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Billboard Japan上半期アーティスト・ランキング“TOP ARTIST”あいみょん首位記念インタビュー
2019年上半期の総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”と総合アルバム・チャート“HOT ALBUMS”を合計し、アーティストごとに集計したアーティスト・ランキング。2019年上半期は、あいみょんが“TOP ARTISTS”首位を獲得した。「マリーゴールド」のヒットから、音楽づくりに対する思い、そしてこれからについてインタビューを行った。
Billboard JAPAN 2019上半期チャート集計期間:2018年11月26日(月)~2019年5月26日(日)
――2019年上半期のアーティスト・ランキングで首位になりました。おめでとうございます。
あいみょん:いえいえ…ありがとうございます。私は1位には基本的にご縁がないので、ありがたいです。
――上半期チャートを見てみると、特に「マリーゴールド」は20週連続でBillboard JAPANのストリーミング・チャートで1位を獲得するなど、大きなヒットとなりました。
あいみょん:そうですよね。20週ってキリが良くて、この記録を出せたのはありがたいなと思っています。
――「マリーゴールド」は2018年から2019年にかけてのヒット曲となりました。このヒットをどのように捉えていますか。
あいみょん:基本的に自分の出す楽曲には自信を持ってやりたいので、「マリーゴールド」の時は制作期間から「絶対にこの曲は世の中の人たちに聴かれてほしいし、聴かれるでしょう」と思って作りました。スタッフさんにも「今、日本の音楽でこの曲が聴かれないのであれば、私はもう音楽はできないと思います」って話していて。それは強がりな感じもあったんですけど、結果としては「言霊」ってあるなというか、自分が思っていた以上に聴いてもらえる曲になって。すごく嬉しいですし、今後も聴き続けられてほしいなと思います。
――“これはいける”と思ったきっかけは何だったのでしょうか。
あいみょん:感覚ですね。この曲ができた時、「絶対にこの曲は聴かれる」って直感で思ったので。それ以上のものはなかったです。
▲あいみょん「マリーゴールド」
――今回の上半期チャートでは、総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で米津玄師さんの「Lemon」が2018年に続き1位となりました。米津さんのコメントに「とっくの昔に自分の想像を飛び越えた曲になっていましたが、一体どこまでいくんだろうか、と興味深く感じています」とありましたが、あいみょんさんも「マリーゴールド」に対して同じ気持ちはありますか。
あいみょん:街中で歩いている時とかに自分の曲を客観的に聴くと、自分が作ったはずなのに自分じゃないような気がするときはありますね。「あれ、この曲、本当に自分が作ったのかな?」って。それくらい遠い存在になってしまうっていうのは分かります。
――そのことに違和感や不安感を感じたりすることはありますか。
あいみょん:いやー、特にはないですね。やっぱり聴かれていることって嬉しいですし、不安は特にはない…かな。
――「マリーゴールド」のヒットの前後で変化したことはありますか。
あいみょん:私のライブに来てくださるお客さんは「マリーゴールド」がきっかけの方が一番多いと思うので、それは「マリーゴールド」が連れてきてくれた財産だと思いますね。あとはやっぱり「マリーゴールド」を作ったからこそ、あれを超えるものというか、また新しく自分がそれくらい自信のあるものを作っていきたいなと。今はそっちの気持ちですね。さらにヒット曲を作りたい、生みたいという意思は昔から変わりません。
――では「マリーゴールド」のヒットによって、さらにハードルが上がったのでしょうか。
あいみょん:ハードルが上がったというか、(そもそも)ハードルを上げていく活動だと思うんですよね。ゲームでもそうじゃないですか、まわりも自分もどんどんレベルを上げていくというか。私もそうやってレベルアップしていければなと。あとは根本的には楽しいっていうのが軸としてあるので、制作をしているうえで、お客さんやスタッフさんと一緒に楽しく作るっていうことが一番大事かなと思っています。
――「マリーゴールド」のみならず、上半期の総合ソング・チャートでは8曲、総合アルバム・チャートには3タイトルが入るなど、多くの楽曲がチャートインしました。ご自分がヒットしているな、浸透してきたなと感じられる瞬間はどんな時ですか。
あいみょん:ビルボードのチャートのように目で見て分かる数字っていうのが、自分にとって一番実感できるものかもしれません。まわりから「みんな、あいみょんのことを知っているよ」って言葉で言われても、あんまり分からないんですよ。それよりライブで新しいお客さんの顔が増えたり、チャートの数字を見たりすることで、まだまだかもしれないですけど、1人のアーティストとして世の中に浸透してきているのかなっていうことを実感してきています。
――ライブの動員数も含めての数字ということでしょうか。
あいみょん:なんだかんだ言って、数字が一番分かりやすいですよね。YouTubeの再生数だったりとか。なので「なぜこの曲は前作より再生数の伸びが早いのかな」とかを考えることもあります。「なぜこの曲は若い子にウケてるんやろう」とか。数字によって疑問に思うことも増えてきている気がします。
――その問いに対して答えは出るのでしょうか。
あいみょん:自分が作った音楽とファン層が合ったのかなっていう答えに落ち着くことが多いですね。
――最近ではご自身の楽曲以外に楽曲提供をされる機会も増えました。自分の作品と提供楽曲での違いはありますか。
