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TVアニメ『エガオノダイカ』鈴木利正監督×キミノオルフェ・蟻『この世界に花束を』対談インタビュー



TVアニメ『エガオノダイカ』鈴木利正監督×キミノオルフェ・蟻『この世界に花束を』対談インタビュー

「エガオノダイカってタダゴトじゃないと思うんですよ」

 マンガやラノベやゲームといった原作ありきの作品が主流の時代、オリジナルアニメでしかも戦争を取り扱ったハードSF。タツノコプロ創立55周年記念作品として制作されたTVアニメ『エガオノダイカ』は、言わば冒険的な作品である。その監督を務める鈴木利正と、同作に対して「毎回を最終回にしてやろうと思って」と衝撃のエンディング主題歌「この世界に花束を」を生み出したキミノオルフェ・蟻。この運命的な出逢いを果たしたふたりの対談をここに公開。すべてのアニメ&音楽フリークにご覧頂きたい。

衝撃のエンディング主題歌「毎回を最終回にしてやろうと思って」

--今回のインタビューは、TVアニメ『エガオノダイカ』の監督を務める鈴木利正さんと、衝撃的なエンディング主題歌を務めたキミノオルフェ・蟻さんの対談となります。まずこのタイアップが実現した経緯を教えてもらえますか?

TVアニメ『エガオノダイカ』第一弾PV
TVアニメ『エガオノダイカ』第一弾PV

鈴木利正:このアニメは湯浅光くんとのぶし(NOB-C)さんというふたりが立ち上げた企画なんです。それで自分が映画『傷物語』の演出をしていたときに、このアニメのお話を頂いたんですけど、最近では珍しい原作のないオリジナルアニメで、未来のSFモノで、女の子ふたりが主人公ということで「非常に面白い企画だな」と思って監督を務めさせて頂くことになったんです。そこで当然オープニングとエンディングの話にもなって、アニメーションの歌に特化した人じゃなくて、一般の方に歌を届けているアーティストの方にお願いしたいと思って。

--いわゆるアニソンシンガーとして活躍している人は避けた訳ですね。

鈴木利正:一般の方に歌を届けているアーティストの方のほうが「この作品に対して、ちょっと違う角度から光を当ててくれるんじゃないかな」と思っていて、そういうところを今回はすごく求めていたんです。で、キミノオルフェの蟻さんは、参考資料とかいろいろ見させて頂いたり聴かせて頂いたときに、歌詞に刺さるものがあると思っていて。実際、歌詞はすごく大事にしていらっしゃいますよね?

:そうですね。歌詞がいちばん大事にしている部分です。

鈴木利正:だと思ったので、オープニング主題歌を歌って頂くChihoさん、majikoさんとエンディング主題歌を歌って頂く蟻さんに発注するとき、同じモチーフとキーワードをいくつか提示していまして、それをどう表現してくれるのか。そこが面白いんじゃないかなと思ったんです。要するに「共通のテーマをそれぞれ別の切り口から表現してくれるんじゃないかな」と思っていました。

--具体的には、どんなキーワードを提示したんでしょう?

TVアニメ『エガオノダイカ』鈴木利正監督×キミノオルフェ・蟻『この世界に花束を』対談インタビュー
▲左から:蟻/鈴木利正

鈴木利正:いくつか出したんですけど、いちばん大きいのは「ダブルヒロインのふたりがいろんなことを選択していく」というポイントがあって、その選択した結果は物語の中で出てきて、それはちょっとツラい展開だったりもするんですけど、その選択を常にしていく中で彼女たちがどう成長していくのか。どう変化していくのか。みたいなところはテーマとして大きいかなと思ったんです。だから「選択」というキーワードは入れさせて頂きました。あとはベタですけど「笑顔」だったり。その辺を蟻さんがどういう風に解釈して、自分の中に入れ込んでどうアウトプットしてくれるのか。そこにはすごく興味がありました。で、最初に上がってきた一発目のデモを聴いて「おぉっ!」と思って(笑)。

:アハハハハ!

