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熊木杏里 『春の風』 インタビュー

熊木杏里 『春の風』 インタビュー

 先月28日にリリースされたばかりのニューシングル『春の風』。すでに映画『バッテリー』の主題歌として劇場やテレビコマーシャルなどで耳にしている人も多いかと思いますが、あの声の持ち主は、熊木杏里と言います。実はすでにアルバムを過去に3枚も発表しているシンガーソングライターです。知らなかった?いえ、別にいいんです。ただあの『春の風』という曲がもし気になったのなら、このインタビュー記事をご覧いただきたいと思います。あなたがふと気になったあの曲が生まれるまでのお話です。

PAGE1

--『新しい私になって』リリース以降、今まで以上に忙しくなってる感じ?

熊木杏里:そうですね。今すごく忙しい(嬉しそうに)。自分の気持ちがすごく張ってるのが分かる。「気合い入ってるな」みたいな。それが自分で分かる。あと、『新しい私になって』のリリース以降、女性の方に取材して頂くことが増えたんですけど、あの曲が失恋の曲だったんで、よく「実体験なんですか?」って聞かれたりとか、逆にインタビュアーさんの恋愛話を聞く機会が増えました(笑)。

--なるほど(笑)。で、今日はまずニューシングル『春の風』の話を聞かせて頂く前に、先日約1年ぶりぐらいにSHIBUYA duo MUSIC EXCHAGEで熊木さんのライブを観させてもらったので、そちらの話をまず聞かせてもらいたいんですけど、本人的にはいかがでした?あの日のライブは。

熊木杏里:気持ちよかったです。ライブハウスという空間でライブをするのが久しぶりだったので。あと、いつもピアノを弾いてくれている吉俣良さん以外にもストリングス奏者の方々にも演奏してもらえたのも嬉しかったし。本当、全部が嬉しいことって感じだったんですよ。ああいうライブは出来得る限りやっていきたいですね~。「次はもっとこうしよう」っていう考えもあるし、空気作りももっと上手くなりたいし。何より反応がその場で返ってくるので。

--個人的には、ちょっと厳しいことを言うようですけど、前半声が乗り切れてなかった印象を受けたんですよ。『私をたどる物語』と『風の記憶』。まだまだこんなもんじゃないだろうって。自分としてはどうですか?

熊木杏里:いや、私もそうなんじゃないかなと思ってました(笑)。すごく久しぶりっていうのもあったので。

--でも3曲目の『新しい私になって』は良かったです。初めて生で聴いたのもあったけど、あんなにライブハウスで気持ち良く響くのが新鮮で。

熊木杏里:私もすごく気持ちよかったです。ピアノが薄い感じで始まったのもあって、自分の声がすごくよく聞こえたんですよ。

--生のストリングスをバックに歌うのは、どんな気分でした?

熊木杏里:気持ちの別のところを埋めてくれている感覚がありましたね。だから自分もそこに寄りかかりながら気持ちよく歌えるんですよ。今までは、吉俣さんと二人でライブをする期間が長かったんで、開拓できていない部分がまだまだあるなって思いました。それはすごく思うんですよ。それは、平賀さんがさっき言っていた部分にも繋がると思うんですけど。

--でも開拓できたときの気持ち良さを知ってるから、どんどん開拓していける。

熊木杏里:そうそうそう。だからライブはどんどんやりたいなって。もっとライブという空間に居続けたいなって思いますね。間隔を開け過ぎちゃうと、生きている生のリズムみたいなモノがどこかに隠れちゃうから。

--あと、あの日、最後に歌ったのが今回リリースされる『春の風』。実際ライブで歌ってみて、いかがでした?

