作ってしまったんですね(笑)。
三枝明那:そうなんですよ。だから、僕がバーチャルライバーとしてデビューしていなければ、まだこの世界に尿路は存在していなかった。 緑仙:余計なもん作んなよ(笑)。 三枝明那:歴史に名を刻めました。で、なんで尿路結石に苦しめられることになったかと言うと、デビュー当時にプレッシャーというか、ストレスが溜まるような状況があって。それでずっと寝たきりで、配信するときだけ起きて、食事も水もろくに摂らずに過ごしていたんです。そしたら、結石ってあんまりにも水分を摂らないと出来るらしくて……デビューからわずか2週間で尿路結石に。一同:(笑)
--バーチャルライバーも人間なんだなと親しみが湧きました(笑)。続いて、ジョー・力一さんがこの世界に飛び込んだきっかけを教えてください。
ジョー・力一:えー、進退窮まりまして。--進退窮まるところから始まるストーリー(笑)。
ジョー・力一:「エンタメで身を立てよう」みたいなことを思いながら、若い時期を食い潰しておりまして。で、夜中にやりたくもない仕事をしながら、細いチャンスをね、ひとつひとつ手繰り寄せては「やっぱりダメだ」みたいな生活をしていたときに、たまたまVTuberの存在を知って、オーディションを受けてみたら通ってしまって、あれよあれよと今の状況に至るんですけど、だから切羽詰っていたから始めたことではあるんですよ。必死にしがみついたのかもしれない。--でも、それだけエンタメの世界で生きたいと思っていたと。
ジョー・力一:そうですね。だからずっとやりたいと思っていたことをVTuberになってから、まったく別のルートを使って、ちょっとズルしながら実現していこうっていう……--ズルとは思いませんけどね(笑)。
ジョー・力一:持っているモノを使って(笑)。--あと、名前もビジュアルもバットマンのライバルを想起させますが……
ジョー・力一:去年、映画『ジョーカー』が大ヒットじゃないですか。あの映画が俺のプロフィールを後追いしているような内容でして(笑)。あれを観ながら「だからダメなんだよ。アイツもにじさんじに入ればいいのに」って思いましたね。いやぁー、よかった。俺、ゴッサムに住んでなくて。--悪の化身にならずに済みましたね(笑)。そもそもなんでジョーカーをモチーフにしたんですか?
ジョー・力一:これを言っちゃうと身も蓋もないんですけど、性根がパロディー人間なんですよね。古いところだと、アル・ヤンコビックとか……リリース情報
シナスタジア
- 2020/05/13
- 初回限定盤A[TYCT-69168(CD+DVD)]
- 定価:2500円(tax out)
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- 初回限定盤Bの詳細・購入はこちらから>>
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ゆくゆくは『ボヘミアン・ラプソディ』みたいになっていく?
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Rain Drops - 5/13発売『シナスタジア』XFDムービー
--名前と見た目は似ているけど、中身は全然違うと(笑)。
ジョー・力一:全然違いますね。目先のウケ狙いだけで生きている人間なんで。一同:(笑)
ジョー・力一:だから困るんですよね、夢とか野望とか聞かれると。--目先しか考えてないですからね(笑)。さて、そんな個性豊かなメンバー集いしRain Dropsなんですが、えるさん、鈴木勝さん、童田明治さんも含め、性格のみならず歌声のキャラクターもバラバラに濃いじゃないですか。それらの組み合わせが今回のメジャーデビューアルバム『シナスタジア』の面白さだと思いました。
ジョー・力一:そうなんですよね。誰がセンターになってもおかしくないというか、都度都度でメンバーの並びが変わっていったりとか、フォーメーションが変わっていったりとか、その組み合わせの楽しさみたいなモノは「新しいな」と感じています。--このグループ、脇役が存在しないんですよね。全員主役級。そうなるとバランスの難しさがあるはずなんですけど、それすらも楽しませていけるのが強みなのかなと。
ジョー・力一:良い意味で統一されたカラーがないんですよね。我々6人6色の、ゴテゴテの個性をモノトーンの衣装で無理やりまとめたキービジュアルがあるんですけど、あれがすべてを物語っているなって(笑)。 三枝明那:そうしないと、本当にまとまんないもんね。 緑仙:白黒って最強だなと思った(笑)。 ジョー・力一:Rain Dropsが到達したアンサー(笑)。--そんなメジャーデビューアルバム『シナスタジア』、緑仙さん的にはどんな作品になったなと感じていますか?
