Special
AK-69『THE ANTHEM』ソロデビュー15周年記念インタビュー
アンダーグラウンドから「地方馬がダービーを制す」と殴り込んできたAK-69。ヒップホップシーンの異端児はその魂を燃やしたまま戦い続け、その生き様は気付けば音楽フリークのみならず、一流アスリートからサラリーマンまで、X JAPANのToshlやYOSHIKI、UVERworldといったロックスターたちからSWAYなどの新鋭ラッパーまで幅広く共鳴を生んでいき、かの長渕剛から「俺と一緒で“闘う”使命を与えられた人間」と言われるまでに至った。そんな男のソロデビュー15周年イヤーに至るまでの軌跡、そして新アルバム『THE ANTHEM』に込められた想い。ぜひとも一読頂きたい。
15周年「この生き方で良かったんだな」~X JAPANのToshlやYOSHIKI、UVERworldとの出逢い
--ソロデビュー15周年イヤーを迎えました。何か感慨みたいなものはありますか?
AK-69:そんなにないですね。ソロデビューするまでは名古屋のアンダーグラウンドで8年ぐらい活動していたので、トータルで言うと自分の半生以上ラップし続けているんですけど、だからと言って今の自分に満足はしていない。ただ、変わらず支え続けてくれている人がいて、今もこうして活動できていることに関しては感謝しています。まぁでも最初は何もなかったんで、そう考えると……感慨深いな!--感慨深いんですね(笑)。
AK-69:でも、昔からすると今いる場所は高い山かもしれないですけど、今は今でもっと高い頂(いただき)を見ているんで、だから満足しないのかもしれないですね。--2010年に横浜アリーナで開催された【BEAT CONNECTION 2010】、日本のR&B/ヒップホップアーティストが一堂に会したフェスがあって、わりとパーティー感覚のイベントの中でひとり魂剥き出しのライブをしていたAK-69を観ているんですけど、あのアンダーグラウンドからナメられてたまるか!と殴り込んできたような存在が、これだけ大きい存在になっているのは個人的に感慨深いです。道なき道を歩んできての今ですから。
AK-69:そうですね。今年3月の日本武道館2daysも1dayにしておけばアンパイで成功させられるんですけど、自分でも「なんでこんなに挑戦しちゃうのかな?」と思うところはあります(笑)。もうちょっとゆっくりしても良いんじゃないかって。でも今回のアルバム『THE ANTHEM』もそうなんですけど、自分が戦い続けているからこそ、戦っている人や葛藤がある人が俺の音楽に共鳴してくれるんだろうなと思うので、これが俺の生きる道なのかなって……半ば諦めてますけどね(笑)。--攻め続けるしかない(笑)。
AK-69:結局、止まっちゃったら、いろんなことを休んじゃったら、自分らしくいられないと思うんですよね。いつも偉そうなこと歌っていますけど、もちろん完璧な人間じゃないし、でも音楽の道に対してだけはまっすぐで、いつも必死でありたい。そう思うと、ここでラクな道じゃなく敢えて険しい道を通ることこそが「自分の真髄なんじゃないかな」と思っていますね。--自分の生き方に共鳴してもらうことに対する意識、それは最初からあったものなんですか? それとも徐々に大きくなっていったんでしょうか?
AK-69 - 「IRON HORSE -No Mark-」 from『DAWN in BUDOKAN』(Official Video)
--共鳴を意識した15年じゃなく、共鳴に気付いていった15年だった訳ですね。
AK-69:そうですね。気付いたらこうなっていた。アスリートの人たちが聴いてくれているとか入場曲にしてくれているとか、そういうこともあとから知ったので。だから「音楽ってすげぇな」と思いますね。--その15年の物語において、2018年は象徴的な1年でしたよね。出逢いがたくさんあったというか、想像だにしていなかった出来事がたくさんあったと思うんですけど、自分的にはどんな1年だったと感じていますか?