熊木杏里:気持ちがこもりますね。ああやってピアノで歌うのは初めてだったんで、練習とかしたんですけどね(笑)、気持ちはちゃんと込めることができたかなって。

--『春の風』も“歌えば歌ほど”の曲になりそうですよね。いろんな人の感想とかをもらう中で広がっていきそうな曲。

熊木杏里:そうですね~。なので、もっともっと歌って良い歌にしていきたいなって思ってます。

--あとあの日のライブの全体的な印象なんですけど、イベントのムードというのもありきだったとは思うんですが、一言で言うと、熊木杏里、明るかったね(笑)。

熊木杏里:明らかに変わりましたね(笑)。ただあんまりね、いろんなことを考えてないんですよ。前の方が見えていないことがたくさんあったんで、いろいろ考え過ぎちゃって、上手く喋れなかったりしていて。でも今は自分の気持ちがすっごい楽しいから、その気持ちのままでいればいいんですよね。だから「今日は気持ち良いライブだった!」って、すごく開放的な気分になれる。なので今はすごく自然な姿でどんなときも居れている感覚がありますね。

PAGE2

--今後もあの日のイベントのような、いろんなジャンルやスタイルのアーティストだったり企画だったりと肩を並べて自分の音楽を表現する機会は増えていくと思うんだけど、その状態で臨めるのはすごくベストだよね。

熊木杏里:そうですね。「私なんて、どうせ」って孤立するんじゃなくて、「自分はここにいる」って気持ちでいるので。それは自信が少しずつですけど出てきてるってことだと思うんですよ。『新しい私になって』で前より私の曲を聴いてくれている人が増えている状況とか、いろんな良い状況が私に自信をくれている。だから今は新しい状況や環境に対してプレッシャーを感じるというよりは、新しい状況が生まれていくのが嬉しい。変な気負いがないというか。

--でも元々どんなシチュエーションであっても「自分のやるべきことをやるだけ」っていうことを分かっている人ってイメージはあったんだけど、実際のところはどう?

熊木杏里:そうそうそう。でもどこか少し蔭な感じ。「そこにいる意味があんまりない」みたいな。今は立ち方が違う。ちょっと前を向いてて、背中は向けてない。

--そんな感じでこの先いろんな新鮮な体験をすることが想像できる中で、今作『春の風』はすごく「人が生きる」というドラマを歌ってる曲であると共に、今の熊木杏里の心境を綴った曲でもあるなと思って。自分ではどう思います?

熊木杏里:まったくその通りで。今までの流れがあって、「自分はひとりで歌をうたってるんじゃないんだ」って気付けて、それと「野球はひとりじゃできないスポーツだ」っていう部分が重なって。映画『バッテリー』の主人公にすごく時間を重ねて作りました。口で言うとちょっと恥ずかしい感じなんですけど、歌うときに、誰かに伝えないと自分の気持ちは届かないし、それができないと何のために曲を作ったかわからない。そういう気持ちが『しんきろう』っていう曲を作ってから自分の中に強くあって。「自分のためだけじゃないじゃん?」っていう。人に聴いてもらって、力を返してもらったときにすごく「生きている」ことを実感したり、自分の存在を確信したりできる。だからそういう気持ちをどこかに注入したいなと、『春の風』には思ってましたね。「一人じゃない」っていうのをすごく言いたかったんですよね。その温かさは何ものにも代え難いっていうことを。それはまず最初にありました。

--映画主題歌の起用だったり、『新しい私になって』のスマッシュヒットだったり、過去の作品も見直されたりしているこの状況ってすごく有り難いけど、一歩間違えると自分を見失いやすい状況でもあると思うんですよ。でも『春の風』は、人が自分らしく生きていくための、大切なモノを見失わないための歌じゃないですか?ここで熊木杏里がこの歌を発表する意味はすごく大きいなって。

熊木杏里:それはすごく感じます。偶然なのか必然なのか分からないですけど、『バッテリー』の物語の内容と、自分が漠然とでも今このタイミングで感じていたことが合致して、そんなことって滅多にあることではないと思うんですよ。

--要は『バッテリー』が伝えたいこと、そして熊木杏里が伝えたいことが見事にシンクロしたってことですよね。だからこそ『春の風』が主題歌に起用された。あたりまえのようで・・・

熊木杏里:何気にすごいことですよね。

--その映画『バッテリー』の主題歌起用までの流れを改めて聞かせてもらっていいですか?