鈴木利正:最終的にパッケージ化されているものとは、まぁ近いは近いんですけど、もっと歌詞を届ける感じだったのかなと僕的には感じて「これはこれですごく新しいし、良いんじゃないかな」と思ったんですけど、さらに考えてくださって、もっと広くいろんな人たちに伝わるような形でこの完成版のほうは創られたのかなって。

:ガンガン変えていく創り方というか、ゼロイチ生み出したあとはもうどんどん変えていくから、結果的に全く違うモノが出来上がったりするんですけど(笑)。

鈴木利正:歌詞も何回か修正されていますよね?

:かなり変えましたね。要らないものを削ぎ落としたりとか、逆にめちゃめちゃ付け加えたりとか(笑)。

鈴木利正:そのおかげで「この作品にすごく相応しい楽曲になっているな」と思いました。自分でエンディングのアニメーションも創りたかったなと思うぐらい。それは別の方に担当してもらったんですけど、すごくインスピレーションを掻き立てられるような曲だったんですよ。もし自分がやっていたらもっと普通じゃない感じというか、もっとグラフィカルに振ったような気がしますね。キャラクターの心情を丁寧に追いかけていくというのが本編の作り方なんですけど、それとは違ってもうちょっとイメージ的なモノに振っちゃっても面白かったかなって。

:そのバージョンも観てみたかったです。

鈴木利正:創りたい(笑)。

--それぐらい監督のインスピレーションも刺激したエンティング主題歌「この世界に花束を」なんですが、蟻さん的にはどんな想いやイメージを膨らませて制作されたのか教えてもらえますか?

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:監督から頂いたキーワードが「選択」と「笑顔」と、あと「ひまわり」もあったと思うんですけど、ひまわりって夏の季語じゃないですか。だから「絶対にオープニングで入れてくるな」と思っていたんですよ。

鈴木利正:ハハハハ!

:だからエンディングはそれを「花束」にしようと思ったんです。

--なるほど。そういうストーリーもイメージされたんですね。

:あと、ステラとユウキ。この対照的なダブルヒロインの「エガオノダイカ」は何なんだろう?と考えた上で、毎回エンディングはやってくる訳ですけど、その毎回を最終回にしてやろうと思って。そういうインパクトやダイナミックスさを重要視しました。で、ヒロインが毎回入れ替わっていくので、どっちにも当てはまる気持ちを歌おうと思いましたね。オープニングはダブルボーカルなので、それぞれの心境を表現しやすいと思うんですけど、私はひとりで歌うので、そこは苦労したんですけど、結果的に「笑った私は素敵でしょう」という言葉が出てきて。それはそう言い聞かせる意味もあるし、どれだけツラいときでも笑うとか、ツラいがゆえに「笑顔で盾をつくった」……それはどちらのヒロインにも言えるかなと思って「これでいこう」と決めました。

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簡単に1話で終わらせられない痛みをずっと表現してくれる

--「毎回を最終回にしてやろう」と仰っていましたけど、エンディング主題歌は第1話では流れず、第2話の親愛なる人を亡くし、戦争という現実を初めて叩き付けられたヒロインが絶叫するラストシーン、その直後に間髪入れず初オンエアされる。あの流れ、物語と楽曲のシンクロ率の高さは神懸っていましたよね。なので、あの展開に合わせて決め打ちで創られた曲だと思っていました。

キミノオルフェ - この世界に花束を [bye bye, see you again someday VER.] (Egao no Daika ED)
キミノオルフェ - この世界に花束を [bye bye, see you again someday VER.] (Egao no Daika ED)

鈴木利正:2話の最後に初めて流れてくるのは、単純に構成上の都合ではあったんです。でもあの絶叫してエンディングにこの曲が入ってくるというのは、2話の印象を倍加させたなと思いました。だからこれは偶然かもしれないけど、すごく上手く噛み合ったと僕も感じましたね。あと、2話で言うと、エンディングのあとにCパートというか、ステラ側のストーリーを紹介していく流れになるんですけど、上手く分断して展開していく流れも作れたなと感じています。

:まず2話で最終回的な展開が来るだろうと思っていたんですよね。なので、私は狙っていました。脚本も見させてもらっていて、ユウキの悲鳴からの流れで使われると思っていたので、そこで掴みに行かないと、エンディングって一度聴いたらもう聴かない人も多いと思うから。2話で聴いたら3話で聴かなくなる。今、スマホでアニメ観ているとオープニングやエンディングをスキップするボタンがあるんですよ。