AK-69 「BRAVE feat.Toshl(X JAPAN)」 - Trailer / Studio Session-
--(笑)
AK-69:今までの俺からすると想像できなかったことだから。ToshlさんやYOSHIKIさんみたいな人が自分の音楽を聴いて「コラボしたい」と思ってくれたり「良いね」と思ってくれた。自分の音楽の力がどんなものなのか改めて認識できる年になったと思います。Toshlさんも俺の曲について「こういうことをやれる人間がいるんだと思って、すごく驚いた」と言ってくれて、それってずっと俺がやってきたことだし……「あ、Toshlさんみたいな人にまで響いてたんだ!?」と思ったらいろんなことを噛み締めることが出来たし、それで『ミュージックステーション』に出演させてもらったりとか。今年も新しいアルバムを引っ提げて日本武道館2daysに挑戦する訳ですけど、それが実現できる状況を2018年は作れたなと思いますね。自分がどういう存在なのか、大きな規模で知ることが出来た1年でした。--ロックバンドとのコラボと言えば、UVERworldとの共演もありました。
AK-69 - 「ONE LIFE feat. UVERworld」 (Official Video)
- AK-69とSWAY~LIVE TOUR 2018「新しいお客さんがめっちゃ入っている」
- Next >
リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
AK-69とSWAY~LIVE TOUR 2018「新しいお客さんがめっちゃ入っている」
--また、Def Jam RecordingsのレーベルメイトでもあるSWAYとの共演もありました。AK-69から見てどんな存在だと感じていますか?
SWAY『UNCHAINED』アルバム・ダイジェスト【2018.8.29 out!!】
--メインストリームに浸透させる力を持った存在であると。
AK-69:日本ってヒップホップがマジ遅れてるじゃないですか。島国だから洋楽のまんまなことをやっても受け入れられないとか、そういう土壌の問題もあるんですけど、ポピュラーさで言っても、最近でこそ『フリースタイルダンジョン』とかの影響でお茶の間にラップが聴こえるようになってきたのはすごく良いと思うんですけど、それにしてもポピュラーさはUSとかに比べたら全然低い訳で。アジアの中で見ても、タイはすげぇヒップホップ盛り上がってるし、韓国はその前からもっと盛り上がってるし、それに対して日本はすごく遅れていると思うんですよね。アンダーグラウンドの中で格好良いと言われていることをやる美学も大事だし、若い子たちはそういうものをどんどんやったほうが良いと思うんですけど、それでも頭ひとつ抜けた奴らがもっとお茶の間にも刺していけるようなキャラクターと人気を備えて、ヒップホップを広めていく活動をしていくことが今は大事だと思っていて。SWAYはそれが出来る人間だなとすごく思いますね。--なるほど。
AK-69:そういう人間がDef Jamに入ったことによって、それまでは「知ってる後輩」ぐらいの関係性でしたけど、すごく結束できている。俺とも楽曲の作り方とか全然違うんですよ。でも「一緒だから良い」とか「違うからダメ」とかじゃないんで。違う刀として「良い刀がDef Jamに揃ったな」という気もしていますし、これから一緒に戦っていきたい同志でもあるなと思っています。--今の話を聞いていて、AK-69にもそのまま当てはまるところがあるなと思ったんですけど、いわゆるメインストリームと同調とか迎合というスタンスではなくて、ボーダーがあるとしたら「こちら側のスタンスやスピリットのまんま、あちら側で勝負してやる」という姿勢がAK-69のこの15年そのものだったりもする訳じゃないですか。
AK-69:そうですね。先日、t-AceとPV撮って、それから呑んでいたんですけど、最終的にベロベロになった状態で「こんなこと言ったら怒られるかもしんないッスけど、なんでもっとAKくんってポップなことやんないんですか?」って聞かれて。俺、元からラップだけじゃなく歌も歌うスタイルなので、いわゆるゴリゴリのアンダーグラウンドよりは聴きやすくてポップだと思うんですけど、でも変わらずずっとやっていることって「こういう風にやったらウケるんじゃないか」みたいなことじゃないんですよ。ただガムシャラに生きた中で歌書いて、それが結果として人に伝わってきた。あと、自分の上がってきた出どころみたいな部分を省いちゃったら……俺は「オケがこういう風だったらヒップホップ」だとか「乗せ方がこういう風だったらヒップホップ」だとかファッション的な論議なんてどうでもいいと思っていて、やっぱり在り方。どういうところから出てきて、それを背負ったまんま上を目指していくかどうか。その在り方がどこかに滲み出てくるモノがヒップホップだと思っているので、そこだけは譲れないんですよね。--実際、それをずっと貫いていると思います。
AK-69:こうやって独立させてもらって、Def Jamの看板背負わせてもらっていますけど、例えばアミューズとかLDHとか大きい事務所にテコ入れしてもらった上で、Def Jamの看板背負ってどん!と出て行く方法もある。でもそれが俺に出来ないことというか、守りたいところというか、そういう姿勢でやっているからこそ生まれるモノが俺のヒップホップなんじゃないかなと思っていますね。--自分に首をかしげる道を歩んじゃったときに、その先で生まれるもの全てに「なんだこれ?」となるだろうから、表現者としてなかなか成立しづらくなる。そういう意味では何も間違っていないですよね。
AK-69:自分が「こうだ!」と思っているものから外れると「あれ? 俺、こういう風だったのに、もうこんなこと書けないじゃねーか」ってなると思うんで、それは絶対にイヤですね。他の人に書いてもらうんだったら良いですけど、俺は自分で書いてるし、歌詞とか作品に直結しちゃうんですよ。だから俺はこれで良いと思っていますね。--その姿勢は【AK-69 LIVE TOUR 2018】にも表出していたと思うのですが、自身ではどんなツアーになったと感じてますか?