熊木杏里:元々主題歌に私の曲が使われるなんていう可能性はなかったんですよ。ただ偶然「『バッテリー』って面白いよ」って聞いていて、原作を読もうと思ったことが大正解だったんですけど、読んでみたらすごく自分に当てはまる部分がいっぱいあって、自分のことを振り返るモードにもなっていったんです。で、涙が出てくるフレーズとかあったりして。なんか、哲学書を読んでるような気持ちになっちゃって。そしたら吉俣さんが映画版の『バッテリー』のサントラを担当する話を聞いて、撮影現場に行かせてもらったんですよ。そこで「行ってみたい!」って思えたことが今思うと良かったんですけど、現場で「巧(たくみ)役はあの子だよ」なんて教えてもらったりしたんです。そしたら自分の中で『バッテリー』が大きくなっていって、とにかく「私はこう思う」っていうのをただ書いてみたくなったんですよ。『バッテリー』に対して「アチッ!」ってくるモノがあって。で、デモテープを吉俣さんに聴いてもらったら「すごく良いから聴いてもらおうよ」って。それで土俵に乗せてもらえて、あとは決めるのは映画を作る人たちだから。

--それで決まったときは、どんな気持ちに?

熊木杏里:私的には「もし決まったらいいね」ぐらいの感じだったんですよ。もちろん決まったらすごく嬉しいし、でも「まさか」っていうのがあって。だから電話で主題歌起用の連絡を受けたんですけど「本当ですか!?」って感じで(笑)。「伝わったんだ!」と思って。すごく嬉しかったですね~。

--もう映画『バッテリー』は観たの?

熊木杏里:観ましたっ!試写会だったんですけど、泣きましたね。でも自分の曲が流れてきたときだけ、泣けなかったです(笑)。

--我に返った(笑)。

熊木杏里:完全に我に返りました(笑)。ただ『バッテリー』の映像と一緒に流れてくる『春の風』は、すごく感動的でしたね。「ただの歌じゃなくなってる」「いろんな色が付いてる」って思いました。聞こえ方も全然違うし、「すごいなぁ」って。だから最後まで席は立たないで観てほしい。というか、そうはならないだろうなと思いました。

PAGE3

--あと、『春の風』の中で「夢を箱にしまいこんだ 鍵はきっと今でも もう一度開けられる日を 待ち続けているはずだから」というフレーズがあるじゃないですか。この名フレーズは『バッテリー』に引き出された部分もあると思うんですけど、実際にはどんな想いから生まれたモノだったりするんですか?

熊木杏里:夢を箱にしまいこんだ・・・自分もそうだったんだと思う。あと周りにそういう人がすごくいっぱいいたんです。で、すごく夢について考えたんですよね。「夢に向かっていってる人もいるけど、夢を諦めちゃった人もいるんだよなぁ」って。で、『バッテリー』を観て「これは夢を諦めちゃった人が観たときに、もう一回それを思い出せる映画だ」って感じたんですよ。ピン!と感じたんです。夢を箱にしまいこんじゃった要素っていうのは、悲しいことだったり、上手く行かなかったことがあったり、人によって“鍵”はいろいろ違うと思うんだけど、その鍵が今すごく重要なんじゃないか?って勝手に思ったんです。「いろんな原因っていう鍵を作って、閉じこめちゃってる人っていっぱいいるんじゃないか」って。私も自分で自分に鍵を掛けていたことがすごくあったけど、「それを開ければ、夢はあるじゃない」って。みんなある。

--その言葉に辿り着く前に「だれがために生きる 名前もない心」というフレーズが出てくるよね。で、僕はこの言葉にファーストアルバム『殺風景』の1曲目に収録されていた『夢見の森』を思い出したんですよ。「人生はいつから自分だけのためじゃなくなるんだろう?」っていう歌を。

熊木杏里:そこは正に『夢見の森』と同じ気持ちで書いてます!・・・バレてる(笑)。

--(笑)。

熊木杏里:一瞬、お父さんの姿が浮かんだんですよ。『夢見の森』もお父さんの歌なんですけど。一瞬、お父さんのことを思い出して、「だれがために生きる 名前もない心」というフレーズが出てきたんです。『バッテリー』も“お父さん”とか“家族”というのが大事なポイントとしてあるから、自分にもすごくリンクしたんですよね。

--「人生はいつから自分だけのためじゃなくなるんだろう?」という『夢見の森』のフレーズは、歌にした後も熊木杏里を葛藤させる要素として在り続けたモノだったんじゃないですか?