鈴木利正:CMをスキップできる機能があるのは知っていましたけど、そこまで飛ばせちゃうんですね。作り手としてはキツいなぁ。

:なので、3話から聴かれなくなるかもしれない可能性をすごく感じて、絶対に2話で最終回ぐらいの衝撃を与える曲にしなくちゃいけないと思っていました。で、このアニメは3話から本当のストーリーが始まるじゃないですか。

鈴木利正:そうですね。現実を知ってからのストーリーが始まる。

TVアニメ『エガオノダイカ』鈴木利正監督×キミノオルフェ・蟻『この世界に花束を』対談インタビュー

:そこから『エガオノダイカ』というタイトルが意味を成してくる。だから1話の平和な感じを観た時点では「物足りないな」と感じて離脱した視聴者もいたかもしれない。でも2話放送後にツイッターを見ていたら「なんだ? この終わり方は!」とか「なんだ? この酷いエンディングは?」みたいな意見もあって、それはお気に入りのキャラクターが早々に死んでしまったり、ポエム入りのエンディングが始まったり、想定外の展開があったからだと思うんですよね。でも私はそうなることを狙っていたというか、その賛否両論の渦巻きみたいなもので、1話で離脱した人を「なんだ?なんだ?」って連れ戻すことが出来ればなと思っていて。それで「ここからスタートなんだよ」と見せつける狙いはありました。

--そこまで考えていたんですね。

鈴木利正:発注したときに、オープニングは広くアニメファンの人たちに向けた「ポジティブ」もしくは「能動的」なイメージで考えていたんですね。だから疾走感のある明るめな曲が上がってくるだろうと思ったし、実際にそういう良い曲が上がってきたと思って。一方、エンディングは「ネガティブ」もしくは「内省的」なイメージで、もっと個人に集約した雰囲気なのかなと思っていたから、もっとバラードっぽい感じの曲が上がってくると思っていたんですよね。そしたら思いの外ガンガン走っている感じだったから驚いて。でも今のお話を聞いて「なるほど、そういうことだったんだなぁ」と合点がいきました。

:私も音楽をやる身としては「エンディングはバラードで来るとみんな思っているだろうな」と分かっていて。泣かしにかかってくる美しいピアノが入って、そこに切ない歌詞が乗っかってくる。そういうバラードを用意すれば絶対に泣くんですけど、でもそうしちゃうと3話から絶対聴いてもらえないと思ったんですよ。一回聴いて満足しちゃって、次から聴かなくなる。だから衝撃をとにかく与えたくて「毎回、最終回にしてやろう」と思ったんです(笑)。

鈴木利正:蟻さんが書いてくれた歌詞は生っぽいんですよね。例えば「擦りむいた膝を抱え」とか「その代価に生傷を」とか……心情的な痛みというよりは、物理的に体に刻まれた痛みが表現されていて、それはアニメーションでは出来なかったことなんですけど、エンディングでポイントとして入ってくるのはすごく効果があって。だから本当に素晴らしい歌詞だと思いました。

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:ありがとうございます。生傷とか擦り傷とか入れたのは、ドロドロと血が流れたり、その傷が治っていく際に出る膿だったり、傷って綺麗な世界じゃないじゃないですか。そのアニメでは表現しきれないであろう生々しさを詞なら表現できると思ったんですよね。あと、エガオノダイカってタダゴトじゃないと思うんですよ。傷を負って「はい、治りました」とは絶対にならないと思うんです。傷痕も残るし。「下を向いていた人が空を見上げた」とかそう言うのは簡単なんですけど、これだけ傷を負ったら、空を見上げたとしても心は下を向いている部分も絶対にある。だから『エガオノダイカ』は空を見上げること自体よりもツラい時期のほうが大事なストーリーだと思って、それが私には合っていたんです。例えば、急な事故や災害などでご家族を亡くした方達がこれから抱えていく痛み。そういう簡単に1話で終わらせられない痛みをずっと表現してくれるから、だから私も詞の中で空を見上げることはやめようと思って。下を向いたまま、一歩踏み出したぐらい。