あいみょん:提供する楽曲でも、自分が歌える曲であるっていうのは意識して作っています。私に頼んでくれたっていうことは、私のエキスが何か欲しいっていうことなんだって解釈しているので。でも私が歌うわけではないので、そのアーティストの色に寄り添いながら、良い塩梅になるように作っています。自分がリリースする曲は、投げやりでも良いと思うんですよ。普段から感情を爆発させて書いているので、投げやりでも成り立つんですけど、誰か別のアーティストの方の曲を書くときは、私の感情を歌いすぎても投げやりでも良くないと思うので。
――こういう作品やこういうアーティストに提供したいと思われることはありますか。
あいみょん:私は男性アーティストの曲を書かせていただくことが多いので、女性の曲をもっと書いてみたいです。女性のソロの方とか。この間、木村カエラさんに書かせていただいたんですけど、それもすごく嬉しかったです。
――女性目線の方が書きやすいということでしょうか。
あいみょん:そうではないですね。男性目線で書くことが多いですし。男性への提供楽曲の場合は「これを歌わせてみたい」っていうSっ気が出ることが多いです。
――上半期チャートでトップ・アーティストを獲得された大きな要因は、ストリーミングでのロング・ヒットでした。ストリーミングは日本でも大きくシェアを広げていていますが、あいみょんさんもストリーミングは使いますか。
あいみょん:ストリーミング、CD、カセット、レコード…なんでも聴きますね。誰かにこの曲良いよって言われたら、携帯がその場にあるのでストリーミングで探して聴くことが多いですし、CDを手渡しされたらCDで聴きますし。レコードを欲しくて買う時もあります。
――子供の頃はどうだったのでしょうか。CDやMDの世代ですか。
あいみょん:そうなんですよ。私はまだ24歳なので携帯で音楽を聴く世代だと思われるんですけど、全然CD世代なんですよね。私はどっちかというとCDの方が馴染みがありますね。
――色んな手段で音楽を聴かれる中で、新しい音楽を知るのはどういうきっかけが多いですか。
あいみょん:フェスやイベントに出る時にラインナップを見て出会うこともありますし、あとはラジオですね。
――移動中とかに?
あいみょん:ラジオは家でもよく聴きます。
――学生時代からラジオが好きだったんでしょうか。
あいみょん:学生時代はあまり聴いていなくって、むしろこういう仕事をし始めてから、ネタの宝庫だなと思ってよく聴いていますね。なので、ラジオで新しい音楽と出会うことが多いですね。
――最近のお気に入りを教えていただけますか。
あいみょん:え―…なんやろう。レジェンドすぎて最近のお気に入りなんて言ったらだめなんですけど、槇原(敬之)さん。改めて聴くとすごいなって思います。最近、(ストリーミングで)解禁される人多くて嬉しいですよね。平井 堅さんとか。同世代だとマカロニえんぴつとかですかね。
▲マカロニえんぴつ「青春と一瞬」
――ストリーミングは気になった時にすぐ聴けるのが良いですよね。
あいみょん:私は弟がいるので、気になった時に「これ、いいよ」ってすぐ送れるのも良いですね。でもストリーミングにもメリット、デメリットがあると思っていて、CD世代で育っている私たちからすると、やっぱりこういう活動をしてたらCDを手元に置いてほしいという気持ちが一番あって。どうしても時代とともに変わっていくとは思うんですけど、手渡しの曲がなくなってしまうっていうのは寂しいなって思います。父親から浜田 省吾さんのCDを聴いてみろって手渡しされたっていうのがなくなってしまうのは寂しいなって。
――それはご自分の作品についても同じ思いですか。
あいみょん:そうですね。音源とかミュージック・ビデオも大事なんですけど、普段CDを作るっていうことに重きを置いているので。CDって色んなところにこだわっていたりするんですよ。音源だけじゃなくて、ジャケットとかブックレットとか、あのブックレットの新しい匂いとかもすごい好きで。インクの匂い。ああいうのも青春の匂いだと思うので。もちろんストリーミングでたくさんの人に聴いてもらえるのはありがたいんですけど、ストリーミングで聴いて良かったからCDを買おうっていう風になってもらえたら良いなって。
――今後、アーティスト活動を続けていくうえでこれだけは曲げられないみたいなことってありますか。
あいみょん:無理をしないこと…。
――嘘をつかないこと、という意味でしょうか?
あいみょん:嘘はつきます。人を傷つける嘘ではないですよ、でも作りものである以上、歌詞だって嘘はあります。ある種アーティストって嘘みたいなことをやっている、嘘みたいな存在って思われた方が良いかなって思います。なので、曲げられないことと言えば…。感謝の気持ちとか、挨拶とか人としての根本的なところですかね。スタッフさんへの感謝とか、家族を大事にするとか、音楽じゃない日常をいかに大事にできるかが大切だなって思います。
――それでは最後に、楽曲を聴いてくださった多くのリスナーへメッセージをお願いします。
あいみょん:ここまでって思ってほしくないですね。今ってネットがすごく浸透しているので、「今だけでしょ」って言葉も見るんですよ。私も「今だけだ」っていう(謙虚な)精神でやらないといけないって思ってるんですけど、今、私を見ている人が「今だけでしょ、どうせ消える」って思ってるし、「良い曲を出せるのは今だけ」って思ってるかもしれなくて。でも、そこを期待していてほしいって思います。その自信があるから。曲は止まらずに作れるというか、そういう得意技が私にはあるので、それが息絶えるまで離れないでいてほしいなって思います。信じられるものはそこしかありません。
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