熊木杏里:そうですね。「人生はいつから自分だけのためじゃなくなるんだろう?」とかそういう気持ちの方に負けていたから。だけど今はそれをそうじゃない方へ持っていこうとしているから。「何か原因があるかもしれないけど、どうにかなるんじゃないの!」って思いたい。そういう力があるから「自分は今生きてるんだ」って思える方へ持っていきたいな~って。

--そうして『夢見の森』で表現されていた葛藤が『春の風』で、ある種、帰結するわけですが、それは急に帰結できたモノじゃないってことは、セカンドアルバムを聴くとよく分かるんですよ。あの『無から出た錆』に収録されていた『風のひこうき』で、おこがましいかもしれないけれど「みんなの夢を乗せて飛んでいく」という想いを熊木さんは歌ってるんですよね。ただこれって、自分に対して言ってることで、「みんなもそうしよう」とは提案してないんですよ。

熊木杏里:そうです。その通りです。

--でも今回『春の風』で熊木さんは「夢を箱にしまいこんだ 鍵はきっと今でも もう一度開けられる日を 待ち続けているはずだから」って歌うんですよ。「みんなも諦めないでよ、待ってるよ、箱の中に夢」って。

熊木杏里:すごい、その通りです。『風のひこうき』は、鍵を掛けてしまっている人はいても仕方ないと思ってるんです。少し冷たいというか、諦めてるというか。でも今は「いやいや、それは変えられるんだから」っていう風になってきている。だから私がこれからもいっぱい曲を作れる気がしているのは、そういう方向に向かっているから。いろんなモノにぶつかってみたい。自分を燃えさせてくれるモノもたくさんあるかもしれないから、そっちの方へ行くのは、すごく良い生き方だと思う。

--で、僕は思ったんですよ、説得力のある歌っていうのは、人間そのものと一緒で本当に時間や葛藤や出逢いや別れを繰り返すことでようやく生まれるモノなんだなって。

熊木杏里:そうですね。もう言うことないぐらい、その通りだと思います(笑)。

PAGE4

--(笑)。で、これが今日一番熊木さんに伝えたかったことなんですけど、この『春の風』が生まれたことで、『殺風景』も『無から出た錆』も、もちろん『風の中の行進』も、どの熊木杏里も全てすごく意味のあることだったって感じられると思うんですよ、熊木さん自身。

熊木杏里:流れを感じますからね。自分が歩いてきた流れ。何がどこでどのように変わったんだろう?って思うと、すごく面白くて。流れがあるから今回のようにドンピシャに来るモノがあるっていうのは、もらいモノだと思うし、人って本当に気持ちの生き物だなって思うし。

--だからこれまでは、例えば『無から出た錆』を作ったときは『殺風景』に対して否定的だったりとか、『風の中の行進』を作ったときは『無から出た錆』に対してそんなに肯定的じゃなかったわけだけど、でもそのすべてに意味があったんだと分かった今、『殺風景』の自分も『無から出た錆』の自分も肯定的に受け入れられるようになると思うんですよね。今だったらちゃんと面と向かって『窓絵』も『夢見の森』も歌えるんじゃないかって。

熊木杏里:本当ですね。最近そういえば、気が付くと「前作も聴いてほしいです」とか言ってます。

--作品自体は一枚一枚区切られて生まれていくけど、実はずーっと繋がっていて、単純に言っちゃうと、熊木杏里の音楽の魅力、もっと言えば熊木杏里という人の魅力はその上で成立してるんだと思う。

熊木杏里:・・・本当だ(笑)。過去の自分と今の自分は違うけど、どれも自分。自分がここに来たのは、こういう過程があったからなんですよね。

--だから最近僕がよく「ライブをやりましょうよ」って言うのは、そのすべてを受け入れた上で過去の曲も含めたライブを今の熊木杏里に聴かせてほしいからなんですよ。『殺風景』も『無から出た錆』もあのときにしか出せないモノだし、すごく良いアルバムだと思うんですけど、ただその反面、CDの中にある想いは変わることはないし、それをこれまでの熊木さんは肯定できなかったと思うんです。でもライブだったら、熊木杏里っていう人間が生きてる限り・・・。

熊木杏里:もう一歩踏み込んだ意味だったり、別の意味をもった曲として歌える。本当ですね。それはやってみたいですね。

--楽しみにしてます。そんな『春の風』なんですけど、この詞とメロディが生まれてきたときっていうのは、どんな気持ちになりました?