鈴木利正:今の話は最終話に繋がるかもしれないですね。最終話では(※貴重なお話なのですが、まだ放送前ゆえ伏せさせて頂きます。ぜひ最終話をご覧ください)

--僕は蟻さんのことを長年取材させて頂いているんですけど、彼女はこれまでも傷や痛みを歌い続けてきたアーティストなんですよね。そういう存在が傷や痛みを大切に描く監督と出逢って、彼女と『エガオノダイカ』の世界観やストーリーが重なった。というのはすごく運命的だなと思います。

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:なので、大袈裟に言ったら、ダブルヒロイン+もうひとりエガオノダイカを支払った人間としての目線で歌った曲ですね。ふたりのことも、自分のことも。

鈴木利正:それが楽曲を依頼した側の自分にとっては良かったんですよ。そのアーティストの色があった上で、どういう風に解釈して表現してくれるか。それが見たかったんですよね。で、今回のエンディング主題歌は実際に蟻さんのカラーが出た上で、なおかつ『エガオノダイカ』の世界観をきっちり咀嚼してくれて、自分なりの表現をしてくれた。それは本当に素晴らしいことだし、依頼して良かったなと思っています。

--そもそも監督的には『エガオノダイカ』をどんな作品にしたかったのか聞かせてもらえますか?

鈴木利正:ダブルヒロインをどう魅力的に見せて、このお話を紡いでいくか。そこが当然主眼ではあると思うんです。そういう意味で言うと、感情の変遷みたいなものを丁寧に積み上げていきたかったんですよね。例えば、ユウキで言うと、さっきもモチーフのひとつに「選択」があったという話をしましたけど、彼女は一国の王女様でトップなんですよね。そういう人がある選択をしたことでどんなことが起きるか。それが彼女にどういう風に返って来るか。というのは、何回か見せてきていて、自分が良かれと思ってやったことが裏目に出てみんな死んじゃったりする。そういう経験をしていく中で「この世界の人たちがどうなれば幸せになれるのか」考えていく。そこでの成長。少女から大人に成長していく流れをユウキでは見せていきたくて。

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原作なしのオリジナルでハードSF「それだけの冒険に関われるのは魅力的」

--なるほど。

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鈴木利正:一方、ステラは王女ではなく一兵卒なので、地べたを這いずり回っているような人なんですよ。特殊な部隊ではあるんですけど、ひとりの軍人。だから彼女は「成長」というより「変化」を描いていきたくて。人と接するときは笑顔を見せているんだけれども、それは自分の心を守る為で、ある意味、偽りの笑顔なんですよね。それがビュルガー分隊の中での人との関わりによってどんどん変化していく中で「自分の居場所はどこなんだろう」みたいな。孤児みたいな形で育てられてきたんですけど、だから彼女の場合は「その居場所を見つける」といったところに気持ちは行くんですよね。で、その居場所を守る為にどうするべきか考える。気持ちの流れとしてはそういう風になっていくので、これから(※貴重なお話なのですが、まだ放送前ゆえ伏せさせて頂きます)……だからユウキは成長していくんだけれども、ステラは元々持っていたものが表に出る、そういう変化をこのお話の中で見せられればいいなと思っています。で、最後にふたりがお互いの(※貴重なお話なのですが、まだ放送前ゆえ伏せさせて頂きます)

--日本で戦争を扱った代表的なアニメと言えば『起動戦士ガンダム』がありますけれども、この『エガオノダイカ』における不幸が起きる速度やボリュームが凄まじいですよね。で、世界を司るエネルギーがあって、そこでの問題も描かれる。そういったリアリティも含めてかなり鮮烈なアニメなんじゃないかなと感じます。

鈴木利正:ガンダムはリアル路線で戦争を描いた最初の作品だと思います。で、この『エガオノダイカ』も企画を下さった方々と話し合っている中で「戦争で人はあっけなく死んでしまう。だから主人公補正とか全く効かないモノでいいんじゃないか」という方向性にしたんですよ。ヨシュアもあっさり死んじゃいますからね。戦争の中で人が死ぬというのはそういうことなんですよね。だから変に情に流されるような作りにはなってないです。