AK-69:俺のライブって「楽しかった!」というより「感じた!」みたいな感想が多いんですけど、今回は「楽しかった!」とも思ってほしくて。俺って自分の歌は自分で歌わなイカンと思っているんで、客に歌わせることもあんまりして来なかったんですけど、これだけヒップホップの中では曲を知られているMCとして、客にも歌ってもらおうと思ったんです。そしたら案の定めちゃくちゃ歌ってくれたし、それで一体感が生まれて「楽しかったし、ちゃんと感じられた」ライブも出来るんだなと勉強になったし。あと、俺はUVERworldみたいにしょっちゅう武道館で出来る訳じゃないんで、やっぱり特別なものになっちゃうというか、良い意味でも悪い意味でも身構えちゃうというか、ちゃんと進行しようとしてしまう。でもライブハウスのツアーってエネルギーとパッションで行けちゃうから、それを今度の武道館2daysではやりたいと思って。そこも意識して今回のツアーはまわっていましたね。武道館でもライブハウスかのような一体感を生めるようにしたいし、それが出来るんじゃないかなと思いました。--新たに多くのモノを得られたツアーになったんですね。
AK-69:あと、新しいお客さんがめっちゃ入っていることも確認できて、自分の音楽がどういう広まり方をしているのか見て取れるツアーだったんですよ。それが勇気になったというか、昔からのファンと共に歩んでいる感覚ももちろんあるんですけど、またさらに新しいお客さんが俺のメッセージに気付いてくれてライブに来てくれている。これはすごい希望だなと思いましたね。リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
長渕剛の激励「俺と一緒で“闘う”使命を与えられた人間」~新作『THE ANTHEM』
--AK-69の在り方や進み方で、気付いたらみんなが共に歌ってくれる状況になっていたり、このタイミングで新しいファンが集まってくる状況も生まれている。これはすごく有意義だし、価値がありますよね。なかなかあることじゃない。
AK-69:そうですね。だから振り返ったら「すごく感慨深い」ということになりますね。会場によっては半分近く新しいお客さんだったりするんですよ。これはすげぇことだなと思うし、嬉しいです。俺の曲が世の中に初めて走り出した当時のヒップホップに対する中高生のイメージって「ヤンキーが聴いてる」みたいな。ヒップホップとかラップってだけで遮っちゃう壁みたいなモノがあって、聴いてみたら心に入ってくるはずなのにイメージで毛嫌いしちゃう人たちがいて。でもそれを取っ払えるだけのメッセージを放っているんだから、それをもっとこれから立証していきたい。今、無関心な人たちでも聴きさえすれば響く人ってまだいっぱいいると思うので、どうせこうやって命削って音楽作ってるんだからもっと広めたいですね。--ヒップホップもこれだけ多様化しているのに、いまだにスーパーディフォルメされた古いパブリックイメージを持ち続けている人ってたくさんいますもんね。
AK-69:「Yo!Yo!Yo!」みたいなね。余談ですけど、この風体でキャバクラとかクラブとか行くと「え、AKさんってこういう感じなの?」「おまえらのイメージ、どんなんだよ?」「えー、なんか実物と違う!」「実物、俺だし!」みたいな。--「実物と違う」はヤバい(笑)。
AK-69:俺の実物どこにあんだよ!? なんかキャップかぶって、ダボダボの服着て、アクセサリー付けて「Yo!Yo!Yo!」みたいな感じだと思っていたらしいんですけど(笑)。--でもそういう偏ったイメージを持たれやすいジャンルゆえに可能性は凄いですよね。それがひっくり返った瞬間に世界が変わりそう。
AK-69:そうなんですよ。まだマイノリティなだけに「日の目を浴びたときの為に全部バミっておいてやるからな」と思ってます(笑)。ヒップホップというものがポピュラーになったときに、誰がそこを牛耳っていたのかっていう。それもヴィジョンとしてはありますけどね。エンパイア(帝国)を創るっていう。で、自分がオヤジになったとき、イスにふんぞり返って座っていたい(笑)。--今日のお話を聞いてると、AK-69の在り方や生き方って長渕剛とも重なるなと思いました。元々フォークの世界で生きていた人が道なき道を歩んでいって、大きな事務所の力にも頼らず、完全なるボーダーレスかつスーパーオリジナルな存在として富士山に10万人集めてオールナイトコンサートまでやってのけた。AK-69もそういう前代未聞なストーリーを歩んでいく人なんじゃないかと。
AK-69:ヒップホップはもちろん背負うものではあるんですけど、でもたしかに長渕さんが「ジャンル:長渕剛」であるように「ジャンル:AK-69」にもっとなりたいと思っているし、それこそ2018年の話になるんですけど、長渕さんの名古屋でのライブを観に行って、そのあと楽屋に呼んで頂いて、結構長いこと話してくれたんです。それで「俺、間違ってなかったんだ」と思えたんですよね。それはでっかい出来事でした。--どんな話をされたんですか?