熊木杏里:もう降るように本当に出来たんですよ。「間違いなく、これだ」って思えるモノが。そのときは理由も意味もなくそう思ったんですよ。映画が語らない部分、こっちが考えさせられる部分がすごくいっぱいあって、原作も結構そんな感じだったので、私はその隙間の部分を埋めるような感じで作っていけて。「このときの心境にはどんなメロディがいいかな?」とか。あと歌入れに関しては、自分の部分はもちろんあるんだけど、“誰かのため”っていう、すごく大きい想いがありましたね。だから「いつまで経っても歌えるんじゃないかな」って。年齢を重ねたら重ねただけ、もっと良くなるかもしれないし。

--僕ね、映画館で『バッテリー』の予告が流れ始めたばかりのときに偶然映画館行ってて、その予告を観たんですよ。で、全く無防備の状態で熊木杏里の歌声が聞こえてきて、目的の映画を観る前に感動しちゃって(笑)。そのとき、本当今更だけどね、「良い声だな」って思った。

熊木杏里:本当ですか?でも本当に「伝わるといいな」って思ってます。かつてないぐらい気持ちがこもってるつもりなので。

--いや、伝わりますよ。曲にも詞にも想いが溢れてる感じが出てますもん。

熊木杏里:それをやって、そんな感じにもできるんだなって知ったんですよ。「気持ち、まだいっぱいあったわ!」みたいな。使ってない気持ちが。

--前まで“溢れさせない美学”みたいなところもあったじゃないですか?

熊木杏里:そうそうそう!

--“ハミでない”みたいな(笑)。ギリギリで抑えることで生まれるモノの気持ち良さ。それはそれですごく良かったんですけど。

熊木杏里:溢れさせることができなかったんですよね。あの、これはちょっと余談なんですけど、先日、小曽根真さんとお話をする機会があったんですよ。で、「300キロ出る車で80キロで走るのと、80キロしか出ない車で80キロで走るのは、違うんだよ」って言ってて。それで、やってみて出過ぎちゃったら「あ、ダメだった」って思えばいいから、とりあえず自分ができることをガーってやってみればいいって思ったんですよ。「自分に使ってない気持ち、いっぱいあったんだ」って気が付けたんです。それに気付けたのは、今回大きかったですね。

PAGE5

--また今作の他の収録曲についても触れていきたいんですけど、『幽霊船に乗って』。この曲はどんなイメージや心境から生まれた曲なんでしょうか?

熊木杏里:歌詞の通りで、本当に電話が掛かって来ちゃったんですよ。過去になっていったはずの人から。でも私は次に向かっていこうと思っていたから、完全に彼のことは心の中でお墓に埋めて、お線香立てて、もう歩き出していたんですよ。女性の人には分かる感覚だと思うんですけど。私は前に向かっていってるのに、彼は過去の世界でまだ生きてるんだっていう感覚をちょっとコミカルに、彼を幽霊に例えてみたりして、そのときの気持ちを歌にしてみました。

--あの、熊木杏里って女性シンガーソングライターのくせに恋の歌少ないじゃないですか(笑)。

熊木杏里:「くせに」って(笑)!

--だからこの曲の内容が意外でもあり、また今の状態だから出てくる曲なのかなとも思ったりしたんですけど。

熊木杏里:そうですね。「こういう曲を入れてもいいかもしれない」って思えたのは、今の状態だからだと思います。

--で、恋の歌ってことで、昔の熊木杏里の恋の歌を聴こうと思って、昨日ね、『窓絵』のカップリングに入ってた『時計』を聴いたのね。今更気付くのも遅いんだけど、明らかに歌声変わってるね。

熊木杏里:それは私も感じますね~。あの頃はどこか地に足が付いていない感じで歌ってる感があります。でも『時計』は、曲としてはすごく好きですね。で、どちらが良いかわかりませんけど、『幽霊船に乗って』の場合は、すごく自分に意欲がある。それが声にも出てると思いますね。

--そして3曲目の『遠笛』(とおてき)。この曲はどんなイメージや心境から生まれた曲?