--人気キャラだから死なさないとか一切ない作りですよね。

鈴木利正:逆にそういうものは排除したほうが、この世界観の中での現実を見せる上では良いんじゃないかと思いました。

TVアニメ『エガオノダイカ』鈴木利正監督×キミノオルフェ・蟻『この世界に花束を』対談インタビュー

:共感します。今、私たちが生きている世界も本当にそうだと思いますし。私も最近身近な人が亡くなったりして、本当にあの世って紙一重の世界だなと思って。10分息を止めたら行ける世界ですからね。すごく近いなと思ったんです。でも自分に死んだ経験がないから「死なないだろう」とどこかで思っていて。「いつか死ぬだろう」とは思うんですけどね、でも「すぐそこにある世界」だとは気付かない。あと、「この世界に花束を」のCメロで「君ならさよならも言わず笑うから」という歌詞があるんですけど、亡くなった人は亡くなったことを大きく捉えていないというか、あの世という世界があるなら、そこで悲しんだり恨んだりグジグジしてないと思うんですよね。大袈裟に「さよなら」も言わず、笑いながらそこに居るんじゃないかなと思って。だからヨシュアとかもそんなに恨んでないんじゃないかなって。

鈴木利正:ヨシュアに関しては自分が死ぬとも思っていなかったからね。

:「気付いたらあの世にいた」みたいな感じですよね、きっと(笑)。

--監督としても『エガオノダイカ』との出逢いは、自身のアニメーション演出人生の中で大きいものですか?

鈴木利正:そうですね。そもそもオリジナルのアニメ作品に関われる機会ってほとんどないですからね。大抵はマンガやラノベや小説やゲームといった原作があった上でアニメ化するパターンがほとんどなんですよ。それのほうが固定のファンもいるから企画を通しやすいんです。そういう意味では、この作品は企画としてはかなりの冒険。キャラクターはもちろん魅力的ではあると思うけど、作品の要素としてはかなりニッチなところを攻めていますから……まずハードSFというところがね、あんまりファンがいないんですよ(笑)。で、なおかつ戦争モノで、全く違う星の話だったりするから、一般のアニメファンがパッと受け入れられる素地がそもそもない企画なんです。それだけの冒険に関われるのは魅力的だったし、キャラクターの心情を丁寧に追いかけていく作品がつくりたい人間としては、この作品はそれが出来るので、結果としてどういう評価を頂けるかは分からないですけど、とても良いお話を頂いたなと思っています。こういう作品がどんどん出てきてほしいなとも思いますね。

--では、最後に、こうして対談してみた上で『エガオノダイカ』でご一緒できたことに対する感想をそれぞれお願いします。

TVアニメ『エガオノダイカ』鈴木利正監督×キミノオルフェ・蟻『この世界に花束を』対談インタビュー

:私の人生でいちばん書きたかったことを書いて、このTVアニメ『エガオノダイカ』を通して世に聴いてもらえる。そういう機会を下さったことが本当に嬉しいです。このアニメは回を重ねるごとに「この回の主人公のこの気持ちは、あのときの私の気持ち」って主人公と同じ心境になるんですよ。それでエンディングが流れるから毎回涙するんですよね(笑)。だから本当に感謝していますし、今日鈴木監督とお話させて頂いたら、本当に純粋にアニメを創っている方で、すごく優しい方だなと思いました。

鈴木利正:アニメしか創ってないですから(笑)。

:私も音楽しか創ってきていないので、そういう「アニメしか創ってこなかった人」とひとつのモノを創れたということに感動しました。必死に歌詞書いた甲斐がありました(笑)。

鈴木利正:本編とはまた別の『エガオノダイカ』の見え方をエンディングで表現してもらって、ひとつ別の色を付けてもらえた。本当に頼んで良かったです。ありがとうございました。

Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada

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キミノオルフェ「この世界に花束を」

この世界に花束を

2019/02/06 RELEASE
XNST-10002 ¥ 1,320(税込)

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  1. 01.この世界に花束を
  2. 02.スターシーカー [don’t worry, it’s just the end of this earth VER.]
  3. 03.この世界に花束を -instrumental-
  4. 04.スターシーカー [don’t worry, it’s just the end of this earth VER.] -instrumental-

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