緑仙:Rain Dropsって本当にバラバラというか、何も見えていない中でスタートしたんですよ。「このメンバーでやっていきます」と集められて、「え、何も見えない」みたいな(笑)。演者には何も見えていなくて、プロデューサーにしか見えていなかったんですよね。レコーディングも今まで経験していたものと全然違って、これまでは何を収録するにしても答えがあったんですよ。何パターンかあって、その中でいちばん良いモノを起用する。でも今回は答えがゼロで、やってみて「どう思う?」「こう思います」「じゃあ、ソレで行きましょう」みたいな感じでひとつずつ決めていく感じだったんです。それが楽しくもあったんですけど、不安でもあって。他のメンバーとの相性とかもあるので、本当に正解が分からなかったんですよね。でも完成した楽曲を聴いたら「あ、これを作りたかったんだな!」って。ようやくそこで安心できて、メンバー一同「これは早く聴かせたい」と心底思う内容だったから嬉しかったですね。--三枝さんは『シナスタジア』にどんな印象を?
三枝明那:各々のライバーさんごとに積み上げてきた関係性みたいなモノがあって、それによって世界が広がったり、面白くなっていくのがVTuberやバーチャルライバーの特徴だと思うんですけど、Rain Dropsの6人に関してはこれまで積み上げてきた関係性がなかったので、音楽的なところもそうなんですけど、そもそも「この6人、仲良くなれんのかな?」というところからのスタートだったんですよ。それも込みですごく不安だったんですけど、レコーディングをしていくにつれて、他のメンバーのレコーディングも見学させてもらったりもしていく中で、だんだん見えてくるモノがあって。でも、同時に「これ、バラバラ過ぎるんじゃないか? まとめ上げられるのか? お金を払ってもらえるクオリティになるのか」と疑問も増えていったんですけど……やっぱり大人の力って凄いもんで(笑)。ミュージックビデオも含め、めちゃくちゃ格好良くて。例えるなら、山登りをしている最中は不安だったけど、山頂に到着したら「あ、こんなに美しい景色が広がっていたんだ」みたいな。--このアルバム『シナスタジア』から始まるRain Drops。今後どうなっていくんですかね?
ジョー・力一:三枝くんも言っていたんですけど、Rain Dropsは物語がないところからのスタートなんですよね。母体であるにじさんじがハコとしては巨大になってきて、全員を巻き込んでのストーリーを作っていくのは難しくなってきたところで、過去に関係性の積み重ねがない6人組のスタート。だからこそ、早くブツを見せないといけなかったんですけど、この音楽がまず最初にあってから物語が始まるスタイルは面白いんだろうなって。ゆくゆくは『ボヘミアン・ラプソディ』みたいになっていくんだろうなって。一同:(笑)
--ひとり死んじゃいますけど(笑)。
緑仙:『ボヘミアン・ラプソディ』みたいになるかは分からないんですけど(笑)、自分たちは先陣を切る立場だと思うので、そこの責任は果たさなきゃいけないなとは思っています。にじさんじには歌える人がまだまだたくさんいるんですよね。その中でRain Dropsを大きく取り上げて頂いて、世の中に出て行くわけなので、僕たちが「VTuberやバーチャルライバーもこんなに歌えるんだぞ!」ということを証明していかないと、次に繋がらないと思うんです。ここで「あ、無理なんだ」と思わせちゃいけないので、それだけは頑張りたいなと思います。 三枝明那:今までのVTuberの歴史を辿っても、Rain Dropsって異例だと思うんです。誰もやっていないことをやっていると思うので、VTuberやバーチャルライバーをよく知らない層にまで波及していける存在になれたらいいなと思っています。だから何かタイアップください!一同:(笑)
ジョー・力一:今、Rain Dropsって謎の集団なんですよ。この謎の集団のままどこまでも行きたいと思っていて、やがては世界中の皆さんから「あいつら、なんなんだ?」と思われたいです(笑)。リリース情報
シナスタジア
- 2020/05/13
- 初回限定盤A[TYCT-69168(CD+DVD)]
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