熊木杏里:これは、すごく古い曲なんですけど、好きな曲なんですよ。ただ自分にとって大事な歌が他にいっぱいあったもので、出すタイミングがなくて。あんまりメッセージとかはなくて、遠距離恋愛の物語の歌なんで、こういう歌が3曲目に入るのは良いかなと思って。

--そんな3曲入りのニューシングル『春の風』ですが、すごく大切な一枚になっていきそうな感じはしますか?

熊木杏里:そうですね。なってくれると良いと思うし。自分の中では、もうものすごく意味のある一枚になってますね。

--今作のリリース以降はどんな展開を予定したり考えていたりするの?

熊木杏里:「アルバムを作りたいなぁ」とは思ってます。自分の中ではなんとなくイメージができているんで。また違う感じになってると思いますよ。今から「どれだけ詰め込めるかな?」「自分にこれからどれだけのことができるかしら?」って思っているので、まだ収拾はついてないんですけど、きっと今までの中で一番人の心に届けることのできるアルバムになるんじゃないかな?

--そういう意味で、今まで一番強いアルバムになりそうですね。

熊木杏里:そうですね。逃げてないというか、前を向いているアルバムになると思います。

--それでは、最後になるんですが、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

熊木杏里:平賀さんが言うと、初心に戻るんだよなぁ。「そういえば、最後のメッセージ、苦手だったなぁ」って(笑)。う~んと、映画『バッテリー』と『春の風』、両方観て聴いてもらいたいですね。映像ありきで聴いてもらいたいとも思っているので。あと、一番伝えたいことは、「夢ってなんだったっけ?」ってもう一回考えてもらえれば、ちょっと違う世界が見えたりとか、ちょっとあったかい気持ちになってもらえるんじゃないかなって、思うんです。『春の風』にはそうした想いを込めているので、それが届くといいなって思っています。

熊木杏里「春の風」

春の風

2007/02/21 RELEASE
KICM-30 ¥ 1,234(税込)

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Disc01
  1. 01.春の風
  2. 02.幽霊船に乗って
  3. 03.遠笛

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¥1,047(税込)

春隣
熊木杏里「春隣」

2008/05/21

[CD]

¥1,234(税込)

私は私をあとにして
熊木杏里「私は私をあとにして」

2007/10/24

[CD]

¥2,934(税込)

私は私をあとにして
熊木杏里「私は私をあとにして」

2007/10/24

[CD]

¥3,086(税込)

七月の友だち
熊木杏里「七月の友だち」

2007/07/25

[CD]

¥1,234(税込)

春の風
熊木杏里「春の風」

2007/02/21

[CD]

¥1,234(税込)

新しい私になって
熊木杏里「新しい私になって」

2006/11/22

[CD]

¥1,028(税込)

風の中の行進
熊木杏里「風の中の行進」

2006/09/21

[CD]

¥3,143(税込)

流星
熊木杏里「流星」

2006/05/24

[CD]

¥1,234(税込)

戦いの矛盾
熊木杏里「戦いの矛盾」

2006/01/25

[CD]

¥1,234(税込)

私をたどる物語
熊木杏里「私をたどる物語」

2005/04/06

[CD]

¥1,234(税込)

無から出た錆
熊木杏里「無から出た錆」

2005/02/23

[CD]

¥3,143(税込)

殺風景
熊木杏里「殺風景」

2003/03/26

[CD]

¥3,143(税込)

今は昔
熊木杏里「今は昔」

2003/02/21

[CD]

¥1,257(税込)

咲かずとて
熊木杏里「咲かずとて」

2002/08/21

[CD]

¥1,234(税込)

窓絵
熊木杏里「窓絵」

2002/02/21

[CD]

¥1,234(税込)

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