AK-69:長渕さんが「俺も40歳手前で鬱になって死のうと思うぐらい悩んだ時期があった」と。「このまま大きな事務所に入れんかったらこれ以上やっていけねぇんじゃないか」とか「この先どうすればいいんだ」とかいろんな葛藤に負けそうになって、本当に「死にたい!」って叫んで鍵盤を叩いたときに出てきた曲があったと。それで「おまえも俺と一緒で使命を与えられた人間だからな。だからおまえはそんなに体も精神も鍛え抜いてんだろ? おまえはその役割があることを忘れるんじゃねぇぞ。おまえはまだ戦わなきゃいけねぇからな。これからだからな」みたいな。それで「ハッ!」としたんですよね。そういうつもりでやってきたんですけど、でもその筋の怪物が俺を「そういう運命のもとに生まれてきたアーティストだからな」と言ってくれたことはすごく大きかったですね。「40になってもヒップホップやれんのかな?」とかそういう不安がない訳ではなかったんで。でも「俺、まだやれてねぇこといっぱいあるわ」「この人がやれたんだから、俺にだって出来ねぇ訳がないだろ」っていう勇気になりましたね。--今回の新アルバム『THE ANTHEM』にも、今日語ってくれた出逢いやそこで芽生えた想いが大きく反映されているんじゃないですか?
AK-69 - 「THE RED MAGIC BEYOND」 (Official Video)
--強烈な生命力を感じます。
AK-69:何か新しいことをそんなに歌っている訳ではないんですけど、でもやっぱり自分の生き様とかドラマが歌詞に乗る瞬間があって、それが言霊になるんだなと思っているんですよ。そういう言葉だけが人の心に入っていくんだろうなって。今回はそれが凝縮されたアルバムになっていると思います。だからいろんな人に聴いてほしいなぁ。もし現段階で良いセールスに繋がらなかったとしても、それでも音楽としてこの世に残せたので。だからどんなタイミングでも、極端に言えば俺が死んだ後でもいいから、人々に必要とされるモノになればいい。そういう意味ではすごく納得してますけどね。……俺、多分、死んだら評価上がるんじゃねぇかなと思うんですよね(笑)。--いや、まだまだ生きてください(笑)。
AK-69:もちろん死にたいとは思わないんですけど、毎日「もう死んでもいいや」と思うぐらい生きてますね。それは歌詞の中にも「今日は死ぬには良い日だ」って……それはインディアンの言葉なんですけど、狩りに行くときに、いつ何時ケモノに襲われて死ぬか分からないし、だからいつも仲間と乾杯して「今日は死ぬには良い日だ」と言って出掛けていくんですよ。それって最大の覚悟だと思うんですよね。それを持って俺も生きているんで、いつ死んでもいいかなと思っていますね。それぐらいの曲を生んでるし、そういう覚悟を持っているからこそそういう曲を生めるんだろうと思うし、それが俺の音楽の根本的なものだと思っていますね。リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
THE ANTHEM
2019/02/27 RELEASE
UICV-1107 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.THE ANTHEM
- 02.THE RED MAGIC BEYOND
- 03.Lonely Lion feat.清水翔太
- 04.Divine Wind -KAMIKAZE-
- 05.I’ma “G”
- 06.One More Time
- 07.MINAHADAKA feat.Lui Hua, OZworld a.k.a. R’kuma, Hideyoshi
- 08.You Mine feat.t-Ace
- 09.I Still Shine feat.Che’Nelle
- 10.Stronger
- 11.BRAVE feat.Toshl(X JAPAN) -Orchestra ver.-
関連商品